オペラ座:血の喝采
全長版/R指定版・バージョン比較

これが噂の米国サウスゲート版・英語音声完全版ビデオ
全編TVサイズのマスターだが、日本版よりも画面は左寄りにトリミング。
Great Thanks to Yoshitomo Fujii for Italian video source.
1)オープニング・クレジットの出方の違い
伊語版にはオリジナル題名である「Opera」が用いられている。
サウスゲート完全版もRCAの日本版も英語マスターなので、
タイトルは「Terror at the Opera」と出る。
両者は製作会社のクレジットや
俳優の名前の順序にも若干の違いあり。
2)開演前の準備
口うるさいプリマ、マーラ・チェコバが車に跳ねられた直後、
コラリーナ・タッソーニ扮する衣装係のジュリアが舞台を横切る
短いショットが復活。彼女は監督のマーク(I・チャールソン)に向かい
「あなたの独創的な演出のおかげで、現場スタッフはイイ迷惑よ!」と
愚痴をこぼす。確かにマークの演出は舞台にカラスを飛ばしたりと
あんまり現実的なアイデアではないが、その辺もアルジェントと
ダブる分身的な役回りなんだろう。
3)慌しい舞台裏のようす
本番を寸前に控え、舞台の袖で興奮したヒロイン、ベティ(C・マルシラック)が
エージェントのミラ(D・ニコロディ)と抱き合っている。その横を通り過ぎていく
兵隊の扮装をしたエキストラ。彼の後を追うようにキャメラは動き、
出番を待ちながら各々の時間を過ごしている出演者達をとらえていく。
人混みの中でベティを見つめる何者かの視線。
その後、一人称キャメラが劇場内をさまよう様に進む主観ショットが
約1分ほど復活。
↑コレっすね。
余りの興奮状態に陶酔したような表情のベティ。
4)ステージ・ストーキング
ステージで歌うベティを見つめる何者かの影。
後に「オペラ座の怪人」を撮ったアルジェントは、ジュリアン・サンズと
アーシア・アルジェントで同じようなシチュエーションを演出している。
挿入された犯人の回想?シーンが終わると、
ドアを開けた劇場の守衛が犯人に気づき、彼に掴みかかるが
逆にフックで首を刺されて殺されてしまう。このシーンの直前に、
一瞬、舞台裏をとらえたショットが挿入される。ベティの背後から
スモークを送り出す裏方の姿。そこでベティを見ていた人影は
双眼鏡を降ろすが、そこには一筋の涙が・・・?
5)舞台が終えて、周囲の反応
正体不明だった少女に関する描写は全長版では特に詳しくなっている。
照明落下のアクシデントを乗り越え、見事にオペラを歌い上げたベティは
感極まって手にしたピストルを高々と掲げる。そのすぐ脇をカラスが
飛び去っていく。その直後、(ベティと同じ)アパートに住む少女アルマが
TVでオンエアされているベティの晴れ姿を見ているシーンが復活。
嬉しそうに画面を見守る少女は「ベティ!ステキ!」とつぶやく。
画面は一転、ホテルの自室?で休んでいるマーラ・チェコバに移り、
彼女は舞台中継を見て、外国語で激しく激怒。飲んでいたビンをTVに投げ、
それがTVのフレームに激突!粉々に砕け散る。
その後、(国際版にもあった)舞台裏でベティがミラに
祝福される場面が登場する。
6)衣装係ジュリアの祝福
劇場から出ていく観客達を俯瞰でとらえたショットの後、
