東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



12月17日(日) 阪神甲子園球場 12:10
TEAM 1Q2Q3Q4Q合計
法政大学 7701428
関西学院大学 7014021
(現地観戦)
 
 昨日までの晴天と暖かい気温はどこへ行ってしまったのかという冷たい雨が降る甲子園球場だった。


 法政大学がレシーブで試合開始。QB#4井川による最初のフォーメーションがシングルバック。モーションを入れてのパスは失敗だったが、ランパスに変貌した姿を関西で披露した瞬間、だった。このシリーズは顔見せに終わって、パント。

 関西学院大学は自陣11ヤードから。QB#15岡村による第2プレーが右WR#81山本への横パス。すこしボールが高かったがWRはジャンピングキャッチ、しかしLB#1志賀が突っ込んで激しいタックルにあい、ファンブルロストと、いきなりピンチとなる。

 法政大学はエンドゾーン前14ヤードからのFDチャンスを、RB#36白木、#29薄衣の連続中央突破で先制した。

 関西学院大学も第3シリーズ得意のRB#2三井、#3大谷のOL付近突破によるランニングアタックで10ヤード刻みのドライブを重ねてTDに結びつけて同点となる。

 関西学院大学はさらに第4シリーズもフィールド中央からWR#86東畠へのミドルパス18ヤード、RB#43杉原中央突破20ヤードのミドルゲインと、#2三井#3大谷コンビのランも織り込んで再びエンドゾーン手前までドライブ。関西学院大学は今年も強いぞと、一気逆転たみかけるチャンスだった。

 しかし、エンドゾーンまで5ヤードでの第3D、QB#15岡村が右へ大きくクロールするも、LB#1に追われてパスを投げ捨てる。しかし、これを法政大学#26川畑にインターセプトされてしまった。

 1ファンブルロスト・1インターセプトとここまで2回のターンオーバーで、関西学院大学にツキがないことが明白になった。そして、今年のウリであるRB陣が雨に濡れた芝に足を取られてスリップシーンが続出していた。


 第2Q中盤、40ヤードからの法政大学オフェンス。関東大学選手権でも見せたRB3人横並び両TEのTフォーメーション。プレーも同じ3人の右RB#29薄衣による左OGカウンター、左側のRBが右へ行く動作にディフェンスがつられてしまった。右RB#29が左側OGを抜けると60ヤードの独走TDとなってしまった。

 関西学院大学ディフェンスが対応できなかったのはスカウティングしていなかったのか、単に、この場でのセットが遅れただけなのか。序盤からプレーアクションなり、パス、RBのUBTB自由自在のランに対応するのが手一杯だったのかもしれない。ただ、このTのカウンターが独走になってしまったことで、この試合は昨年のような大勝大敗の試合にはならないなという感覚を持った。


 その直後、#3大谷の50ヤードキックオフリターンで敵陣からのFDだったが、RB#2三井の左オープンランでボールをファンブル、前半3回目のターンオーバーとなった。
 さらに、次のシリーズは自陣26ヤードからドライブも敵陣25ヤードからFD更新できずFGも右へ逸らして前半終了する。

 前半の関西学院大学オフェンスはRBコンビとパスを絡めてドライブは出来ていた。法政大学もLBブリッツが何回かあったが、RBコンビにはDLLBが片手をかけるのがやっとの状態だった。それだけに、関西学院大学は敵陣に4回も侵攻しながら1TDのみで、2ターンオーバー1FG失敗は、まさに、自らがチャンスを放棄したようなものだった。

 一方の法政大学オフェンスは、相手ファンブルからのエンドゾーン前と、一発ロングゲインによる2TDのみでドライブした印象は少ない。しかし、RB#36白木、TE#80日田へのクイックパスや、UBへのフェイクプレーを織り込んで撹乱した。
 関西学院大学ディフェンスが全く余裕の無いところでの対応を迫られている様子が伺えた。DL#90石田が目立つことがなく、かろうじてLB#85岡橋がRBに手をかけるのが精一杯だった。


 攻守ともバタバタの関西学院大学だったが、レシーブで始まった後半、#3の35ヤードリターンでの50ヤード付近からRBコンビとQBキープの中央突破でTD、さらに、第3Q後半にもQBキープ25ヤード、15ヤードとミドルパス2本を絡めて逆転のTDを奪った。しかし、逆転TDドライブでRBコンビの活躍シーンがなかった。

 続く法政大学オフェンスだったが、ここが圧巻であり、関西学院大学が本当に危機を感じた瞬間だろう。自陣33ヤードからUBフェイクのQBキープ20ヤード、WR#83大野へのインパス16ヤードのわずか2プレーでエンド前30ヤード。
 フリーフリッカーによるTDパスとプレーアクションパスが失敗に終わっての第3D。UB突破の後ろをTB#29薄衣がキャリー12ヤードと、法政大学の多彩な攻め手はとまるところを知らず、2分25秒で同点TDとなってしまった。


