アントニオ・ビドー
Antonio Bido
「ソラメンテ・ネロ」や「美人ダンサー襲撃」等のジャーロ映画で
アルジェント的な画面を作りだし、一時は彼の後継者とまで呼ばれた
アントニオ・ビドーだが、その後ほとんど名前を聞かなくなってしまった。
海外でも彼はジャーロ2本だけしか撮っていないように思われているが、
実際には以下の通り、それ以外にも1,2本の監督作・脚本作があった。
どんな映画かは今後、調べられ次第にUPする予定。
取り敢えずはまだ元気で活動しているようだが・・・。
<フィルモグラフィー>
「Mak pigreco 100 」(1987)
●ユーロトラッシュ映画の代表女優とも呼べる
エリカ・ブランが主演したロマンティック・ドラマ。
共演は何とレイモンド・ラブロック!う〜ん、凄そう。
この映画でもアルジェントっぽい画面を
撮っているのだろうか?それ以外の出演者は
ルーカ・ライオネロ、ベアトリス・マッコーラ。
「ソラメンテ・ネロ」 (1978)
Solamente
nero
(The) Bloodstained Shadow(輸出・ビデオ題名)
Blutiger Schatten(独)
Only Blackness
Sombra Sangrienta(スペイン)
Den Blodbestankta Skugan(スゥエーデン・ビデオ題)
Dietro L'Angolo il terrore(製作時の題名)
黒マントに黒手袋の殺人鬼、雷まじりの豪雨、中庭のセットに
至るまでアルジェント風味が炸裂。よっぽど好きなんでしょうね。
現在は何をしているのか全く分からないビドーだが、
さすがにアルジェント映画のフォロアーだけあって、
この「ソラメンテ・ネロ」にも才気溢れる描写が横溢。
豪雨の庭園で黒いコートの人影に首を絞められる若い女性や、
車椅子の老婆を燃えさかる暖炉に押し込む描写が続出する。
また、ヴェニスの運河を利用してボートにしがみついた男が
別のボートで押しつぶされる派手な見せ場も用意されている。
ストーリー面ではルチオ・フルチの「マッキラー」(73)を思わせる
犯人像(ネタバレ??)が描かれるが、新味には欠ける。
個人的な意見を言わせて貰えば、ビドーの映画はアルジェントよりも
だいぶ古くさい感じで、映像面ではあまり革新的な試みは行われていない。
まぁそれだけキッチリ作られていると言えばそれまでだが・・・。
主演のリーノ・カッポーニは、プーピ・アヴァーティの傑作ジャーロ
「笑む窓のある家」(76)で主役を演じた俳優。
ヒロインに扮するのはアルジェントの「サスペリア」(76)や
「処女の生血」(74)、「アンディ・ウォホールのBAD」(76)、
池田満寿夫の「エーゲ海に捧ぐ」、最近ではグリーナウェイの
「建築家の腹」(87)にも出ていたステファニア・カッシーニ。
前述の2本とはまた違った趣きの魅力ある表情を見せており、
この映画の見どころの一つになっている。
「サスペリア」とはまた違う雰囲気がイイ感じの
S・カッシーニ。この映画の収穫の一つです。
この映画に関して日本で一番知られているのはゴブリンが担当した
サウンド・トラックについてだろう。先頃まで、輸入盤がCDショップに
並んでいたので、ゴブリンの名前に惹かれて購入された方も多いだろう。
リリースはルチェルトーラ(LUCERTOLA)からで、1995年に発売されている。
この映画が作られた1978年当時、ゴブリンは「マークの幻想の旅」や
「ゾンビ」等を発表、名実ともにバンドは絶頂期を迎えていた頃だった。
CDの解説によると、アルジェントを崇拝するビドーが映画の内容上
どうしてもゴブリンの音楽を欲しがり、バンド自体の返事は快諾だった
にも関わらず、レコード会社がゴブリンの名前を使う事を承諾しなかった為に
ビドーが別の作曲家(S・チプリアーニ)を立てて、共同で作曲を行い、
それをゴブリンがクレジットなしで演奏した、というのが本当のようです。
確かにテーマ曲を聞くと、どうしようもないくらいプログレ調で、
いくら何でもコレをチプリアーニが書いたとは思えない仕上がり。
ゴブリンも、この時期にはメンバーが移動したりと不安定だったらしく
アルバムとしての出来はイマイチ、という評価が多いですが、
映像と合わせた効果はなかなかのもの。アルジェント映画を
