青い涙(あおいなみだ)

海外ゲームメーカーの日本ギャルゲー市場参入第一弾




ゲーム情報
ゲーム情報システム
タイトル青い涙原画MOONZERO
メーカーCDPAシナリオMILKCOW
発売日2003/05/30サウンドH.T、Yoshio Tsuru、EJ
ジャンルアドベンチャー名前変更不可
メディアCD−ROM3枚セーブ箇所30箇所(Q.SAVEなし)
HDD容量1.35GBスキップあり
音源PCMオートモードあり
画面Full/Windowバックログあり
起動CD挿入必要あり既読判定なし
使用曲数29曲(うちヴォーカル1曲)メッセージ速度4段階
CG枚数172枚フォント固定
回想シーン数7個音声なし

ヴォーカル曲
OPタイトルBlue Twilight〜太陽と月が出会う時〜
作詞Melody Nelson
作曲H.T
編曲H.T
Vocal林田輪朱

採点
0 10  20  30  40  50  60  70  80  90  100
システム77点
グラフィック68点
キャラクター64点
サウンド70点
シナリオ78点
総合72点

コメント

あらすじ
 「夢幻」
どこまでも続く果て無き草原、そこでは何気ない会話が繰り広げられ、楽しく、明るく笑って生きていく事が出来るそんな世界。
主人公「勇介」はそんな世界にいる。それは生まれてきたときから変わることなく続いてきた事。

夜になり、眠りに付くだびに勇介は夢を見る。自分以外に何も存在しない漆黒の世界。
その夢に出てくる少女は言う。「君を助けたい。」と。
そして続ける。
「君が頼っているものは、君を壊し続けている」と。
「君をこの世界に引き止めたがっている」と。

「目の前にあることを疑い、真実を見よ・・・・」と。

システム:77点
 システムは必要最低限は揃っている。右クリックでセーブ・ロード・オートモード・スキップが選択でき、オプションも ここからいける。オプションはスクリーンモード・メッセージ&オートモードのスピードが選べる。ちなみにオートモード 中でも既読メッセージの巻き戻しは可能。セーブ画面の方はセーブした日の時間とそのときの画面が出る・・・・までは よくあるが、その他に右上のボックス部分に「○○篇 1」というような表示も出るのでどこら辺まで進んでいるかがわかる ようになっている。あとは、各キャラクターの話を進める上で結局は夢幻篇から何度かはじめなくてはならないが2度目の プレイ以降では選択肢がないテキストのみのところは飛ばす事ができ(もちろん見ることもできる)この辺は評価できる。
何があるとすればスキップモードの既読判定がない事。未読だろうが既読だろうが飛ばしまくる。これが既読のみスキップとか選べればよかったのだが。

グラフィック:68点
 登場人物が多い事もあってかCG枚数はかなり多めCGモードで見ることができるのだけで172枚。パターン違いのも 含めると相当な枚数になるはず。立ち絵の方もCGと違うという事もなく悪い点はあまり見当たらない。逆にずば抜けて良い というのもないのだが。ひとつだけ「おっ?」と思ったのが物語中盤で妹の恵と電車で遠出するシーンがあり、 そこで4枚CGが使われているのだがこの場面の車外の風景は注目か。車内の恵の絵(表情・動き)が変わっているのは 当然なのだが、それにあわせてちゃんと車外の風景が変わっている。案外細かいところにも手が込んでいるなぁと思ったりして。
ちなみにHシーンのCGは少なめ。この点については期待しないほうが良いだろう。

キャラクター:64点
 登場人物はCGモードで確認できる主要キャラだけで12名。その他サブキャラを含めるとかなりの数。
性格設定とかの面はそこそこできているのではと思われるのだが、物語の流れやテキストのせいかメインヒロイン 以外のキャラクターが影が薄くなってしまったようにかんじられる。特にテキストがあのような感じだったら ここまでキャラクターが必要であるのかどうかが疑問か??

