関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Updated, 2001 Aug. 19 at 23:19 JST.



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関西学院大学・京都大学・立命館大学・甲南大学

神戸大学・同志社大学・近畿大学・大阪産業大学




関西学院大学
 今春の関西学院大学は社会人松下電工とプリンストン大学に敗戦しただけで日本の学生には全勝でシーズンを終えた。

 オフェンスは、QB#16尾崎が判断のいいキープやナイスなパスコントロールを駆使して、テンポの良い派手なランパスオフェンスを組み立てる。バックス陣もRB#2三井のスピードランと、WRにはショートからロングすべてのターゲットに成り得る#27松山、#81山本、#86東畠、TE#89榊原と人材は豊富である。例年と同じくUBが固定していないのだが、時々すごい新人が現れるチームなのでそこはシーズン途中までのお楽しみということで。

 ところで、QB尾崎のランパスオフェンスは派手というよりは華麗と言ったほうがふさわしい。スタジアム上層から観ているとプレーが決まったときの爽快感には思わず唸ってしまう。観戦初心者にもこの感覚は判ってもらえるだろうということで、関西学院大学戦には友人を一人以上連れてきてください。


 今年の関西学院大学のオフェンスは、RB#2三井の中央突破とQBキープ、パスはロールからのロングパスとクイックパスが主体になる。ロールパスではロング一気TDパスに繋がるが、執拗なLBが複数人存在するチームには通用しないかもしれない。この時にはクイックパスがメインになる。ターゲットとなるTE#89榊原は、サイズが大きいのでQBは投げやすいし守備側は守りにくいという守備側にとってはイヤなパスターゲットである。
 このようにプレー種が多くランパスのどこかに活路を見出せるので、一気にモメンタムを奪い取って劣勢を挽回するとか、あるシリーズだけエアポケットに入ったかのようにゲインしてしまうなど、守備側には気の抜けないオフェンスである。

 生命線であるパスを完封されると苦しいが、今春QB尾崎のテンポが悪くなったのは松下電工戦と西宮ボウルだけであり、充実したOL#71蔵谷、#57大橋、#77吉田、#78松木が支えているので、学生単独チームではなかなか止まらないだろう。
 ディフェンスは、DL#90石田のスキルを引き継ぐ1年の出現やDL#58西村、#95今東など充実し、LB#9矢野、#47坂本、DB#14植田、#29河合と揃う。DB4人ともが完璧なパス守備をするのではないので、立命館大学戦までに克服することが課題になるだろう。

 もう一つ課題を挙げるとすればKだろう。数年前のKの成功率と比較すると低いだけに接戦の時にはその成否が効くかもしれない。


 今年の関西学生優勝候補の一番手にあることに間違いない。今年も関西学生を制覇するとなると1999年からの3連覇となり、これは関西学院大学自身が1981年まで続けた33連覇に次ぐ記録になる。

 個人的な願望だが今年こそ甲子園ボウルを突破してほしい。その次の相手は是非とも倒してほしい相手になるはずだから。


京都大学
「最近だんだん暑くなって来ましたね。このまま行くと12月はどのくらい暑いんでしょう(^^)」なんていうつまらんギャグがあるのだが、京都大学に対してはこれが冗談ではなくなる。
 5月の立命館大学戦・甲南大学戦、6月の東京大学戦、7月の平成ボウルでの関西学院大学戦を観たが1ヶ月毎にチームが変わって行った。この成長カーブの最終目標は、1994年以来7年ぶりの最終節の京関戦がターゲットであることは間違いない。第5節にある立命館大学戦をどうするかだが、そこは試合前週の展望で。

 オフェンスバックスはQB#16今西を中心にRBにはUB#31畑、TB#25関根、レシーバーにWR#22青木、#1灰井、TE#86由良とメンバーは揃う。春はIとかTとかシングルバックとかでいろいろなプレーを採用して、どちらかといえばオプションが少なかったが、それもいろいろ試みている途中だからだろう。

 課題は層が薄いことで、特にバックスは4年主体である。負傷した時や来年以降が気になるのだが、それも一夏超えて下からの突き上げがあるだろう。もう一つ挙げるとすればパス精度が悪いことだ。春は3回連続パス失敗で時間消費なしのシリーズもあった。レシーバー陣はすべてマジックハンドの持ち主なので、コントロールさえ定まれば一気にプレー種は広がる。

 ディフェンスは平成ボウルではオレゴン州立大学の力も借りていたが、かなり整備されてきたように見える。LB#53辻尾、#85木谷には突っ込みの力強さとスピードが見られ、DB#24高本、#11塚原、#20山本も守備範囲が広く最後の砦をしっかりとカバーするようになってきた。
 ディフェンス主導の年だった昨年もシーズンインの段階ではアスリートがポイントにしか存在しなかったのだがシーズンが深まるにつれて点が包囲網に変わっていった。今年も昨年と同じように時間が経過していくにつれてチームが成長していくのだろう。

