GIALLOとはなんぞや?
この言葉については先人の方々のサイトにも
説明があるので、ここで詳しく解説するのはやめます。

・・・と書いて、余りに無責任なので簡単に説明しておくと
イタリアで発行されていた推理小説のカバーが
黄色(Giallo)だった為にミステリーや推理物、
転じて猟奇スリラー映画までを広くそう呼ぶようになった、
という説明が一般的なようです。
海外の研究資料では「Gialli(複数形?)」と書かれている場合もあります。
<ジャーロ映画の成り立ちについて>

「マーダー・クリニック」で繰り広げられる
イタリア映画初?の剃刀殺人↑
一口に「ジャッロ映画(当HPで"ジャーロ"となってる箇所もありますが、
賢明な皆様は公の場所では"ジャッロ"と発音してくださいね:笑)」
といっても、本国ではコナン・ドイルやクリスティらの本格的な推理物から
犯人はどうでも良い猟奇系エッチスリラーまで幅広く包括するジャンルらしく、
更には、どこまでをその範囲に入れるかも、また難題なのですが、
通常、本国以外でジャッロという単語を使う場合、
(主観ではありますが)フー・ダニット(WHO DONE
IT:犯人探し)よりも
ハウダニット(HOW DONE IT:殺しの手口)を作品の見せ場にした映画、
つまり黒衣の殺人鬼と犠牲者となるグラマーな美女、そして洒落た音楽で
彩られた伊製ミステリ映画に、ジャッロ映画という総称を冠する場合が多いようです。
一般的にイタリアで最初の「ジャッロ映画」とされているのは、
1963年にマリオ・バーヴァが監督した「THE EVIL EYE
(未)」。
翌64年にやはりバーヴァが「モデル連続殺人!」を発表、
この2本がジャッロ映画の布石を敷いたのは間違いないでしょう。
(但し、リカルド・フレーダの犯罪映画群や、それ以前にも
ミステリ風の味わいを持った作品は何本か存在した事は書いておきます)

「モデル連続殺人!」の覆面殺人鬼↑
「モデル連続殺人!」はまず、@:美女が残虐な殺人事件の被害者になる。
A:コートに帽子、黒手袋のいでたちの殺人魔が登場する。
B:殺人の手口がそれぞれ違い、その趣向を凝らしたテクニックが
最大の見せ場になっている。
という3点の特徴があり、各々のインパクトが強かった為、後の
ジャッロ映画の定石となるクリシェ的な設定を生んでいます。
(クリシェAに関しては、ロバート・シオドマークの「らせん階段」(54)で既に、
黒いレインコートの殺人鬼が登場している点は見逃せないポイントでしょう。
ついでに「モデル連続殺人!」の覆面殺人犯はイギリスの小説家
エドガー・ウォラスの覆面怪盗からアイデアを拝借したものだとか。
ロンドンで女優の私生児として生れた?ウォラスは、新聞の売り子などして育ち、
長篇を150冊以上も書き残し、映画化作品も多数あることで知られる作家。
(実際彼は、映画制作のために赴いたハリウッドで急逝している)
処女作「正義の四人」(05)や、「鉄槌」(25)などが邦訳されているが、
一番の知名度を誇るのは超大作として映画化された「キングコング」だろう。
ジャッロでの関連作はスペインの「象牙色のアイドル」、
M・ダラマーノの「ソランジェ?」、U・レンツィの「血塗られた7本の蘭」など。
<それぞれの要素が更に押し進められ・・・>
