日本選手権 ライスボウル



ライスボウル 



 2002年度アメリカンフットボ−ルシーズンを締めくくる第56回ライスボウルは、立命館大学VSシーガルズという対戦カードとなった。両チームとも4年ぶりのライスボウル登場ということで、つまりこの両チームは4年前(98年度シーズン)にも対戦している。

 前回の対決ではシーガルズの前身であるリクルートシーガルズが30−16で勝利を収めている。ただし、この試合は第1Qにリクルートが速攻で3TD1FG(24点)の大量リードを奪って試合の行方が決まってしまい、その後に均衡した試合展開になったのだが、最終的には試合時間消費などもあって競った試合にはならなかった。立ちあがりのスピードミスマッチがなければ少し違った展開になっていたかもしれない。
 この試合で私が個人的に印象に残っている選手の一人が、シーガルズチームカラーのゴールド&ブルーに個人カラーのピンクが映えていた#99安部奈知である。オフェンスWR/RB/TEとしてマルチプレーヤーとしての大活躍で、終盤に追い上げる立命館大学から残り時間を奪っていったボールキャリーは、当時リクルートを支える大黒柱の一人だった。

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 さて今期の立命館大学攻守布陣についてはこれまでに何回も触れてきたのだが、とりあえず復習しておこう。
 オフェンスはQB#18高田率いるショトガンフォーメーションからRB#32野本、#39礒谷、WR#11木下、#19冷水への長短緩急のランパスと攻め手段が多い。OLが開けたランホールをRBの中央突破で1回10ヤード近くをゲインするシーンが繰り返され、また、強肩から繰り出される様々なパスコースにレシーバーが脅威的なスピードでDBをかわしてロングゲインと、このランパスオフェンスに学生チームは全く対抗できなかった。

 ディフェンスもDE#56平井、#90飾磨、DT#92紀平、#93森、ILB#47宮口を中心にOLB#99八木と#5西のスピードで相手OLを粉砕してQBにプレッシャーをかけるとともに、ランプレーでは中央オープンともほとんどゲインを許さない鉄の壁を構成している。DBに若干の不安があるのは前2列が強烈すぎるために実戦ではなかなか第3列の登場シーンがないことによるかもしれない。

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 今シーズンのシーガルズの試合を観戦したのは、富士通との接戦を繰り広げた先日の東京スーパーの生中継録画が最初である。全体的には前回ライスボウルに登場したときに比べて小さいけどきれいにまとまったという印象を受けた。

 オフェンスライン(OL)は5人全員が100kg超という体格を有して攻撃の中核をなす。そしてQB#18高橋がRB#20古谷とWR#87脇田、#83清水、#84前川、TE#98安東へのランパスオフェンスを繰り広げる。
 ただし東京スーパーを観戦してからいろいろと調べたり考えていたのだが、オフェンスの手段としては、もしかしたら手数が少ないのではないかと思うようになった。ランプレーのボールキャリアはFINAL6の2試合およびリーグ戦のスタッツを見てみるとRB#20古谷のキャリーが8割を越えている。そしてQB自らが走る状況も少なそうで、つまりランプレーでは古谷をマークしていればいいように見えたのだが。

 パスターゲットは複数存在しキャッチセンスのいい#87脇田や、スピードある#83清水などが要注意人物なのだが、QBのパスリリース・判断が遅いようにも感じる。つまり、ディフェンスの強烈なプレッシャーを受けて逃げとか避けるモードに入ってしまうと、パスを投げられないかもしれないのではないだろうか。
 ただし、#11堀江だけはランパス全てに参加できるマルチプレーヤーとして、また、そのスピードで左右に大きく振り回すカウンタープレーなどは注意しなければならない。

 ディフェンスはパワー溢れるDT#76池之上、#52庄子にスピードも兼ね備えたDE#42阿部、#37木下、そしてLBは、#45世利、#39遠藤にスピードが売りのDB陣#8渡辺、#21玉ノ井、#26久乗、#47寺田などが揃う。特にLBDBはバックアップメンバー含めて層が厚い。東京スーパーでは、DB陣の完璧なレシーバーマークによってパスをほぼシャットアウトした。しかし、RB森本のランプレーだけは完全に止まったとは言いがたく、特にオーソドックスな中央突破プレーは、案外、ゲインしそうな感じだった。

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 この試合の見所だが、立命館大学オフェンスとシーガルズディフェンスの対決は面白い。もちろん学生相手に敵無しだったオフェンス陣が社会人に通用するかがポイントになるのだが、RB#32野本と#39礒谷のカウンターやショベルパスなどによる中央付近プレーは、富士通RB森本の中央突破がゲインしていることから、立命館大学オフェンスの突破口になりそうだ。
 さらに、学生相手にスピード競争で負けることのなかったWR#11木下とDB陣のスピード競争も面白い。約2ヶ月の間、実戦から遠ざかっているQB#18高田のランパススクランブル判断が鈍っていないことが重要な条件だが、ショートレンジからロングレンジまで幅広く取り揃えているオフェンス手段をシャットアウトするのは、いかに社会人と言えども困難なように思う。


 一方の立命館大学ディフェンスとシーガルズオフェンスの攻防も興味深いものがある。シーガルズの試合をほとんど観戦していないのだが、もしかしたらRB#20古谷とWR#11堀江を完璧にマークしてノーゲインに抑えることが出来ればシーガルズ攻撃手段がなくなるのではないだろかというのが、素人なりの結論である。
 もちろん、マークすべき相手が絞られているのだが止められない、という試合もある。つまり、この試合がそれにあたり、立命館大学ディフェンスが絞られているターゲットを止めることができるか否か。ポイントはここだろう。
 RB#20古谷のランプレーはライン戦でDLLBが対等以上に戦えば止まる。あとは#11堀江のスピードに乗ったカウンタープレー(左右に振りまわすプレー)にLBDB陣が如何に対応するか、だろう。QB高橋から複数のWR陣へパスが飛びそうだが、RB#20古谷のランが止まった時点でライン戦は立命館大学が均衡以上の成績を残しているはず。ならばQBにプレッシャーもかかってて自由には投げられないのではないか。

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 立命館大学攻守が社会人のスピードに慣れるまでの時間、つまり第1Qの攻防が重要なポイントで、攻守とも最初の2回をイーブン以上に収めれば、勝敗の行方は混沌としてくる。
 また、今シーズンの立命館大学の試合では攻守ともおおむね力関係が判った第2Q序盤にディフェンスが抜ける試合が多かった。社会人相手に気を抜くということはないと思うが、それでも、これはなんとか行けるのではないか???と思った瞬間がまさに気を抜いた瞬間ということになる。

 試合の行方を判断する一つのポイントは、第1Q終盤の時点で、試合開始直後のどさくさに得点差が広がっていないか。均衡していたとして、立命館大学攻守が何を思っているか、だろう。そして第2Qを終わった時点で得点差1FG以内ならば2年連続学生勝利も現実味を帯びてくる。

 立命館大学にただ一つ不安なことは、今シーズンに競った試合をしていないことによる試合コントロール経験不足という点である。リードされたときの追い上げ、タイムアウトや時間の使い方などなど。リーグ戦では2ミニッツオフェンスを試みた機会があったし、もちろん準備はしてくるだろう。あとは、それが試合中に機能するかどうかだが、せっかくここまで来たのだから、勝って帰りたい。