雫〜しずく〜

Leafの名を飛躍的に高めたビジュアルノベル三部作の第1弾



ゲーム情報
ゲーム情報システム
タイトル雫(しずく)原画水無月 徹
メーカーLeafシナリオ高橋 龍也
発売日1996/06/28サウンド折戸 伸治、下川 直哉、石川 真也
ジャンルビジュアルノベル名前変更不可
メディアCD−ROM1枚セーブ箇所3箇所
HDD容量6MB以上スキップあり
音源CD−DAオートモードなし
画面Full/Window他6種類バックログなし
起動CD挿入必要あり既読判定あり
使用曲数23曲(ヴォーカル曲なし)メッセージ速度固定
CG枚数60枚フォント変更不可
回想シーン数なし音声なし

採点
0 10  20  30  40  50  60  70  80  90  100
システム65点
グラフィック60点
キャラクター74点
サウンド90点
シナリオ83点
総合76点

コメント

あらすじ
繰り返される代わり映えのしないくだらない毎日。音と色彩を失った退屈な世界。そんな学園生活を長瀬祐介は 送っていた。そんな日常から逃れたいと考えつつ今日も一人妄想に耽る。すると、突然教室のどこからか笑い声が。 皆がその声の方に視線を向けると、1人の女生徒がゆっくりと立ち上がる。暗くどんよりと濁った目、不気味な呟き。 祐介が望む「狂気」の扉を開けてしまった少女の出現。この一件が問題となり祐介は教師である叔父から調査を 依頼される。舞台は誰もいなくなった夜の学校。そこで祐介が見たものは・・・?

システム:65点
さすがに7年も前の作品であるだけに今みたいにいろいろな機能がついているということはない。画面サイズが 8種類の中から選べる。ちなみにサイズはワイド型。あとは、音楽演奏の有無、既読メッセージの高速表示、 スキップが選べる。一度読んだ文章であればスキップして一気に次の選択肢まで進める。シナリオ回想もあり。 特筆できる(?)のは「1つ前の選択肢に戻る」があること。これでバットエンドの回避が可能??

セーブ箇所は3箇所あるが、しおり1から始めたゲームはしおり1にしかセーブできない。つまり、しおり1つに 対してユーザーが1人という考え方で、他のしおりにセーブは出来ない。このあたりは「弟切草」のシステムと 似たような感じか。

グラフィック:60点
まぁ、昔の作品なだけにこれについてはやむをえないだろう。色数も256だし。当時のゲームだったらだいたいこんな 物であろうと思う。背景の使い方は、このゲームジャンルの大元とも言えるあのゲームからとったものであろう。 キャラクターの影絵を使うところなんかはまさしくそれとしか言いようがない。良い意味でも悪い意味でもあのゲーム の手法を踏襲していると言える。

キャラクター:74点
初期の作品だけあってヒロインの数は少ないです。まぁ、作品のボリュームから行けばこれぐらいの登場人数が 妥当なんでしょうけど。ただ、絵に癖が強く、見る人の好みによって絵で回避する人もいることでしょう。この絵 に慣れられるかどうかがこの作品をプレイする上でのひとつのポイントとなりそう。個人的には作品の雰囲気に あっているように思えるのですけどねぇ。

ヒロインは3名。
新城沙織:バレー部に所属するノリが良く、太陽のような明るさが魅力の少女。でも、本当は・・・。コードネームはさおりん。
藍原瑞穂:生徒会役員で今回の事件の少女の親友、友達思いの優しく、そして強い心を持つ女の子。コードネームはみずぴー。
月島瑠璃子:寡黙で不思議な印象のしょうじょ。もう一人の「狂気」の扉を開いてしまった少女。コードネームはるりるり。

ちなみにヒロインとはまったく関係ないが、リーフ作品でお馴染みの「長瀬」はここから始まる。
大体は脇を固めていることが多いがこの作品では主人公の名前からして「長瀬」だ。

サウンド:90点
この作品のもっとも秀逸な部分。各ヒロインの音楽はヒロインの性格のイメージにぴったりな音楽をあてており、場面場面 で使われる音楽も雰囲気にマッチしているし、戦闘シーンの音楽はカッコいい。ちなみにこの作品のサウンドには現Keyの 折戸伸治氏も携わっていて、この作品のリーフロゴの音楽は折戸氏の作品であったりする。
オススメのサウンドはバトルシーンとトゥルーエンド時に流れる音楽。

サウンドとはちょっと違うかもしれないが叫び声とか効果音が所々で使用されているが、 この使い方はとても上手く、作品を上手く引き立たせていると思う。

シナリオ:83点
 舞台は主人公が通う学校で、シナリオはその事件が発覚する1日を描く。作品中の期間は非常に短いが、中身の方は非常に 濃い。この作品の元ネタは大槻ケンジ氏の小説「新興宗教オモイデ教」とか言う作品だという説があるが実際のところはどうなのだろうか?
シナリオは進み方はあるルートを攻略すると、そこから新しい分岐が発生するというパターン。作品中には 随所に伏線が張ってあり、シナリオを読み進めていくことでそれを解き明かしていくような流れとなる。 マルチエンドを謳ったこの作品には13パターンのエンディングが用意されていて各ヒロインにハッピーエンド とバットエンド、そして作者の意図する物語のテーマを語るトゥルーエンドが存在する。

物語そのものは読み手の読み方次第で物語のテーマそのものが変わるタイプのものであろうかと思われる。 物語のテーマは大きく言って2つは存在する。他にもさまざまな考え方が存在するのであろうが。
ひとつは祐介がヒロインと共に今回おきた事件の真相を解き、解決へと進むというもの。
もし、これだけだったらただの怖い読み物で終わるところであるが、ここにもうひとつのテーマが入る。 それは祐介(主人公)の心の成長を描くということ。
祐介が抱いている「狂気」の世界への憧れ、そして目の前に広がる「狂気」の世界の現実。事件を通じて 祐介の心中に起こる葛藤を描き、この事件の終焉を迎えたあとの祐介の心の変化(成長ともいえるだろう。) を書いていく事で、この作品を読み物でなく物語としてプレイヤーに読ませていっている。
もうひとつこの作品で評価できる点として、読み手を引き込む文章の巧さがある。事件の導入部の 段階から短時間で上手く読み手を引き込んでいくシナリオ展開は賞賛に値する。
Hシーンはシナリオの展開上陵辱シーンが出てくるのだが、それほど恐ろしいというほどのものでもない。
本編の方を一通り終えるとおまけシナリオがでてくるがこちらのほうは微妙なところ。
あとはバットエンドにはなかなかイカしたものがあるということも付け加えておきたい。

最後に・・・タイトルにある「雫」という言葉、作品中にもたびたび登場しています。
一つは「涙」、そしてもう一つは・・・??

総合:76点
作品のスタイルの原型はチュンソフトのサウンドノベルにあり、所々にそれを意識したような所もみられるが、 この業界では初めてノベル系の作品にチャレンジして成功し、このジャンルを広めた18禁ゲーム史の中に 新たな一歩を刻んだエポック的作品であったといえる。また、このあたりからシナリオ重視の潮流が出来始めた という点でも、その先駆けとなった作品であろうといえる。
多くの人はこの後のLeafの作品をやって過去にさかのぼってこの作品にぶつかるのであろうと思う。
(実際私もそんな中の一人だったりするのだが。)
だが、当時このゲームをやった人はLeafというブランドの可能性を見出した作品であったのではないかとも思う。 もし、やったことがなければ一度はプレイすることをオススメしたい。