@(被害者が美女)に関しては同じ60年代にすぐ、アントニオ・マルゲリティが
女子寮を舞台にしたジャッロ「NUDE SI MUORE (未)」を撮っており、
ここからは更にマッシモ・ダラマーノが監督・脚本で参加する事になる
女子寮ジャッロ「WHAT HAVE YOU DONE TO OUR SORANGE
?(未)」、
「WHAT HAVE THEY DONE TO YOUR
DAUGHTERS ?(未)」、
「ビー玉殺人(ビー玉は知っている)(TV)」の3本に代表される
<女学生ジャッロ>のジャンルが発生することになる。

「タランチュラ」の熟女、バーバラ・ブーシェの死にざま↑
彼女はスコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」で復活。
役柄はキャメロン・ディアズの母親役(死)。
またもう少し年齢のいった熟女が犠牲者になると、日本でも公開された
パオロ・カヴァーラの「タランチュラ」や、ビデオでリリースされた
「SO SWEET SO DEAD」のような、少しトウの立った大物女優達が
色気を競い合う<お色気ジャッロ>の映画群になってくる。
こうした作品は本国イタリアでは18歳未満鑑賞不可のレートで
封切られた為、当時の観客層はティーンズよりもアダルト系だったとか。
(・・・が当然、年齢を偽って潜り込むスキ者少年も多数いた:笑)
A(黒コート&黒手袋)はダリオ・アルジェントが69年に「歓びの毒牙」を発表して以来、
殆ど全てのジャッロ映画の殺人犯が同じ様なスタイルを踏襲するようになった。
更にこの出で立ちはジャッロのみならず、イタリア製のアクション映画などにも
採用されるようになり、果てはアメリカ映画にも殺人者というと
黒いコートに黒手袋、というスタイルを用いる映画が登場するようになった。
ブライアン・デ・パルマの「殺しのドレス」は犯人がブロンドの女性である
点からも「モデル連続殺人!」の影響が感じられ、また「氷の微笑」に登場した
エレベーター殺人に至っては、その「殺しのドレス」からの引用とさえ言われているので、
「モデル連続殺人!」の与えた影響は凄まじかったのだと言える。
また、多くのジャッロ映画では舞台が外国に設定されている
(中でもミステリの本場ロンドンが多い)が、自国の警察が活躍するような
物語を持った作品は殆ど見受けられない。
これはイタリアの特殊警察に当たるカラビニエリが戦後、
学歴を問わずに就職できる職種となった為、知的レベルの低い職業として
(特に映画の世界では)嘲笑の対象になってきた背景があるからだ。
故にジャッロ映画には天才探偵は登場せず、主人公たちは警察の力を借りずに、
自ら真犯人を捕らえるべく捜査に乗り出さなくてはならないのである。
B(殺しの手口)については、スタイルや流行に敏感なイタリア映画娯楽ならではの
展開が見られ、様々な殺しのテクニックや奇怪な凶器が続々と登場した。
「タランチュラ」のように長針で麻酔をかける、ちょっと捻った(でもそこ止まり)手口から
ジャーロ映画の十八番=バスタブでの溺死、絞殺、撲殺、刺殺と様々。
崖や高層ビルなどから墜落死するパターンも良く採用されている。

レンツィのジャーロ映画でのバスタブ溺死シーン。↑
溺れ死んでいるロッセラ・ファルクは、アルジェントの「スリープレス」で復活!
