朱−AKA−

2003年最大級の話題作にして超大作??




ゲーム情報
ゲーム情報システム
タイトル朱−AKA−原画秋乃武彦、歩鳥、神代舞、小田原箱根
メーカーねこねこソフトシナリオ片岡とも、東トナタ、高嶋栄二
発売日2003/06/13サウンドfeel、SoundUnion Ebi、まにょっ(Little Wing)
水月 陵、zerverius、milktub、高瀬 一矢(I've)
ジャンルビジュアルノベル名前変更不可
メディアCD−ROM4枚
DVD−ROM1枚
セーブ箇所60箇所(Q.SAVEなし)
HDD容量2.79GB以上スキップあり
音源PCMオートモードあり
画面Full/Windowバックログあり(ホイール対応)
起動CD挿入必要なし既読判定あり
使用曲数36曲(うちヴォーカル5曲)メッセージ速度5段階
CG枚数155枚フォント変更可能
回想シーン数53個音声あり(一部でない箇所あり)

ヴォーカル曲
主題歌タイトル砂銀挿入歌タイトル砂の城タイトルDesert−Duoタイトルタイトル想い−風に舞うしるべ−
作詞片岡とも作詞片岡とも作詞片岡とも作詞片岡とも作詞東トナタ
作曲上松範康作曲高瀬一矢作曲milktub作曲上松範康作曲上松範康
Vocal彩菜
堀奈生
Vocal島宮えい子Vocal YURIA
佐藤裕美
VocalNANAVocal木蓮

採点
0 10  20  30  40  50  60  70  80  90  100
システム71点
グラフィック84点
キャラクター68点
サウンド90点
シナリオ60点
総合73点

コメント

あらすじ
 物語の舞台は今から千年前の砂漠地帯。
そこには「朱」の石を持つ者達が存在していた。彼らは「ルタ」と呼ばれるものから特殊な力を与えられ、
彼女の眷属となりその証として「朱」の石を授けられた。
ある者は「ルタ」の命に従い旅を続け、またある者はその石を持つことの意味を知るために旅を続ける。
彼らは旅を続けていく中で何を考え、何を得るのか。旅の行き着く先にはどのような運命が待ち受けているのだろうか・・・。

システム:71点
 NScripterを採用。(というかねこねこの作品は毎回これを使用)このソフト基本的にはフリーのソフトウェアとして 配布されているものですが、商用使用に限り40万円の使用料を払うらしいです。ちなみにこの作品以外でもこのシステムを 利用しているところは多数あります。
必要なものは一通り揃っていると言える。画面上の所でフォント・画面設定、オートモード、スキップの設定が出来、 右クリックでシステム画面に移る。こちらでテキストスピード・オートモードスピード、音量設定、画面設定が可能。 選択肢が少なく、テキストを読むのが中心となるこの作品ではオートモードは欠かせない。テキストスピードと オートモードスピードの設定を変えることで読み手の好みのスピードに変えられる。ここまでなら80点というところだが いくつか難があるのでそこで減点というところか??
1つめは選択肢まで進むを選ぶと文章をスキップできるが、スキップには既読判定がないため読んでいようが読んでまいが 全て飛ばしてしまう。2周目以降ならば使えるが、1周目では使えない機能となっているか??。ついでにいうとこの スキップのスピードはスキップの割には遅い。(つまるところあまり使えんということ)
2つめは最近のゲームの傾向としてバックログ表示時に音声の再生可能なものが多いが、この作品はバックログ時の 音声再生は出来ない。聞けなくてもいいという人もいるかもしれないが、個人的には聞けたほうがうれしいかなと思う。

グラフィック:84点
 初っ端のアニメーションからしてなかなかの出来。全編を通してハイレベルのCGが続く。立ち絵とイベントCGの 違和感も少なく、背景の方は秀逸の一言。舞台は1000年前の砂漠・ステップ地帯・・・という事だが、砂漠や山、オアシス などの背景、街の背景どれをみても上手く描けており、特に良く出来ていたのは遺跡っぽい建物が出たあたりか。 CG枚数は155枚、パターン違いを含めるとおそらく200枚オーバーと、作品のボリュームに適した枚数が用意されており 評価できるところかと思われる。

