誌上公開 ドラマ・演劇ストーリー

昭和63年度演劇 夢はともだち」


人間の世界。下手よりバクのおばあさん登場。手にはたくさんの書類。(これは夢を失っている子どもたちのリストや作文である)疲れきっている。


おばあさん「ああ、まだこんなに夢を失っている子供達がいる。・・・たしかこのあたりにも太郎と花子という夢を失ったきょうだいがいると聞いたんだが・・・」
せき込みながらガクンと膝をついてしまう。

ナレ−タ−「みなさんはバクという動物を知っていますか?バクは昔から人間の悪い夢を食べてくれると言い伝えられています。このバクのおばあさんは人間の子供達が大人になるにつれて夢を失った子供達が、また大きな夢を広げられるように手伝ってあげることが仕事でした。」

上手より太郎と花子登場。手には虫捕り網。頭にはむぎわらぼうし。
太郎「空気も海もどんどん汚れていっちゃうね。」
花子「お兄ちゃん、網がやぶけちゃってるよ」
太郎「いいんだよ。こんなのもう使えないんだから」
花子「それもそうだね・・・。また海や山をきれいにできないかな」
太郎「そうだね。・・・でも・・・どうせ無理だよ・・・」


バクのおばあさん、力をふりしぼって立上がり、優しい顔で
おばあさん「ねえねえきみたち、太郎君と花子ちゃんだね。おばあさんと一緒に夢の世界へ来ないかい?」
二人「夢の世界?」
おばあさん「そう。緑も一杯。チョウも一杯飛んでいるよ。おばあさんについておいで」
ついていく。

ナレーター「おばあさんはこうして子供達を夢の世界へ連れて行き望みどおりの夢を少しの間かなえてくれるという不思議な力をもっていました。このようにおばあさんはたくさんの子供達を夢の世界へつれていき、また夢が広げられるようになると元の世界へ戻していたのでした。」


数日後。バクのおばあさんの部屋。おばあさんは病気で寝込んでしまっている。周囲には孫のバク太郎、バク花子をはじめとしてお医者さんやバクのリ−ダ−たちがいる。
バクA「おばあさんはもうだめかもしれないよ」
バクB「だからあれほど働くな、って言ったのに・・・」
バク太郎「おばあさん、病気なの?」
バク医者「絶対安静だ。これ以上『夢の力』を使わせないように」
バク花子「どうして病気になっちゃったの?」
バクA「おばあさんは働き過ぎたんだよ」
バク太郎「働き過ぎ?」
バクB「そう。我々バクの仕事は人間の悪い夢をなくして、いい夢を持たせることだ。そのために『夢の力』を使うことはとてもエネルギ−を使うことなんだ。それでおばあさんはエネルギ−をお使いきって病気になってしまったんだよ。」

バク太郎「どうすれば治るの?」
医者「もう手遅れかもしれんが一つだけ方法がある。人間のいい夢を見せることだ。」
バク太郎「な−んだ。そんなの簡単じゃないか」
バクB「それがそうでもないんだよ。(部下に)人間の子どもの書いた夢の作文を読んであげてくれないか」
部下「はい。
僕は大きくなっても大人にはなりたくありません。どうしてかというと家族みんなのために会社で働かなくちゃいけないし、お年玉もあげなくちゃいけないからです。
私は将来幼稚園の先生になりたいからです。子供達と遊んでいるだけでいいから楽だと思うからです。大きくなったらお金持ちになってファミコンを買ってマンガを買ってケーキを買って・・・」

バクB「もういい。」
おばあさん、目をさまし無理に体を起こそうとしながら
おばあさん「ああ、まだそんなにも夢を失っている子供達がいるのか・・」
医者「おお気がついたようだな。まだ起きたらだめだ」
おばあさん「行かせておくれよ。どうしても行きたいんだ」
医者「いかんいかん。これ以上夢の力を使ったら命がなくなるかもしれないんだぞ」
と寝かし付ける。

バク花子「でも、人間の子供達の中にもいい夢をもった子がきっといると思うな。」
バク花子「うん。だから僕たち、これから探してくるよ。」
医者「おばあさんは今にもあぶないよ。早く夢のある子をさがしてきておくれ」
二人、リストや作文を受け取って人間界へ。




