〜 第 1 詩 想いを銀河に馳せて 〜
人類史において第四次産業として宇宙開拓分野が確立されて以来、
倒産寸前の解体屋が自分トコのスクラップ工場のガラクタ掘り出し、
さも『お母さんが冷蔵庫の残りで夕飯を作りましたよ』的に、
残り物からツギハギで宇宙船を一本ドンガシャ造って、
その船で銀河を走って貿易・開拓・護衛・果ては海賊になっちまう、
そんな会社はそこかしこに遍在する。
申し遅れた、私はもっちゃん。
社長でありながら社員に「もっちゃん」「もっちゃん」と愛され続け早三年。
早口がキュートなエリート女社長です。
「たった三年で倒産寸前に追い込む凄腕エリート?
ヒットマンの間違いじゃなく?」
うるさいのが隣に来たが、無視することにする。
そんなわけで我々も例に漏れず、想いを宇宙に馳せ、
スクラップから見事宇宙船を造ってみせましてよ?
さあ、見なさい!
この壮大な……と、は、ちょっぴり、言い難い、けど……
いわゆる「ポケットサイズでいつでもどこでもユビキタス?」的に、
すいすい小回りが効きそうなこのフォルム!
解体屋の意地を見せつけるが如く量より質を求め、
そこからさらに質よりも節約を追求したこのミニマム・クオリティ!
「確かに流星群が迫っても、衝突しにくい利点はありますよね」
私の愛車にケチ付ける男は無視です。
三年前は30人だったうちの会社も、今じゃあ社員数たったの3人。
これっていわゆる『当社比1/10』なわけよね。
こいつがポテトチップスのカロリーダウンに相当すれば、
我々はすぐさま特許を申請し、銀河に出ずとも
いとも容易く会社を再生できるだろう。
当然、私もそんなポテトチップスは買う。
「どうせ社長は10袋平らげるから同じと思いますけどね。
駄菓子食べ過ぎると、太腿のセルライトがまた増えますよ」
乙女心を傷つける男は無視!
こっちの二人は宇宙に出て、もう一人の社員は地球に待機。
我が社のアイドルマスコット事務員、その名も長谷川さん(29)です!
我々二人が銀河で死線を繰り広げる中、
長谷川さん(29)は29歳と30歳の狭間で恋の死線を繰り広げる予定なの。
『もっちゃーん、余計なこと言わないでー!』
もうすぐ三十路のくせにいちいち乙女らしく怒るところが
マスコットらしくてたいへんよい。
と、そんなところで、3、2、1、GO……っと、舞台は地球から宇宙へ。
実はGOの”O”あたりで大気圏突破してたのよ?
「3の時点から宇宙だったでしょう。
絵が無いのを利用して嘘付いちゃダメですよ社長」
『あーあー、長谷川さん(29)聞こえる? こちら宇宙、テステス』
「華麗に無視ですか」
『聞こえてますよ〜もっちゃん。お土産は月モナカでお願いしますね』
『あいよー。本日は晴天なり〜』
「雨雲ないですから宇宙は」
人の揚げ足とる男は無視です。
つづく