キャラクター:68点
 この作品は4章構成となっており(実際は間にメインシナリオを補完するシナリオが入るため7つのシナリオに分かれる) 各章にヒロインが存在する。特に可もなく不可もなく・・・・か。各章ともそれなりのヒロインがそろっています。

以下各章ヒロインの紹介

第1章−Arrems(アラミス)
内気でおとなしい少女。ルタの眷属で、その中でも最も強いとされる「還す者」としての力を持つ。
主人公のCadn(カダン)とは兄弟のように育った。

第2章−Chu-Chu(チュチュ)
明るく元気な正確だがドジなところがある。ポンコツの名を継ぎし者(?)。
幼き頃から主人公のTlths(ターサ)とともに旅をしている。

第3章−Fou(ファウ)
街で唯一の薬師。温和な性格の持ち主だが一度決めたことは曲げない意志の強さも併せ持つ。
砂漠で倒れている主人公Wazsub(ヴェズ)を助け以後生活を共にする。

第4章−Rutent(ルタ)
実はRutentは主人公の名前。この章のヒロインの名はLatte(ラッテ)という。

サウンド:90点
 とにかく豪華メンバーの一言に尽きる。サウンドスタッフの数を見れば一目瞭然。これだけのメンバーが関わっているだけ あって良曲がそろっている。舞台は中世の砂漠地帯ということになっているがそれを連想させるに足る曲、そして場面場面に あった良曲を見事に揃えたと言えよう。使用曲数は36曲あるが、作品のボリュームから考えれば妥当か。うちヴォーカル曲は5曲。 その中の2曲はツインボーカルとなっている。
ヴォーカル5曲のうち「砂銀」「朱」「想い」はfeelが作曲、「Desert-Duo」はmilktubが作曲、「砂の城」はI'veの作曲となっている。 特に「砂銀」と「砂の城」の曲の出来はかなりのものである。「砂銀」は作中ではショートバージョンだが、付属のサントラで フルコーラスで聞くことが出来る。(ただ、サントラの方の砂銀はなぜか音割れがしておりそこが非常に惜しまれる)

シナリオ:60点
 さて、ここが一番の審議対象になるでしょうか。
 まず最初に書くこと。この作品はシリアスなビジュアルノベルとなっていますのでギャグは基本的に存在しません。 それとえちぃシーンも薄いのでそれに期待はしないように。(おまけシナリオは別ですが)

この作品、4章構成ということになっていますが、実際のところ第3章まではどの章も似たような流れでストーリーが 続きます。流れとしてはそれぞれが何らかの理由を抱えて旅を続けている→なぜこのようなことをしているのか疑問に抱く→ 石とともに力を授けた本人「ルタ」の元へと赴くという流れが毎章続き、展開上毎回砂漠を歩き続けるわけです。  行動が同じため展開も同じ流れになる。つまり先が読めやすい展開というわけです。ついでに言うと同じような描写や 同じような言い回しが繰り返し出てくる。読む人間によっては「飽きてしまう」方もいるのではないかと思われます。
1章から3章までの各章は(ほぼ)同じ時間の中での動きとなっているので各章のヒロイン達の動きが所々でクロスすることは あるのですが、各章とも流れが単調になりがちな分、このクロス部分をもう少し濃いものにした方がよかったのかも。 各章のヒロイン達の絡みのシーンがもっと欲しかった。
この3章のヒロインの動きをうけて4章へと話が進むわけですが、4章は物語の原点となる部分となっており (その証拠として冒頭の「○○days」は「1days」からのカウントとなっている。)ここで「ルタ」が願っていたこと、 「朱」の石のルーツがわかります。この章でも主人公「ルタ」とヒロイン「ラッテ」が旅をするわけですが ここでの旅の意味は3章までの旅の持つ意味とは別のものとなっています。この旅を通じて「ラッテ」がみたもの、 体験したこと、そこから「ラッテ」が考え、こうしたいと願ったこと。それがこの物語を考える上でのひとつの鍵となるかと。

 この4章以降の部分でも問題が。物語後半部分となるこの章以降のストーリーは以前のねこねこの作品である「銀色」 と結びついており、このストーリーを知らないと話の展開についていけなくなる部分があるということ。 知ると知らないでは作品の受け止め方が変わってくるようなストーリー展開は問題大ありかと思われます。 現に他のレビューサイトの反応を見る限りでも「朱」のプレイ前に「銀色」のプレイを勧めるところが多くあるし。 ちなみに私は「銀色」をやっていないので普通に1つの作品として「朱」を見ました。まぁ、それでもまったく 展開についていけないということはないのですが、知ると知らないで大違いというのはいかがかと思われます。 (ましてや「銀色」買うには高いしね・・・)実際には片方のパターンしか知らないわけだから細かいことは 言えないのですけどね。

