Leafの隠れた名作?浮気ゲームのパイオニア。
ゲーム情報
ゲーム情報 | システム | ||
タイトル | WHITE ALBUM | 原画 | らー・YOU(カワタヒサシ) |
メーカー | Leaf | シナリオ | 原田 宇陀児 |
発売日 | 1998/05/01 | サウンド | 石川 真也、中上 和英、下川 直哉 |
ジャンル | アドベンチャーゲーム | 名前 | 変更可 |
メディア | CD−ROM1枚 | セーブ箇所 | 5箇所 |
HDD容量 | 45MB | スキップ | あり |
音源 | CD−DA | オートモード | なし |
画面 | Full/Window | バックログ | あり |
起動CD挿入 | 必要あり | 既読判定 | あり |
使用曲数 | 22曲(うちヴォーカル3曲) | メッセージ速度 | 固定 |
CG枚数 | 66枚 | フォント | 変更可 |
回想シーン数 | なし | 音声 | なし |
ボーカル曲
OP | タイトル | WHITE ALBUM | ED | タイトル | POWDER SNOW | 挿入歌 | タイトル | SOUND OF DESTINY |
作詞 | 森川由綺 | 作詞 | 須谷尚子 | 作詞 | 須谷尚子 | |||
作曲 | 石川真也 | 作曲 | 下川直哉 | 作曲 | 中上和英 | |||
編曲 | 石川真也、松岡純也 | 編曲 | 下川直哉 | 編曲 | 中上和英 | |||
Vocal | 森川由綺 | Vocal | AKKO | Vocal | 緒方理奈 |
採点
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 | ||
システム | 56点 | ★★★★★★★★★★★ |
グラフィック | 90点 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★ |
キャラクター | 93点 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★ |
サウンド | 97点 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ |
シナリオ | 91点 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ |
総合 | 89点 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★ |
コメント
あらすじ
システム:56点
このシステムでこのセーブ箇所数はかなり少ないように思える。あとは体力ゲージを取り入れている。主人公が行動するとその内容に応じて
体力を消費して、体力がなくなるとぶっ倒れる。この考え方を取り入れたのは面白かったが、これを十分生かしきれていたかどうかは微妙。
ここまでだと50点すら切りかねるが、面白いなと思ったのが、自分が気に入ったCGをアルバムに追加することが出来るということ。
この作品ではこれまでのLeaf作品になかった新しいものをいろいろと取り入れているがこれだけは評価することが出来るか??
グラフィック:90点
キャラクター:93点
ヒロイン&主な登場人物紹介
森川由綺
緒方理奈
澤倉美咲
河島はるか
観月マナ
篠塚弥生
緒方英二
フランク長瀬
サウンド:97点
シナリオ:91点
以下ゲームをしてから読んでほしい個人的な感想なので伏字にします。
個人的には一番巧くシナリオがかけているなぁと思ったのは「澤倉 美咲」シナリオ。彼女は冬弥にとっても
由綺にとっても共通の先輩であり、由綺が自分を慕っていてくれていること、そして彼女が冬弥のことを愛している
ことを知っていて、でも、冬弥が自分を愛し始めているのを知り、彼女はすごく苦しむ。由綺が愛している、
そして付き合っている人なんだから自分が彼のことを好きになってはいけない。自分を強く持たなきゃと思う
その心とそれでも冬弥に魅かれていっている自分自身の心の狭間で揺れ動く、その心理描写が見事に描かれており
そこに美咲に恋している冬弥の親友「彰」の存在がさらに物語をより重く深いものにしている。お互いがお互いの
想いを見えてしまっているが故にみんながみんな苦しみ、そしてひとつの結論を紡ぎだすその過程はまさしく
涙なしでは見られないものがあります。人は完璧な存在じゃない。誰も苦しまない選択なんてありえない、
弱いが故に生きていく中で悩み、苦しみ、時には逃げて・・・でもその次へ行かなくてはならない。
たとえその事で人を傷つける事になってしまったとしても。自分の心に痕を残す事になっても・・・。
ヒロイン「森川 由綺」のシナリオは重いエンディングばかりのこの作品にあって唯一救いがあるエンディングでは。
そのライバル「緒方 理奈」のシナリオは一番の見所は彼女である「由綺」との修羅場。ここで交錯する2人の
