「すぐ役に立たない」=「いろんな役に立つ」 H23,6-3
たまたま本屋で目にした「日経ビジネス Associe」という雑誌の「仕事に効く 数学入門」という特集が組まれていました。表紙には「文系人間も今こそ!思考力、交渉力・・・ビジネスの武器を増やす数学入門」などという言葉も添えられていました。
純粋な数学であればあるほど、本来は「○○に効く」という薬のようなキャッチフレーズは本質から外れてしまうとも思うのですが、こうしたアプローチも社会人が数学を再認識する一つの道としては大事なのでしょう。
さて、みなさんの多くはまだ社会人になっていないのですから「仕事に役立つ」という視点ではなく純粋に「数学」としての面白さに気が付いていってより熱心に数学(算数)に取り組んで欲しいところですが、これも全国的な傾向としては「成績のため」「受験のため」に算数や数学は勉強するもの、というのが現状です。もっとも「目先の利害」で行動するように後ろ姿で仕付けているのは大人の責任でもあるのですが・・・。
さて、この雑誌の特集の冒頭にこんな文がありました。
皆さんに一つ質問です。血液が流れる血管の写真を前にコメントを求められたら何て答えますか。「血管の写真です」?見れば分かることですね(笑)。「川の流れに似ています」と答える人が、数学的な頭の持ち主なんです。
数学的に考える人は、思考をいろいろな方向に持っていけるんです。(中略)先ほどの例で言えば、血液の流れという枠から外れて、それと似たような動きを見せる川の流れに行き着くわけです。ここで働いているのはアナロジー(類推)の力、つまり思考をジャンプさせる力です。根底にあるのは遊び心。物事を少し崩して考えて、思考を違う場所に飛ばすイメージでしょうか。
(タヌキ注 もちろん「川の流れ」以外のものと結びつけて連想したらダメという意味ではありません)
ここに書かれている事は、今まで私がよく使ってきた言葉でいうと「類化性能」というものと近いです。一見違ってみえる物事同士の根底に流れる本質を見抜く力ですから。そしてこの力は数学に限らず「人生の課題を自らの頭を働かせながら乗り越えていく能力」そのものに直結します。
皆さんにとって最も関心の深い「テスト対策」を敢えて例にとれば、習った通りの問題なら解けるけど、問題を少しでも変えられたらどう解いて良いのか分からなくなる、というタイプの人は、たとえ学校の定期テストの得点が満点に近くても「数学」をやっているとは言えないということになります。
だからといってそれは「応用問題」が解けなければいけないというのともちょっと違います。極端に言えば「まだ習っていないことでも、今まで習ったことをもとにして、もしかしたらこうやればいいのかな」と考える力です。それも「3桁の筆算をもとにして4桁を・・」というのではなくて、できるだけ見かけは違っているものの共通点を直観できる力が大切です。
私が教える時には、そうした力を伸ばしたいと考えているのでよくそうした事に通じる問いをするわけですが、案外「数学はずっと嫌いだった」という人の方がパッと見かけが異なるもの同士を結びつけることができる場合があります。変に常識に囚われないからでしょうね。
できれば小学生の時からそうした「類化性能」を意識した勉強をして欲しいところなのですが、もう既に大きくなってしまったという場合でも決して手遅れではありません。
大人になって社会に出ていろんな経験を通して「やっぱりホンモノの数学の力が必要」と感じ勉強しなおす人が実際に多いからこうしたビジネス雑誌の特集も組まれるわけです。
「思考のジャンプ」と「遊び心」-@ H23,6-4
先週引用した数学の本質に関する記事の中に「アナロジー(類推)の力、つまり思考をジャンプさせる力です。根底にあるのは遊び心」とありました。
それの具体例として例えば「私のお腹が何に見えるか」というのがあります。今も決して痩せたわけではないですが、病的に体重があった頃は今より25キロ以上ありましたからお腹はもっと突き出ていました。そのために担任した子だけでなく廊下を歩いていると様々な学年の子ども達からからかわれたものです。
それだって、私のお腹のどういった事からそうした連想をしたのかを分析していくと、ちゃんと数学的になります。例えば私のお腹をツンツンと突いた『感触』から「プリン・ゼリー」・・・これを感触と言わずに『弾力』とすればさらに理数的になりますね。ごろんと横になって寝ているときの床からの『高さ』に着目すれば「富士山みたい」とかなるし、『形状』に着目すれば「お餅・満月・タヌキ」とかになります。
このように見かけはちがっていても貫いているものを図形的・数式的に表現していくと本格的に数学となっていくわけです。
日常のさりげないやり取りの中にも無意識のうちに数学的な発想が隠れていることがあります。
先日もある授業で「かさ=体積」のことをしている最中に膝の怪我に貼ってあった絆創膏の血の面積が広がっていて「出血の量が増えたことが面積からも分かるね」という話になりました。そんなことが分かるのは当たり前と思うかもしれませんが、これも理屈をはっきりさせて考えていくと「次元の転換」という数学的な処理をいつのまにかしているわけです。