 京都大学については、今の段階であれこれ言う意味はあまりない。ただし、リーグ戦の試合順を考えると第1戦の近畿大学戦だけは、少し気になる。近畿大学ディフェンスに試合をコントロールされるようだと試合の行方すら混沌としてくる。ここをどのように切り抜けるか。どんな形でも勝利すればリーグ戦後半では安泰、敗戦するようならば一気に消沈してしまうか、逆にその後の成長曲線が急カーブを描くか。宝が池球技場での開幕戦は見逃せない。


立命館大学
 今春の関西学生のトピックスといえば、まず最初に立命館大学のショットガン採用が挙がるのは間違いないだろう。なぜショットガンなのか、シーズン最後までショットガンをするのか、関西学院大学に通じるか否か、関西学院大学に対する心理戦?・・・いろいろなところで話題になるテーマである。秋の関西学生の注目度と話題を集めたという点で貢献度大であろう。

 パスは水物だが、成功すればロングゲインかTDであり、その1回だけで試合が決まるかもしれない。ショットガンの威力はやはり大きい。あとはショットガンと他のプレートの比率であろう。春は100%ショットガンだったが秋は如何に。あるいは、関西学院大学戦では如何にというところだが、これだけはその当日になってみないと判らない。

 さて、立命館大学のメンバーを眺めるとどのポジションとも山のように名前を挙げることができる。背番号偶数番号をAチーム、奇数番号をBチームとしてリーグ戦に参加しても両方ともDIV1上位に入るのでは??というほどの人材の宝庫なのでポジション毎に名前を挙げるのは割愛する。

 その中で一つだけ注目点を挙げるとすれば、DL#57山中、#55西村、LB#99中島をはじめとするDLLBのスピードだろう。この数名がボールキャリアに簡単に手が届くようだと相手の攻撃手段が無くなってしまう。これだけは関西学院大学相手にも通用するかもしれない。

 おそらく今年も関西学院大学戦、京都大学戦以外の5戦は、やりたい放題の攻守で立命館大学の圧勝に終わってしまうだろう。人材の持っている能力だけでなんとなく勝利してしまうのでステップアップが要求されない。その内容は関西学院大学戦、京都大学戦を予測する上で何の参考にもならないだろう。
 そしてこれが逆に京都大学関西学院大学を相手にしたときに、タイムアウト要求の遅れやPATでの安易なキック選択に現れてくる。今年もこのパターンを繰り返すのだろうか。


甲南大学
 今春観戦した甲南大学の試合が4月の神戸大学戦と5月の京都大学戦だけなので、よく判らないというのが正直なところなのだが、この2試合を見た限りでは昨年一昨年に比べて少し小柄になったかなという印象がある。

 最終学年になったQB#11仲田は西宮ボウルとグッドウィルで堅実なオフェンスを指揮していた。秋もオフェンスの中心となってチームを牽引するだろうが安心して見ていられるQBになってきた。

 今春のオフェンスはQB#11仲田とRB#2油井のオプションが中心だった。おそらく秋もQB、UB#41西口、RB#2油井によるオプションオフェンスが中心になるだろう。レシーバーではWR#3前田が春は目立っていたが、昨秋活躍したTE#88吉田の復帰で、ランパスのオプションの形になりそうだ。

 デイフェンスは各ポジション毎に中心選手がいるのだろうが、私の印象に残っていない。このあたりは私の観戦姿勢に問題ありなのかもしれないので。ただ、OLDLLBなどサイズの必要なポジションで線が細いのが少し気掛かり。

 第1戦の神戸大学戦、その後の同志社大学、近畿大学、大阪産業大学と前半から厳しい試合が続く。3年連続で4位以上に残るかそれとも5位以下になるか。最後に観たのが5月中旬なので、その後にいろいろな変化があるだろう。昨年の関西学院大学戦でのショットガン採用のようなチーム全体で勝ちに行く姿を期待しています。


神戸大学
 春の神戸大学はあまりアテにならないのだが、今春の神戸大学の試合は4月中旬の開幕戦と5月中旬の負傷者だらけの試合を観戦したのみである。春序盤の2試合だけではなんとも言いがたいし、時間が経過する毎に姿を変えるチームなので、今年も秋に期待してしまう。