それと同時に画面に登場する血糊の量も増えていき、
これは特に70年代に入ってアメリカでスプラッター映画が台頭してくると
イタリア映画でもそれに呼応するかのように一気に激しくなってくる。
セルジョ・マルティーノが73年に撮った「影なき淫獣」では
惨殺された女学生の死体が次々と糸ノコギリでバラバラにされ、
眼球や乳房がナイフでえぐり取られた。
また(ここでも開拓者となった)バーヴァの「血みどろの入江」では
80年代を代表するスラッシャー物となった「13日の金曜日」
シリーズで描かれる虐殺シーンと非常に良く似たシーンが描かれており、
アルジェントの「サスペリア」で爆発したオカルト・ブームと相俟って
犠牲者から流れ出る赤い血は<ケチャップ>映画という
イタリアン・ホラー特有のスラングさえ生み出した。
バーヴァの映画が「13金」のヒントになったという説には
日本でも(そして海外でも)疑問の声を上げる向きがいるかもしれないが、
例え「13金」の製作者達がバーヴァの映画を観ていなかったとしたら
この奇妙な相似は、逆にとても不思議なリンクを持っていると言えよう。
イタリアには<当たる映画を発表し続ける為にはメンバーを変えるな>
というジンクスがあり、それ故に同じ様なメンツで似た内容の
作品が大量に産み落とされる結果を招いているようだ。
こうして必然的にジャッロを撮りまくる監督が登場するのだが、
GFだったエドゥイージュ・フェネシュと、従兄弟に当たるジョージ・ヒルトンを
毎回主役に起用して数々のジャーロ映画を弟のセルジョに撮らせた
辣腕プロデューサー、ルチアーノ・マルティーノや、
一時期のダリア・ニコロディとアルジェントに代表されるように
私生活の恋愛関係や家族関係がかなり作品に反映されるのも
イタリア映画の特徴であるようだ。

↑血と惨殺が行き着くところまでいった感のある「ブラッド・ピーセス」。
(ホントはイタリア映画じゃないけど、脚本にダマートが絡んでるようだし・・・)
ジャッロのジャンルは様々なタイプのプロットを取り上げ、
同時に残虐な殺しの場面を「見せ場」として売り物にするうちに、
(余りに数多くの作品が市場に出回ったために、次第に
飽きられてしまったという理由もあるが)
70年末期から80年代にかけてのスラッシャー映画・
ゴア映画の流行と相俟って、ホラー映画風のタッチへと
次第に形を変えて行く事になる。
60年代ジャッロ映画(不完全)年表
(取り敢えず現在は簡単に見られる物と、それなりの知名度がある物を中心に
リストアップしました。今後も知名度の低い物などを随時アップします。
「LA
RAGAZZA CHE
SAPEVA TROPPO (未)」(63)
aka:The Evil Eye
...イタリアンホラーの帝王、マリオ・バーヴァが監督したジャーロの草分け。
レティシア・ローマン扮するヒロイン、ノーラが病気がちな叔母を訪ねて
ローマにやってくる。叔母が亡くなった夜、偶然にもノーラは殺人現場を目撃。
しかし警察やバッシ医師(ジョン・サクソン)が調査を開始しても、遺体が見つからない。
ノーラは死んだ叔母の友人であるラウラ・クレイヴン(ヴァレンティナ・コルテース)と
その夫の屋敷で休むことにし、そこでここ数年ローマで連続して起きている
アルファベット殺人事件(犯人がアルファベット順に犯行を重ねる為)が
起きていることを知る。殺人事件の犯人は意外にもラウラ・クレイヴンで、
彼女は自分の妹も殺害していた。ノーラは危ういところをラウラの夫に救われる。
脚本にセルジョ・コルブッチ、エンニオ・デ・コンチーニ、フランコ・プロスペリらが
バーヴァと共同で絡んでいる。音楽はロベルト・ニコロッシ(アメリカ公開版は
例によってレス・バクスターに差し替え)。
「モデル連続殺人!/SIX WOMEN FOR THE MURDERER 」(63〜64)
aka:Sei Donne Per L'Assassino/Blood and Black Lace
...引き続きマリオ・バーヴァが監督したジャーロ映画。かつて作られたジャーロの
中で最も美しい1本、といっても過言ではない出来。低予算ながら創意工夫を凝らした
見事なキャメラワーク、そして色とりどりの照明と雰囲気タップリのセット。
殺人鬼のヴィジュアルや犠牲者となる若いモデル達、残虐な殺人手口など、
このジャンルの後の作品に与えた影響は計り知れない。
特に80年代に入って発表された「ドレスの下はからっぽ」、「デモンズ・キラー」等は
ビジュアル以外にストーリー・ラインまでもこの作品を下敷きにしている。
「LIBIDO」(65)
...イタリアン・ホラーの大御所脚本家、エルネスト・ガスタルディが
ヴィットリオ・サレルーノと共同で監督したサイコ・ホラー。
少年だったクリスチャンは父親が彼の愛人を殺害する光景を見てしまう。
20年後、大人になった彼(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は、新妻のヘレーネ
(ドミニク・ボッシェーロ)と共に殺人事件のあった曰く付きの屋敷に
引っ越してくる。やがてクリスチャンは、弁護士ポール(A・ドーソン映画の
常連俳優アラン・コリンズ!)と、その妻ブリジッテ(原案も担当した
ガスタルディ夫人のマーラ・マリル)が遺産目当てに自分を狂気に追い込もうと
しているのに気付くが、時は既に遅かった。なんとヘレーネまでもが
恐るべき計画に荷担していたのだ。
ガスタルディの監督としての力量が発揮された作品。「サイコ」を思わせる
展開がイイ感じだとか。主演のG・ジャンニーニはリナ・ウェルトミュラーの
映画でブレイクした演技派だが、こんな映画や「タランチュラ」にも出ていた
暗い過去がある俳優さん。最近ではギジェルモ・デル・トーロの「ミミック」に
靴屋のお爺さん!として出演、月日の無情さを感じさせてくれた。
「猟奇連続殺人/KILLER
WITH THE THIRD EYE 」(65)
aka:Il
Terzo occhio
...ジョー・ダマートが監督した「ビヨンド・ザ・ダークネス:嗜肉の愛」の原型か?
