Midnight Double Features
深夜映画2本立て興行
・・・といっても「ロッキー・ホラー」じゃありませんので、悪しからず。
ここは似たような内容の映画(あるいは実際の2本立て映画)を
並べて取り上げよう、という趣旨のページです。
その@
−モストロ・ディ・フィレンツェ映画特集−

喉元に殺人魔のナイフがザックリ!(「新・サスペリア」)
猟奇的な殺人、それも犯人が捕まらない事件が起きると
勝手な推理を立てて映像化したがるのは全世界共通の習性らしい。
大らかな国民性で知られるイタリアでも、かのダリオ・アルジェントが
「フェノミナ」のアイデアにしたと言われる有名な猟奇殺人
事件が起きている。それが<フィレンツェのモストロ事件>だ。
モストロ事件ってなに?という方、日本でも出版されたモストロ本
「フィレンツェ連続殺人」(マリオ・スペッツィ/島村奈津著)を
元に、事件の詳細をワイドショー風?にまとめてみたので
参考にして頂きたい。そんなのとっくにご存知の方、実際の事件に
特に興味のない方は映像化作品の項にジャンプして下さい。
<モストロ事件のプロローグ?>
事件の発端は1968年の8月に遡る。フィレンツェ郊外の田園地帯
シーニャにあるカステレッティ墓地近くの林に停められた
白いアルファ・ロメロの中から若い男女の射殺死体が発見されたのだ。
犠牲者は当時32歳だったバルバラ・ロッチと彼女の若いBFの一人、
アントニオ・ロ・ビアンコ(25)だった。バルバラは人妻ながら
奔放な性格で、その日も年下のアントニオと、彼のアルファ・ロメロで
郊外までドライブするデートを楽しんでいた。
車中には偶然、バルバラの息子ナタリーノ・メーレ(6)がいたが
幼い少年はずっと後部座席で眠っており、母親と彼女のBFを
残忍な手口で殺害した犯人の姿を見なかった。
犯行の凶器はベレッタの22口径。バルバラの夫で軽い精神遅滞症の
夫が疑われたが、証拠が不十分のまま事件の捜査は暗礁に乗り上げた。
<第1の惨劇>
それから数年たった1974年9月14日、やはりフィレンツェ郊外の
ボルゴ・サン・ロレンツォにあるブドウ畑の脇を走るアリーゴ街道に
停められたフィアットの中で、若いカップルの死体が発見された。
男性ジェンティルコーレ・パスクアーレ(19)は運転席で6発の弾丸を受け即死、
GFのステファーニャ・ベッティーニ(18)は流れ弾に当りながらも車外に出たが、
後を追った殺人魔に容赦なく5発の銃弾を撃ち込まれ死亡した。
更に異常だったのは全裸で横たわる彼女の体に96ヶ所にものぼる
ナイフの刺し傷があったことで、それはまるで皮膚の弾力を楽しむかのように
広く浅く全身につけられていた。彼女の遺体は衣服を裂かれ、
両手両足が広げられた状態で発見されたので、最初は性的な
乱暴を受けたと報告されたが、検死の結果その痕跡はないことが判明した。
しかし彼女の秘部には近くの畑から強引にむしり取った
ブドウの枝が荒々しくねじり込まれていたのだ。
あまりにショッキングな犯行手口に、人々の憶測が乱れ飛び
ブドウの枝は農民のシンボルだとか、中世の魔女迫害の手口と
そっくりであるとか、黒魔術の生贄にされたのだとか噂された。
陰惨な事件に不慣れだったフィレンツェの住人達は、この異常な
事件に強い衝撃を受けたが、悪夢はまだまだ始まったばかりだったのだ。
<第2の惨劇>
1981年6月6日。初めて自分の恋人ジョヴァンニ・ホッジ(30)を
家族と一緒の夕食に招いたカルメラ・ディ・ヌッチョ(21)は
アイスクリームを食べに行く、と言い残して2人で家を出たまま
スカンディッチにあるオリーブ畑で惨殺死体となって発見された。
3か月後に結婚式を控えていた2人はやはり銃弾を撃ち込まれて
息絶えており、犯人は車外に運び出したカルメラの死体を
明かり一つない真っ暗な森の中でメッタ刺しにして立ち去った。
この事件には森でカーセックスをする若者をターゲットにした
覗き魔達の中に何人か目撃者がおり、常習者の一人で
近所でも覗き魔:インディアーノ(インド人とインディアンを差す
イタリア語)として評判の悪い救急車の運転手、エンツォ・
