「イメージ世界と現実世界のズレ」


最近の子供達の言動をみていると、自分の思い描いている理想の通りに物事や他人との係わりが進んでいかないと過剰なストレスを感じたり、周囲に対してマイナスの感情をためていってしまうようです。そして他人が自分を思い通りにしようとすることに対しても強い反発を抱きます。

「思い」と「現実」は必ずずれる、また相手にとって良かれと思って自分が必死にやったことさえ、相手を深く傷つけてしまうこともある。そうした事が当たり前に起きるのに、それを意識しない。だから感情のやりとりがちぐはぐになってしまっても、お互いにかみ合わない原因がわからないから「自分は何もしていないのに、あいつは!」というままで解決には向かわない。

そんな事がこの学習から自覚されていけば、お互いの気持ちや本来の良さがもっと分かり合えて、感情生活が豊かになるのではないかと考えました。


平成10年度小4−中3

小学生向き課題「自分のシナリオと実際のズレ」

中学生向き課題「シンデレラ原話より」

(特に中2に対しては光村国語「六月の蝿取り紙」の準備課題として)


小学生向き課題「自分のシナリオと実際のズレ」

シナリオとは劇や映画などの脚本のことです。そこに書いてある通りにお話が進んでいくものです。それと同じように「毎日の生活の中」でも、人間は自分の頭の中で「こうすればきっとこうなるだろう」とシナリオを思い描きます。

でも実際の生活では自分が思い描いた通りに物事は進みません。例えば「このギャグを言えばみんなに受けるぞ、と思っていたら現実にはしらけてしまった」などもそれにあたります。

そんな思い出を書いてください。


*(小5)せっかく「遊ぼう」って誘ってあげたのに、今日はダメっていわれて遊べなかった。

*(小5)お年玉がもっとたくさんもらえると思っていたのに、ちょっとしかなかったからケチって思った。

*(小6)宿題もちゃんとやって、テストでもいい点とったから、絶対欲しかったゲームを買ってくれると期待してたのにだめだったから勉強してそんした。


中学生向き課題「シンデレラ原話より」

1、シンデレラの原話では、靴が履けない姉の足を何とかして履かせるために母親がナイフで削り取って・・・という場面があるそうです。その時、お母さんはどんな思い(イメージ世界)でいるのだと思いますか?

2、それに対して現実に姉達はどうなっていくでしょう?

中2用「六月の蝿取り紙」の準備課題

3、お父さんとお母さんの俳句に対するケンカの原因を「イメージ世界」と「現実世界」に対する意識の違いから分析して説明しなさい。


*小学生の中に、中学生向きのこのプリントを目にして、どうしてもやりたいという子供達がいたので書いてもらいました。(何人かの分が別の書類にまぎれて行方不明です。出てきたら追加します。書いたのに載っていない人、ごめんなさいね。)


(小4キルルさん)
1、きっとお母さんは「これがはければ王子様のけっこん相手になれるから、
いっしょうけんめい足をけずった。

2、だけどシンデレラがスポって入ったから「この人がシンデレラ」って言ってシンデレラが王子様とけっこんしたと思うよ。きっと。ハッハッハッ。シンデレラがけっこんしたから、がっかりした様子。手当てが大変ですなぁ。


(小6ヒヨッ子さん)
1、早く王子と結婚して幸せにしてもらいなさい。
結婚してもらえばあなたたちは王女よ!(2は時間がありませんでした)


(小6ムラ仙人君)
1、お母さんは楽になっていろいろな物が買えて
一石二鳥。お母さんはこれでみんなをしもべに出来る。シンデレラを捨てることが出来る。

2、くつがはけたってお母さんがやったことがわかるし、お姉さんはこんなになっていてもうれしくない生活


(小6タカピー君)
1、王子と結婚させて自分の生活が楽になるように、このくつにはまるまで
我慢しろ、って感じ。私は一生幸せに暮せる、そういうことを考えながら削り取っている。

2、包帯を姉たちはつけながら毎日「痛い、痛い」言っている。くつを履けたとしても足を削ってくつをはいたと王子様が聞いて結婚できなくなる。今後は足を痛めて不自由な生活で苦しんでいる。


(小6うみ子さん)1、姉と王子様が結婚すればその財産は自分のものになると思ったから。子供も楽なくらしになるし、自分も楽しい暮らしになる。

2、暴れて泣き叫んでしまう。そんな生活は自分ではないと思って悲しい思いを今日も送っていると思う。


中2

(茶亜実胃さん)
1、お母さんは姉さんたちにくつを履かせて王子様と結婚させて自分も裕福にくらそうと
たくらんでいる。自分の利益を一番とする。

2、姉さん達は性格が悪いのですぐに離婚した。それに足の指を切られたので歩けない

3、蝿がいると店の評判がすごく悪くなるという母の考えと、文学が好きで自分が乾物屋をやっていると言われることが嫌いな父の考えがくいちがってできたケンカ



(具利院さん)
1、姉達はそのくつを履きたいという願いが
あると思ってお母さんはその願いをかなえてあげたかった。結婚して幸せになればいいと思った。自分も鼻が高くなる

2、姉達がそのくつを履けたとしてもシンデレラとは違う人間なのであまり幸せではない。足がボロボロで痛い。

3、父は本当のことを書いたまでだけど母は蝿がいるということをみんなに知られたら客がこなくなってしまうと思ったから。自分の好きな文学をバカにされたように思った。



(Aさん)
1、
本当はこのようなことをしたくないが、でも体で行動にあらわしている。自分のかわいい娘なのにこんなことをするのはくやしいけれど自分の娘を幸せにしたい