人間界。バクきょうだいがやってくる。
バク太郎「こんなに天気がいいのに誰も外で遊んでいないよ。」
バク花子「うん・・・」
バク太郎「(書類をパラパラさせて)でも、こんなに夢をなくした子どもたちがいるんじゃ仕方がないかもね。」
バク花子「おばあちゃんもきっと大変だったんだろうね。」

木陰に座り込んでマンガを読んでいる子供達がいる。
バク太郎「あっ、いた。」
バク花子「まずあの子たちに聞いてみよう。」
二人が近付いて「ねえ」と話しかけるがみんな知らん顔。それでも声をかけると、やっと一人が面倒臭そうに(やりとりの中、子どもたちは一度もマンガから顔をあげない)
子ども1「何よ」
バク太郎「あなたたちの夢ってなあに?」
子ども2「ゆめ?」
バク太郎「そう、将来の夢」
子ども2「そんなのあるはずないでしょ」
子ども3「馬鹿らしい!」
子ども1「そんなの幼稚な子が考えることよ」
子ども3「そうよ」
子ども2「だいたいしょうらいなんてきまっているじゃない」
子ども1「わたしたち、頭だってよくないし、いい会社にも入れるわけないわ」
子ども2「だから普通の生活を送るだけじゃない」
子ども3「マンガを読むじゃまよ。早くあっち行って!」
諦めて二人は去る。
バク花子「なんか・・・へんだね・・・」

別の三人組と会う。また同じように尋ねると・・・
子ども4「そうねえ、私は大きくなったらお姫様になりたいわ!」子ども5「私は世界一のバレリーナになりたい!」
子ども6「世界一になってお金をたくさん儲けるの!」
バク太郎「やっと夢のある子がいた!ワ−イ!」
二人は飛び上がって喜ぶ。
バク太郎「僕たち、あなたたちの夢をかなえてあげる!」
子ども4「(疑い深く)本当?」
子ども5「うそついたら承知しないからね!」
バク太郎「うん。僕たちの後についておいでよ」

(暗転)



ナレ−タ−「二人は喜んで子どもたちをバクの国へ連れてきました。」
二人、おばあさんの部屋へ。バクの大人たちに
バク太郎「夢のある子をみつけてきたよ!」
医者「そうか!ではさっそく夢を見せてもらおう」

音楽にのって踊りながらお姫様登場
子ども4「こんなに簡単にお姫様になれるなんて思わなかったわ!私、感激!」
と言い終わった瞬間、ピタリと止まってしまう。
バク花子「あれ?動かなくなっちゃったよ。ツンツン」
つついてみるが動かない。
バクB「何も不思議がることはないよ。この子の夢はここで終わっているんだから」
バク太郎たち「???」
バクB「この子はお姫様になってああしたい、とかこうしたいとか言っていたかい?」
バク太郎たち「ううん」と首を横にふる。
バクB「だから動かなくなってしまったんだよ。」
医者「こんなにくだらない夢を形だけかなえて喜んでいるんだからな・・・」と吐き捨てるように言う。

バク太郎「じゃあ、今度の子どもたちは?」
バク花子「あの子たちは、なってからのことも言ってたよ」
音楽にのってバレリーナ登場。登場するなり
子ども5「やっと世界一になれたわ」
子ども6「えっ?私が世界一よ!」
子ども5「何をいってるの!私の踊りの方が素晴らしいわよ!」
子ども6「私の踊りの方がお金をたくさんもうけられるわ!」
子ども5「なによ、あんたの踊りなんてタコ踊りじゃない!」
子ども6「じゃあ、あんたはイカでしょ!」
喧嘩をしながら退場。

呆然として残るバクたち。
バクA「駄目だ駄目だ。あの子たちは自分の幸せしか考えていない」バク太郎「どうしてそれじゃいけないの?」
バク花子「自分が幸せになれるんだったらそれでいいじゃない」
バクB「ああいう夢はたとえかなったとしても人を傷つけるだけなんだよ」
バク花子「ふ−ん」
バク太郎「どういうことだかわかったの?」
バク花子「わかんないよ」

止まったままの姫をみて
バク太郎「ねえ、この子どうするの?」
医者「放っておけ。そのうち元に戻るから」
バク太郎「でもこのままじゃ邪魔だよ」
「仕方ないな」といいつつ、大人バクみんなで持ち上げて退場。