つまり「出血の分量」というのは本来3次元ですが、絆創膏のガーゼの厚さがほぼ一定であることからその量は面積に比例する・・・しかもガーゼの厚さが薄いので体積を求める公式での高さはゼロに近くなる・・・つまり面積の数値が体積の数値に近似してくるわけですから、出血量の変化が面積により反映しやすくなっていると言えるのです。
そんな理屈の世界を面白がれるかどうかが、本当の意味での「学力」と最も直結することなのですが、「得点力=学力」という世間の歪んだ常識によって、こうした感覚の豊かな子が「解き方の丸暗記を拒絶する数学(算数)嫌いの子」というレッテルをはられがちです。これはとっても不幸なことです。
最近、高校生たちとよく話題になっているアニメでも、数学的な事からヒントを得ている内容のものがたくさんあります。そうした作品に対して「学問的には厳密さを欠く」という批判もあるようですが、そんなことを言いだしたら、例えば歌舞伎でも時代劇でも時代考証からいえば滅茶苦茶なものはたくさんあります。だから大事なポイントは「遊び心」となるわけです。
学問的な厳密さは欠くかもしれないけど、そこから刺激されたことから想像力の翼を広げて周囲とやりとりできること・・・その積み重ねこそが、今も将来も充実した日々へとつながります。 まして最近話題にしている「パーソナルリアリティ」と「量子論」との関連などは、私の所属している児童の言語生態研究会で何十年も研究してきた「意識の転換」「世界定め」等々のことと直結していて、大真面目に受け入れてみればみるほど人生を歩んでいく可能性を大幅に広げてくれます。
少し前に話題になっていたアニメでのキーワードである「パラレルワールド」というのも、量子論では少数派でありますが、少なくとも意識世界の中では自由自在に並行している各世界を飛び交うことが可能です。
そうしたことも「遊び心」をベースにしながら続けていくうちに本当に違う人生展開になってしまうかもしれませんよ!
「思考のジャンプ」と「遊び心」-2 H23,6-5
思考をジャンプさせる練習を遊び心いっぱいに練習するのに昔から日本人がしてきたのが「言葉遊び」・・・最も簡単なのは駄洒落のようなものです。私の学生時代の友人にも「急行が急降下してきた」等々、いつも駄洒落を連発していた男がいたのですが、やはりただ者ではない人生をその後も歩んでいます。
こうした言葉遊びが日本人の豊かな感性に裏付けられた発想力や思考のジャンプ力(類化性能)を高めるのに重要な役割を果たしてきたのです。
そしてその背景にあるのが「言霊信仰」。言葉には神秘的な力が宿っていて、現世での生活に強い影響力を持っていると信じられていました。もともと中国から漢字が伝わってくる前は文字を持たなかったのも、文字を発明する能力が諸外国の文明発生地域と比べて劣っていたというのではなく、言葉は音声であるのだから文字として書かれたものには意識が向かなかったというのが事実のようです。
その名残が日本人の生活には今でもたくさん残っています。たとえば「縁起の悪い言葉」などがそうですね。結婚式のスピーチなどには「禁句」というのがたくさんあります。病気のお見舞いにいくにもどんなに綺麗な花でも鉢植えはタブー。「根付いている」ということが入院の長期化を引き起こすというわけです。
こうしたことについていろいろ調べてみるといいと思います。どんな言葉が喜ばれ、どんな言葉は場合によっては禁句なのか、というのは、かつてはきちんと世代間で伝承されたのですが、最近は知らない人がかなり増えてきています。でも口には出さなくても気にする人はまだまだ多いですから。
これを言葉遊びの体裁をとって言語感覚の訓練にしたのが「かけことば」・・・「○○とかけて△△と解く。その心は・・・」というやつです。あまりに普通につながる言葉をもってきたのでは駄作と言われてしまいます。かといって独り善がりでもダメ。聞き手がエッ?と一瞬思っても「なるほど!」と思えるようなものが優れた作品と言えるでしょう。
例えばネットにはこんなのが紹介されていました。回答はあくまでも例です。
*「テレビ」とかけて「厚化粧」と解く
その心は、「近くで見てはいけません!」
ただ中には読み手にある程度の知識や教養がなければ何が面白いのかがよく分からないものもあります。
* 「沢庵漬」とかけて、「四十七士の討ち入り」と解く。
その心は「大石(内蔵助)がなくてはできない」
*「将棋指し」とかけて、「寒中の素足」と解く。
その心は「おお冷たい(王詰めたい)」
*「内閣」とかけて「暴走族のバイク」と解く
そのこころは「いつも改造の話がでています」
☆では練習問題です。もちろん模範解答を探そうという構えではなく、自由な視点や発想を大事にしてください。
*「剣道」とかけて「うまい中華そば屋」と解く そのこころは 「 」
*「腐った卵」とかけて、「夜道」と解く。 その心は「 」
*「アルプスの少女」とかけて、「さびれて誰もいない寺」と解く。 その心は、「 」。
*「枝豆」とかけて、「木刀」と解く。その心は、「 」