アニア・ピエロニ
Ania(Anja)
pieroni
ダリオ・アルジェントの「インフェルノ」(80)で、ユーロトラッシュ映画ファン
(特に男性)を虜にしてしまった、アニア・ピエロニ。彼女の映画デビュー作は
(手持ちの資料では)78年のA・ラットゥアーダ監督作品「今のままでいて」。
続いて「ビッグファイブ・デイ」で散々アルジェントを悩ませた
イタリアの大御所シンガー、アドリアーノ・チェレンターノが主演した
「Mani di
velluto」 (79)に出演。どんな映画か詳しく分からないが、
恐らくチェレンターノが美女に囲まれてモテモテ!みたいな映画だろう。
チェレンターノが映画に出演し始めたのはフェリーニの「甘い生活」(60)
あたりから。主な代表作には「鉄道員」のピエトロ・ジェルミが監督した
「セラフィーノ!」(69)等がある。彼は自分で監督業にも乗り出しており、
65年に「ミラノのスーパー強盗」で監督デビュー。「コッピ・ドゥー」(75)、
「狂人ジュッポ」(78)、「特徴はハンサム(なんつうタイトル!!)」(84)等の
作品を自ら主演しながら発表している。
話が逸れてしまった。アルジェントがチェレンターノの映画を観て、
彼女を発見したのかどうかは想像の域を出ないが、
80年に発表した「インフェルノ」で、アルジェントはアニア・ピエロニを
人間に恐ろしい死の破滅をもたらす3人の魔女の一人として起用した。
ローマに住む、最も美しい「涙の母(メイター・ラクリマルム)」を演じた彼女は、
主人公マークに怪しい視線を送る音楽講堂の美少女(にしか見えない・・・
本当はヴェロニカ・ラザールが演じた「暗闇の母」が一番若いはずなのに!!)
として登場、ペルシャ猫を抱いて何かを語りかける彼女の、
ブルーに輝く瞳は、確かに<魔力>と呼ぶに相応しい魅力を持っていた。
アパートでエレオノーラ・ジョルジが殺された後、車に乗ってマークの前を
通り過ぎるショットでチラリと顔を見せて以降、全く画面に登場しなかったのは
非常に残念だが、彼女の演技力を考えると、敢えてオブジェ的な扱いに
終始したアルジェントの演出は賢明だったと言えるかもしれない。
82年の「シャドー」で再びアルジェント作品に登場する前に、
イタリアン・ゴアの巨匠、ルチオ・フルチが「墓地裏の家」(81)で
ピエロニを正体不明のベビー・シッター役で起用。美しいが怪しげな
ルックスを上手くいかした演技をさせていた。この映画でのピエロニは
確かにまだ美しいのだが、「インフェルノ」の魔力は消えて(一部では
ヤク中ではないかと噂されるほど)険しい表情になっていた。
←これね。
そのせいか、それとも監督がフルチだった為か、彼女は映画の後半で
何度も肉切りナイフで首を切りつけられ、大量の血を吹き出しながら
首がもげ落ち、階段を転がり落ちる凄い場面を演じさせられていた。
「インフェルノ」に次いで、満を持しての登場となる筈だった
アルジェントの「シャドー」。しかしピエロニの運も尽きたのか、
同じローマを舞台にしていても今度は美しい魔女の役ではなく、
万引き常習者の売春婦エルザ・マンニという辛い役どころ。
ピエロニは舞台がローマに移ってからほんの数分のうちに
剃刀で首を引き裂かれて惨殺されてしまう。
全体的に体の線が太くなってしまったようで、確かに美しいのだが
役柄のせいか化粧もケバいし、別人の様な印象。まぁでも映画に
出続けてくれさえすれば、ファンは満足だったのだが・・・。
←これね。
その3年後、彼女はイタリアのコメディ映画「ドラキュラ一家:
地上げのえじき(V)」(85)に出演。これはマウントライトから発売されたために
変な題名が付けられているが、基本的には泥臭いイタリアン・コメディ。
ピエロニは白塗り女吸血鬼を演じており、美貌は「シャドー」の頃とあまり
変わっていない。ファンの方は是非どうぞ(マウントライトの光山氏も
ピエロニのファンだったとか)。
順風満帆に見えた彼女だったが、その背後には黒い噂(大袈裟?)が
見え隠れしており、80年代のイタリアを代表する政治家
ベッティーノ・クラクシ(綴りは”Bettino Craxi”興味のある方はネットを
検索してみては?)とのスキャンダルが引き金となって