以下ヒロインの紹介
マナ:幼くして捨てられていた勇介を育ててくれた女性。母のような存在であり恋人のような存在であり・・・。
さえか:勇介たちの家の近所に住む少女。お喋り好きで、遊びに関することにはなんでも興味を持つ。
雪江:ちょっと変わったところがある女の子。天気予報が得意でほとんど外す事がない。
彩:元気でしっかり者の女の子。ユリと一緒に温泉宿を切り盛りしている。
ユリ:彩と対照的なおとなしくて人見知りが激しい少女。彩と一緒にいることが多い。
もえみ:市場で出会う女の子。
晴子:もえみの母親。勇介が理想とする母親像に最も近い女性。

物語の前半で出てくるのはこの7人のみだが、中盤以降になるとその他のキャラも登場する。
マノ:「回想篇」での主人公。今の身分を脱し強くなりたいと願う純粋な心を持つ青年。
ミルカ:マノの母親。ちょっと足りないところがあるため周りから馬鹿にされている。
シエ:カ国の兵士達に追われているところをマノに助けられる。シトリエの中でも高い身分を持つ、神女。

柏木 恵:現実の世界にいる「柏木勇介」の妹。

サウンド:70点
 使用曲数は全部で29曲。うち1曲がヴォーカル曲(主題歌)となっている。
場面場面で使われている音楽はだいたいはその雰囲気とかに合っているもので、おおむね良好か。だが、逆に言えば 印象に残る曲もなかったのも確か。総合で見れば普通というところだが、主題歌は個人的に良かったと思う。
その分若干の加点をした。ちなみに最後までプレイしたものの残念ながらサウンドモードが出る事はなかった。
使用曲数と曲のタイトルとかがわかったのはこのソフトを購入した際の特典として付いていたサントラがあっため。

ちなみに主題歌のフルコーラスがマニュアルの最後に載ってはいるが聞けるのはワンコーラスのみ。しかも この曲の歌詞、よく聞くとなんかネタバレっぽい歌詞のような気もするが・・・まぁ、いいか。

お気に入りの曲:「哀愁」「Blue Twilight〜太陽と月が出会う時〜」

シナリオ:78点
 物語の構成は「夢幻篇」「回想篇」「回帰篇→各ヒロインシナリオ」の3部構成となっており、各ヒロイン達のEDを見ると、 そのあとに物語の核となる「真・夢幻篇」「真・回想篇」そして「現実篇」へと物語が進行していきます。
最初のうちは謎だらけ。「夢幻」とはなにか?主人公がいる「深淵」の世界とは??など様々な謎があるのですが プレイするうちにその謎がわかっていくという仕掛けになっています。そしてタイトルになっている「青い涙」とは・・・。
夢幻篇の穏やかな生活。しかしその中で生じていく違和感、そしてここは自分の本来いるべき世界でない事を知り 現代に回帰する。その間になぜこういう事になったか、そのルーツとなる「回想篇」を見ることになるのだが この手法は「AIR」「SNOW」などで使われた手法を踏襲しているものといえるのだが、この流れはなかなか 上手くできていたように感じられる。問題は「回帰篇」か。この3篇から物語の核心へ流れるための都合上そうならなければ いけないのかもしれないが回帰篇での各ヒロインのストーリーの流れが似たり寄ったりのものばかりになってしまっているのだ。

特にそれを強く感じるのはHシーンからEDにかけて。このあたりはキャラによっては文章そのまま使いまわしたのでは と思ってしまうほど文章まで同じだったりする。それが数キャラも続くのだからたまったものではない。いくらストーリー 展開上とはいっても各キャラごとにそれなりの変化は必要なのではないか??キャラが違っていても似たような展開を 何度も見るのだから間延びした印象になるのも否めない。もっともその前の回想篇もちょっと間延びしている感があるので その間が余計強まりドロップアウトした方もいるのではないかと感じてしまうほどだ。本来ならばこれぐらいの出来であれば 合格点というべきところであろうが、先に述べた問題点から多少の減点が必要かと。

それを終えてようやく核心に触れるわけだがここで物語の謎が解けることとなる。「真夢幻篇」「真回想篇」ではヒロインの側 からみたストーリーを展開し物語の終末へと話が進む。ここでなぜ勇介が「夢幻の世界」の住人になったか、なぜ「マナ」は 「勇介」にとって物語の冒頭にあった「母親であり友達であり恋人のような」存在であるか?、その「マナ」の正体とは?? と数々の謎の部分が解き明かされ、最後に物語のタイトルでもある「青い涙」とは・・・・につながるわけだが この流れは作品中でも一番の読ませどころとなっておりうまく流れができていたと思われる。序盤・終盤は上手くできていただけに 真ん中がたるみ気味になってしまったことが惜しまれる。