ベティが楽屋に帰ってくると、すでにそこにいたジュリアが
彼女の演技を大げさに褒めちぎりながら出ていくシーンが復活。
ドアを閉めたジュリアの表情は一変し、憎々しげに捨てぜりふを吐いて
立ち去る。この後で国際版と同様、ベティがジュリアの名前を
呼びながら楽屋から顔を出し、アラン警部補と出会うシーンに
つながっていく。
「オペラ座の怪人」でもヒロインの付き人だった
C・タッソーニの演技は相変わらず。
7)チェコバの贈り物
楽屋に入ってきた舞台の助監督ステファノとキスを交わすベティ。
その後、ドアがノックされ、マーラ・チェコバの付き人が
彼女から贈り物が届いたと小さな包みを持って入ってくる。
2人が包みを開けると、それは高級香水。
そこには「グッドラック、リトル・スネイク」というカードが添えられている。
包みを開け、香水ビンのフタを開けた2人は、
余りの匂いのキツさに辟易。それを洗面所に流してしまう。
ステファノが匂いにむせて苦しむフリをしてベティとふざけ合っていると、
再びジュリアが楽屋に入ってきて、香水の匂いに顔をしかめ、
ブツブツ苦言を言いながら部屋を出ていく。
ふとジュリアの姿を目で追ったベティは、楽屋の外に立って
こちらを見ているアラン警部補の姿に目を留める。
アルジェントお得意の奇妙なショット。
右側のビンが香水。カメラにジョボジョボ液体がかかる。
8)トゥゲザー・フォーエヴァー
ベティの目の前でステファノが惨殺された後、雨の中を飛び出した
ベティを部屋まで送った舞台監督のマークが部屋から帰ると、
国際版ではアラン警部補が関係者に詰問を始めている
シーンになっていたが、この間に短いシーンが一つ復活。
伊版のBGMはリック・アストリーの「トゥゲザー・フォーエヴァー」(笑)!
どういうワケだか英語版ではアルジェントっぽい、
唸るギター系のインスト音楽に差し替え。
それは自宅に帰ったマークが恋人のマリオン(A・ヴィターレ)と共に
新聞に出た舞台表を巡って過激なやりとりを交わす
コミカルな印象のシーン。マークを待っていた女性とは
マリオンであった事が分かるシーンであり、
国際版では良く分からなかった彼女の立場(モデルらしい)が
かなり明白に描かれているシーンでもある。
新聞記事は「新しいプリマの出現」を祝福、マークの奇抜な演出については
「スパゲッティ・オペラ」と評され、2人は大ウケする。
更に(筆者の乏しいヒアリングによると)ベティを誉めるマークに向かい、
「前回、あなたがベティ同様に無名の歌手だったセシリア・ガステアを
演出したときは、あんなに冷たい態度だったのに、今回のベティには
興味があるのね・・・ベッドに誘いたい?」とマリオンが尋ねる下りがある。
ガステアは実在するオペラ歌手であり、映画さながらに有名なプリマが
降板した代役としてデビューを飾ったラッキー・ガールだった。
また「オペラ座」のヒロイン候補に真っ先に挙がった女性でもある。
しかしアルジェントは彼女の出っ歯(ゴメンナサイ)を嫌った為、
このキャスティングが実現することはなかった。
キャスティングはジェニファー・コネリー、「レジェンド」のミア・サーラと巡り、
アーシア・アルジェントを経て、C・マルシラックに落ち着いた。
アーシアはともかく、当初アルジェントが考えていたのは
「お姫サマ」系の女優だったのだろうか??
