☆「やくそくをはっきりとさせて」小学生〜中学生
小学生のみならず、中学生になっても「速さに関する文章問題」が出てくると、それだけでイヤーな顔をすることがよく見られます。実社会に出ても割と使える考え方にしては定着していません。
その大きな原因は「公式丸暗記」にあるようです。
導入「時速のやくそくってなあに?」
速さが苦手と自信を持って答える子に、先ず聞いてみるのがこの質問です。
回答トップ3
6年生でも中学生でもだいたいこんなパターンでした。
まず「公式を一度忘れてみよう」と投げかけます。大抵は「それじゃ出来ないじゃない」といい返されますが、気にしないで進めます。例題としてよく出すのは「時速100キロで3時間走ったら、何キロ先まで行ける?」です。苦手意識の強い子は「わかんないよ。速さは苦手だもん」と最初からあきらめてしまうか「あれ?割るんだっけ?かけるんだっけ?」と迷っています。
ここで「約束の確認」をします。「時速100キロっていうのは、そのスピードで進んだら1時間に100キロ進むスピードですよ、ということだよ。」たいがいはここで「初耳だ」という顔をされます。実は時速とは「単位時間分の道のり」であるのに「時速」という全く別のものがあると思い込んでいるのです。
「それじゃ、時速100キロで1時間進んだら何キロ?」ここで恐る恐るでも「100キロ?」と答えてくれればしめたもの。「じゃあ、3時間だったら?」「300キロ。」「4時間だったら?」「400キロ」「今、何算して答えを出していたの?」「えーと、かけ算」「公式を気にしてた?」するとハッと我にかえって「えっ?ああ、忘れてた」「でも出せたでしょ。」「うん!」
こんなやりとりを図にしながら、「3時間の道のりだったら1時間分の道のりの3つ分だからかければいい。それが 道のり=速さx時間 という公式になった、ということをはっきりとさせます。
逆に「100キロを4時間で進みました。時速は?」と聞きます。図の意味がわかった子なら「じゃあ、ひとつ分を出すんだから割ればいいの?・・・25キロ?」と答えてくれます。それから公式を確認するわけです。他の計算も同様に図示の仕方を「やくそく」に沿って考えてやっていきます。
そうして考え方がはっきりとしてから、実際の文章問題をやってもらいます。公式を思い出そうとあくせくしなくても解ける自分に自分でビックリします。
で、もしも迷ったら「やくそくは何だっけ?」と原点に戻ってもらいます。
私がここで重視しているのは、「公式を意識しなくても、自分の内側から計算方法が湧き出てきた」という実感を持ってもらうことです。そしてそんなことが出来るようになったのは「原点に戻ってやくそくを確認したから」ということを、しっかりと頭に焼き付けてもらうことです。
この姿勢が、勉強だけではなく人生の基本でもあると思っています。それが「やくそく」の授業での最終的な狙いです。
数直線でかけ算や割り算の図を描いてもらいます。例えば「20x3=60」の図です。それからどこか一個所を空欄にして、ここを求めるにはどう計算すればいい?」というやりとりをします。具体的な物を通してではなく、なるべく数の操作だけでやっていくのがコツです。
それから改まって「時速20キロで3時間進みました。何キロ進みますか?っていう問題を図にしてやってごらん」と投げかけます。
これで「さっきやっていた問題の図と同じじゃない!」と気がつけるようになれば、「あっ!速さの問題が出た。嫌だな・・・」とか「あれ?公式何だっけ」などという余計なイメージには邪魔されません。抽象化されればされるほど余計なイメージ思考や感情思考が働く余地がなくなるからです。
最近学習会に参加するようになったペンネーム「まゆみ'98 」さんとのやりとりです。
つめこみ式の勉強ばかりして全部暗記で進めている人の中には「天才と馬鹿の間(はざま)のような人が多そう。」というのでさらに聞いてみる。
「自分はそういうタイプじゃないと思うの?」「はい。」「それは自信を持って言えるの?」「はい。」と大変歯切れのよい返事。「そういう根拠で?」「・・・暗記力はあるとは思うんだけど、大事なことでも忘れてて・・・テストの最中にやり方を思い出して、自分で考えてやったり・・・そういうので詰め込みじゃないな、って自分で安心したり・・・。」
「じゃあ、いつもみんなに聞いてるんだけど、時速の約束って何?」「えっ?・・・出ません。出ないんです。」「じゃあ、速さの問題てどうやって解いてるの?」「だから、絵描いて・・・それで時間がかかって終わらないんですよ。」「例えば時速100キロで3時間進んだら何キロ進む?」「300ですか?」「どうやって絵っていうか図をかく?」「(身振りを交えて)車をかいて、100って書いて、ここが1時間ってやって、それを3つかく。」
私はこういう態度が大事だと思っています。「新しい学力観」で求められているのもこういう姿勢ですよね!
分かりやすそうで苦手という子が多いのが中1理科の「圧力」です。やはり「単位量あたり」からの「やくそく」があいまいなまま、公式だけ暗記しようとしている場合が多いようです。
中学生なのだから抽象思考をさせなければならない、という意見はもっともなことなのですが、「単位量あたり」の発想があいまいな時には、敢えて具体的な形にしてしまいます。
例題
今、1平方センチのマスに一人ずつ小人さんがいます。底面積が10平方センチメートルで、重さが10キログラムの直方体の形の石をみんなで支えています。
1、この石を何人の小人さんで支えているでしょう。
2、一人がどのくらいの重さを支えていることになるでしょう。
3、この石の向きを変えて、5平方センチメートルの側面を下にして支えたら、何人の小人さんで支えて、一人どのくらいの重さで支えることになるでしょう。
という例題を通すと、わりとあっさりと「どうして重力を面積で割るのか」納得してくれました。
余談ですが、一人の子が「先生、0.5の時は小人さんはどうするんですか?」と突っ込んできました。「まさか、半分に切ってしまうんじゃないでしょうね。」するとすかさず別の子が「片手で持ってることにしたら。」「ああ、そうか。」さすがに0.1ではなどのつっこみまではエスカレートしませんでしたが、こんなやりとりが自由にできり雰囲気も大事にしたいと思っています。
いろんな中学に通っている子を相手にしているのですが、理科の先生によって「単位」をただ暗記させる方と、時速や何かの単位と合わせて「単位が公式を表しているんだ」と教えている方がいるようです。
担当している実態にもよると思いますが、私はどんどんそういう話も紹介していってしまうタイプです。