みんな観てしまった。だけど最近の映画はなぁ〜・・・という方には
お薦めの1本。自分が観たテープはイタリア版のスリーヴでしたが、
実際に観てみたら中身は何と英語でした。
CDは限定500枚という触れ込みです。欲しい方はお早めに。
「美人ダンサー襲撃」(1977)
Il Gatto dagli occhi di giada
aka:The Cat with the Jade Eyes (伊語原題の直訳)/
The Cat's Victims/Watch Me When I Kill/
Kattens Ofre/Die Stimme des Todes/
Katten med Stengat
イタリア映画/カラー・90(オリジナル110分?)分/ヴィスタヴィジョン
日本劇場未公開(TV放映/ソフト未発売)
製作会社:エリス・チネマトグラフィカ
監督:アントニオ・ビドー
製作:ガブリエラ・ナルディ
脚本:アントニオ・ビドー/ロベルト・ナタール/
ヴィットリオ・シラルディ/アルド・セリオ
撮影:マリオ・ヴルピアーニ
編集:マウリッツィオ・テデスコ
音楽:トランス・ユーロッパ・エキスプレス
出演:パオラ・テデスコ(マーラ)/コーラッド・パニ(ルーカス・カーマン)/
フランコ・チッティ(パスクゥアレ・フェランテ)/フェルナンド・セルリ
(ジョヴァンニ・ボッツィ)/ジャンフランコ・ブーロ/イル・プラット/
ビアンカ・トッカフォンディ(エズメラルダ・メッソーニ)/
ジュゼッペ・アドバッティ/パオロ・マルコ(カルロ)/クリスタ・ピラス
●かつて1度だけTV放映されたことがある幻の傑作ジャーロ。
しかし印象があまりにもアルジェントに似ていたため、
このオンエアを観た人々を虜?にしてしまった恐るべき作品。
監督は後に「ソラメンテ・ネロ(未)」を発表するアルジェント・フリーク、
アントニオ・ビドー。ビドーの映画はやたらと会話のシーンが多く、
一人称キャメラなど、ヴィジュアル的にはアルジェントを良く真似ているが、
全体の雰囲気はイマイチ冴えがなく、凡庸な感じ。
この作品は特に「サスペリア2」からの影響が顕著なようで、
劇中オーブンに頭を押し込む殺人シーンが熱闘風呂殺人を彷彿させる。
ついでに2階の窓ガラスが外れて主人公の背後に落ちてくるシーンもある。
先頃、幻のTV録画テープを見せて頂ける機会があり、
その際にチェックできた箇所も併せてUPさせて頂いた
(物語欄で色が変えてある部分は放映時にカットされていた場面)。
因みにTV版のオープニングはタンゴの映像にクレジットが載る
パーフェクトな編集で、タンゴのライブ音だけ活かした黒味に
クレジットだけが出る味気ないレダンプション版、劇中のショット
(メッソーリが殺される場面で廊下を歩いてくる犯人の足下を追ったもの)に
別タイトルと変名クレジットが数点だけ載る米版に比べると
当然ながらずっと気の利いた処理になっていたことも付け加えさせて頂く。
<物語>
ローマにある薬局の主人ビアジェ・デザンは、最近、何者かの脅迫に怯えていた。
ある晩、店員サントーリが帰った直後、彼は閉店直後の店内で襲われ
喉笛を切られて殺害された。現場をタクシーで通りかかった
美しいタンゴ・ダンサーのマーラ(テデスコ)は、アスピリンを買おうと
薬局のドアを叩くが、扉は中から押さえつけられ、ガラスの向こう側に立った
人影から「もう閉店だ」という不気味な返答が返ってきた。
その直後に店主の無惨な死体が発見され、マーラが会話を交わしたのが
殺人犯だった事が判明する。
街のパブでタンゴの舞台を終えたマーラは、執拗に映画への出演を
交渉してくる脚本家のミケーレと、同じく若い脚本家のカルロ
(マルコ)の申し出を軽くあしらった後、しばらく姿を消していた
TVマンの恋人ルーカス(パニ)と再会、舞台の相手役パオロとの
デートをキャンセルして、ルーカスと一緒の一時を楽しむ。
その晩、自宅に帰ったマーラは就寝中、部屋に忍び込んだ何者かの
気配で目を覚ました。恐怖を感じた彼女はルーカスの部屋に居候を決め込む。
時を同じくしてルーカスと同じフラットに住んでいる金貸しの中年男
ジョヴァンニ・ボッツィ(セルーリ)に異様な嫌がらせ電話がかかる。
同室に居合わせた彼の愛人エスメラルダ・メッソーリ
(トッカフォンディ)は、先日殺された薬局の主人が