スパレッティが詰問された。彼の供述には矛盾した点が多く、
事件が明らかになる前に犯行を妻に語っていた事が決め手となり
投獄された。しかし皮肉なことに彼の無実はすぐ証明される。
<第3の惨劇>
警察の必死の捜査が続く中、同じ年の10月22日、
今度は8年越しの恋を実らせようとしていたステファノ・バルディ(26)と、
素晴らしい美人と評判の恋人スザンヌ・カンピ(24)が、カレンツァーノの
渓谷にかかる橋を越えた所にある、小さな薬草畑が作られている
バルトリーネ原付近に停めた黒いゴルフの傍らで無惨な遺体となって
発見された。スザンヌは下腹部を三角形に切り裂かれ、
その体からは腸がはみ出しているという惨状だった。
しかも事件のあった翌朝、死体が発見される以前に
スザンヌの自宅に「スザンヌのお母さんと話したい」という
正体不明の男から電話があり、殺害現場付近で怪しい人間を
目撃したカップルが複数組、情報提供を名乗り出たりと
捜査陣は大パニックになった。
寄せられた情報の中には「犯行には一つのセオリーがあって、
3つの殺害現場の頭文字を並べるとBABとなり、それは
トスカーナの方言で<父親>を意味するBABBOを綴ろうと
しているのだ」という匿名の手紙が混じっていた。同じ差出人は
被害者のヴァギナにねじ込まれたブドウの枝を持ち出して
「実らないブドウは切ってしまえ」という聖書の一文を引用、
モストロの正体は司祭ではないだろうか?と興味深い推理を
披露していた。遺体に残された薬葵からは錆が検出され、
銃も弾もかなり古い物と推理されたが、司祭のいる修道院には
そうした年季の入った銃や薬葵が置いてあるのが通例だった。
しかし、手紙はそれっきり送られてくることはなかったという。
<第4の惨劇>
そして第4の事件はまさしく問題の手紙にあったBで始まる地名、
バッカイアーノと呼ばれる田園地帯で起きた。
1982年の5月、高校を卒業後、お針子として働いていたアントネッラ・
ミリオーニ(19)は女友達とモストロの話題を出して盛り上がっていた。
「もうすぐ夏が来るからモストロに気を付けなきゃね」と話す友達に
普段はおとなしいアントネッラが珍しく「・・・私、とても怖いわ。
人気のない場所には行かないようにしないとね。」と口を開いたという。
女友達はアントネッラのこの言葉を生涯忘れられなくなった。
なぜなら皮肉にも次の犠牲者になったのは他ならぬアントネッラだった
からだ。その年の6月19日、アントネッラは3つ年上のBFパオロ・
マイナルディ(22)の家で母親らと一緒に夕食をすませ、
散歩に出ると言って町の広場にあるベンチで涼んだ後、
空色のシアト車を走らせて、郊外のバッカイアーノ原を一直線に
切り裂く形で伸びている道路の脇で一休みすることにした。
見通しが良い立地と、友人達が近くにいた(アントネッラらが車中に
いるのが友人らに目撃されている)ことに安心したのか、彼らは
ひとときのセックスを楽しんだ。そして物音を聞きつけたか何かで
その場を立ち去ろうとした2人めがけてモストロの弾丸が発射された。
最初の銃声で悲鳴を上げたアントネッラはモストロの標的となり
眉間を撃ち抜かれて即死、左肩に銃弾を受けたパオロは
傷つきながらも車を発車させたが、誤って降臨を溝に落としてしまった。
必死で車を溝から出そうとするパオロの前にモストロが立ちはだかり、
最初に車の右ヘッドライトを撃ち抜き、続いて左、そしてパオロの額に
銃弾を撃ち込んだ。執拗なモストロは絶命した青年の耳の後ろに
もう1発を撃ち込んで立ち去った。数分後、偶然その場を通りかかった
カップルによって発見されたパオロは奇跡的にまだ息があった。
もし命を取り留めれば、彼は確実にモストロの姿を見ているはずだったが
病院に運ばれたパオロは、残念ながら約8時間後に息を引き取った。
<第5,第6の惨劇>
続く1983年9月9日にはジョゴリ街道に停めたキャンピング・バン内で
2人の死体が発見された。しかし今度の被害者は両方とも男性だった。
彼らは二人ともドイツから観光旅行に来ていた24歳の学生で、
(どうやら)ホモセクシャルだったらしい。殺害された一人は華奢な体に
