Snow Swallow Ntue

第二選 - おすましクーニャンの豆×蜜ドロップス
「おすましクーニャンの豆×蜜ドロップス」
デザートの紹介

おすましクーニャンの豆×蜜ドロップス

〜 第 1 譚 その名はクーニャン 〜

いつも清楚で、いつでもおすまし顔。
娘が歩けば、荒れた裏路地も優美な大街道に変化する。
娘が着こなせば、素朴な麻服も艶やかなシルクに変化する。
この広大な商業都市に、その娘を知らぬ者などいない。
そして、その娘を笑顔を知る者もまた、いない──

娘は貧乏な老夫婦に拾われた捨て子だった。
しかし老夫婦からは並々ならぬ愛を受け続け、
健気で心優しい娘にすくすく育った。
やがて娘は、老夫婦の代わりに働き手となり、
嫌な顔一つせず家族を一手を支えた。

「クーニャン、明日は海へ行こう。この都市以上に広大な海、一度見せてあげる!」
「いいや、明日は俺が山で美しい花々を見せてやる。ま、クーニャンには適わんがな」
「ふふん馬鹿な奴らめ。クーニャン、君が言ってた演劇のチケット、ついに抑えたよ?」

内外のいずれも美しいこの娘に、言い寄らぬ男は居ない。
休日の前ともいえば、娘の前にはこうして男達が溢れる。
我先にクーニャンの笑顔を見るのだと、
娘が喜ぶような言葉を寄せて。

しかし娘は老夫婦を思うと、
遊ぶ事など考えられなかった。
だから彼女は、周囲の好意から心を閉ざした。
初めから誰かに期待を持たせたくなかったのだ。
期待させた分、後で傷つけてしまう事を怖れたのだ。

ある日、商業都市にこの国随一の領主様が訪問した。
娘の噂を聞きつけた領主様は二人の息子のどちらかに、
娘を娶らせようと考えた。
野心が強くプライド高く、金も権力も底なしに欲する兄。
気は弱いけど筋の曲がった事が大嫌いな、無欲の弟。

果たして娘から笑顔を引き出せるのは、兄か弟か。

つづく

紹介文

本当は心優しい、クーデレ・クーニャンの笑顔を取り戻す一品。
クーニャンのいじらしい乙女心を、どうぞ心ゆくまでご堪能下さいませ、お嬢様。
デザートの創作

レシピ

まずは材料をご紹介。
杏仁豆腐と納豆
第二選目にして、早くも液体系です。
レシピは『杏仁豆腐(完成品)』と『納豆(おかめ納豆 金の粒)』。
杏仁豆腐とはいえ、所詮は『豆腐』と名付く食品。
杏仁豆腐も納豆も、名前の上では同じ大豆なのですよ。
真に納豆の威力が発揮されるのは、同じ大豆から生成された
杏仁豆腐に違いないと、パティシエは思案したのでした。

作り方

杏仁豆腐の蜜液と、納豆のネバネバ。
これがどのように融合するのか、
完成図が全く想像できません。(恐くて)
納豆は、杏仁豆腐の蜜液を潤滑油にしてかき混ぜます。
言い回しが卑猥すぎて、そろそろお嬢様が困っちゃうよ!
一通り溶き追えた後、杏仁豆腐に投下すれば出来上がり。
とろー……
透明な糸をとろー……っとクーニャンに垂れ流す図。
納豆の全てをクーニャンの中に注ぎ込んで完成。

完成品

(BGM:女子十二楽坊より「自由」)
完成品
初めから期待を持たせたくなかったのだ。
期待させた分、後で傷つけてしまう事を怖れたのだ。
本当は心優しい、クーデレ・クーニャンの笑顔を取り戻す一品。
クーニャンのいじらしい乙女心を、どうぞ心ゆくまでご堪能下さいませ、お嬢様。
デザートの試食

