イメージ作文について
イメージ作文というのはあまり聞き慣れない作文の形式だとおもいます。簡単に言うと、自分のイメージの世界をそのまま書いていく作文です。
もちろん普通の作文であっても内容を浮かべて書いていくという点ではイメージを書いているわけですが、大きく違うのは、作文全体の構成や表現の工夫など「知的な言語操作をはじめに考えないで書く」のが特徴の一つです。
手順としては『題名』をみて、真っ先に浮かんだ事をいきなり書き始めるのです。そして次々とイメージが伸びていくままに書いていくのです。ですから純粋なイメージ作文に近いほど最後がどうなっていくのか書いている本人にもわかりません。普段は、真面目な子が自分でも信じられないくらいの内容をいつの間にか書いてしまっているということもあります。
ですからイメージ作文の評価は一般の作文とはだいぶ違います。時には「こんなふざけた作文を書かせてどういうつもりか!」と厳しいお叱りを頂戴したこともあります。確かに従来の「きちんとした文章」という観点からは外れている作文が多数出てくるのは事実です。
イメージ作文はねらいそのものが、通常の作文とはちがいます。詳細は関連の書籍に譲りますが、表現されている内容がどんなに現実離れしていようが、大人の尺度からみてふざけていようが関係ないのです。それは心の奥底を探る心理カウンセリングの発想と似ています。何を書いてはいけない、という禁止はありません。あるとすれば、浮かんできたイメージを「こんなことを書いたら怒られるかな?」「笑われるかな?」と勝手にねじまげたり書かなかったりすることです。
何を書いたか、という内容は実はあまり問題ではありません。どんな方向にイメージが伸びていくのか(そのことを「イメージ運動」と呼んでいます)、それが無意識にどうその子の成長や人間形成に影響しているのか、そこに大人たちの忘れかけている大切なものが隠れていないか、それを問題にしているのです。
最近の「キレる子供」でよく専門家から指摘されるのは、そうした子供ほど自分の気持ちを言葉に出来ない、だから言葉に出来ないモヤモヤが心にたまり、ある日爆発してしまう・・・という事です。そうした対策として小学生からイメージ作文(あるいは本音作文)で自分のイメージ世界の動き、心の動きをしっかりと追いかけて文章にしていく経験は大変有効です。
それは大人にとっても子供の心と触れ合うきっかけとなります。「この大人は自分の書いたものをありのまま受け止めてくれる。」と感じてもらえることがこれからの時代、ますます大切になると思います。
誤解して頂きたくないのは「ありのまま受け止める」という姿勢が子供の至らない点をそのままにする、という姿勢とは違うことです。私は作文や休み時間ではイメージ世界を尊重していましたが、こちらの感じていることも率直に言わせてもらっていました。結構口やかましい(普段の礼儀にはうるさい)ところはありましたが、みんな素直に大人としてのこちらの考えにも耳を傾けてくれていました。
自分の心の動きをつかまえる練習は『頭の使い方』を身に付ける上でも不可欠な経験となります。イメージ作文が苦手だった子が目覚めたと同時に算数や数学など理系の教科でも成績が急に伸び始めるというのはよくある事です。
しかし本当のねらいは、自分だけのイメージ世界を自覚することです。それが新しい時代の教育の柱である「個性の自覚、自分らしさの追及」そして自律(自立)へとつながる道だからです。
参考文献 作文に関して 「小学校国語の授業はこうする・・・下巻 用具言語編」
第3部作文カリキュラム試案(学芸図書)
・イメージ世界に関して 「子ども文化の原像」第2章 子どものイメージ(日本放送出版協会)
・ 児童の言語生態研究会 雑誌
など。