没落貴族の末裔ミーノ(フランコ・ネロ)は荒れ放題の大きな屋敷で、老婆の母親と
暮らしながら、剥製作りに熱中する若者。ある日、彼の婚約者ダニエラが
屋敷を訪れるが、息子を取られたくない老婆は彼女に冷たく当たり、
ガマンできなくなったダニエラは車で屋敷を飛び出すが、屋敷の女中マーサが
ブレーキに細工をしていたため、彼女は車ごと湖に突っ込んで死んでしまった。
ミーノがダニエラを追って出ていった隙に、財産を狙うマーサが母親を階段から
突き落として殺してしまう。ダニエラの死体を抱いて帰ったミーノは精神異常に陥り、
その死体をミイラにしてベッドに寝かし始める。ある晩ダニエラの双子の妹
ラウラが屋敷を訪ねて来る。マーサは彼女をも殺そうとするが、逆にミーノの手に
かかって惨殺される。ラウラをダニエラと信じて疑わないミーノに口裏を合わせながら、
ラウラは警察を呼ぶ。完全に精神異常に陥ったミーノは警察に逮捕された。
共演ジョイア・パスカル、ダイアナ・サリヴァン、オルガ・サンビューティー。
監督はジェームズ・オーレン(ミーノ・グエリーニ)で、60ホラーの立て役者的監督
ピエロ・レニョーリと共同で脚本も書いている。
「A...COME ASSASSINO (未)」(65)
...監督:レイ・モリソン(アンジェロ・ドリオ)、原案:エルネスト・ガスタルディ。
出演はアラン・スティ−ル、マリー・アドレン、イヴァーノ・ダヴォーリ。
人里離れた古城を舞台に展開する皮肉タップリの犯人捜し映画。
「殺しを呼ぶ卵/DEATH LAID AN EGG」(67)
aka:La
Morte Ha Fatto L’Uovo/Plucked
...異色マカロニウェスタン「情無用のジャンゴ」の監督、ジュリオ・クエスティの
スタイリッシュな演出が冴える犯罪スリラー。ジャン・ルイ・トランティニアン扮する
養鶏場の経営者マルコが、妻の姪で愛人のガブリエラ(エヴァ・オーリン!)と組んで、
邪魔な妻アンナ(G・ロロブリジータ)を亡き者にしようと企むが、ガブリエラと彼女のBFは
マルコをも殺してしまおうとしていた・・・。60年代ファッションに身を包んだキュートな
E・オーリンと、イタリアを代表する大女優ロロブリジータの戦いも見もの。
血みどろの殺人は少ないが、養鶏場を舞台にしているため、孵化する直前寸前の
有精卵のようすなどグロテスクな場面も幾つか登場。
トランティニアンとオーリンが共演したティント・ブラスの「危険な恋人」が
日本でもビデオがリリースされていたのでややこしいが、「殺しを呼ぶ卵」は未発売。
海外ではユーロ・トラッシュ映画の代表作として評価が高い。
「ターヘルアナトミア:悪魔の解体新書
/CASTLE OF THE CREEPING FLESH」(67)
aka:Im Schloss Der Blutigen Begierde/Castle of Bloody Lust
...「地獄の魔女狩り」で知られるエイドリアン・ホ−ヴェンが監督した
奇妙な連続殺人物。ちょっと<ジャーロ>とは違うかもしれないが、
敢えて入れてみました。日本版ビデオはHRSフナイさんから。
死んでしまった美しい娘を蘇らせようとする狂気に取り憑かれた医者が
自分の城を訪れた一行を襲って、その内蔵を蘇り手術に使おうとする。
何度か挿入される(恐らく本物を撮影した)手術シーンが気色悪い。
狂気の博士に「美女の皮を剥ぐ男」でお馴染みのハワード・ヴァーノン、