試食開始

あはは、想像した以上にアレな映像ですよねー!
(他人事の素振りで)
うふふ、思わず試食権を放棄したくなるのも無理ないですよねー!
(他人事の素振りで)
あの白濁
さっきのプリンセスは、白濁で色が気持ち悪かったけど、
この粘度
こっちのクーニャンは『透明な汁が糸を引く図』で対抗です。
色的なものより、糸的な方がひどく生々しい。
どうやら納豆の菌糸が蜜液に溶け込み、
とろみが増したようです。
クーニャンの全身を次第に浸食し始める納豆菌!
僕たちのクーニャンが為す術もない!
完成品
完成品の写真を見れば分かるように、
杏仁豆腐と納豆を下手に融合させると、
杏仁豆腐のおつゆが白い泡を吹き始めます。
『杏仁豆腐の蜜液を潤滑油にしてかき混ぜます』って
調子に乗ってかき混ぜすぎたスマン。
クーニャンが吹いちゃった。

SnowSwallow式納豆攻略法

見た目のアレさに、なかなか一口目が進まなかったのですが、
意を決して一口投入。
すると! これが! そんなに不味くない!
この風味は、黒豆入り杏仁豆腐のそれに近い。
納豆の豆のこりこり感が、まさに黒豆の感じ。
ぬめりも臭みもクーニャンのおつゆが洗い流して下さいます。
逆転のクーニャン、納豆を完全封殺!
クーニャンの蜜汁を飲まなければ無難にやり過ごせます。
グロテスクな見た目とは裏腹に、いとも簡単に平らげました。(蜜汁は廃棄)
クーニャン「どうしてエレクチオンしないの〜!
デザートの推薦

おすましクーニャンの豆×蜜ドロップス

〜 第 26 話 万里の女王 〜

「兄様? まだ大丈夫ではなくて? もうお終いですの?」
おすまし顔のクーニャンは、しかしとどまることを知らない。
「うう……っ! クーニャン! もう、ダメだよ……」
兄の行為を正そうと娘を庇い立てた弟も、
今では娘に片手で無惨に散らされるばかり。
「僕たちは! 家族じゃないか……!」
彼はついに根を上げて、この宴の終焉を悲願した。

金も権力も底なしに欲する貪欲な兄は
やがて娘に対し真実の愛に目覚めた。
富も覇権もハーレムも棄て、娘に人生を捧げる覚悟だった。
二月前、領主様の遺言を聞くまでは。

『この娘は、おまえ達と血の繋がった……わしの実の娘じゃ……』

その日から兄は覇気を失い、痩せ痩け、偽りの愛に彷徨った。
ある頃、ついに兄の中で何かの糸がプツリと切れた。

ベッドはギシギシとしなり、三つのシルエットが闇に踊る。
「キミは若いね、まだそんな事を気にして。
 いいじゃない。家族だから何の隔たりもなく、一つになれるのよ?」
「違う……ぼくも兄も、そんなの望んでなんか無い!」」
「キミ達は私のMASTER。私の尊い主人たち。
 そして私はキミ達のHONEY。
 いつまでも甘い花の蜜でいてあげる。
 ……私達のお兄様が教えて下さった言葉よ?」

精神(こころ)が壊れてしまった兄に返事はない。
精神(こころ)が生きている弟も、この先は分からない。
兄弟は既に、クーニャンの手のひらで踊らされていた。

「……分かったら、もっと我慢なさい!」
そう叱咤すると娘は、兄弟に冷たい微笑みを投げた。

この広大な商業都市に、その娘を知らぬ者などいない。
そして、その娘を笑顔を知る者もまた──

おわり
杏仁豆腐はダイエット食品として流通しています。
納豆とダブルでヘルシーじゃないですか。
不味くはないし、健康にはいい。
お嬢様もクーニャンのように、おすまし顔で微笑すればいいと思います。
本企画にマッチする奇跡のデザートが、ここに爆誕!
Copyright Snow Swallow (Yukimi) All by reseived.