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年間最優秀選手(チャックミルズ杯):高田 鉄男(立命館大学) 甲子園ボウル最優秀選手:椙田 圭輔(立命館大学) 敢闘選手:波木 健太郎(早稲田大学) コイントスによって立命館大学は後半行使を選択し、早稲田大学の先攻で試合が始まった。 ライト側に陣地をとった立命館大学#22岸野のキックオフは、風に流れたか円形のスタンドに目標を誤ったかそれとも単純ミスか定かではないが、直接サイドラインを割ってキックオフアウトオブバウンズの反則、再キックによって早稲田大学最初の攻撃は自陣26ヤードからとなった。 そして早稲田大学オフェンスは第1プレーから仕掛けてきた。 通常OLはボールをスナップするC(センター)を中心に左右対称に配置される。Cの両サイドにG(ガード)が並び、さらにその外側にT(タックル)がいる。そしてプレーによってはさらにその外側にE(エンド)=TE(タイトエンド)やSE(スプリットエンド)を配するのが普通である。つまり、Eを除くと【TGCGT】と並んで左右バランスをとってプレーサイドを判りにくくしている。 しかし、早稲田大学第1プレーはCの左サイドに1名だけを配して、残りを全て右サイドへ並べた。ルール上はラインの選手として7名以上を配置しなければならないので、Cの左に1名に対して右に5名を配したことになる。左サイドを薄く、右サイドを厚くするという極端なアンバランス体型をとることによって、厚くしたサイドへプレーを入れると見せて反対サイドに・・とディフェンスを惑わせるという仕掛けである。 実際のプレーはQB#5波木による右サイドへのキーププレーで8ヤードのゲインとなった。 ただし、このフォーメーションに対して立命館大学ディフェンスは第1プレーこそオフサイドの反則(早稲田大学がプレー選択により反則施行せず)だったが、その後は大きく慌てるというシーンを見なかった。 早稲田大学はこの後もこのフォーメーションからのランプレーを何回か試みている。おそらく全てを左サイド少数にしてのランプレーを左右に展開していたようだが、おおきなゲインにまでは至らなかった。 早稲田大学最初のシリーズはその後の反則ロスもあってFD更新なく攻撃権放棄となる。 そして立命館大学自陣49ヤードからの攻撃にオフェンスメンバーが登場する。最初にフィールドに入ってきたオフェンスメンバーはQBを除く10人。HB2人の見慣れたショットガン体型にセットした。そして無人のQB位置に遅れて入って来たのがこの日も大活躍となった#16椙田だった。 そして第1シリーズからショットガンオフェンスが炸裂、RB#32野本へのハンドオフ、WR#19冷水のリバース、#11木下へのクイックパスなど計8プレーでTDへとつなげた。 さらに次のシリーズも自陣38ヤードからランパスをつないで最後はQB#16椙田によるQBドローによって第1Q残り5分ちょうどに追加点を挙げた。オフェンスが1試合平均55得点、Q平均2TDというリーグ戦と同様の展開を見せた。 そしてディフェンスも第1Q終盤から少しだけ甘くなるといういつものパターンによって早稲田大学オフェンスのTDドライブを許すというリーグ戦のコピーを見ているような試合展開となっていく。 ただし立命館大学がここまで2シリーズ全てを得点に結び付けているのに対して早稲田大学が3回目のシリーズで初得点という勢い差は如何ともしがたい。前半後攻にあたる立命館大学オフェンス3回目のシリーズを自陣25ヤードからFD更新4回によるTDドライブを行った時点で、お互いの攻守/守攻の力関係によって試合の行方はこの時点で決したしまったと言ってもよい。 ******** ただし早稲田大学第2QのTDシリーズだけは立命館大学ディフェンスを圧倒していた。自陣20ヤードから始まったこのシリーズもまずアンバランス体型からのQBキープ左OTが25ヤードゲイン、これはディフェンスミスタックルもあったがそこをかわしてからトップスピードになるまでが早かった。これでフィールド中央に達すると今度は右ロールからRB#15泉へのパス、これも15ヤードと再びビッグゲインを得て敵陣40ヤード。ここからRB#49神による中央突破ラン4ヤードと、再び#49神への左パスといろいろなプレーを決めた。 立命館大学オフサイドの反則もあって敵陣14ヤードでFDを更新した時点で、立命館大学ディフェンスがやむを得ずにこの試合最初のタイムアウトを要求している。早稲田大学オフェンスはいいテンポで前進しはじめるとなかなか止まらないのだろう、関東を勝ちあがってきた経過が判るようなシリーズである。 敵陣14ヤードからも早稲田大学怒涛のオフェンスが続く。パスフェイクからのQBスクランブルとUB#49神の中央突破でエンドゾーン前5ヤードに達した時点で第1Qが終了、エンドが交替した最初のプレーで#49神へのパスがTDパスとして決まった。 