冬弥への思いが、そしてそれがぶつかり合う様は作品中でも最大の見所です。全体的に読ませるテキストですが
この3人は特に読ませてくれます。ちなみにあってもおかしくなさそうなのははるかエンド。一緒にいることが
当たり前みたいな幼なじみから恋へと変わっていく様は話としては十分ありえることで当たり前なのかも・・・
とも思ったりしてしまいました。
ただひとつ惜しまれるのはシナリオの流れとキャラクターの言動に矛盾が生じている部分があったこと。
総合:89点
「作品の発表時期」
「作品を出したブランド」
とまぁもっともらしい事を書いてみたが、実際のところは作品の持つ雰囲気自体が「万人受け」する作品でない。
・・・後に出た同じジャンルの作品は少なくともこの作品が作った土台を踏み台として作られた作品であり
あの時期にあえてこういう作品を出したこと自体すごい事なのではないかと思う。ここまでいろいろ書いてきたが
この作品がまれに見るハイレベルな作品である事は間違いない。惜しむらくはシステム面の甘さであろう。
リロード連発はプレイするのにつらいし、バグの多さもいただけなかった。これがなければ間違いなく名作であっただろう。
藤井冬弥は大学に通う普通の学生。冬弥には、高校時代から交際を続けている彼女がいた。
彼女の名前は「森川 由綺」。彼女はどこにでもいそうな普通の女の子。ところが1年前に歌手
としてデビューし瞬く間に人気歌手へと成長していった。人気が上昇するにつれ彼女と会えない日々が増えていく。
そんな中、由綺が来年2月末に行われる「音楽祭」へ出場する事が決まったのだ。この事が2人が一緒になる
時間を余計に減らす事になり、冬弥は彼女との距離が開いていく事に不安を覚えるようになる。
冬の街を舞台に揺れる主人公と由綺、そしてその周りの人の心を描いていく。
雪に染められた白い街に・・・、2人の白いアルバムに・・・。
この作品で唯一かつ最大の欠点。これがなければ間違いなく名作であったと評価できるであろう。まず問題はそのままプレイすると
バグがあるためにCG回収率100%にならない。その他にも誤字やら何やらがあり数度にわたり修正プログラムが配布される始末。この段階でも
かなり痛いのだがそれ以上の問題は登場するキャラクターの行動が「ランダム」であること。人間らしい動きを突き詰めた結果(?)
決まったパターンの動きではいかんだろうということで取り入れたシステムなのかもしれないがこれがかなり厄介。このおかげでリロード必至。
基本的にはヒロイン達と会って会話することで好感度は上がっていくのだが、自分が狙ったキャラクターが行きそうなところに行っても会うこと
すらできずそのままバットエンドに流れたり、果ては終わってみたら違うキャラクターとエンディングをも迎えかねない。クリアするために
何度リロードすることになるかは微妙だがリロードのたびに話が途切れ途切れになり、盛り上がってきた雰囲気が急降下することは否めない。
どの背景を見てもとても綺麗に描かれており、本物っぽい感じに仕上がっている。これが綺麗に描かれたキャラクターとマッチしていて
好感を持てる。雪や雨の演出がここぞという場面で効果的に使われており、雪、雨にちゃんと動きがあることも評価できるところだろう。
CG枚数は66枚と少ないものの少数精鋭とでもいうべきかどの絵もクオリティが高く、印象に残る絵が多い。これまでの作品とは比べ物に
ならないぐらいのクオリティの高さといえるだろう。
ヒロインは6名。どのキャラも個性的で魅かれるところがある。また、修羅場に入ったときのヒロイン同士のかけ合いは作中でも
見所となるところ。そのキャラが持つ個性というか魅力がここ一番で光を放つ。
だがそれより何より上手く書けてるなぁと感じたのが主人公(の心理描写)。ヒロイン達も個性的で人間味溢れるキャラクターならば、
ここにでてくる主人公もまた、すごく人間くささを持っていて、作品に感情移入しやすくさせてくれている。彼女である由綺とその他の
ヒロインの間で揺れる主人公の心の動き方が巧く描かれていてプレイヤーに切なさ、苦しさを感じさせる。
この作品のメインヒロインにして主人公・藤井冬弥の彼女。冬弥に一途な理想の彼女的存在。
1年前にデビューして瞬く間に人気歌手へ成長した。だが、持っている雰囲気はアイドル・・・ではなく
どこにでもいそうな感じ、庶民的なアイドル。(as HEROINE)
同じプロダクションに在籍する由綺の先輩でありライバル。頭脳明晰・申し分ない容姿・上品な風格を
持ち合わせ自らの才能と幼い日からの努力で人気・実力を兼ね備えたトップアイドルに上り詰めた。(as RIVAL)
冬弥の通う大学にいる1つ年上の先輩。読書と料理が好きで、性格は優しく控えめ。暖かな雰囲気を持ち
これぞお姉さんの理想、な女性。由綺が憧れている人でもある。(as SENIOR)
冬弥の幼なじみ。過去に身内に不幸がありそれ以来無気力になってしまっている。