ブロンドの髪をしており、見通しの悪いバンの高窓から覗けば
一見女性に見えなくもないルックスだった。
翌1984年の7月29日、今度はサン・ペル・マッジョーレで
22歳のクラウディオ・ステファナッティと、彼の可愛らしいGF、
ピア・ロンティーニ(18)が惨殺死体となって発見された。
絶命した被害者の女性にブドウの枝を突き差し、2度に渡って
性器自体を切り取って持ち去りながら、乳房だけは必ず無傷のまま
手をつけずに残していたモストロの犯行手口から、マスコミは
「犯人は強いマザーコンプレックス傾向である可能性が大きい」と報道。
モストロはそれをあざ笑うかのように、美しいブロンド娘のピアを
右目の下に銃弾を撃ち込んで殺害した後で、彼女の恥丘と
左乳房までを切り取って持ち去ったのだった。
2人が殺害される前に立ち寄ったバールの経営者は
ピアをじっと見つめる奇妙な50歳前後の男の姿を目撃していた。
長身で休日にも関わらずスーツにネクタイ姿の男は、店の前の駐車場が
空いているにも関わらず、乗ってきた車をわざわざ店の裏手に停めて
店に入ってきたという。この証言はモストロに関するかなり
信頼性の高い目撃例として捜査されることになった。
<第7の惨劇>
様々な容疑者が浮かんでは消え、モストロの正体に
イタリア全土が恐怖する中、とうとう最もおぞましい事件が起きてしまう。
モストロの犯行はその夏最後の新月(月のない晩)と週末が重なる
日付だった。被害者を入念に捜し出したモストロは、スコペッティの
丘にある小さな空き地にテントを張っていた一組のフランス人カップルに
ターゲットを絞る。犯行現場となる場所は人通りが滅多になく、
また被害者が外国人だった為に、捜索願いが出される心配もなかった。
モストロの呪われた条件に叶ったカップル、ミッシェル・クラバッシュビル
(25)と、年上のショートカット美人、ナディーン・モリッツ(36)は
1985年9月8日の晩、テントの中で愛を確かめあっている最中に襲われた。
ミッシェルは陸上選手として活躍し、地元ではパーカッショニストとしても
名前を知られた青年で、モンペリアールで知り合ったナディーンと
イタリアを旅行中だった。靴屋のオーナーで、別れた夫との間に
2児があったナディーンは子供を母親に預け、若い恋人と一緒に
命の洗濯をする目的でイタリアへの旅行を満喫していた。
モストロがテントをナイフで切り裂くと、様子を見るためにミシェルが
顔を出した。彼は慌てて中に引っ込んだが、奥でランプをかざしていた
ナディーンはモストロの弾丸を蒼い眼のすぐ下に受けて即死。
モストロはとどめに彼女の心臓と肺に立て続けに3発を撃ち込んだ。
恋人の無惨な最後を目の当たりにしたミッシェルは、
腕と上唇を銃弾で切りながらもテントから逃げ出した。
しかし土地勘のない彼は道路と逆の方向に走ってしまい、
森の中でモストロにノドを切り裂かれた。その頸動脈から吹き出した
大量の血は森の木々の高い枝にまで黒い染みを残した。
茂みに投げ込んだミシェルの顔をペンキ缶の蓋で覆ったモストロは
テントに戻ってナディーンの下腹と胸を切り裂き、戦利品を得た。
モストロはその一部を事件を捜査する女検事シルヴィア・デラ・モニカに
送りつけることで、犠牲者の死体を探して世間が大騒ぎるることを
期待していた。しかしミシェルの死体はモニカ検事が封筒を開ける前に
発見され、見識に回された肉片は左胸の一部であることが確認された。
<モストロの正体とその余波>
これだけの事件を起こしたモストロの正体は、結果として判明しなかった。
現場からは指紋や遺留品は一切発見されず、7人の容疑者が書類送検
されたが、犯人は特定されていない。犯人像の分析はアメリカのFBIにも
依頼されたが、やはり彼らもモストロ事件には白旗を上げた。
いつからともなく、この殺人鬼はモストロ・ディ・フィレンツェ、
つまりフィレンツェの怪物と呼ばれるようになり、マフィア抗争絡みの
殺人事件を別にすれば、滅多に残虐な事件が起きないイタリアの国民を
果てしない恐怖に陥れた。しかしモストロの犯行であろうと考えられる
事件は85年の第7の事件以来、起きていない。
