勉強を進める時の心の持ち方・・・苦手意識をなくしていけたらさらにアップ これまで「たぬき流歴史の勉強法」について解説してきましたが、せっかく等間隔年表を作ったり、教科書と対話しながら問題集をしても、心の中が今までと同じ「苦手意識」に支配されていては伸びる度合いが鈍ってしまいます。そこで今回から「心の改善」をテーマにして書きます。


歴史に苦手意識を持っている人は大勢いると思います。私もそのうちの一人でした。そういう人にとっては「苦手(嫌い)だからといって無視するわけにはいかない」という気持ちで一生懸命に取り組んでいる割には点数は思ったほどよくなりません。覚えても覚えてもすぐに忘れてしまったり、何がどうだったのかがすぐにゴチャゴチャになってしまいます。

でも世の中には「歴史が大好き」という人も大勢います。しかも「いい成績をとりたい」というのではなく「歴史が面白いから」という理由で。
私が教えた子の中にも何人もいました。そうした人達に共通していえるのは「歴史を暗記教科だとは思っていない」ということです。「何年に起きた何とかという争いは誰と誰が戦った」というような事を知識として覚えようという意識ははじめから持っていません。
例えて言えば「ドラマを楽しむ」という感覚のようです。

以前「三国志」に大変興味を持っている高校生を教えたことがあります。彼は毎週授業に行くとこちらが教えるより先にその週に新たに自分で調べて分かったことを熱く語ってくれました。私にとって三国志に出てくる古代中国の国の名前や難しい漢字ばかりの人の名前は「単なる記号」のようなもので、実際のイメージを伴っていませんから、いろいろ言われても区別がつかず何が何だか分かりません。しかし彼は例えば「諸葛孔明(しょかつこうめい)」と言われれば私達が知り合いの名前を聞いてその人が思い浮かぶのと全く同じくらい顔つきや体つきまで彼なりのイメージで浮かぶわけです。

歴史の人物がなかなか覚えられない・・・と言っても、日常の生活で私達は一体どのくらいの人達の顔と名前が一致しているでしょう。クラス替えになって知り合いがほとんどいない、といっても数日もすればほとんど全員の名前は区別できるようになると思います。それに比べれば実際にテストに出る人物の人数など中学校の定期テストレベルではそんなに一度に大勢出てはきません。高校入試レベルでもそうです。

なのに何故覚えられないかというと「具体的なイメージ」を伴わせずに、名前だけを丸暗記しようとするからです。

同様に歴史上の出来事を覚えられないという場合もそうです。「歴史の流れ」「その出来事のはたした役割」などを理解しないで覚えようとしてもなかなか頭には入りません。

「そういうのは頭に入らないんだ」と思い込んでいる人は、ちょっとふりかえってみてください。例えば昨日や今日の一日の出来事を朝から順にだいたいでいいですから思いだしてみましょう。全く思い出せませんか?
あるいは毎週欠かさず観ているテレビドラマやアニメなどを思い返してみましょう。先週がだいたいどんなストーリーだったか、新たな登場人物は何という名前だったか・・・録画しておいたものを何度も観るなんていうことをしなくてもけっこう言えると思います。


歴史の流れもホントは同じです。実際には教科書に載っていない出来事や人物などそれこそ膨大な量のものがあったハズです。でも教科書に載っているのは、その中でも「過去から現在に至る」までの転機にあたる大きな出来事だけです。その積み重ねを並べたものなのです。
だからその気にさえなって具体的な流れをつかみながら内容が理解できれば、テレビドラマやアニメの「あらすじ」が頭に入ってしまうのと同様に案外あっさりと定着できるのです。

私が勉強法で教科書の本文を何度も読み返したり、等間隔年表に書き込むことを盛んに勧めてるのはそうした理由からです。単に重要項目を並べただけの暗記プリントや問題集を・・・しかも付録の模範解答だけを見て・・・進めても、バラバラな知識ですからどんどん忘れてしまうし、仮に覚えていても広範囲の中で問われると解答できなくなります。

歴史に限ったことではないですが、定期テストの時には点数がいいのに、広範囲の実力テストや受験勉強になると突然得点が下がる人がいます。これも流れをつかまえていないことからくる弊害です。

私はよくA3の紙一枚に細かく目盛りをうったミニ等間隔年表に時代区分や大きな出来事、有名な人物を書き込む作業を中3や高校生にしてもらいます。はっきりいって普段歴史のテストで高得点をとっている人の中にも歴史の先生がみたらショックで寝込んでしまうような年表が少なくありません。
*アッ、でもそういう人達をバカにしようというのではないですよ。私だってほんの数年前だったら結構それに近い年表しか書けませんでしたから。今の教育の問題点を指摘するためにこうした話を出しています。


ですから勉強する方法というより意識としては、自分が物語りの作家、あるいはテレビドラマのシナリオライターで、それのあらすじを思い描く、という気持ちで取り組めばいいんです。
手順としては、よく学習会便りでも話題にする「世界定め」つまりこの世の中をみていく時の3つの観点「時間」「空間」「人間(じんかん)」をはっきりさせます。

簡単に言えば年表でどの時期の出来事かを確認し、地図でどこで起きた出来事かを確認し、そして登場人物を確認します。コツとしては出来るだけ具体的にということ・・・「これはテストに出ない」とか「教科書に載っていない」とかにこだわらず、授業で先生が話した余談とか参考書や資料集に載っているエピソード・裏話を大事にします。その方が逆に不思議なくらい簡単に重要項目も頭に焼きつきます。

登場人物で大事なのは人間関係ですが、これもドラマ的に言えば、誰が主役で誰が助演、そして相手役(敵役)は誰か・・・そんなのをはっきりと整理するのです。よくテレビドラマのホームページなどをみると「登場人物相関図」なんていうのが出ていますが、複雑な出来事だったらあんなのを作ってみるのです。そして短いあらすじにまとめてみる。

もしその時に自分が役者になった感覚で登場人物の気持ちをストーリーや立場を踏まえて考えられたら申し分ありません。

かつての教え子で、やはり歴史に興味を持てないという人がいたのですが、中学校のテストにはほとんど登場しない源義経について話したことがあります。史実に忠実にというよりは、日本人が芝居などで義経が大好きであることから始まって・・・。すると最後には涙ぐんでしまいました。ポロポロと涙をこぼしながら「なんで私こんなに歴史が嫌いだったのに歴史の話を聞いて涙が出るんだろう」って。


それは今まで学んできた歴史は血の通っていなかったものだったからです。歴史といっても、その主人公はみんな私たちと同じ人間だったわけですから、そうした生きた人間としての実感が伴えば共感できる話はいくらでもあります。(日本史には登場しませんが、ジャンヌ・ダルクの話などもよくします)

それから問題集や暗記プリントをやってみると明らかに今までの歴史の勉強をしている時と違っているはずです。

「歴史なんてどうして勉強する必要があるの?」という問いもよく受けます。こうした事が納得できていないと、やはり勉強には身が入らなくなるものですよね。次回はそうした事について書いてみたいと思っています。