2、お母さんを恨みはしないが心の傷となっている。

3、お父さんは俳句が心の中、自分自身では自分なりにいいと思い気に入っている。でもお母さんは父の俳句を自分の店や自分のプライドを傷つけていると思っている。だから母はこの俳句を気に入っていない。
父親は
自分だけの世界で自分のが良いと思っているが母親は今、現実のことを考えている。
父親はこの俳句をみんなに発表すれば自分がみんなから信頼され、いい目で見られると思っているが、母親はこの俳句を発表されたら自分達の店に客が来なくなったり客から変な目で見られると思っている。

(Bさん)
1、お母さんは
自分のことしか頭になくて自分がキラキラ宝石をつけたくて姉たちの足を削った。

2、姉達の足は骨まで見えてグチャグチャで靴がはけても王子と結婚できても王子はうれしくない。それに王子は顔を見たらダンスパーティーの時の人と違うんだから別れると思う。だからどっちにしろ幸せにはなれないと思う。

3、お父さんは自分の俳句にはインパクトがあっていいと思ったが、お母さんはそれを常識的に考えた。蝿はきたない生物だから食べ物につくとその食べ物がきたなく感じる。

(小学生への課題にも答えてくれました。)
みんなが笑ってenjoyしてるから「よしここで一発ギャグかましたる」とか思って言ったらシラケてフォローすると、それはギャグよりつまらないのにみんなフォローで笑う。
何故か寂しくなる。



(Cさん)
1、フフフ、娘が王子様と結婚したら
わたくしは億万長者よ。オホホホホ。このくらいかしら、いやもうちょっとここらへんが、ジョリジョリ・・・。

2、姉達はじたばたしているが押さえつけられて切られていると思う。家来たちからは反感をかう

3、お父さんは受けると思ったし、お店が明るくなっていくと思ってありのままを書いた

(小学生への課題にも答えてくれました。)
マンガでこうなると思っていたらぜんぜん違う結果になって
つまらなかった。お年玉がへっていた。



(Dさん)1、娘が痛いとかいう気持ちを考えていないと思う。娘の幸せor自分の未来の優雅な生活を
夢みてやっているのだけれど、別の意味で娘の気持ちを考えず行動しているような気がする。

2、めちゃめちゃ痛いし、もしも結婚できてお金の面では幸せでも二人の間とか人間関係では不幸な生活ではないか

3、母はあの俳句がみんなに知られた時を現実的に考え「食べ物を扱っているのだから」と思っているが、父はその現実的な事を意識せず「おれの俳句はよいから出す」との違い。

(小学生への課題にも答えてくれました。)
中学入学前は部活は友達も沢山できて自分自身を磨ける、とても楽しい所、又いっぱい自由に練習できたりすると思っていた。それが実際入部してみて・・・・(具体的な内容は省略します)・・・
楽しくなるはずの部活がつかれきった部活になってしまった。


中3

(ボクソンアンリュー君)1、姉達を幸せにしたい一心でしてしまった。姉たちの気持ちは関係なく姉の名誉のためにしたと思う。

2、たぶん幸せな人生は送れないと思う。本当の愛はつかめないと思う。・・・お互いの気持ちが分かり合えないから


(ジュリエットさん)

1、そのお母さんは自分の娘が王子様と幸せに暮せるように将来のことを考えて足を削った。また、自分がお城との関係を作りたかったがために自分の娘の足を削って王子様と結婚させようとした。

(自分の意見を書き足していいですか?と言って)
どちらの考えにしても自分の子供の体を大切にしてほしい。

2、現実では泣きながらどうしてそこまでするのか」と母を憎んでしまう。また王子様の方が「あの時の人ではない」と気づいてしまうから本当に幸せにはなれない。もし気がつかないで結婚できたとしても、今までシンデレラをいじめてきたようなそういう性格の人だから嫌がられてしまう。


イメージ世界に入って判断し、夢中で行動してしまっているほど文字どおり「夢の中」ですから現実は見えません。これが人間にとっては大きな武器でもあるわけですが(参考「つりばしわたれ」の授業記録、まだ工事中です。出来上がったらリンクをはります)このように、マイナスに働いてしまうこともたくさんあります。特に子供の段階はまだまだイメージ世界が優先される傾向にあるのでなおさらです。そうしたズレには早い段階から気がつけることができていました。


この原話は現代の教育問題にも多くの示唆を与えてくれています。親だけの問題ではありません。

*教師や地域が「子供のために」と考えて行っていることが、実際には本当に子供達の幸せになっているのか?かえって苦しめ傷つけているのではないか?(無論本当に本人のために敢えて試練を与える場合もありますし、それが本当に本人のためということもありますが)

*大人達の「思い」の本音がどこにあるのか?

これらのことについても子供達の回答は鋭くついている部分があちこちに見られました。中3のジュリエットさんが「どうしてそこまでするのか」と姉の気持ちを書いていますが、何をどこまで子供達に要求するのか、それはどうしてなのか、という厳しい吟味が我々に必要だということを改めて感じさせられます。



同じくジュリエットさんが「そういう性格の人だから」と記述している部分も現代人への大切な課題ですね。つまり「形だけを整える事が本当の魅力になるのか?」ということです。
このように本来の狙い以外の課題・・・教育問題、現代社会の問題、人生の問題・・・などへの問題提起や解決へのヒントが子供達の回答の中にたくさん表出しているのに驚かされました。