Snow Swallow Ntue

第三選 - 天草四郎、華の乱
「天草四郎、華の乱」
デザートの紹介

天草四郎、華の乱

〜 第 1 回 島原の風 〜

幕府のキリシタン狩りは激化の一途だった。
この村にも何人か役人が詰め寄り、村民への調査が下っている。
「ただ純粋に、我が主を愛したいだけですのに……」
この村に一人の信仰深い女・"きな"がいた。
既に村人の何人かは、女がキリシタンだと勘付いている。
──これ以上、村に迷惑は掛けられない
その夜、きなは夜逃げを決意する。

今まさに荷物をまとめていた折、
「御免」
玄関からの男の声で、きなはギクリとした。
神具の類が、今は部屋に広がっていたのだ。
「い、今しばらく、お待ち下さいませ」
震える声を抑え、荷物を風呂敷の隅に詰め込むと、
女は一呼吸おいて玄関の扉を開けた。

「なにやら慌ただしい様子でしたな」
きなの予感は的中し、訪問者は役人のようだった。
「それにこの部屋の荒れ様といったら。
 ……これから夜逃げでもするのですかな?」
役人はニタリ笑うと、女の右腕を力強く掴み上げた。

『村に売られた』きなはとっさに勘付いた。
何の確信もなく、こんな夜更けに役人が来るはずない。
「私は、我が主の下に、人も国も、そして……
 あなたをお生みになったご両親も、平等に愛しております」
「ほう? この期に及んで宗教の教えとな?」

男はいつしか、優しい笑顔を浮かべていた。
「キリシタンの女は、皆々気が強い。
 しかしお前さんは少し、ばかり珍しいの。
 大和撫子の奥ゆかしさを持つキリシタンか、ハッハッハ」
女は驚いたように固まってしまった。
すぐに八つ裂きにされると思ったから。

「脅してすまぬ、儂の名は黒光という。お前さんと同門じゃ。
 お前さんを、我が主に合わせたい。といっても、まだガギンチョだが。
 天童と名高き我が主の名は、天草四郎時貞──」

今、島原の風が吹こうとしていた。

つづく

紹介文

例えこの身は華と散っても、我が主への愛は終わらない。
大和撫子の奥ゆかしい乙女心を、どうぞ心ゆくまでご堪能下さいませ、お嬢様。
デザートの創作

レシピ

まずは材料をご紹介。
天草四郎、華の乱
洋菓子に中華菓子ときたので、今回は和菓子です。
レシピは『わらび餅(完成品)』と『納豆(おかめ納豆 金の粒)』。
わらび餅付属のきな粉は、原材料が大豆。
「大豆のコラボなくしてデザート革命なし!」と
パティシエは思案したのでした。

作り方

キリスト教といえば自由と平等ですよね。(偏見) 従いまして、わらび餅のオマケに付いてきた付属品も 全て平等に使ってやらねばなりませぬ。
黒蜜納豆
黒蜜納豆は失敗した。
黒蜜は非常に粘度が強く、納豆の粘度と融合して
納豆がガッチガチに固形化しちゃった。
それはもう、『島原・天草の乱』でキリシタンが一揆衆として
一致団結し幕府に抵抗したように、ガッチガチですとも!
はい、こじつけてます。

完成品

(BGM:東京事変より「修羅場」)
完成品
「私は、我が主の下に、人も国も、そして……
 あなたをお生みになったご両親も、平等に愛しております」
例えこの身は華と散っても、我が主への愛は終わらない。
大和撫子の奥ゆかしい乙女心を、どうぞ心ゆくまでご堪能下さいませ、お嬢様。
デザートの試食

