魔法少女リリカルなのは_Ewig Fessel

 Episode 00:Anfang der Vorstellung - 開幕










―――――――<巡航L級艦アースラ艦長 クロノ・ハラオウン提督提出の報告書より一部抜粋>――――――――
未登録の指定遺失物ロストロギアの回収。気を抜いていた訳ではなかった。
万が一の有事に備え必要な戦力も集めてのはずが、何故このような事態へと陥ってしまったのか……。
各次元世界の平和と引き替えに、我々は――――――。
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 アースラ艦内は半ばパニック状態に陥っていた。
艦内には、耳をつんざくように鳴り響くけたたましい電子警告音。
そして普段は多彩な情報を表示しているはずの各種ウインドウの殆どに表示される、”ARALT”という文字列。

 更に、それに伴うかのように慌ただしく動いているクルー達。

 それらの光景は、尋常ならざる事態が起きている事を如実に物語っていた。


「くそっ! 何故、こんな事が。このままでは…!」
「クロノ君! 未だに――≠フ魔力値が増大中! 発動臨界点まで後、360秒!!」
「な?! どんな方法でもいい、――≠止める方法はないのか! エイミィ!!」


 クロノは正面にある大型モニターに映る――≠苦々しく凝視しながら叫ばずにはいられなかった。
だが、帰ってきた答えは無情にも絶望的なもの。
そして、そんなクロノ達を嘲笑うかの様に、――≠ヘ死の気配を周囲にまき散らし続ける。


「可能な限りのシミュレーションをしているけど…ダメ! 確率が全て”ゼロ”なんだよ!!」


 忙しなくキーボードを動くエイミィの指。あらゆる手段を入力しても帰ってくるのはゼロ――不可能だった。
それでも、彼女は僅かな可能性を探し出す為に必死になりながらキーボードを操作し続ける。


「クロノ君! このままだとどうなっちゃうの!?」
「クロノ!!」


 2つのウインドウがブリッジに出現する。大型ウインドウに映る――≠ノ対し、現場で距離を置きつつ待機している
少女等――なのはとフェイトの顔が映し出された。映し出された表情には余裕というものがなく悲壮感だけが漂っていた。
いや彼女達だけではない。同様にその場に居るフェイトの使い魔のアルフ、はやてと彼女の守護騎士達、
そしてサポートとして出向していたユーノも皆、なのは達と同じ表情をしていた。
無理もない。――≠ゥら感じる魔力はそれほどまでに強大だった。


「……大規模な”次元断層―次元災害”が起きる……。それもかつてない程の大きさで!!」
「「「「「「「「 っ!! 」」」」」」」」


 無情の宣告。誰もが息を呑んだのが分かった。
”次元災害”―文字通り、次元世界レベルにて災害をまき散らすもの。旧暦に発生したものでさえ幾つかの世界を滅ぼした
事実がある。そして再び起きようとしているのはそれを越える程の災害。



「起きたら…どれ程の被害が出るのですか…」
「ハラオウン提督!」
「………」


 シャマルとザフィーラの問い掛けは、クロノにとってあまりにも残酷すぎた。
言いたくはないというのが本音だった。
それでも、クロノは艦長として答えなければいけなかった。例え答えが絶望的なものだったとしても。


「…このままでは、少なくとも10数個の次元世界が滅ぶ…、”地球”を含めて」
「!! なんか方法はねえのかよ! クロノは艦長なんだろ!」
「よさないか! ヴィータッ!!」


 取り乱してクロノに食って掛かろうとするヴィータをシグナムが諫める。
誰が悪いという訳ではない。こんな予測不可能な事態を想像していろ、というのが無理なのだ。

 だが時は止まらない、刻一刻と破滅へ向かい進んでいく。


「そんなのやだよ、みんなが居なくなっちゃうなんて……」
「なのは……」
「なのはちゃん……」


 なのはの嘆きはこの場にいる全員の心情だった。
何とかしたい。けど対処法が見つからない。
そんな絶望とも云える状況の中、一人の少年が言葉を発する。


「……一つだけこの状況を打破できるかもしれない方法がある。やらせてくれ、クロノ」
「!? 本当か、ユーノ!!」
「…………あぁ」


 少しばかりの逡巡。この時は誰もが気に留める余裕はなく、それ故に誰も知る事が出来なかった。
その僅かな間にユーノの中で壮絶な覚悟が出来上がっていたという事を。
しかし、この”覚悟”が後に別の悲しみを生む事になろうとは、この時、この場にいる誰もが思わなかった。


 特に”高町なのは”にとっては……。



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 □ あとがき □
 ども、初めまして。時の番人といいます。
このSSは小説欄の冒頭にも記載してありますように、投稿させて頂いていたSSを再掲載という形になっております。
何処まで書き上げられるか分かりませんが精一杯頑張っていきたいと思います!!

それでは、貴重な時間を使って読んで頂いた皆様に感謝を申し上げ失礼致します。