一般的にはモストロは沈黙を続けている、あるいは死んでしまった
という意見が囁かれているようだが、それまでカップルばかりを狙って
被害者を銃殺し、その死体の一部を持ち去る手口を続けていた犯人が
突然別の手口に乗り換えたところで何の不思議もない。
この殺人者の精神状態は常人には理解できない部分があるに
違いないからだ。
モストロに関するルポを続けた「ナツィオーネ」の記者マリオ・スペッツィは
島村奈津と共同で著した「フィレンツェ連続殺人」中でモストロ事件と、
フィレンツェについてこう語っている。
「フィレンツェはおかしな街さ。観光客目当てのこそ泥は
少なくないとしても、殺人の数からいえばイタリアでは一番安全な
くらいなのに、たまに何か起こるとこれが物凄く妙なんだ。
なぜかな。僕にはモストロ事件が、すこぶるフィレンツェらしい
犯行に思えてしかたないんだ。・・・ローマほどの観光地にもなり切れず、
ミラノほどビジネスライクでもない。その間で取り残されて
伝統の重圧に耐えかねている、美しくも憂鬱で、お高くて、
スノッブなフィレンツェのね。」
<映像化作品を紹介>
モストロ事件に関する最初の映像作品は、第5の犯行が起きた後、
1984年の年明け頃からイタリアの国営TV局 RAI
の為に
ローマに住む女流監督チンツィア・トリーニの演出で製作された
ドキュメンタリー番組だった。その内容は68年に起きた殺人事件の
被害者バルバラ・ロッチの夫であり、同時に容疑者とされた
ステファノ・メーレへのインタビューを中心に構成されていた。
その中でフィレンツェに住む霊能者に犯人像を聞く部分があり、
そのサイキックは犯人は「フィレンツェ郊外で身障者の為に
働いている聖職者」であり、遺留品に触れることが出来れば
名前も分かると言い放った。完成した作品を見た
RAI は
カトリックへの信仰が厚いイタリアでは絶対に物議を醸し出すと予想し、
結局それをお蔵入りにした(当然)。取材は83年から翌年にかけて
行われたが、問題の霊能者は次の殺人事件は線路脇で起きると
予言していた。まさに第6の犯行はフィレンツェ市内へと通じる
ローカル線の脇で起こったのだった。
しかしモストロ事件へのイタリア国民の関心は一向に冷めず、
2人の新人監督によってそれぞれ別の劇場用作品として完成した。
先に完成したのはチェザーレ・フェラーリオの「モストロ・ディ・
フィレンツェ」だったが、ほぼ同時進行でカミーロ・ティッティも
題名未定のまま作品の制作を進めていた。
「モストロ・ディ・フィレンツェ」の試写会に
招かれた「フィレンツェ連続殺人」の著者、マリオ・スペッツィは
「かなり独創的な脚色と血糊の量が気になった」という。
この2本は同時上映される予定で制作されたが、
それを知った被害者の遺族達がこぞって弁護士に相談し、
この2本を上映禁止、あるいは上映中止にするよう訴えた。
裁判の結果、モストロ・ディ・フィレンツェという直接的な題名を
付けなかったティッティの監督作は、謝罪文のテロップを流す条件で
フィレンツェでの上映を許されたが、それでも後に決定されたタイトルは
「殺人者は未だ我々の間に」という、かなりストレートなものだった。
しかし「モストロ・ディ・フィレンツェ」に下された判決は
「今後フィレンツェとその近郊での上映を一切禁ずる」という
厳しいものだった(ローマでは公開されたようだ)という。
実はこの2本が両作品とも字幕付きでビデオ化されており、
「モストロ・・・」の方が「ミッドナイトリッパー」として、
「殺人者は・・・」の方は「新サスペリア」という邦題で
リリースされた。両作とも発売元は大映ビデオで、
何となく奇妙な繋がりを感じるが、レア度から行くと
わりとどこにでも置いてあるのが「新サスペリア」、
「ミッドナイトリッパー」の方は殆ど見かけたことがない
タイトルということになる。
「ミッドナイトリッパー/Night
Ripper」
aka:IL Mostro di Firenze
The Monster of Florence
残虐な連続殺人事件の謎に、息もつかせぬ
サスペンスで迫る犯罪ミステリー。
あなたはいつ犯人がわかるだろうか?