当時アルジェントのGFだったA・ヴィターレと、ホラー映画監督
(イギリス人っぽいが)でもあるマークが下らない批評を笑い飛ばし、
更に舞台裏を披露するような台詞を語る演出は、
ちょっとアルジェントの私生活を象徴しているようで意味シンだ。
(同じように「サスペリア2」では当時の恋人D・ニコロディが、主人公マーク
(D・ヘミングス)の元彼女であるマリル・トーロの写真をゴミ箱に捨てる
場面があった。M・トーロはニコロディに会う直前までアルジェントが
熱愛していた女優で、この辺も辛らつな伊国内向けのフィルム・ジョークっぽい。
が、どちらも国際版からはカットされている。これも笑える。)
9)オペラ座の廊下
関係者が詰問されるシーンの後、衣装を抱えて大道具部屋を出ていった
ジュリアが誰もいない劇場の廊下をたった一人で歩いていく
シーンを始め、第3の殺人まで相当の尺数のシーンが復活。
やはりジュリアしかいない、だだっ広い衣装部の仕事場に
入ってきたベティが先ほど行われた詰問について
ジュリアと話を交わすシーン(重要な会話はなし)も修復されている。
国際版にも衣装を直すジュリアと平行して、電話をかけている
ベティの姿が描かれていたが、一連の会話シーンが復活したことで
物音に振り返ったジュリアが「ベティ?」と声をかけるショットへの
つながりが、より滑らかに感じられる。
10)謎めいた日付け
ベティの衣装に付けられていた純金製のチェーンを
見つけたジュリア。そに何らかの文字が刻まれて
いるのを見つけた彼女は、細かい彫刻を読みとろうと、
拡大鏡に顔を近づける。その時、アンクレット上を
行き来するジュリアの視点ショット(2、3ショット)と
卓上ランプをつけるジュリアの動作が復活。
しかし、犯人が衣装に仕掛けた
このチェーンが意味するものは最後まで不明だった。
11)アパートの通風口
ミラが射殺され、更にソアヴェ刑事も殺害されているのを
知ったベティは恐怖に戦きながら、自分の部屋の中を逃げ回る。
犯人の魔の手がベティに伸びようとした瞬間、
間一髪で、壁の通風口から顔を出した少女アルマがベティを助け出す。
狭い通風口を這っていきながら、二人が交わす会話が相当量復活。
R指定版ではアルマの正体(ベティの歌う声が好きだったアルマは、
通風口を発見して以来、ベティの様子を見守ってきたのだという。
それって・・・幼児ストーカー?笑)がハッキリ描かれず、
かなり強引で意味不明な印象が強かったこのシーンも、
犯人が背後から追ってくる気配がしたり、アルマが躓いたりする
場面を挟むことで、サスペンスフルな雰囲気が強くなり
非常に効果的なシークエンスになっている。
どうしてアルジェントが通風口のシーンに拘るのかが
何となく分かる気がする名シーンだ。
12)アパートの内部
同時に通風口から2人が見下ろす各々の部屋をとらえた
短いショットが復活。R指定版では細かく描かれていなかった
ベティのアパートだが、人の住んでいない荒れた部屋があったりして、
どこか不気味な雰囲気が上手く醸し出されている。
通風口シークエンスの終わると、少女アルマの部屋に辿り着いた2人が
狭い通路から降りてくるのをあおりで撮ったショット以下が復活。
通風口を覗き込んで、犯人が追ってくる影を見つけたベティは
首を引っ込め、少女と共に身を壁に押し当てて気配を消す。
2人の姿を見失った犯人は通風口をより進んで消える。
追ってくる犯人の影を目にするベティ。スティル写真では
確かに見たことのあったショットだった。
13)少女アルマの家庭とお隣さんの事情
無事逃げおおせた2人が、二階にある少女の部屋から降り、
階下にいた母親(前半、ベティの部屋の前で男と抱き合っていたのは
この母親だったのがここで判明する。演じているのは「シャドー」で
アルティエリ女刑事に扮したC・スタッナーロ)とチグハグな会話を
交わすシーンが完全復活。少女とベティは必死で殺人鬼の存在を
主張するが、母親は出ていくようにと言うだけで、全く耳を貸さない。
大声で交わされている会話が通風口にも聞こえている事を知った
ベティは「警察を呼んで下さい!」とだけ言い残して、少女の家を後にする。
廊下に出たベティに、母親から暴力を振るわれて泣き叫ぶ
少女の声が聞こえてくる。エレベーターの柵につかまり、
何かを決心したかのようなベティの表情をとらえた
クローズ・アップが追加されている。
(男出入りの激しい淫乱な母と、喧嘩ばかりしている両親に
嫌気がさしている娘の関係を知ったベティの複雑な表情は、
劇中では描かれないベティと彼女の母親のそれを想像させる)。
14)これは夢?それとも過去の記憶なのだろうか?