総合:72点
 一言で言えば国境の差を感じた作品とでも言うべきでしょうか。
何が違うといえば感性が違い、笑いどころも違い、そして何より考え方が違う。生まれた環境が違えば育った環境も違う、 だから、違うものになって当たり前だがそれを受け入れられるかどうかがこの作品の評価のポイントになるであろう。 では作品のどこにそのずれが生じていたか、個人的に感じたところを以下に書こうかと思う。

1つはテキストの文章がおかしい事。翻訳も韓国人スタッフの方がやっているためかテキストを読んでいくと時々ふと 違和感を感じる部分が出る。やはり、国が違う事もあり感性も違いがあるためその点でのズレが文章にも出てきてしまうのだろうか?

2つめは舞台設定に関する違和感。ここについては突っ込みどころ満載でどこから突っ込むか悩んでしまうぐらいだ。
物語の舞台はどうやら現代日本っぽいのだが、そうかんがえるとあれっ??と思うところが多々ある。 例えば家のつくりがなぜか石作りであったり、回転寿司なのに普通の寿司屋みたいになっていたり・・・(でも回転寿司でも 注文すると直接出してくれるのか??)、駅の構内になぜかたこ焼きの屋台があったり、さらに電車が来るとき汽笛?? (って汽車でも来るのか)、シャワールームが妹の部屋内にある構造もCGの都合といえばそれまでだが なんか強引っぽいし・・・その他数えればキリがない。ま、たいした事ではないかもしれないが舞台設定は もうちょっと緻密にした方が良いのかも。

3つめはこの作品の中でも最大の違いとも言えるところであろうか。
それは物語のテーマともなりうる「愛」と「情」についての考え方の違い。
作品中でこの「愛」と「情」についてはこう述べられている。
「好き嫌いを抜きにして・・・人間と人間の間に存在する絆・・・それが情」
「愛は短いが、情は長いもの。愛は情熱、瞬間に燃え上がる。
 しかし情は違う。友達の間の情、男女の間の情、そして親子の間の情。
長い時をかけて育まれる人と人との絆、人を大切にする心。」

ストーリーを読み進めていくと情を裏切り、愛を取ったばかりに主人公は深淵の世界に陥ることになる。
という流れになっていて、構図としては「愛」は一時の情熱で流されてはいけないもの(悪ともいえる存在)で 「情」は長い時をかけて作られる絆で裏切ってはいけないものという形になっている。この構図そのものが日本では ありえない考え方なのだ。
(ちなみに日本では辞書を引く限りでは「愛」と「情」はほぼ同じような意味となっており、考え方で言うなら 人としてどちらも大切な感情であると考えられるわけだから、この差は決定的な違いといえよう)

<追記 ネタバレを大いに含むのでプレイしていない人は読まないようにして下さい。>
なぜか、ふとこのゲームについて考えることがあったので、追記という形で書かせてもらうことにする。
作品のタイトルにもある「青い涙」。これは、種を明かせば色弱であった主人公が見た「血の涙」のことである。
この「血の涙」を流したその時、主人公は「深淵」の世界から解き放たれるわけであるが、
この作品が言わんとするところはなんなのかとふと考えたときに「青=血」が一つのキーワードになるのでは
ないかと思った。(人が死ぬほどの苦労をするときに「血を吐くぐらいに」とか「血の汗を流す」とか言うように)
ここで言う「血の涙を流す」ということは「血の涙が流れるぐらいに死ぬほどの辛い思いをする」ということ なのではないだろうか。
つまり、この作品で言わんとするメッセージがあるとすればそれは・・・
「自分にとって大切な人を裏切るという事は死ぬほどに辛いことなんだよ」ということではないだろうか。

これが、今の日本人に受け入れられる考えかどうかについて言えば微妙なところはあるが、
個人的にはこのメッセージについては共感できるところが大いにあり、再度シナリオについては評価をさせてもらった。

<追記ここまで 2004/02/06>

海外の人間が日本人向けとして作った作品なので所々違和感を感じるところはあったことは否めないが、日本参入の 第一作としてはそんなに悲観する結果ではないと思われる。ちょっと相容れない部分もあるが、テキストに所々で読ませ 所もあったことは確かだし、この作品に対するプレイヤーの反応を踏まえて次回作が良いものになることを願いたい。