1986年/カラー/84分/イタリア語版/モノラル
字幕付き日本版ビデオは大映から発売済み
製作総指揮:アレッサンドロ・カロスッチ
製作:マリオ・ジャコミーニ/ブルーノ・ノリス
監督:チェザーレ・フェラーリオ
原案・脚本:チェザーレ・フェラーリオ/
フルヴィオ・チッツァルディ
(ブルーノ・ノリス?)
撮影:クラウディオ・チリロ
音楽:パオロ・ルスティケリ
出演:レオナード・マン、ガブリエレ・ティンティ、
ベッティーナ・ジョヴァンニーニ、フランチェスカ・ムッジョ、
フェデリコ・パッツィフィーニ、リディア・マンチネッリ
<物語>
1985年の9月8日の夜、サンカッシャーノの森に
キャンプに来ていた若いカップルの男女が、全裸のまま
銃弾を撃ち込まれるという残虐な手口で殺された。
犯人は分厚いコートを着た謎の男。
事件を取材するジャーナリストのジュリア(ジョヴァンニーニ)は
殺人現場のあまりの酷たらしさにショックを受けた。
彼女のBFである作家のアンドレアス・アッカーマン(マン)は
夏になると決まって起きるこの異常な殺人事件を題材にした
著作を発表しようとしていた。アンドレアスはキャンプの男女が
死体となって発見された現場に赴き、そこで年老いた
被害者の母親と出会い、やりきれない思いを聞くことになる。
自宅に戻ったアンドレアスは、ジュリアに協力してもらい
<フィレンツェの怪物>と呼ばれる、68年以来毎年のように
猟奇的な殺人を繰り返す犯人像を調査していく。
全てが始まったのは68年、殺されたのは浮気妻と評判の
尻軽女と、その愛人の青年だった。犯人は浮気妻と付き合っていた
若い愛人達の一人か?それとも日頃から妻から見下され続けた
ふがいない夫の復讐か?あるいは覗き魔の仕業なのか・・・?
気晴らしにジュリアと出かけたオペラ座の公演で
母親に指図される青年の姿を見たアンドレアスは、
作家としての想像力を働かせ、独自の理論で
犯人像を探り出していく。犯人はきっと裕福な環境の元に育ち、
過保護な母親のせいで閉鎖的な屋敷の中でストレスを貯め
そのはけ口を殺人に求めたのではないか?もしかすると
母親と第3者の倒錯的なセックスを覗き見たのかも・・・。
犯人は毎年のように犯行を続け、その手口も次第に
エスカレートし、遂には被害者の肉体の一部を切り取って
持ち去っている。窓を叩く大粒の雨を見ながら、アンドレアスは
犯人が裁かれる法廷を想像する。傍聴席にいるのは
犯人の母親、そして被害者の親族・・・。
ある朝、カフェに出かけたアンドレアスは、遂に彼の考える
犯人の姿と瓜二つの男を発見し、後を追うのだが・・・。
<解説>
映画で描かれる殺人事件の現場はかなり事実に忠実。
事実同様に描かれる殺人事件と平行して、主人公が
犯人像を推理していく構成なのだが、主人公が思いつく犯人像が
余りに独創的すぎるのと、事実を扱っているだけに
適当な終わり方をする訳にもいかず、結局犯人の正体が
明らかにされない幕切れになっているのは消化不良でいただけない。
監督のチェザーレ・フェラーリオは日本版ビデオの解説、
海外の資料を調べる限り、この映画が監督デビュー作の
素人らしいが、どういう訳かマリオ・スペッツィの本には
<イタリアの大御所監督>と書かれている。翻訳が間違って
いるのだろうか?他の監督作としては、アイルトン・セナの
恋人と報道された「バイ・バイ・ベイビー」のキャロル・アルトを
主役に起用した(どうみても)金儲け第一主義の映画である
「最も美しい女」があり、そちらも女性作家がエロティックな
体験を回想するという本作に似た構成になっている。
音楽を担当したパオロ・ルスティケリは、往年の大作曲家
カルロ・ルスティケリの息子だが、彼の手掛けた映画は
大半が(一般的な視点からすると)ゴミやクズ中心で、
その点ではこの映画も例外ではない。
出演のレオナード・マンは「ガンマン無頼/地獄人別帖」等に
出ていた俳優。渋めのルックスが映画に深みを与えている。
新聞記者の役で一瞬だけカメオ出演する(が、クレジットは
2番目だ!)ガブリエレ・ティンティはもう書くまでもないが、
ラウラ・ジェムサーの旦那様で、彼女と一緒に出演した
「ブラック・エマニュエル」シリーズが有名。マルコ・ヴィカーリオの
「黄金の7人」シリーズでは泥棒一味のイタリア人青年を演じていた。
ジェムサーとはおしどり夫婦だったが、彼女を残しティンティは
80年代に死去している。日本で見られる彼の代表作には
パオロ・カヴァーラのモンド・アイロニー映画「野生の眼」、
アンドレア・ビアンキのエロティック物「煉獄アムール」等がある。
なぜか中盤で消えてしまうヒロインには「地獄の門2」の中堅女優
ベッティーナ・ジョヴァンニーニ。特別若くてキレイという売りはないが
ヌードも見せてくれる熱演だ。
「新サスペリア/
The Murderer is Still With Us」
aka:L'Assassino e Ancora
Tra Noi
彼女が見たものは悪夢か現実か!?