 さらに、次の法政大学は敵陣38ヤードから。

 QB#4井川の右縦パスがDBを抜いてWR#8山岸にヒット。エンドゾーンめがけて走るところを快速DB#21福田が追いついてタックルしながらボールを叩き出す。

 ここまでは、よかった。

 エンドゾーン内に転がるファンブルボールを関西学院大学DB2人が追うも、ボールが手につかない。


 法政大学WR#83大野が、おさえて、TD。法政大学7点リード。残り10分32秒。

 時間的には余裕はあるのだが、内容的には今日の関西学院大学オフェンスにはすこし苦しいかも。1回目は関西学院大学パント。

 そして残り5分28秒、自陣34ヤードから。これが関西学院大学最後のオフェンスシリーズとなった。
 第4Dギャンブル1回はさんでランパスで敵陣25ヤードまで到達する。残り時間3分50秒。しかし、ここからゲインできなかった。
 RB#30生島中央突破0ヤード、UBフェイクQBキープも2ヤード、そして、残り2回を右パス失敗で終わった。

 残り2分24秒、法政大学はどのように時間を使うか。

 ランプレーと関西学院大学オフサイドでFD更新残り1分30秒。

 ランプレー、KGタイムアウト2回目。ランプレー、KGタイムアウト3回目。残り59秒。

 第3Dをランプレーで時計が止まらず、第4Dをディレイオブゲームして、パントは残り時間11秒。

 ボールが転がっている間にゲームオーバー、法政大学3年ぶり3回目の優勝が決まった。






 この試合、雨に濡れてすべる芝が、関西学院大学から肉体的精神的スタミナを奪っていったかのようだった。もっともこの条件は法政大学も同じなのだが、なぜか法政大学のスリップシーンが記憶にない。この違いは雨対策の差か。
 第3Qの関西学院大学2個目のTDドライブでRB#2#3の活躍シーンがなかった。さらに、第4Q最後の最後は2回のパス失敗。今年のメインプレーで臨まなかったのは、臨めなかったから、なのだろうか。「1Q15分」の影響も関西学院大学側にしか現れなかったように思う。

 ディフェンスも法政大学ランパスに翻弄されたままに終わったという印象である。甲南大学戦でもディフェンスがバタバタするシーンがあったが、この時はオフェンスの連続得点がきっかけで立ち直った。しかし、甲子園ではオフェンスもディフェンスも、試合の流れをひっくり返すような出来事を作りだせなかった。

 今年の関西学院大学はOLと2人のRBが牽引者だったのは紛れもない事実だが、逆に言えば、今年のシステムではここまでが精一杯だったのかもしれない。判っていただけるとは思うが、個人を責めているのではない。
 ただ、持っている力を全ては出し切ってはいないのは明白だった。試合直前の関西学院大学ベンチは、高揚してザワザワするというのでもないが、張りつめるような透明感もなく、ごくごく「普通」だった。

 甲子園ボウルの当日、スポーツ新聞4紙に目を通した。その中のある新聞で「20世紀特集」なのだろうか、第38回(1983年)甲子園ボウル京都大学−日本大学についての記事があった。前年(第37回大会)で、日本大学65−28京都大学と大勝した日本大学が再び勝利するのは確実視されていたにもかかわらず、京都大学がパスインターセプトで先制し、その後も「素人集団」の京都大学が得点を重ねて初の大学日本一となった試合である。この記事には、試合経過とそれにまつわる水野監督などのエピソードとコメントが掲載されていた。

 この試合は「作者(A)とアメリカンフットボールの関係は?」で紹介してあるように、私が始めて最初から最後まで観た試合でもあり、予想外の展開もあって印象に残っている試合の一つである。
 この記事を読んだのは試合後だったのだが「大勝した翌年の敗戦」という図式が見事に当てはまる。少しの油断があったのかこんなはずでは・・と固まっていく日本大学と関西学院大学であり、落ち着いてのびのびとプレーしていた京都大学と法政大学だった。(甲子園で勝利できなかった法政大学との対応であって、法政大学が素人集団ということではない。)



 法政大学は3年ぶり2回目のライスボウル出場となった。前回は関西学院大学と引き分けてコイントスによる出場で、社会人鹿島に0−36の大敗を喫し、ライスボウル不要論が噴出した年である。
 選手個々の能力で言えば、当時も今年も運動能力に長けたアスリートが揃う。しかし、少なくともオフェンスは当時と違ってランパスマルチになっているし、いろいろと考えていることがわかる。前回の大敗は正直なところある程度の予測は出来たが、さて今年は如何に。

 甲子園ボウルで見せてくれた意気込みとパフォーマンスの再現ならば「大差敗退」はないだろう。もう少し法政大学を見ておきたいので、上京します。         (了)





甲子園ボウル




縦軸:フィールドポジション    横軸:経過時間

□印:FD獲得位置およびパント位置
黒線:キックによる攻撃権移動(ボール飛距離とリターン距離は表示せず)
赤線:法政大学オフェンスシリーズ(上から下へ)
青線:関西学院大学オフェンスシリーズ(下から上へ)

TD:タッチダウン          FG○:フィールドゴール成功
G×:第4Dギャンブル失敗      FG×:フィールドゴール失敗
FL:関西学院大学オフェンスのファンブルロスト
PI:法政大学ディフェンスによるパスインターセプト