アパートを後にして、劇場に逃げ込んだベティはステージを直す
マークと会い、彼の言う「目撃者」を使って犯人を捕まえる方法を聞く。
R指定版ではこの後すぐ「夢のシーン」につながっていたが、
完全版ではベティが一度楽屋に戻るシーンが復活。
楽屋のドアを閉めたベティの背後で、鳥を象ったモビールが揺れ、
それが立てる微かな音がソファーで横になってうなされるベティの姿に重なり、
続く悪夢のシーンへのつながりが非常に滑らかになっている。
この悪夢シーンが非常に難解で、殺される女(ベティの母?)、
若いベティ、そして幼女(まさかアルマ?)が同一の画面に出てくる。
夢は当然ながら理路整然としない物だが、これは一体?)
こうして見ると「オペラ座」は現実と夢、そして過去の記憶が
渾然となってしまったヒロインが、封印した忌まわしい思い出に苦しめられ、
そこから脱出して行く物語なのだということが何となく分かってくる。
余談だが、英語版ではマルシラックの声で入っていたモノローグが
イタリア語版ではアルジェントのナレーションになっている。
15)鮮血のオペラの幕が上がる
夢から覚めたベティがソファーで独り言を呟いた後、
R指定版ではすぐ舞台のシーンに移るが、完全版ではその前に
オーケストラやシーツを被った人影、辺りを見回すカラス
それに観客達(その中に少女アルマと母親もいる!)の姿など
何カットか舞台周辺をとらえたショットが挿入されている。
なぜか劇場にいる親子(左)。この人たちも容疑者リストに入ってるってコト?
右はR指定版にはないシーツの人影ショット。最初の舞台セットに比べると、
手直しした方のセットってなんか微妙に安げ。
これにより、現在行われているオペラ劇の状況が
より良く分かるようになった。
16)マークの天才的・犯人発見法
マークが考え出した犯人を捕らえる「目撃者」とは、
カラスを劇場内に放ち、犯人に襲いかからせる作戦だった(さすが天才監督)。
舞台の背景を突き破って飛び出してくるカラスの檻。
一瞬唖然とする観客達(そりゃ当然)と、辺りの様子を伺うカラスのアップが追加され、
R指定版では細かい部分がかなりカットされていたのが良く分かる
(口に掌をあててカラスを見守るベティなど)。
ありゃ〜大丈夫か?と心配そうなベティ(左)と、
カラスに襲われても全くたじろがない母親(右)。
更に完全版では劇場内を飛ぶ一羽のカラスに先導されるように、
残りのカラスが犯人に襲いかかっていく様子が良く描かれている。
因みに突然襲いかかったカラスに驚いて悲鳴を上げる、
犯人の前の席に座っているのが少女アルマ(上の写真・右)であることも
この完全版なら良く分かる。
17)本当のラスト・シーン
ラスト、アラン警部補が逮捕され、一輪の花を手に刑事達と
2言、3言話し終えたベティは、草むらにしゃがみ込むと、
色とりどりに咲き乱れる可憐な野生の花々の中をかき分け、
這うように進んでいく。そこにベティのナレーションが被さる。
(伊版はアルジェント自身のナレーション。しかし「フェノミナ」やらで
喋り慣れているとはいえ、こんな重大?な事を自分でアテちゃうなんて・・・)
「私はもう誰かと一緒に居たくない。全てから逃げ出したい・・・。
私は人と違う、でも他の誰かと似ていることなんて望んでいない。
私は風が好き。そして蝶が、花が、木が、虫が好き。
頬をそよがせる風が好き・・・。(個人的希望の意訳)」
草むらに捕らわれて動けなくなっているトカゲを見つけたベティは
トカゲの体に絡んだ草を解いてやり、指でつつく。
「私の愛する人・・・あなたは自由よ。・・・もう行きなさい・・・」
トカゲは草むらに姿を消し、ベティは大地を抱きしめるように
草むらに横たわり、静かな微笑みを浮かべるのだった。
画面はここでフェイド・アウトする。
R指定版では一度流れ始めたエンディング・タイトル曲が
一旦フェードして、また同じ曲につなげられる部分があるが、
そここそが完全版のクレジットが始まるタイミングなのだ。
いかにエンディングが刈り込まれていたかが良く分かると思う。
因みにエンディング・クレジットは完全版の方が早く流れる。
以上、17カ所の復活により「オペラ座/血の喝采」は
新たなるホラーの伝説となる・・・か?!