 そして「朱」の最後としてある「銀色」の章。それは長い長い彼等の旅の終着点・・・。この先を書くとネタが 割れてしまいそうなのでこのあとに書くネタバレ部分においてコメントすることにします。

総合:73点
 ゲームの3大要素である「サウンド」「グラフィック」「シナリオ」のうち最初の2つについては大作の名に恥じない 秀逸な出来であり、システムも問題ないことを考えると良作間違いなしなはずなのですが、シナリオに問題があり、それが この作品の評価を微妙なものとしてしまったかと思われます。キャラクターもこことして見るとこのキャラはいいと思える キャラクターが存在するものの全体的にみて物語の展開によるもののためか、世界観を前面に押し出すためかキャラの方が 薄れてしまった感がありその点も非常に惜しまれます。ただ、この2つのマイナスはあるものの前述のサウンドとCGの方は 高い評価を出来る作品であるので総合的に見れば佳作というところに落ち着くところでしょう。
総合評価としては「良作になり損ねた作品」というところでしょうか。

最後にネタバレ(以下反転)
 さて、最後に「朱」という作品をプレイしていく上でふと思ったのは、シナリオのところでも書いた最初の3章は ほぼ似たり寄ったりの内容ということ、3回も繰り返し同じようなしなりおがあるのはなぜ??ってことでした。 さすがに同じのが3つも続けば飽きもするでしょう。それにもかかわらず3つもあるのは章分けすることでヒロインを増やす ため・・・だけではないはずでそれぞれ何らかのために存在しているのでしょう。多分。というわけでここからは 各章のポイントとなりそうなところを振り返ってみようかと思います。共通するのは事前にわかっている通りヒロインは 皆「朱」の石を持っている=ルタの眷属であるということ。
 第1章のポイントは「眷属とは何か?」という事。眷属とは「力を与えるルタに対してルタのために指令を全うする 義務を負う代わりに特別な力を与えられた存在」である。そしてこの眷属となったものは何らかの力を欲し、その時に ルタから力を与えられている。そしてこのあとのシナリオを読み勧める上でポイントとなる言葉がこの章には幾つか 含まれている。主にはナンディニの館に訪れるシーンを含めてその先にある。
「・・・還すものは最強の眷属」
「還すものを寄越したのは、ルタの優しさ」
「癒しのものが来なかったのがその証」
「還すものの本当の意味」
そして、アラミスが眷属となったときのシーン中にある「お姉ちゃんには幸せでいて欲しい」のあとにくる「そのものを還すが良い」 という件。無論これらの言葉の謎は残されたまま先へと進むことになる。

 第2章のポイントは「眷属となることは幸せにはつながらない」ということ。この章ではチュチュは眷属であり 1章で出てくる水鏡の者と同じ力を持っている。がチュチュは自分が眷族であることを知らず、主人公のターサのみが その謎について少し知っている程度である。最終的に安住の地を求めて旅を始めることになるのだが、その前にチュチュは どういう存在なのかを知るために「レイラン」に赴くことになる。その先で主人公のターサは眷属でないために 「還される」事となり、それを知ったチュチュはターサのところに帰ると言い張り結局「還される」こととなる。
これらはなぜ起きたか?と考えれば結局は彼らがレイランに赴いたから起こった事でむしろそれを知らないままの方が 幸せであったかもしれないわけだ。