 QB林を中心にしたオフェンスでは、RBには昨年も#29坂東、#23沖本、#20藤村、#16吉野と名前は挙がる。ただ、派手なスピードやカットランでロングゲインを頻発するランナーがいない。UBTBとも平均的で小粒というのが今春までの印象である。UBなら誰・TBなら誰というキーマンが欲しいところだが、シーズンインとともに誰かが台頭してくるだろう。

 レシーバーには#80伊藤、#9今里のDB・KPからのコンバート組が名を連ね、TE#85庄司、#87萩原と併せてショートターゲットを構成する。OLはサイズが大きいのだがバックス陣と併せて効果的なブロックができるかは春の段階では未知だった。

 ディフェンスにはDE#97小島、LB#51佐々木が最終学年としてキーポジションで睨みを効かし、DBには#21西田、#22川副が控える。そして、西宮ボウルで何回も披露されたリターナー#80伊藤の瞬発力は関西人なら衆知の事実である。

 ここ数年ディフェンス主導のシーズンが続いたが、今春を見た限りでは感触を掴みにくい印象はある。ただオフェンスにはランパスとも一発ロングゲインが見込めないようなので、やはりディフェンスの奮闘を期待したロースコアゲームを展開することになるのだろう。春の大量の負傷者がしっかり完治しているのかが気掛かりである。


同志社大学
 同志社大学もオフェンスは充実したメンバーが揃う。RB#1山下、#2山田、#34小川はどちらかと言えばスピードとタイミングで走り抜けるランナーで、OLが造りだした空間をタイミングよくすり抜ける。OLはRBの走路を把握してディフェンスを排除していく。OLとRBの共同作業がきれいに決まるのが今年の同志社大学オフェンスの特徴である。この相乗効果が良い方向に回転すれば、シーズン中も大きく成長していく可能性があり、楽しみなチームの一つである。

 RBだけでなくパスレシーバーも充実している。WR#81布施、#80亀山、#83要、ショートターゲットにTE#84松田とタレントの宝庫で、QB前川によるオフェンスユニットは、全ポジションとも穴が無くランパスなんでもありの攻撃が可能である。

 オフェンスの課題は、今春を見た限りでは「QB前川の調子」ということになってしまう。QB前川は、昨年の開幕戦で君川負傷退場の後を引き継いでの全試合登板だった。そしてシーズン後半には正QBとしての地位を確立する成長ぶりだった。
 今春のQB前川は、残念ながら昨秋のレベルにない。名実ともに正QBになったことが逆にプレッシャーになってしまったか。昨年と同じことをするだけで充分なんだが。お気楽にと言うのは簡単だが、当人にしてみれば苦しいところだろう。まだ3回生だということで開き直りを期待。

 一方のディフェンスは少し苦しいかというのが正直なところだ。慶應義塾大学戦ではパスでのドライブを許したりと少し苦しいところがあるかもしれない。布陣的には#5丸山がILBとしてディフェンスの核となり、DB#40岡山、#41竹内が第3列を固めているが、シーズンを通してディフェンス全体の底上げを期待。

 シーズン日程を眺めると、第2戦の甲南大学戦あたりがキーになるか。ここを接戦以上で切りぬけるか否かで大きく変わってしまうかもしれない。


近畿大学
 今年の近畿大学と言えば、まず最初に関西を代表するLBトリオ#9甲斐、#10東、#43伊賀波が思い浮かぶ。QBを襲撃する#9甲斐の突っ込みでと#10東、#43伊賀波のRBへのタックルが頻発すると攻撃側も簡単にはゲイン出来ないだろう。
 デイフェンスの課題を挙げるとすればロングパスに対する3列目のディフェンスということになるが、連続のロングパスはLBが許さないだろう。今年のディフェンスは試合の流れを変えるだけの力は十分にある。

 ところで春後半には#10東をDB(S)に配している。秋はこの3人をどのような布陣に配するのだろうか。DB(S)に配してパスカバー等の最後の砦とするか、LB3人で中央もオープンもすべて数ヤードそこそこのゲインにしとめるようとするか。専修大学戦の観戦記で触れたが、それぞれに一長一短がある。ともかく今年の近畿大学はディフェンスが計算できるのが強い。

 一方のオフェンスも充実している。UB#30光山、#99杉田の中央突破にTB#20土手下のオープンラン、他にも#27鉾山、#39大坪、#31美濃部とメンバーは豊富。パスターゲットもショートターゲットにTE#4小村と#99杉田、ロングターゲットにWR#88松永。そして、QBは#3安倍のオプションと#14大峠のランパス、K/Pに#87行田と、これだけ多くのポジションで名前を挙げられるのだから関学立命に匹敵する陣容と行っても過言ではない。