殺人魔に襲われる直前に電話をかけていた相手だった。
2人の会話から彼らが過去に何か他人から恨まれる様な
行動をしていた事が明らかになる。
ボッツィは怪電話を録音したテープの分析をルーカスに依頼、
彼らはスタジオに赴き、テープに録音された音の中にドーベルマンの吠え声と、
女性の絶叫、そしてドイツ語で何事かを叫ぶ声が入っている事を突きとめる。
しかしその事実を知らされたボッツィは、どこか怯えた表情を見せるのだった。
同じ頃、自宅にいたエスメラルダに顔の部分が切り取られた奇妙な
集合写真が届く。それは彼女が大事にしまっていた写真と全く同一の物だった。
怯える彼女はボッツィに連絡するが、留守番テープが回るばかり。
その直後、屋敷に侵入した何者かがエスメラルダを襲い、
高熱のオーブンに彼女の頭を突っ込んで殺害した。
フラットに帰ってきたマーラは、駐車場の入り口に出車を
妨害するかのように止めてある車に苛立つボッツィと会う。
マーラは彼の車に乗り込んで、車を出そうとするが、
突然何者かに襲われ、殺人魔が周囲をうろついているのを感じる。
ボッツィの留守電に残された、ドーベルマンの吠え声が録音された
脅迫電話をルーカスと一緒に聞いていたマーラは、そこに出てくる
デザンという名前が自分の立ち寄った薬局の表札に書かれていたのと
同じ事に気付く。更に自宅で殺されたエスメラルダも、ボッツィとは
密接な関係にあった事を知ったルーカスは、薬局の主人デザンの未亡人に会い、
殺された主人が北イタリアのパドバに住んでいたこと、陶磁器の卸売りをしていた
フェレッティと共に戦争から衰弱して帰ったこと、それに監獄を脱獄した
悪党パスクワレ・フェランテ(チッティ)の裁判でボッツィやミッソーリと共に
陪審員をしていた過去があった事実を知る。
ルーカスは引き続き、フェランテ事件を担当した老弁護士や、
フェランテの妻を訪ねて独自の捜査を進め、フェランテが
犯人ではない確証を掴む。左利きのフェランテのあだ名はレフティで、
警察の捜査から殺人犯は右利きだと分かっていたからだ。
身辺を嗅ぎ回られているのを知ったフェランテは、ルーカスを銃で脅して
車ごと誘導。郊外の滝で激しく言い争うが、彼が警察関係者でないと分かると
おとなしく引き下がった。
人物関係を探っていくうち、ルーカスはデザンの妻から聞き出した
ペレッティを訪ね、薬局のデザンが戦争末期にナチスドイツの活動に加わり、
本来捕虜になって処刑されていた筈なのに、無事に逃げ出した事実を聞き出す。
殺人犯の魔手は次第にマーラに伸び始め、舞台稽古を終えて
衣装部屋に入った彼女の後をつけ、マーラの後から部屋に入ってきた
ダンサー・パオロの喉を掻き切って殺害する。身の危険を感じたボッツィは
フラットを引き払い、出身地パドバのホテルに宿を取り、そこから
ルーカスに会いたいと電話をかけてくる。全てを打ち明けたいと
電話口で告げるボッツィ。警察の質問責めで憔悴したマーラを安全な
ローマ郊外の実家に預け、ルーカスはボッツィに会いにパドバへ車を走らせる。
しかし、殺人魔の魔手は既にボッツィを捕らえていた。
彼は風呂に入っているところを襲われ、シャワーコードで
首を絞められて惨殺されてしまった。
(このシーンは子供の頃にTVでこの映画を見た筆者のトラウマ!)。
事件の背後に隠された謎を求めて、パドバの街についたルーカスは
田舎町に漂う奇妙な雰囲気に圧倒される。そんな中、
戦争中にボッツィの近所に住んでいた一家が今でも古びた
アパートの一室に住んでいる事を知ったルーカスは、
フェレッタという一家の老婦人からボッツィとエスメラルダの興味深い
過去を聞きだした・・・。
帰宅したら全てを話すというルーカスからの電話を受けたマーラは、
メイドが帰ってしまった邸宅で一人、彼の帰りを待つが、そこに突然、
カルロから電話がかかってくる。「どうしてこの番号が分かったの?」と
マーラが尋ねると、電話は切れてしまう。
電話線が切断され、殺人魔が侵入した屋敷に取り残されたマーラは
拳銃を片手に暗闇を進んでいく。階段を下りたところでマーラは突然
何者かに首を絞められるが、危ういところを救ってくれたのは
ルーカスに言われて彼女の警護にやってきたフェランテだった。
(TV放映版でのF・チッティの出番はこのワンカットだけ!)