男と女の愛を恐るべき猟奇で血染めにする
戦慄のサスペンス・ホラー!

1985〜86年/カラー/83分/イタリア語版/モノラル
字幕付き日本版ビデオは大映から発売済み
監督:カミーロ・ティッティ
原案:カミーロ・テッティ
ジュリアーノ・カルメニーオ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
カミーロ・ティッティ
撮影:ジュセッペ・ベラルディーノ
音楽:デッド・マリアーノ
出演:マリアンジェラ・ダブラッチョ/
ジョヴァンニ・ヴィセンティン/リカルド(・バリシオ)・ペロッティ/
ルイジ・メザノッテ/イヴォンヌ・ダブラッチョ
<物語>
イタリアで、若い女性ばかりを狙って殺害し彼女たちの肉体を
惨たらしく切り刻む猟奇殺人事件が発生。今回の事件の
被害者は冬枯れ田森の中でBFとキャンプしているところを襲われ、
射殺されて絶命した後で女性器にブドウの枝を突き刺されていた。
犯罪学を学ぶクリスティアーナ(ダブラッチョ)は
卒業論文にこの事件をテーマにとり上げ、警察とは別に
独自の調査を開始する。捜査を進める中、訪れた解剖室で彼女は
青年医師のアレックスと出会い、たちまち恋に落ちてしまう。
殺人鬼は次々と犯行を重ね、血みどろの死体ばかりが増えていく。
単身危険な捜査を続けるクリスティアーナに、アレックスは
論文のテーマを変えるように言うが、彼女は全く聞き入れない。
殺人鬼は7年前から犯行を始め、被害者に致命傷となる銃弾を
撃ち込んで現場から立ち去っている。犯人を推理する
クリスティアーナの元に奇妙な脅迫電話がかかり、
警察で見かけた覗き常習犯の医者を訪問すると、突然逆上した
医者に襲われそうになったりする。
連続殺人の手がかりを探るには覗き魔と知り合いになる必要が
あると考えたクリスティアーナは郊外にある「悪魔のバー」と呼ばれる
変態が集まるバーへ向かう。そこで知り合った女に覗きの
やり方を実地で教わるクリスティアーナ。そのバーには彼女が
大学で犯罪学を学んでいるレオナルド教授の姿もあった。
やがて殺人鬼の魔の手は部屋帰ったクリスティアーナにも迫り、
危ういところをアレックスに救われる。やがて再び犯行が起き、
バーで見かけた怪しげな男ビッリが容疑者として逮捕された。
クリスティアーナは事件について何かを知っているらしい
「悪魔のバー」のバーテンに会いに再び森の中の店に行くが、
そこで彼女が見たのは天井から吊されたバーテンの惨殺死体だった。
程なくしてクリスティーナの同級生で結婚を間近に控えた
女学生アントネッラと、そのBFパオロが殺人魔に襲われ
殺害されてしまう。拘束中だったバッリはアリバイを認められ
皮肉にも事件とは無関係と証明が成り立ち、保釈される。
そんな中、事件現場に落ちていた精神安定剤を
常用していたりとアレックスの不審な行動が目立ち始め、
クリスティアーナは自分が最も愛し、信頼している
彼こそが真犯人ではないか?という恐ろしい疑惑に取り憑かれていく。
ある日、アントネッラの霊を呼び出す降霊会が行われ、
その席で、何か恐ろしい光景を見たかのように霊媒師が絶叫する。
犯人がまた殺人に及んだ!今度はキャンプ中の男女が襲われ
男性はノドをかき切られ、女性は乳房を切断された!