試食開始

「臭い物には蓋をしろ」と言わんばかりに
きな粉で蓋をしてやりました。
納豆め! ざまーみろ!
ま、後で醜態をさらすのはオレな訳ですが。
完成品
完成品を改めて見ると、見た目はきな粉でごまかせてるので、
何かの罰ゲームとして使えそうです。
「わらび餅だと思ったら中から納豆がー! ギャー!」
(どっ)
みたいな。ね。
地味にジャンプネタ仕込んで同情票を勝ち取ろうとする行為は、
そろそろ止めた方がいいと思いました。
粘りすぎ
ほらほら! ね! すっごく和風!
びっくりするぐらい「甘味処」って漢字が似合う感じ!
なかなか美味しそうでしょう。
実際は味も香りも最悪ですが。
きな粉糸
オレはわらび餅が食べたいだけなのに、
なぜか、わらび餅にはネバネバの粘糸が絡んでるんですよ。
何を言ってるかわからねーだろうが
オレも何が起こったかわからなかった。
黒蜜とかきな粉とかじゃねえ、
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

SnowSwallow式納豆攻略法

見た目だけは誤魔化すことに成功したのですが
実際は味もネバネバも匂いも垂れ流しでした。
わらび餅という名の透明なマットで、
ただただ納豆がジャイアンリサイタルするだけの、
何の美味しさもない『納豆漬けわらび餅』です。
こうなりゃ攻略法はただ一つ。
王様の涙
辛いときは酒に溺れるしかない。
流し込め! ただただ洋酒で流し込め!
白ワインの酸っぱい風味で、納豆菌を打ちのめせ!
ワインでデストローイ!
ワインこぼしちゃった…
勢い余って、ワインこぼしちゃった。
しょんぼり……。
うん、アルコールの香りで納豆の匂いを封殺できたかも。
うん、ワインの酸味で納豆の苦味を封殺できたかも。
うん、余計不味くなってるかも……。
デザートの推薦

天草四郎、華の乱

〜 第 49 回 新たなる息吹 〜

天草四郎はついに、原城の本丸に自ら火を放つ。
幕府の禁じた洋酒をふんだんに巻き、
幕府へ最後の抵抗と抗議を謀ったのだった。

一時は黒光やきなの取り計らいで、
幕府軍を翻弄するかに見えたこの戦。
しかし、今にしてみると徳川の力は圧倒的であった。
こうして天草・島原の乱は、幕府軍の勝利で幕を閉じた。
キリシタン達は、この戦で多くの同門を失った。

「我が主……この結末は、主のご意志なのですか?」
あの戦を逃げ延びたきなは、
無表情に戦場の方角を眺めている。
「きな殿らしくありませんな。らしく、ありませぬ……」
黒光は深い刀傷を追いつつ、女を守り続けた。
しかし村を目前に、とうとう力尽きようとしていた。

「黒光様、起きていたのでございますか」
きなは慌てて看病に戻り、黒光の包帯を取り替える。
「お前さん……儂と初めてあった時の事、覚えておるかな?」
包帯を巻き取っていた手を止め、女は黒光の顔を見た。
男の顔からは既に血の気が薄く、青々とした表情が弱々しい。
「ご無理は体に毒でございます、今はお眠り下さい」
「そう言うな。儂は今、お前さんに説教垂れたいんじゃよ。
 して、出会った頃の話、覚えておるか?」
きなは、覚えがないとでも言いたげな表情を浮かべる。

「きな殿はあの時、己の死を投げ打ち、
 儂にキリシタンの教えを説いた……っく!」
包帯の傷口から、ドブリ…と鮮血が溢れた。
この雨で濡れ、傷口が開いたのだった。
「黒光様、もう、お止め下さいませ!」
「……構うな。昔のお前さんは、大和撫子が生きておった。
 しかし今のお前さんは、どうじゃ?
 死に怯え、己を信じられなくなり、撫子の魂も死んだか?」

その晩、黒光は息絶えた。
しかし、きなの目には光が戻っていた。
──その身に宿す儂の子を、大切に育てよ。
──それが、きな殿の信じる主の願いじゃ。
──儂と四郎様の望んだ、最後の願いじゃよ。

こうして、きなの華の乱は終わりを告げる。
それを知る者は、もうこの世に一人しか居なくなった。
──女の宿し子、本当は四郎のものであった事を。
きなの目には光が戻っていた。

おわり
完食
どう見ても「甘臭汁漏、鼻の乱」です。
本当にありがとうございました。
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