一行の美女(美女、という表現は多少語弊があるかもしれないが・・・)に
同じくフランコの「サキュバス」等で有名なジャニーン・レイナウド。
「デボラの甘い肉体/SWEET BODY OF DEBORAH」(68)
aka:Il
Dolce Corpo Di Deborah
...「ベビイドール」で一世を風靡した、キャロル・ベイカーを主役に起用した
犯罪スリラー。基本的には凝ったプロットを楽しむ内容で、血みどろ映画ではない。
周囲に反対されながらも結婚したイタリア人の夫マルチェル(ジャン・ソレル)との
ハネムーンからジェノヴァの家に帰ってきた金持ちのアメリカ女性デボラ
(ベイカー)の元に、かつての恋人(イヴリン・スチュアート)を自殺に追いやった
責任をマルチェルに取らせようとする男フィリップ(ルイジ・ピスティレリ)が訪ねてくる。
彼の案内で訪れた屋敷で、デボラ達は怪奇現象に遭遇する。しかし全ては
夫とフィリップらがデボラの遺産目当てに仕組んだ強奪計画だったのだ。
もちろん最後にはどんでん返しが用意されていて、
人妻と彼女の友人の画家(ジョージ・ヒルトン)が旦那一味の命を奪う。
監督はB級アクションが得意なロモロ・グエリエーリ。
製作はミーノ・ローイと、ルチアーノ・マルティーノ。
脚本をマルティーノと共同でエルネスト・ガスタルディが書いている。
日本での公開はNCC、69年の4月に封切り。上映時間は99分。
「NUDE
SI MUORE (未)」(68)
aka:The
Young,The Evil and The Savage/School Girl Killer
...アンソニー・ドーソンが撮った女子寮ジャーロ映画の先駆け。
原案はジョヴァンニ・シモネッリ。主演はマーク・ダモンと
エレオノーラ・ブラウン、サリー・スミス。音楽はカルロ・サヴィーナ。
セント・ヒルダ女学院を舞台に2人の学生が殺される。
容疑者に上がったのは庭師(再びドーソン映画の常連アラン・
コリンズ[ルチアーノ・ピゴッツィ]!)ら数人の男性。
勇敢な女学生が犯人の魔手から友人を救い、警察と協力して犯人を逮捕する。
この映画は元々マリオ・バーヴァによって撮られる予定だったらしい。
アルジェントっぽい作風の映画として知られるが、
製作は「歓びの毒牙」よりもこちらの方が先。ドーソン自身も
「結構良くできたジャーロ映画の小品」と称しているこの作品の
撮影テクニックは結構見ものだとか。
映画を製作したのは「幽霊屋敷の蛇淫」や「モデル連続殺人!」を始め、
何本かのイタリアン・ホラーを手がけていたアメリカの配給業者
ウールナー兄弟。彼等は後に「ドーベルマン・ギャング」を大ヒットさせている。
当時彼らはホラー映画や冒険物を何本か制作するつもりでイタリアに来ており、
彼らは既に数本の映画で組んだマリオ・バーヴァにコンタクトを取っていたが、
この映画の企画もそのうちの1本だった。
最終的にドーソンがこの映画の監督をする事になったが、
それは本人によれば「詳しい経緯は良く覚えていないが、
多分マリオが「黄金の眼」(67)の仕事で忙しかったとか、
そんな具合だったと思う。ウールナー兄弟は私にも別なホラー映画を
依頼しようとしていたが、それは「NUDE SI MUORE」ではなかった。
マリオがこの企画を断ると、彼らは私の会社に話を回してきた。
私自身も制作でこの企画に参加していたからね。
結局は私がこの映画を監督する事になったんだ。
勿論支払われるギャラが格段に良かったからね。」と語っている。
