東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



関西学院大学の戦績  
7戦 7勝  

○ 65− 7 大阪産業大学
○ 27−10 近畿大学
○ 54− 0 同志社大学
○ 63−20 神戸大学
○ 79− 7 甲南大学
○ 10− 6 立命館大学
○ 34−13 京都大学

法政大学の戦績  
8戦 8勝

○ 66− 0 横浜国立大学
○ 51−21 関東学院大学
○ 37−20 明治大学
○ 23− 0 中央大学
○ 57− 3 東京大学
○ 29− 6 日本大学
○ 36−13 専修大学
○ 55−42 日本体育大学

 第56回甲子園ボウルは、関東8連覇による8年連続出場の法政大学と、3年連続出場となった関西学院大学との対戦となった。
 両校の甲子園での対戦成績は法政大学の2勝1敗1分けだが、「1勝」は1972年のことである。近年の両校の対決は試合終了間際の交錯で同点両校優勝となった97年、予想以上の大差がついて関西学院大学が単独優勝した99年、そして、その反動による2000年の法政大学単独優勝と、まさにモメンタムが行ったり来たりである。

 その振動を引き継いだ今年の試合の行方は、関西陣営から見ればまさかの敗退を喫した関西学院大学が底力を見せつけるか、それとも、法政大学2連覇で関東強しの印象を残すか、あるいは、手に汗握った末の引き分け両校優勝となるのだろうか。

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 今季の法政大学の試合を観戦したのは、中央大学戦(10月)と日本体育大学戦(関東大学選手権決勝)の2試合のみである。したがって法政大学の本当の姿をとらえているとは限らない。その点を了解していただくことを前提とした試合展望である。

 法政大学オフェンススタイルはQB#17桑野によるランパス均等オフェンスだが、獲得距離はランが圧倒的に多い(関東大学選手権パンフレットによれば、ラン240回2163ヤード、パス97回成功434ヤード)。パスレシーバーにはWR#9山岸、#25久米、TE#87日田とメンバーは揃っているのだが観戦した2試合では10ヤード付近までのパスのみだった。

 今季の法政大学オフェンスの特徴は、RBを横に3人配置するノーマルTを多用していることである。RB#36白木を中心に#39伊藤、#2長村、#29中島などが真横に並ぶ。ここから、パワーOTやカウンター、ドロー、QBキープと多彩な攻撃を仕掛けている。ボールキャリア候補がRB3人とQBなのでディフェンスは慣れるまで時間がかかるかもしれない。さらに、WRTEへの横パスも加われば、ディフェンスから見ると厄介な攻撃スタイルである。
 また、IフォーメーションからのUB#36白木、UB#32小沼による中央突破とQBキープというノーマルなオフェンススタイルも揃っている。

 ディフェンスは、大型DL#97小林、#78西川によるパスカットが凄い。手を伸ばしてボールに触れることでパス失敗にしてしまう。日本体育大学戦でも横パスやクイックパスで再三のパスカットを演じていた。さらに、LB#43塚野、#42中井などが中央突破ランをシャットアウトする。
 このようにDLLBとも前へのスピードパワーはあるのだが、、LBDBのパスディフェンスは甘い。関東決勝ではミドルパスを何回も決められていた。

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 関西学院大学オフェンスは、QB#16尾崎によるパスが今年のメインプレーである。WR#86東畠をメインターゲットに、TE#89榊原、WR#27松山、#81山本とターゲットは揃っている。いずれもマジックハンドの持ち主であり、DBをかわすスピードも兼ね備えている。

 また、TB#2三井、#3大谷、UB#6足立、#30岡村、#33杉原とRB陣も豊富でOL#71蔵谷などが作り上げた中央ホールをスピードでかけ抜けてく。そしてQB#16尾崎による大きくロールしてからのスクランブルランorパスはディフェンス陣を多いに悩ませることだろう。
 このオフェンス陣容では欠点らしいところはないのだが、QBにプレッシャーがかかり続けると、さすがに迷いが生じるというシーンは今春から何回か見ることがあった。

 ディフェンスは、DL#90石田、#58西村を中心にLB#5平郡、#44星田、#55山田、DB#14植田、#29河合など、こちらも豪華メンバーが揃っている。関西学院大学ディフェンスはパワーで相手を威圧圧倒するようなことはないがシステマチックに相手をコンテインするのは得意である。DB陣のパスディフェンスは完璧で、もしかしたら今季ロングパスを通されたことがない(?)かもしれない(私の記憶によれば)。

 こんな完璧なディフェンスだが1試合の中でフッと息を抜いてしまうシリーズがある。時々タックルが甘くなってロングゲイン&ロングドライブを奪われることがあるのだが、法政大学がこの一瞬のスキを突けるかが一つの勝負の分かれ目になるかもしれない。

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 以上の両校戦力分析の結果からこの試合の展開を予想すると次のようになる。

 関西学院大学オフェンスと法政大学ディフェンスの対決だが、今年のウリポイントがパス攻撃という関西学院大学に対してパスディフェンスの甘い法政大学という構図になってしまう。したがって関西学院大学優位は否めない。
 DL#97小林、#78西川、LB#43塚野などが積極的なブリッツプレッシャーによってパスを投げさせないことができれば均衡する可能性はある。しかし、QB#16尾崎のロールからのパスまたはスクランブルという複雑な動きを完全に止めることが出来るだろうか。ここが試合の行方を大きく左右するポイントになるのは間違いないだろう。

 法政大学オフェンスと関西学院大学ディフェンスの対決だが、こちらは、予想しにくいところがある。法政大学RB#36白木、#39伊藤などによるノーマルTフォーメーションからの多彩なプレーに対して、関西学院大学が迷うところなく対応できるならば法政大学の攻め手がなくなる。しかし、ディフェンスに迷いが生まれるようでは昨年と同様に試合の行方は混沌としてくる可能性もある。

 昨年の甲子園ボウルで、法政大学ノーマルTカウンターによる60ヤードTDランのシーンがあったが、関西学院大学ディフェンスシステムでは止まらないプレーなのか、今年はしっかりと修正してくるのか。関西学院大学がノーマルTをシャットアウトした時点で、昨年の借りを返したことになるだろう。

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 両校戦力を単純比較すると、関西学院大学優位を否定する要素は見当たらないというのが私の考えである。関西学院大学ディフェンスが不調でハイスコアゲームになったとしても、パスオフェンスで失点を上回る得点を挙げることは可能と考えている。

 しかし、これは戦前の比較であって、昨年のように試合の中では予想外の振る舞いをすることがある。今シーズンの平均的な姿で戦力分析を行ったが、その日の(その日までの)コンディションによって大きく変わってくるということは昨年の甲子園ボウルが証明してみせている。関西学院大学パスオフェンス優位の印象だが、「パスは水もの」という言葉もある。つまり、実際にその日を迎えて、相手と向かい合ってみないとわからない、ということである。

(了)

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