関西学生アメリカンフットボール Div.1 後半戦 展望

Updated, 2000 Oct. 26 at 01:59 JST.



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 今年の関西学生Div1は、前半戦を終了した時点で4勝の上位と4敗の中位にきれいに分かれてしまった。もう少し白黒入り乱れるかと思ったのだが。
 ただ、試合内容としては僅差もあったし、中位チームがなんとかしようと準備してきた試合があったのも事実だ。数年前に比べて、中位校があきらめない試合が多くなったような印象を受ける。

 前半戦は「上位」対「中位」の対決でアップセット期待のシリーズだった。そしてこれからの後半戦は、力が均衡したチームの対戦となる。



4戦4勝 : 関西学院大学・立命館大学・京都大学・甲南大学



 関西学院大学と立命館大学は、伝統とパワーで横綱相撲を展開、新生京都大学は悩みながらも白星を重ねた。甲南大学は、例年と比較して戦力の充実ぶりが印象に残る。

 この4校の中から今年の関西学生チャンピオンが決まるのだが、どのチームにも一長一短があり、混戦になることは間違いない。全勝チームは現れないとか、あるいは、2位に3チーム並ぶとか。順当に1・2・3・4にはならないだろう。プレーオフの可能性も充分にありそうだ。



 関西学院大学
 QB#15岡村率いるオフェンスは、RB#2三井、#3大谷のスピードランをキープレーにして、RB#43杉浦の中央突破パワープレーという地上戦が主体になりそうだ。OLのコジ開けた穴は、関西隋一と言ってもいい。
 課題はパス。ターゲットとしてWR#89榊原以外に信頼性の高いQB−WRコンビが誕生するだろうか。もっとも、必要なときに1本だけ決めれば勝利できるのも事実だ。

 ディフェンスは、DL石田のプレッシャーは相変わらず強烈だ。しかし、LBDBのパスディフェンスには少し難が残る。ディープ、ミドル、ショートのパス使い分けた「雨あられ状態のパスオフェンス」には対応しきれないかもしれない。
 さらに、序盤戦でK#17山路の安定性を欠くPATFGが目に付いた。徐々に安定性も出てきたが、シーズンの最後を決める場面で1本を決めることができるだろうか。

 戦術でかわす関西学院大学を見せてくれるか。ただ問題は、戦術でかわそうにもパワースピードで圧倒されたときだ。こうなると、手詰まりになる・・・。

 攻守とも昨年ほど盤石の体制ではないのは確かだ。ギリギリの印象は否めない。モメンタムをひっくり返すようなビッグプレー、役者が登場するか。



 立命館大学
 開幕戦以来スターターQBは1年#17高田がつとめる。しかし、あるスポーツ新聞に書いてあったことだが、開幕戦が一番輝いていたのも事実で、怖いものを知ったプレッシャーか徐々に精彩を欠いてきた。
 それと入れ替えにしてQB#18宮崎のオフェンスが落ち着いてきた。全体が見渡せるようになってきたのか、あわてるプレーがない。昨秋と比較すると雲泥の差、関西学生でもっとも安心して見ていられるQBである。

 立命館大学オフェンスの今年の特徴は、いろいろなプレーができるということだろう。RB#39礒谷#32野本のスピードラン、#45寺町のパワーランという本職に加えて、RBがクイックパスのターゲットになりえるのが一気にプレー数を広げた。
 さらに、ミドル・ロングターゲットが揃ったWR#9沖、TE#96加藤に、QB宮崎のプレーアクションを絡めたオフェンスは、相手ディフェンスを惑わすには充分の陣用だ。

 一方のディフェンスも開幕戦後半に半2軍チームが1TDを奪われただけという準完封劇を演出中である。その他の試合でも、特に大崩れしたというシーンが無い。

 今年の前評判は、鉄壁ディフェンスと言われていた昨年一昨年に比べてワンランクダウンした印象だったが、今年もやはり鉄壁ぶりは健在だ。ディフェンスの中核DL#57山中と、LB#5片平、DB#21青木、#2池田のスピード。さらに、K#48鏑木の安定したキック力でFGPATも安心できる。

 順当ならば「今年の一番手」なのだが、もしつまずくとすれば、相手がある種の奇襲に出たときに臨機応変に対応できるか否かだろう。それとも、奇襲を奇襲と気づかずに体力的精神的パワーで突っ切ってしまうか。



 京都大学
 テレビや新聞などでは京都大学の今一歩ぶりが盛んに言われているが、個人的には「そこまで言うほど、今一歩か??」と大いに疑問を持っている。それを言うならK大のほうがよっぽど今一歩と思うのだが。
「復活京都大学」というフレーズを確かに私も使ったことがあるが、どの時代の「京都大学」に戻るのだろうかという思いもある。

 開幕戦を白ヘルスタートした京都大学は、QB後藤を開幕戦で欠き、以後は#16今西の登場となった。そして、第4節に後藤が復帰する。「オフェンスメンバーの慣れ」という面では今西のほうが上と感じるが、さてどちらを主戦として起用するのだろうか。もしかしたら大きなポイントになるかもしれない。