言うなれば風に流される雲のような感じであろうか・・・。(as PAL)
主人公が引き受けることになった家庭教師の教え子。生意気でむらっ気があり攻撃的。
ちょっと小憎い所があるがたま〜にかわいいところを見せる。(as PUPIL)
由綺のマネージャーで、静かに彼女を見守る存在。彼女の行く手を阻むものはことごとく押しのけようとする。
冬弥もその例外でなく、二人の仲を裂こうとする。傍目から見た彼女は冷徹で機械的だが由綺には優しいお姉さん。
由綺と理奈のプロデューサーで2人の所属するプロダクションの若き社長。
その昔は彼自身が歌手として絶大な人気を誇っていた。(as PRODUCER)
毎度お馴染みの長瀬一族。主人公のバイト先である喫茶店「エコーズ」の店主。
使用曲数はヴォーカル3曲含めて計22曲。これまでと比べても若干少なめではあるがその分ハイクオリティ。ヒロインの
BGMもキャラクターの雰囲気に合わせた曲でその他の曲も場面場面をイメージできるような曲に仕上がっている。特に暗い場面
で流れるBGMの出来は秀逸。だが、それ以上にすばらしいのはEDの「POWDER SNOW」。EDを迎えたときにこの曲が
流れたときは感動すら覚えた。ゲーム史上で見ても五指に入る「名曲」であることは間違いないと確信している。
ここまでクオリティーの高い曲をそろえた作品はほとんどないであろう。
「浮気」をテーマに扱う作品だけあって重い。実に重い。さらにプレイヤーに悲しく、苦しく、せつなさを与えてくれるのは。
彼女と周りの人間とその環境とに揺らされ、悩み、苦しみ、葛藤を続ける冬弥の、そして恋人を奪われる立場にある由綺と
他のヒロイン達の中にある想いの見事なまでな心理描写である。ここまで、心理描写をしっかり書き込んだ作品は過去になかった。
また、由綺を選ぶにしても、選ばないにしても訪れてくる修羅場についてもその場にいるキャラクターの心情がしっかりと
捉えられていて読むものを引き込むものがある。それらの葛藤を乗り越えてエンディングにたどり着いたときにはおそらく
感動が残ることでしょう。
その現実を見せてくれる、痛みを伴ったシナリオでした。
ヒロインとの愛を貫こうと思うに至るまで主人公の心の成長が上手く描けています。最後までお互いを信じ思い続けていた
2人の勝利です。一番心落ち着くエンディングです。
この作品が出たとき世間の評価としては真っ二つに分かれました。初めて出る「浮気ゲー」というジャンル、
プレイヤーをこれでもかというほど鬱にさせてくれるシナリオに「駄作」と評価をつける人と逆に「名作」と
評価した人とに。私がはじめてプレイしたのはもう4年以上前になりますがその時はかなり衝撃を受けるとともに
プレイした後にすごーく欝な気分になりました。ですが、良く出来たシナリオに涙すら覚えたのもまた事実です。
時が過ぎ21世紀に変わってからこの作品と同じようなジャンルの作品が出ました。PCでは「君が望む永遠」、
コンシューマでは「Memories Off 2nd」が。どちらも彼女がいながらもその他の女性達との狭間に苦しむ主人公の
心が上手く描けた名作です。なぜ「WHITE ALBUM」の評価が低評価に終わったかを考えたときにその要因として
挙げられるのは2つ。「作品の発表時期」「作品を出したブランド」ではないだろうか。
上記で述べたとおり「浮気ゲー・鬱ゲー」というのが世間に認知されるのは「WHITE ALBUM」がでてからしばらく
経ってからのことであった。同ジャンルの代表格である「君が望む永遠」が出たのは2001年。つまり3年先なのだ。
「鬱ゲー」にしても、名作として語り継がれ、ニュース番組にも取り上げられた「加奈〜いもうと〜」が出たのですらも
1999年。テレビでやっていたのはさらにそれから1年以上後の話であるため、認知されてないジャンルであったために
世間に受け入れられなかったのではないかと考えられる。またこの時期は「学園ラブストーリー」的なジャンルが
最盛期にあったのもこの作品の評価を下げた一因であっただろう。
これが最大の問題。出したブランドは言うまでもなく「Leaf」である。ビジュアルノベルで鳴らした、そして
前作に「学園物」の超名作「To Heart」を出したあの「Leaf」である。あの名作の後であったからこそ次回作となった
この作品にはユーザーの多大なる期待がかかっていた。前作があまりにも有名であったが故に必然的にこの作品は
厳しい目で見られ、結果、前作と比べ相対的によくないという評価を下されてしまったのではないだろうか。
もし違うブランドから出ていたらおそらく名作と評価されたのでは??
この作品の雰囲気にのめりこめる人であれば「名作」と感じるであろうが、そうでなければ「駄作」にすぎない。
いうなれば、「読む人を選ぶ」作品であるがために評価が低かったのではないかと考えられる。
言うまでもない事だがこれだけの点数をつける以上は私個人はこの作品を「名作」と評価している事を最後に付け加えておく。