言いようのない不安にかられたクリスティアーナは
アレックスと約束した映画館へ駆けつける。そこにいたのは
確かに愛するアレックスだった。彼の肩にもたれ、安堵のため息を
漏らすクリスティアーナ。しかし彼らの横に座った人物こそが・・・。
<解説>
イタリアン・ホラーではあるが、もちろんダリオ・アルジェントの
「サスペリア」とは(サスペンス場面で、ヒロインの部屋が一瞬
青や赤のライトに照らされたり、ドアの覗き窓から血走った眼が
こちらを見ていたりと、それ風のクスグリはあるものの)一切無関係。
まぁ、この題名にはきっと騙された人も何人かいるでしょう。
「ミッドナイトリッパー」に比べ、同じ内容を描きながら
こちらは実在の犯人がどんな人物なのかを描くよりも
自分の周りの誰かが犯人だったらどうなるか?というスリルに
焦点が当てられており、一歩踏み込んだ?展開になっている。
また実際の捜査状況を元ネタにしたと思われる
展開も登場し、ヒロインがカーセックスに興じるカップルを狙った
覗き魔の集まる悪魔のバー(タヴェルナ・デル・ディアブロ、つまり
悪魔の居酒屋と呼ばれるレストランが実在するそうだ)を
訪れるエピソードにかなりの時間が費やされているのも面白い。
しかしストーリー的な膨らみ、あるいは斬新な展開に乏しく、
怪しげな人間が何人も登場するわりには本筋とは
全然無関係の出来事ばかり起きているような印象。
最後にヒロインが犯人ではないかと疑っていた
自分のBFの無実が(一応)証明されるドンデン返し?が
用意されてはいるが、やはりこちらも印象としては
「ミッドナイトリッパー」同様、はぐらかされた感じが否めない。
更に最初は音楽もロクに入っていないドキュメント調の
タッチで始まるのに、後半に行くに従って音楽バリバリ、照明も
原色が出てきたりして、ド派手になっていくのはなぜ?
また実際の事件が起きるのは夏なのに、製作の都合上なのか
撮影が全て冬になって葉の落ちた森で行われているのも謎。
(まぁ、それはそれで効果的だが・・・)
ラストの映画館でヒロイン達が見ている画面に本編と同じ原題
(殺人者はまだ我々の中にいる)というのが出て幕切れになる
困った展開も含めて、どうにも素人くさい仕上がりの1本だ。
ただし1つ1つの殺人をかなり丁寧に再現する内容は、
モストロ事件の映画化という事を知らない人々(含:海外マニア)には
単なるゴア描写満載のジャーロ映画として受けたらしい。
監督のカミーロ・テッティは本作の後に「バイ・バイ・ベトナム」(88)の
製作総指揮を担当したキャリアの持ち主。
「新サスペリア」でも 監督/脚本/製作を手掛けるなど、
多才ぶりを発揮しているが、それ以外の関連作が見つからないので
力量はイマイチなのかもしれない。
ティッティと共同で脚本を書いているのがイタリア娯楽映画界の
巨星エルネスト・ガスタルディ。また海外の資料にはないが
日本の検索エンジンでは、この2人以外に「荒野の無頼漢」(70)
「美女連続殺人魔」(72)、「ラットマン」(86)などの作品を
監督したことで知られる、アンソニー・アスコットこと
ジュリアーノ・カルニメーオの名前もクレジットに見受けられる。
音楽担当は「炎の戦士ストライカー」「マッドライーダー」等B級専門の
デッド・マリアーノ。映画の中身を見れば、何となく納得できる布陣だ。
出演者も無名俳優ばかりのようで、他の出演作などは探せなかった。
どちらもゴア描写を期待するファンにとっては、それなりに満足できる仕上がり。
もちろん<モストロ事件>なんて知らなくても一応楽しめるが、
本来、この2作の最も正しい観賞方法は「リング」「らせん」のように
2本まとめてみるのが一番楽しいと思う。