 Iフォーメーションから繰り出すランパスはギリギリの線で闘っているという印象もあるが、形にはなっている。ディフェンスもパスディフェンスが甘いところもあるが、それを補うためのDLLBのQBラッシュもある。
 攻守とも独走チャンピオンレベルには少し遠いかもしれない。しかし、試合中の修正対応はできる。関西学院大学と同様にギリギリ極限の印象はあるが、まだまだ化ける余地もある。シーズン展望でも触れたが、季節はずれの怪談話を期待します。



 甲南大学
 QB#11仲田起用は予想どおりだったが、#12桜井をRBとしてスピードランナーとして起用したことが今年のオフェンスのヒットである。パワー系スピード系のRB陣とパサーになるRBが揃った。スペシャルプレーで3強からモメンタムを奪い取ることも充分に考えられる。

 また、WR#87松下の次のパスターゲットとしてTE#88吉田が登場した。さらに、フレックスボーンからの#87松下のモーションピッチ、横パスと合わせて、ランパス撹乱オフェンスの手は揃った。OLが押されそうな印象もあるが、そこは、かわす。

 課題はディフェンスか。DL#92岡部・#98慈幸のサックもあるが、中央をスコーンと抜かれるシーンもあった。同志社大学戦ではパスインターセプトシーンもあったが、ミドルレンジまでのパス対応には不安が残る。それを踏まえて、どのように対応するか。

 3強時代に終止符を打って新しい時代に突入するか。それとも、昨年と同じ4勝で止まるか。





4戦4敗 : 神戸大学・近畿大学・大阪産業大学・同志社大学



 この4チームは、まったくの互角同一線上にあると言ってもいい。関西学生アメリカンフットボール連盟オフィシャルHPにチームスタッツが掲載されているが、攻守ともほぼ同じような数値が並ぶ。
 神戸大学は伝統のランニングアタック、近畿大学はパスアタック、同志社大学、大阪産業大学はランパスマルチオフェンスで展開、一方でディフェンスにも各ポジションにキーマンが存在する。

 さて、この中からDiv2との入れ替え戦をしなければならないチーム2校を決めなければならない。7位扱い校はDiv2Aと東海学生代表の勝者と、8位校ははDiv2Bと北陸学生代表の勝者と入れ替え戦を行う。順位争いという点では3校同率で並ぶ可能性を考えると1敗もできない。

 この4校による試合は、上位対決に負けず劣らずの手に汗握る大接戦を繰り広げてくれることだろう。3強の登場する試合だけ観ていては、関西学生Div1は語れない。



 神戸大学
 QB#12林・#16吉野のオプションオフェンスだが、RB#40朴木の負傷が効いた前半戦だった。RB#40朴木がいる/いないでは得点力が少し違う。
 ただ、来年のキーマンとなりそうなRB#29坂東が成長してきたし、QBキープに言い意味での「いやらしさ」が出てきたのも事実だ。さらに、パスターゲットWR#2新居も登場した後半戦は、オフェンスがフィールドを掛け回るシーンが続出しそうだ。

 ディフェンスも負傷者をかかえていながら、立命館大学相手に決めるべきタックル・QBサックを決めたりと、準鉄壁ディフェンスのシーズンが続く。

 攻守とも負傷者が多いのは事実だが、それを踏まえて試合の準備をしてくる神戸大学には毎回期待しています。


 近畿大学
 開幕戦京都大学戦では、ある程度の勢いもあったが、試合を重ねるにつれてしぼんで行ってしまったという印象だ。選手個々の能力はあるだけに、きっかけがあれば前半戦と大きく異なる試合展開を見せてくれるはずなんだが。他3校はある程度どのような試合を見せてくれるか予想はできる。しかし、近畿大学だけは、どうなるか判らない。

 シーズン前半はディフェンスが粘りながらもオフェンスがつまずいて、次第にディフェンスも持ちこたえられず・・・という試合展開が多かった。しかし、立命館大学戦の第4Qや関西学院大学戦の第3Qなどなど、瞬間的には光るモノがあったのも事実だ。「今年の近畿大学は、これだ」という試合を見てみたい。



 大阪産業大学
 QB#5藺牟田の復帰は、#3天野をWRRBとして起用できるのでオフェンスの幅が広がった。これが本来の今年のオフェンススタイルだろう。前節京都大学戦は復帰第1戦ということもあってか、少しテンポの悪いところもあったが、次からはチームとしてしっかりとまとまっての登場となるだろう。さらに、対戦相手に絞ったスペシャルプレーをひっさげての登場は、今年もアメリカンフットボールの面白さを見せてくれることだろう。

 一方のディフェンスだが、立命館大学・関西学院大学相手の前半2戦は大差だったが、続く甲南大学・京都大学相手には、どちらかと言えば他3校と比べればいい結果を残せたのではないか。ディフェンスも昇り調子ということで、後半戦に強い大阪産業大学からは、目が離せない。



 同志社大学
 開幕戦でのQB#19君川の負傷で一時はどうなることかと思ったが、QB#7前川がしっかりと成長してきたのは、正直なところ驚きである。関西学生アメリカンフットボール連盟オフィシャルHPのチームスタッツで同じような数値が並ぶ中で、同志社大学オフェンスの獲得ヤードは目を引く。
 今年Div1復帰した同志社大学だが、入れ替え戦無しでDiv1残留を決めるだけの力はある。