 第3章のポイントは「何かを得るには何らかの代償が生じる」ということ。ここで第1章で軽く触れられた「癒しの者」 である「ファウ」が登場する。彼女の物語は幼き頃に母親が病気になり、そのときに母を助けるために森に住むという聖獣を 求めたそのシーンから始まる。結局探して持ってきたものの間に合わず母は死んでしまう。それを帰そうと思い森に行ったものの 帰すときに獣を殺してしまう。その時になぜ獣を殺してしまったのか??殺す必要はなかったのに・・・。そんな「死の答え」を もとめて彼女はルタの眷属となる。実はここでもポイントとなる部分が出てくる。「母親を救うためには獣の生き胆、つまり 獣の命を必要とする」こと。つまりは何の代償も無くしては何も得られないのだ。(実際は獣の肝を与えたところで母親が 救えたかどうかは謎であるが・・・)その後彼女は薬師としてさまざまな死を見つめて、死に逝くものを救えない自分を悔やみ、 自らの力を知るためにルタの元へと赴くのだが、最終的には番人によってルタの元へと行くのを阻止される。 ここでもまたポイントとなる部分が出てくる。この時に主人公である「ウェズ」は番人に殺されてしまうのだがウェズを救うために ファウは癒しの者としての力を発揮する。その力は「自らの命を代償とする代わりに相手の命を救うこと」。 そして、その先にあったものを考えていこう。これは本来は「銀色」の章で語られることであるが、あえてここで書くことに する。ウェズはファウの命と引き換えにその命を救われるのだが、助けられたはずの「ウェズ」にとってそれは決して 喜ばしいことなどではなく、彼の中には後悔しか残されなかった・・・。つまり「生」を与えられたウェズは決して幸せでは なかったのだ。

朱の章でポイントとなるのは「本当に失われたものとは??」というところ。朱は実は第1章の続きから話が始まります。 アラミスとカダンはお互いに還そうとしたが、還ったのはアラミスだけだった。そして彼らはハファザの街で眷族を捨てて 暮らしを始める。そんな中「水鏡の者」も訪れて、彼女も含めて一見すると平穏で明るい一時が描かれる。だが、カダンの中では このままでいいのか??という思いがあった。そして再びルタの元へ目指そうかとも考えていた。そんな中 ルタの元へと向かおうとするカダンへ「水鏡」が願う。「自分も還して欲しい」と。眷属であることに疲れ一人の人となりたい と願い、その願いを受け入れカダンは「水鏡 イブラ」を還す。最後にイブラが残した言葉「このままのほうが幸せではないのか?」 という言葉、確かにこのままでもいいのかもしれない・・・。そんな事を考え始めたある夜、カダンの部屋にアラミスが訪れる。 そしてアラミスは言う。「カダンたちは自分のことを知っているのに自分はカダンたちのことを知らない、そして自分のことも よくわからない」続けて「自分の中の空白を取り戻したい」と。この言葉を受けて空白を取り戻すために再びアラミスとカダンは ルタの元へと旅立つ。旅の中、カダンは考える。最初は「アラミス」を取り戻すための旅であった。だが、その考えに変化が起こる。 それはギモコダンの街でのこと。再びナンディニの眷属ニムラムと再開する。この時すでにナンディニは亡く、ニムラムは 守護者として存在する意味もなかった。そんなニムラムにカダンは還そうかというが、彼女は還される事を拒否する。彼女は言う。
「わが主はわが心の中で生きていると。」
生きることは自分が存在するから生きているだけではない。相手の心の中に自分がいるから自分は生きているといえるのだ。
その事に気づいたときに「本当に失われたもの」に気づく。失われたのは「アラミス」ではない。確かにアラミスの記憶は 失われたのだが、それと同時に「自分自身(と自分の存在する意味)」が失われていたのだということを。そして、この旅の意味は 自分自身を取り戻すための旅へとその意味を変えていくのである。

 第4章は前に語ったとおり「物語の原点」。いよいよ「ルタ」が登場するが、この章のルタは男。一瞬はて??と思うかもしれない。 なんせ3章までの「ルタ」は女の子だったから・・・。この章で出てくるヒロイン「ラッテ」彼女が3章までのルタ そのものなのだ。ここではなぜ「ラッテ」が「ルタ」へ変わったのか?そこに至るまでの道筋が明らかにされる。
ここでのポイントは「ルタの求めたものとは?」ということか??
ここで出てくる「ラッテ」はだんだん目が見えなくなる病気ゆえに外に出ることを許されていなかった、外のことを知らない お嬢様。その「ラッテ」が「ルタ」と旅を通じて世の中にある様々な痛みや苦しみや不幸を知り、その苦しみに触れることで 何も出来ない自分を悔やみ、自分にみんなを幸せに出来る力があればと願うようになる。そんなラッテにルタは自らの旅の目的を 告げる。「世の中のひとを助けるために今、旅をしているのだと」そのために自分は箱の中身を宗家の者に渡さなくてはならない、と。 その箱の中身はどんな願いでもかなえられるという「銀糸」。だがそのたびの途中で事故に遭いルタは怪我をしてしまう。