その頃、ルーカスは殺人犯の屋敷にいた。その机にはエスメラルダに
送りつけられた家族の集合写真が飾られている。
その正体はフェランテ事件を担当した判事だった。
ルーカスは彼がユダヤ教会に入っていくのを見て全てを見抜いていた。
(・・・がTV版にはそんな場面はなかったような:笑)
ユダヤ人だった彼の妻と子供たちは戦争中、同じユダヤ人の友人ボッツィ宅に
預けられていたが、彼と夫人の仲に嫉妬したエスメラルダによって
ナチスに密告され、判事の妻と娘はドイツの収容所で処刑されていたのだ。
薬局のデザンは判事の家族を逮捕した張本人だった。
全ての殺人は過去の恨みに対する報復であり、判事は彼らの行方を
20年もかけて追い、フェランテ事件の陪審員に選んだ。
フェランテも一連の事件で殺人罪を被せる為に利用されていた。
フェランテに連れられて屋敷にやって来たマーラの前に、カルロが現れた。
彼は収容所に連行された判事一家の末っ子だったのだ。
カルロの母親は収容所で死に、父親に当時の話を聞かされるうちに
被害者への異常な憎悪を増幅させて今回の犯罪に及んだのだった。
ルーカスとマーラを殺してしまおうと狂ったように迫る息子を、
判事の父親は射殺し、自らも銃弾を頭に撃ち込んで自殺する。
(Special
thanks to Mr.hideto3.0)
映画の画面はhideto3.0さんのサイトでチェック!
減らず口ばかり叩いていながら、妙に憎めないヒロインを演じる
P・テデスコの雰囲気もちょっと「サスペリア2」のD・ニコロディ風である。
実際P・テディスコはダリオ・アルジェントがTVの為に撮った
「サイコ・ファイル」(73)の1話に出演していた女優で、恐らくアルジェント・
フリークのA・ビドーはその為に彼女を起用したのはではないだろうか?
テデスコは他に「シシリアン・マフィア」(72)、「空手アマゾネス」(74)等に出演。
パオロ・マルコはフルチの「墓地裏の家」や「ザ・リッパー」、L・バーヴァの
「キャロルは真夜中に殺される」等に出ていた俳優。
あまり頼りにならない悪党を演じるフランコ・チッティはパゾリーニ映画の
常連で、「乞食」(61)、「マンマ・ローマ」(62)、「アポロンの地獄」(67)
「豚小屋」(69)、「デカメロン」(70)等に出演。
他にも「ゴッドファーザー」(72)、「バニシング(ビデオ題名は
「ダーティー刑事まかり通る」(76)、「ジョディ・フォスター/
避暑地のラブ・ストーリー」(77)、「ダブル・レイプ/魔性のいけにえ」(89)
などの出演作がある隠れたベテラン俳優。
風呂場で殺される隣人役のフェルナンド・セルリは、この映画の他に
「皆殺しのガンファイター/1対30」(69)なる出演作がある。
ゴブリンにソックリの音楽はマルチェロ・ジョンビーニが在籍していたとされる
トランス・ユーロッパ・エキスプレスが担当、一度聴くと忘れられない
素晴らしいスコアを書いている。原題もアニマル・スリラーっぽいし、
何より「わたしは目撃者」に似ており、伊語タイトル通り<猫の目>が
殺人の前に一瞬挿入されるのがご愛敬(TV版ではカット)。
クライマックスでヒロインが一人、真っ暗闇の邸宅に取り残されるシーンでは、
階段の手すりに引っかかったネックレスのチェーンが弾けて
宝石(多分真珠?)がバラバラーッと飛び散ったり、芸の細かい(けどそれだけ)
描写が用意されている。ただラストが呆気なくて、やはりセリフだけで
全てが説明されてしまうのは、せっかくのお膳立てが勿体ないような気がする。
<脚本家としてのフィルモグラフィー>

「Blue Tornado 」(1991)
「ソラメンテ・ネロ/Solamente nero」 (1978)
「美人ダンサー襲撃/Il Gatto dagli occhi di giada」
(1977)
「監督で見る」に戻る