バク太郎たち、おばあさんのもとへ。
おばあさん「その夢の紙をかしておくれ」
バク太郎「だめだよ。おばあちゃん、これ見るとすぐに仕事に抜け出していっちゃうんだもん」
バク花子「今はここで寝ててよ」
おばあさん「ところで、夢をもった人間の子どもたちは見つかったかい?」
二人、何も言えず下を向いてしまう。
おばあさん「おまえたち、苦労しているようだね。」

バク花子「ねえ、おばあちゃん」
おばあさん「なんだい?」
バク花子「ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」
バク太郎「昔の子って、どんな夢をみてたの?」
おばあさん「そうだねぇ・・・・。それじゃあ、おばあちゃんの力で昔の子どもたちを夢の世界へ呼び寄せてみようか・・・」
バク太郎「そんなことをして大丈夫?」
バク花子「お医者さんにも止められているじゃない。」
おばあさん「大丈夫だよ。昔の子どもたちの様子をおまえたちに見せておきたいんだよ。だから、しっかりとみておいておくれ」


遠くから「かごめかごめ」の歌が聞こえてくる。昔の子どもたちが手をつなぎながら登場。こごめかごめを始める。その輪の中にあの太郎と花子もいる。
バク太郎「ねえ」
子どもたち「なあに?」
バク花子「あなたたちの夢ってなあに?」
子どもたち「ゆめ?」
バク太郎「そう、将来の夢」

昔の子1「そうだな・・・僕の夢はお医者さんになることかな」
昔の子2「お医者さん?」
1「そう、お医者さんになって世界中の病気の人を助けてあげたいんだ」
(以下からかい言葉などにはケチをつけるというよりもどこか暖かい雰囲気がある)
3「お医者さんになるのって難しいんだよ」
4「あなた勉強そんなに好きじゃないんじゃない?」
1「でも頑張ればきっとなれるよ」
3・4(皮肉ではなくちゃんと)「頑張ってね」
次々に夢が披露される。

5「私は総理大臣になって平和な世の中を作りたいんだ」
1「なれるの?」
5「なるの」
1「そっか」

6「私はお花やさんになって町をきれいにしたいの」
2「素敵な夢ね」
3「私の家の前もきれいにかざってね」・・・

7「私はサンタクロースになって世界中の子どもたちに夢をあげるんだ!」
3「サンタクロ−ス?」5「それもいい夢だね」・・・

8「僕はおいしいお米をたっくさん作ってみんなを喜ばせたいんだ」みんなのやりとりを聞いていて
バク太郎「いろんな夢があるんだね。」
みんな「うん」

二人、太郎と花子に気がつく
バク太郎「あれ?どうして君達だけみんなと違う格好をしているの?」
太郎「僕たちは人間の世界からきたんだ。けど、人間の世界なんて緑もないし・・・」
花子「空気も汚れちゃってるし」
太郎「海なんかも真っ黒になっちゃっているから・・・・もうおしまいなんだよ。」
花子「そうしたら、バクのおばあさんがここへ連れてきてくれたんだよ。」
太郎「ここは緑も一杯あるし、友達も一杯いるから、ずっとここに住まわせてもらっているんだ。」

昔の子「ねえ、君達も一緒に遊ばない?」「遊ぼうよ」
二手に分かれて今度ははないちもんめが元気良く始まる。

だんだん周囲が赤く暗くなってくる。昔の子どもたち、歌うのをやめる。
バク太郎「どうしたの?」
昔の子「私たち、もう帰らなくちゃ・・・」
太郎「まだ遊び始めたばっかりじゃない。」
昔の子「でもね、私たち、もう遊んでいれれないの・・・」
太郎「じゃあ、しょうがないね。」
バク太郎「また今度遊ぼうね!」
昔の子どもたち「うん!」
一人が「夕焼けこやけ」を歌いだすとみんなも合わせて歌いだす。お互いに「バイバ−イ」「またね−」とそれぞれに帰っていく。

みんなを見送りながら嬉しそうに
バク太郎「おばあちゃん、わかったよ!」
バク花子「昔は人間もいい夢を見ていたんだね!」




夢の世界からおばあさんの部屋へ戻ってくる。寝床におばあさんの姿はない。
バク太郎「あれ?」
バク花子「おばあちゃんがいない・・・」
バク2がそっとかげから出てくる。しかし何もいわない。
バク花子「おじちゃん。おばあちゃんは?」
バク太郎「おばあちゃん、どこ行ったの?」
バク2「・・・・遅かったよ。・・・・・おばあちゃんは・・・もう、いないんだよ・・・・」
バク太郎「死んじゃったの?」
バク2黙ってうなずく。二人、「おばあちゃん・・・」と泣き崩れる。
医者「あれだけ夢の力を使うなと言ったのに・・・・」