 課題はQBとOL。両QBとも好不調の波が大きく、得意なプレーにも一長一短がある。したがって、その日の調子や相手ディフェンスとの兼ね合いなど、試合毎・シチュエーション毎に臨機応変な起用とプレー選択ができるかが、試合の結果を大きく左右するポイントになりそう。

 もう一つはOLがバックス陣をしっかりと保護できるかどうかだろう。昨年今春ともにバックスに向かって直線で入ってくるDLLBをOLが止められていない。オフェンスドライブするも1回のサックでそのシリーズが止まって得点機会を逸するシーンが続出した。これもオフェンスが調子に乗れない一因であろう。

 オフェンスのテンポが良いときと悪いときの差が大きいということは、逆に言えば、一旦調子に乗ると止まるところを知らないという意味である。シーズン突入段階はディフェンス主導だろうが、オフェンスがいつ調子を上向かせてハイ状態に到達するか。入れ替え戦回避するしないの位置にいるようなチームではない。今年こそは上位に残って欲しいチームの一つである。


 秋、第1戦は京都大学である。まだまだ完成していない京都大学ならば、ディフェンスが粘ってロースコアゲームを展開すれば勝利できるかも。
 第2戦、関西学院大学戦も近畿大学LBがQB尾崎にロスタックルを何回か浴びせれば、関西学院大学オフェンス機能が半減、これでロースコアゲームに持ち込んで勝機を伺う・・。
 第3戦は立命館大学戦。数年前は春の立命館大学に圧勝し秋リーグ戦でもあわやまで追い詰めたことがある・・・。

 開幕からの3強との3連戦「獲らぬ狸の皮算用」ではあるが、獲れない相手ではない。スタッフ含めてチーム全体で勝ちに行く姿があれば決して不可能なことではないと思うのだが。

 すべては第1戦にかかっている。京都大学相手に勝利するようなら一気に上位に食い込むことも可能だが、大敗すると昨年と同じ意気消沈の不甲斐ないシーズンになってしまうことも。中途半端な成績で終わることはないだろう。優勝争いか入れ替え戦か。近畿大学は、どちらを選択するか。


大阪産業大学
 西宮ボウルやグッドウィルボウルで単独選手としてのパフォーマンスは見たが、大阪産業大学としての試合は5月の同志社大学戦しか観戦していない。この1試合だけで秋の大阪産業大学がどのようになっているか予測など出来ないのだが、思うところを述べてみると・・・。

 オフェンスはRB#31松岡の中央オープンランとSBに起用してのクイックパス、ロングターゲットにWR#1山本。ディフェンスもLB#59辰川、#55佐脇とポイントにはアスリートが揃う。しかし、選手層が薄いのはここ数年とかわらずで、DIV1で戦うにはギリギリの陣容であることに違いはない。

 この人数不足を補うのが大阪産業大学得意の戦術面での工夫にある。毎年、いくつかの試合では接戦を展開して今日は勝利?と思わせてくれるチームである。関西学院大学を相手にオプションオフェンスが機能した昨年、ツルーアイでRB3人を縦に並べて神戸大学に圧勝したのは2年前、ロンリ−センターなどなど試合毎に次は何をしてくれるかと期待を持たせてくれる可能性を秘めたチームである。


 QB#5藺牟田のオフェンスは、大阪産業大学得意のオプションよりは一般的なIからのランパスを主体に攻撃を組み立てている。そして、一発ロングゲインよりも小刻みなゲインを積み重ねる時間をかけたドライブが得意である。

 しかし、この時間をかけたロングドライブが得点に繋がればいいのだが得点できないことが多い。FD更新を繰り返して敵陣まで侵攻すると徐々にフォルススタートとかホールディング反則が増えてくる。そうなると小刻みなゲインを身上としているので反則罰退分が挽回できなくなって第4Dに追い詰められる。そしてパントを蹴るか距離を残したFGトライで無得点に終わってしまう。
 ディフェンスは中位校相手には対等なのだが、オフェンスが無得点で時間が経過している間に点差が広がってしまう。

 オフェンスがエンドゾーンに到達するまでの10数分間でゲインするのと引き換えに何か(?)を失っている。結果としては反則で自滅しているとか雑に見えるのだが、そういうことではない。比較に出すのはなんだが、入れ替え戦では大阪産業大学のロングドライブは確実に得点に結びついている。

 オフェンスがドライブして敵陣に入ったときの間の取り方が課題。ここを反則無しにドライブを得点につなげることが出きれば大阪産業大学のペースで試合を運ぶことも十分に可能だろう。時間を消化しながらのロングドライブで加点、DL#58石丸他ディフェンスてロースコアゲームを展開、最後の決勝TDを秘技フォーメーションで奪う・・・これが大阪産業大学の勝ちパターンだろう。