 最終章〜銀色〜
その頃ラッテの目も見えなくなってしまう。このままでは「銀糸」は渡せず、旅の目的は達せない。これ以上旅を続けられない と悟ったルタは「銀糸」を使いラッテを助ける。そしてラッテはルタに宗家の者へ「銀糸」を渡す使命を託されたわけです。

この時、最愛のものである「ラッテ」に残された希望は「ルタの願い」を叶える事。
つまり「銀糸」を宗家のものに渡し、その者が世の中のひとを救うために銀糸を正しく使ってくれること。
だが、その希望は宗家の者である石切(イスナ)にあったときに裏切られることとなる。彼女は「銀糸」を 封印しようとしていたのだ。それを知った「ラッテ」はこのままでは「ルタの願い」は叶えられないと思い 自ら「銀糸」の力を解放してしまう。そして彼女は「ルタの願いを叶えるための存在」として「ルタ」になったのだ。
その後「ルタ(ラッテ)」は仲間(眷属となるもの)を見つけ、彼らを使うことで願いを叶えていこうとすることになる。
だが、ここでひとつの問題が出てくる。「銀糸」を使うこと。それは「どんな願いも叶えられること」ではあるが 繰り返し語られる「代償なく叶えられる願いに意味はあるのか?」そして「それによって叶えられた願いは本当の意味での幸せにつながるのか?」 という疑問。「銀糸」の力は人の理解を超えた人が持つべきでない忌まわしき力。それはただの人間の手では余るもの。 だからこそ「ルタ」は自ら使うことなく、銀糸を作り出した宗家の者に託そうとしたのだ。銀糸を作り出したものならば 正しく使ってくれるだろうと信じて。
 結局はこれを封印されることを知ったために「ラッテ」はやむなく銀糸を使ってしまったのでしょう。

 ここでもうひとつ考える言葉があります。「代償を払うからこそそこに価値が生まれる」。つまり代償を払うのならば 願いが叶えられてもいいのではないか?? だから、眷属になる時、そしてその力を行使するときに何らかの代償を払うことに なったのかもしれない。

 物語の最後、「ルタ」は「ラッテ」として「カダン」によって還されることで物語は終焉を迎える。
「還ること」それは今まで生きてきた、その生き様を忘れる(失う)こと。それはここまで来るまでに味わってきた 苦しみも悲しみも忘れること、ある意味ではそれは幸せなのかもしれない。あるものは納得して還された。またあるものは 笑いながら還された。また悲しみのうちに還されるものもいた。そして還されるものを拒否したものもいた。 物語の終わりの一言にある「でも本当はどちらも泣いていたのかもしれない・・・・」。これらをどう捉えるか。 それを考えたときに得られたものがきっと「朱」のテーマなんだと思われます。

あとおまけですが、作中で度々使われているヴォーカル曲「砂の城」について。
この曲の日本語訳を載せておきます。なにかの参考(?)になれば幸いです。

1番
燃える空から白く燃える太陽が照らす。地平線は私の目に揺らいで映る。

砂嵐が空を満たし、あたかも海のように遠くまでさざ波が広がる。Umm・・・

あなたは何も言わずに私を風下に導く。あなたの影が、白い太陽と焼けた砂から私を守る。

わたしはあなたに伝えたいことがある。でも砂の音が私の声をすべて掻き消してしまう。

※砂の城、それをつかもうと伸ばす手、でもわたしにはできない。わたしは自分のしたいことすらわからない。

壊れやすい砂の城は、私が作った直後に消えてしまう。

私の手からぎらぎらした光が広がる。かすかに私は風が歌うのを聞いた。作っても消えてしまう砂の城。

2番
熱く焼ける空から風がやんだとき、あなたの麻のローブが目立って見えた。

夕日がすべてをオレンジ色に染める。そして真夜中の海のような静寂が訪れる。

冷たい夜空の下、私たちは夜明けを待ちながら、地に手をつき指で砂の城を作る。

たとえ壊れやすく、不確かで、風に飛ばされてしまっても、今、確かにここにあると私は確信する。※