
一時期ダリオ・アルジェントの後継者として注目されていた
アントニオ・ビドーが放ったイタリアン・ジャーロの代表作。
この映画に続いてビドーが発表した「キャッツ・ヴィクティム」は
アルジェント的な作風を極めたビドーの最高傑作だが、
日本ではビデオは未発売。但し、その昔に東京12チャンネルで
一度だけ「美人ダンサー襲撃」という放題でTV放映されている。
この映画最大の見せ場、中庭での絞殺現場を
神父が自分の部屋から見てしまうシーン。
黒マントに黒手袋の殺人鬼、雷まじりの豪雨、中庭のセットに
至るまでアルジェント風味が炸裂。よっぽど好きなんでしょうね。
現在は何をしているのか全く分からないビドーだが、
さすがにアルジェント映画のフォロアーだけあって、
この「ソラメンテ・ネロ」にも才気溢れる描写が横溢。
豪雨の庭園で黒いコートの人影に首を絞められる若い女性や、
車椅子の老婆を燃えさかる暖炉に押し込む描写が続出する。
また、ヴェニスの運河を利用してボートにしがみついた男が
別のボートで押しつぶされる派手な見せ場も用意されている。
ストーリー面ではルチオ・フルチの「マッキラー」(73)を思わせる
犯人像(ネタバレ??)が描かれるが、新味には欠ける。
個人的な意見を言わせて貰えば、ビドーの映画はアルジェントよりも
だいぶ古くさい感じで、映像面ではあまり革新的な試みは行われていない。
まぁそれだけキッチリ作られていると言えばそれまでだが・・・。
主演のリーノ・カッポーニは、プーピ・アヴァーティの傑作ジャーロ
「笑む窓のある家」(76)で主役を演じた俳優。
ヒロインに扮するのはアルジェントの「サスペリア」(76)や
「処女の生血」(74)、「アンディ・ウォホールのBAD」(76)、
池田満寿夫の「エーゲ海に捧ぐ」、最近ではグリーナウェイの
「建築家の腹」(87)にも出ていたステファニア・カッシーニ。
前述の2本とはまた違った趣きの魅力ある表情を見せており、
この映画の見どころの一つになっている。
「サスペリア」とはまた違う雰囲気がイイ感じの
S・カッシーニ。この映画の収穫の一つです。
この映画に関して日本で一番知られているのはゴブリンが担当した
サウンド・トラックについてだろう。先頃まで、輸入盤がCDショップに
並んでいたので、ゴブリンの名前に惹かれて購入された方も多いだろう。
リリースはルチェルトーラ(LUCERTOLA)からで、1995年に発売されている。
この映画が作られた1978年当時、ゴブリンは「マークの幻想の旅」や
「ゾンビ」等を発表、名実ともにバンドは絶頂期を迎えていた頃だった。
CDの解説によると、アルジェントを崇拝するビドーが映画の内容上
どうしてもゴブリンの音楽を欲しがり、バンド自体の返事は快諾だった
にも関わらず、レコード会社がゴブリンの名前を使う事を承諾しなかった為に
ビドーが別の作曲家(S・チプリアーニ)を立てて、共同で作曲を行い、
それをゴブリンがクレジットなしで演奏した、というのが本当のようです。
確かにテーマ曲を聞くと、どうしようもないくらいプログレ調で、
いくら何でもコレをチプリアーニが書いたとは思えない仕上がり。
ゴブリンも、この時期にはメンバーが移動したりと不安定だったらしく
アルバムとしての出来はイマイチ、という評価が多いですが、
映像と合わせた効果はなかなかのもの。アルジェント映画を
みんな観てしまった。だけど最近の映画はなぁ〜・・・という方には
お薦めの1本。自分が観たテープはイタリア版のスリーヴでしたが、
実際に観てみたら中身は何と英語でした。
CDは限定500枚という触れ込みです。欲しい方はお早めに。