そこへ先程バクたちが連れてきた三人の現代っ子が荒々しく登場。「ちょっとあんたたち!」「どうしてくれるのよ!」「元の姿にもどっちゃったじゃない!」「せっかく世界一になれたと思ったのに!」「お姫様になれたと思ったのに!」「嘘つき!」「何とかいいなさいよ!」と次々と泣いている二人に罵声をなげかける。

ついにバク太郎たちはこらえきれなくなり泣きながら訴える。
バク太郎「そんなこと関係ないだろ。」
バク花子「そうよ、おばあちゃんは誰のために死んじゃったと思ってるの!」
子ども5「おばあさんと私たちとどういう関係があるっていうのよ!」
バク太郎「君達がいい夢をみていれば、おばあちゃんは助かったかもしれないんだ!」
バク花子「そうよ、あなたたちがくだらない夢ばかりみていたからおばあちゃんは死んじゃったんでしょ!」
現代っ子「何よ!フン!」と言い残して去る。

バクの大人たちに向かって悔し涙を流しながら
バク太郎「おじちゃん!どうして僕たち、あんなやつらのためにこんな苦労をしなけりゃいけないの!」
バク花子「そうよ。もうあんな人間達なんかのために働きたくない!」
バク太郎「あんなやつらなんか、どうにでもなっちまえばいいんだ!」
バクB「そんなことをいったら、おばあさんの夢は誰が受け継ぐんだい?」
バク太郎「そんなこといったって・・・僕、やだよ!」
そうして手に持っていた夢の紙を「こんなもの!」と投げ捨てる。

わきでじっと様子を見つめていた太郎と花子、自分達の近くにとんできた紙を拾って
花子「ごめんね。」
太郎「僕たち、バクのおばあさんがそんなに苦しんでいたなんて知らなかったんだよ・・・僕たち人間の夢のことなのに・・・・」
花子「私たち、元の世界へ戻ろうと思うの」
太郎「もう一度、海や山をきれいにするために頑張ってみるよ。」


バクB「あんな風にくれてる子どもたちもいるよ・・・もう一度頑張ってみないかい?・・・さあ、君達も拾っておいで・・・」
バク太郎たち、涙をこらえ歌いながら投げ捨てた紙を拾いあつめる。

歌「夢のむこうに」

さびしい、時には、夢の向こうを
時にはみてごらんよ  雲をかぶった夢の国
夢の広場にはそよそよゆれる
白いかすみ草が さいています


楽しい 時にも虹の向こうを
時にはみてごらんよ   希望に輝く夢の国
虹の広場には七色にそまる
小さなかすみ草がさいています・・・・・


太郎と花子、自分達が拾いあつめた分を二人に私ながら
太郎「それじゃ、僕たち、元の世界に戻るよ。」
花子「これからも夢の仕事、頑張ってね。」
バク太郎たちはうつむいたまま、何もいわない。
太郎「さようなら」
帰っていく。そのまま暗転。



ナレ−タ−「そうしてしばらく月日が流れました。太郎が舞台中央に登場。会場に向かって
太郎「それじゃ元気にみんなで夢は友達を歌おう!」
他の出演者も舞台にならび全校合唱。



夢はともだち
1、青いあの空を見上げてごらん  なぜかぼくたちの夢が広がる

  やがて未来はパイロットになり

 世界中をまわろう みんなをのせて

  夢は僕たちのともだちなのさ 

2、青いあの空を見上げてごらん  なぜかぼくたちの夢が広がる 

 やがて未来は建築家になり 

世界中につくろう みんなの町を

  夢は僕たちのともだちなのさ

 
3、青いあの空を見上げてごらん  なぜかぼくたちの夢が広がる

  やがて未来は音楽家になり 

世界中に送ろう 楽しい歌を  

夢は僕たちのともだちなのさ 

歌い終わって
ナレーター「こうして大きな夢に向かって小さな一歩が踏み出されたのでした。」

                 完