ボールキャリアが#5波木、#49神、#15泉と限定されているシリーズだったが、そこから繰り出されるプレー種類は見ていても飽きない、ディフェンスからは的の絞りにくいプレー数の多いオフェンスチームである。 さらに第4QにはUB神の中央突破をフェイクにしたQBオプションキープ右OTは、フェイク動作に釣られて一瞬中央に振られたディフェンスを置き去りにしてスピードにものって独走TDランになった。 その他にも、第2Q最後のシリーズでノーハドルオフェンスを、また#5波木によるPとその後の第4DPシーンでの#5波木のキープによるギャンブル成功と、いろいろプレーが続出してくる。第3QにもQB#4安村からのWリバース+フリーフリッカーでWR#5波木へのパスなど、どれも練られたプレーだった。 これを甲子園ボウルのために準備したのか関東リーグ戦から披露していた慣れたプレーなのかは判らないのだが、どちらにしろこれだけの準備をしてきたオフェンスの潜在能力は高い。 この試合の一つの見所は、UB#49神の中央突破(ダイブ)プレーがどこまで立命館大学ディフェンスに通用するのかだったが、対等とは行かないまでもある程度のゲインはしていた。ただ、関東では最後の一伸びで数ヤードを獲得できていたのだが、立命館大学ディフェンスの寄りのスピードが早くて、甲子園ではそれがなかったということで、連続ドライブにつながらなかったのだろう。 一方のディフェンスだが、こちらはよく判らないというのが正直なところである。関東のチームの試合を観戦するといつもディフェンス側に少し疑問を感じるのだが、DBが深い&上がりが遅いとかLBの寄りが甘いなどなど中央付近の層が薄いために、DLだけでは中央突破ランがなかなか止まらない。オープン系も止まったとは言いがたく、ランもパスも散発で止まっているという状態だったのだが。 ******** ところで早稲田大学の試合は、昨年秋のリーグ戦を観戦したことがある。その時もP兼任の#5波木の姿はあった。ただ、正直なところオフェンスのプレー全てに絡んでいる様子が伺え、ベンチ含めて周囲全てが頼り切っている悪い意味でのワンマンチームだった。 それを踏まえての今春の関西学院大学交流戦・西宮ボウル観戦だった。そして今回の甲子園ボウルもそういう点からも楽しみにしていたのだが、昨年とは違って周囲を巻き込んだ多種多様の攻撃手段を見ることが出来たのが楽しかった。パス系のプレーが少なかったのが残念だったが、たとえばTEWRへのクイックパス機会が増えることで、より一層QB・UB神によるランパス(中央突破/クイックパス)とのオプションプレーも決まりそうで、面白いチームになりそうな感じがする。 ******** 立命館大学QB#16椙田のオフェンスはショートパスとRBランで7TD1FGを挙げ、前試合で負傷したQB#18高田はこの試合で全く登場する気配も見えなかった。試合時間が伸びた分も加味すると、リーグ戦での平均値1試合平均55得点に比べててTD数や得点が少ないようにも感じるが、それは高田と椙田のプレースタイルによるところが大きい。 #18高田はフィールド中央からエンドゾーンにTDパスを投げ込むのに対して、この日の#16椙田は、ランパスのショートゲインを確実に積み上げて行った。それでも第4Q最後の得点はフィールド中央からWR#19冷水へのポストパス飛距離40ヤードによる。ショットガンからのランパスという立命館大学オフェンスの基本形に、椙田らしいの緻密さ丁寧さが加わったプレーの連続だった。 今年の立命館大学攻守の特徴は一人のスーパースターが存在しないことである。「2002年の立命館大学で代表となる選手を挙げよ」となったときに、おそらく票が割れる以前に一人を決めることが出来ないのではないか。オフェンスディフェンスどのポジションを考えても凄い選手ばかりが集まっていて、さらにバックアップメンバー含めて抜けた存在がいない。 昨年の関西学院大学も最終的には「チーム全体がスパースター」という「学生史上最強チーム」となって今後二度とこのようなチームは現れないのではないかと言われた。だがその翌年に再び「学生史上最強チーム」が現れることになった。昨年も今年もこんな完璧な布陣は二度と構成できないと言われているが、おそらくこの調子ならば来年も「学生史上最強チーム」が現れるのだろう。 それが立命館大学か関西学院大学か京都大学か、それとも新たなチームの登場となるのか。関東も今年の経験を踏まえた来年の早稲田大学を見てみたいという思いがある一方で、連覇の途切れた法政大学の復活や全く新しい展開もみたい。甲子園出場・甲子園勝利・ライスボウル制覇でもいいが、「学生史上最強チーム」になれば結果も付いてくる。 (了?) ******** ******** |