どうやら、「ドラキュラ一家・・・」を最後に映画界を引退してしまったようだ。
実はピエロニは、次期首相という呼び声も高かったクラクシの愛人であり、
そのコネを使って女優になったらしいのだ。しかも小規模だが重要な
ポジションをイタリアで占めていたTV局のオーナー役も一任され、
当時の彼女は本当のシンデレラだったとか。
スキャンダルによってクラクシは自分が投獄されるのを知り、
単身イタリアを脱出。チュニジアへと逃れ、世間を騒がせたが
2000年の1月に滞在先のチュニジアで死去。
ピエロニはクラクシの政治敵から攻撃され、結果的にTV局の
オーナーの座も追われてしまった。その後、彼女は誰か他の
政治家と結婚したようだが、映画界からの引退した原因が
(政治家に囲まれた生活から来る?)精神的なストレスに
よるものなのかどうかは、やはり分からない。
それにしても本妻のいるクラクシが、堂々と愛人を作れるなんて
イタリアは大らかですねぇ。
取り敢えず彼女が観られる映画を分かる範囲で記載しておきます。
ビデオ屋でピエロニ特集をしてみるのも面白いかも。
<フィルモ・グラフィー>
「ドラキュラ一家:地上げのえじき」(1985)

Fracchia contro Dracula
*監督はネリ・パレンテ。撮影に「シャドー」、
「ルームメイト」のルチアーノ・トヴォリ。
ピエロにはドラキュラ一家の美女として
英国のクセ者俳優、エドモンド・パルダムの妹を演じる。
「シャドー 」(1982)
Tenebre
aka: Shadow (日本劇場公開用タイトル)
:Sotto gli occhi dell'assassino (製作時のタイトル)
:Tenebrae (輸出用タイトル)
:Unsane (アメリカタイトル)
*ダリオ・アルジェントがローマを舞台に撮った
眩いばかりの映像に彩られたジャッロ映画。
ピエロニが演じるのは万引き常習犯の娼婦
エルサ・マンニ。しかし彼女は映画が始まってすぐ
殺されてしまい、出番が少なかったのは残念。
なにさ!アタイが万引きしたっていうの?(吹き替え版より。嗚呼・・・)
題名をクリックするとジオシティに作った「シャドー」頁に飛べます。
「墓地裏の家」(1981)
Quella villa accanto al cimitero」
aka :The House Outside
the Cemetery
: House by the Cemetery
*80年代イタリアン・ゾンビ映画の帝王に上り詰めた
ルチオ・フルチが放った小佳作。
舞台が一軒の屋敷に絞られているために
閉所恐怖症的な緊張感が全編を支配。
この映画をフルチのベストと推す人も少なくない。
ピエロニが扮するのは怪しい?ベビー・シッターのアン。
今日も彼女はおさんどん。
「インフェルノ」(1980)

Inferno
*アニア・ピエロニの出世作。
アルジェント一流のキャメラ・ワークにより
ピエロニは涙の母(ローマに住む魔女)として
文字通り「溜息」の出るような美しさ。
出演場面は全体的にそれ程多くはないが、
音楽室の大講堂で風を受け、何かを呟くショットは
身震いするような仕上がりだ。
「Mani di velluto」 (1979)

*イタリアの大御所歌手、アドリアーノ・
チェレンターノが主演した1本。
ピエロニはマッギーという女性の役。
他にもオルガ・カルラトス、エレオノーラ・ジョルジが出演。
「今のままでいて」(1978)
Cosi come sei
aka : Fille, La (仏題)
: Stay as You Are(米題)
: Stay the Way You Are
イタリア=スペイン=アメリカ合作映画/
カラー・105分(フランス版・日本版)/109分(伊語版)
製作会社:シネマトグラフィカ/S・A=サンフランシスコ・フィルム
日本劇場公開79年9月(配給:COL)
製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ
監督:アルベルト・ラットゥアーダ
原作:パオロ・カヴァーラ/エンリコ・オルドイーニ
脚本:アルベルト・タットゥアーダ/エンリコ・オルドイーニ
撮影:ルイス・アルカイネ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:
マルチェロ・マストロヤンニ(ジュリオ・マレンゴ)/
ナスターシャ・キンスキー(フランチェスカ)/
アニア(クレジットではアンニャ)・ピエロニ(シシリア)/
モニカ・ランドール(ジュリオの妻:ルイサ)/フランシスコ・ラバル
(ロレンツォ)/バルバラ・デ・ロッシ(ジュリオの娘:イラリア)/
ジュリアーナ・カランドラ(テレーザ)/ホセ・マリア・カッファレル
(フランチェスカの義父:バルトーロ)/マリア・ピア・アッタナジオ
(アルーチ伯爵夫人)/マリオ・チェッキ(庭師)/
アドリアーナ・ファルコ(ジュリオの秘書)/アルベルト・ラットゥアーダ/
レイモンド・ペンネ
*愛をめぐる人間関係と、女同志の戦いを描くと真価を発揮する
アルベルト・ラットゥアーダが監督したラブ・ロマンス。
主演は若々しい魅力が爆発していたナスターシャ・キンスキーと、
中年の優男ぶりがこれまたイイ味のマルチェロ・マストロヤンニ。
<物語>
妻子ある一流の造園士ジュリオは(マストロヤンニ)は、仕事で訪れた
古い庭園で、17歳の美少女フランチェスカ(キンスキー)と出会った。
町の下宿屋で奔放な性格の女友達セシリア(ピエロニ)とルームシェアして
暮らしているというフランチェスカ。50歳になるジュリオは自分が忘れた
恋という感情に戸惑いながら、純粋なフランチェスカに惹かれていく。
そんなある日、ジュリオは若い頃からの親友ロレンツォ(ラバル)と会い、
フランチェスカがジュリオの実娘であると教えられる。
フランチェスカはジュリオがかつて付き合っていたGFフローラの娘だと言うのだ。
フローラの親友テレーザ(カランドーラ)もやはりそう証言した。
夫婦仲の冷え切った妻ルイザ(ランドール)や、生意気盛りの実娘イラリア
(デ・ロッシ)のいる我が家でも落ち着けないジュリオは、悩みながらも
フランチェスカに強く惹かれていく。彼女が父親だと紹介してくれた
バルトーロ(カッファレル)も、実は娘は自分と血がつながっていないのだと
ジュリオに告白した。悩み抜いた末、彼はフランチェスカにフローラとの
過去を話し、君は自分の子供かもしれないと告げた。
部屋に戻ったフランチェスカは考え抜いた末、ジュリオを父親とは
認めないと彼に言い、遂に二人はベッドを共にした。
だがフランチェスカは今が幸せの絶頂だと考え、これ以上深入りして
お互いの醜い部分を見せ合わずに別れるのが一番良いと決心を決める。
ジュリオと彼女は映画を見に行き、ジュリオが眠っている間に
フランチェスカは客席をそっと離れた。一人表に出たジュリオは
全てを悟ったように車を発車させる。
物陰からそれをじっと見つめるフランチェスカ。彼女の目には一筋の
涙が光っていた。それはジュリオとフローラの別れ方と全く同じだったのだ。
もしもーし?
何と言っても、この映画最大の見どころはN・キンスキーの
素晴らしい美少女ぶり。ジュリオと初めて出会う庭園のシーンから
おじさんを翻弄しつつも心は純粋な少女という、おっさん達の夢のような
美味しい役どころを説得力十分に演じている。
そんなキンスキーとルームシェアをする女学生として登場するのが
A・ピエロニ扮するシシリア。ちょっとふっくら?したピエロニは
初登場シーンからグラマーなフルヌード(掲載は敢えて控えます)を披露、
その後もストレートなお色気少女ぶりで見る物を楽しませてくれる。
主人公の家族を除く女性の登場人物の大半がヌードになる中、
ラットゥアーダが美人コンテストで発見したバルバラ・デ・ロッシが
マストロヤンニの実娘役で登場。後に「スキャンドール」や
「白い肌にひそむ罠」のゴージャスなヒロインを演じるとは思えないような
清純ぶり(髪もストレート、メイクも殆どなし)で驚かされる。
他に、「サスペリア2」のアマンダ・リゲッティこと、ジュリアーナ・カランドーラが
フランチェスカの出生の秘密を知る、ジュリオのかつてのGFの女友達役で
1場面だけ顔を出しているが、かなりババア入っていて笑わせてくれる。
お話は(まぁ他愛ない)ラブ・ロマンスだが、ここぞというシーンでかかる
E・モリコーネのテーマ曲は効果抜群で、各々の場面を大いに盛り上げている。
原作は「世紀末猟奇地帯」「タランチュラ」のパオロ・カヴァーラ。