「L'ASSASSINO HA LE MANE PULITE (未)」(68)
aka:Omicidio
per Vocazione/Deadly Inhertance
...鉄道会社に勤務するオスカー老人が何者かに殺害される。
意外な事に彼には多額の隠し財産があり、それを巡って3人の
実娘(フェミ・ベニュッシ、ジャネット・レンズら)と、知恵遅れの
養子ジャノット(このテの役ならお任せ!のエルネスト・コリ)らが
相続権を巡る連続殺人に巻き込まれる。姉妹が次々に殺された後、
犯人はジャノットだった事が判明する。ベニュッシのお風呂場面が
一番の見物。監督はヴィットリオ・シンドーニ。
「LA
MORTE
NON HA SESSO (未)」(68)
aka:Death
has no Sex/A Black Veil For Lisa
...耽美系の名匠マッシモ・ダラマーノが監督した、ということで期待が高まるのだが・・・。
かつて犯罪を犯した経歴を持つ美しい妻リサ(ルチアーナ・パルッツィ)に
異常な嫉妬心を燃やす夫(ジョン・ミルズ)から、妻の殺害計画を
持ちかけられた殺し屋(ロベルト・ホフマン)がリサと恋に落ちてしまい、
逆に夫を殺そうとする。最後はリサの計画にはまった男2人が身を滅ぼす展開。
どちらかというとジャーロというより、TVのポリス・メロドラマ調の内容なので
ファンには物足りないかもしれないが、海外ではそれなりに評価されている様子。
「狂った蜜蜂
/ORGASMO」(68)
aka:Paranoia/A Beautiful place to kill/A Quiet place to kill
...「デボラの甘い肉体」のヒットを受け、U・レンツィが再びC・ベイカーを起用、
金持ちのアメリカ人妻役を演じさせたエロティックな犯罪スリラー
(それまでスパイ物など、一般映画を撮っていたレンツィの初ジャンル映画!)。
殺人を犯してイタリアに逃げてきたベイカーの屋敷に、兄妹と名乗る若い男女が
住み着いてしまい、愛欲の日々を過ごすうち、彼らはベイカーを殺して財産を奪って
しまおうと計画し始めるが・・・。共演はルー・カステルとティーノ・カラーロ、
ティナ・ラッタンティ、コレット・デコムら。音楽は<マナマナおじさん>ことP・ウミリアーニ。
レンツィ自身、自分が撮ったスリラー映画の中では一番気に入っていると発言している1本。
だが原題の「ORGASMO」はポルノ映画風だった為に、興業面ではイマイチだったとか。
「A
DOPPIA FACCIA (未)」(68)
aka:Double
Face/Liz & Helen
...ルチオ・フルチらが書いた原案を、リカルド・フレーダが監督したミステリー。
主演はクラウス・キンスキーとアナベラ・インコントネラ、マーガレット・リーら。
60年代調のダサいロック音楽と、グラグラ揺れる不安定なキャメラ・ワークなど
この時代の流行を過剰に取り入れた作風。
死んだ妻の幻影に取り憑かれた男を描いた内容だが、翌69年に
フルチが作った「女の秘め事」に、この映画のプロットがまんま流用された。
「SO
SWEET, SO PERVERSE
(未)」(68〜69)
aka:COSI
DOLCE... COSI PERVERSA/KISS ME KILL ME/SO SWEET... SO DEAD
...「悪魔のような女」をパクッた犯罪スリラー。ジャン・ルイ・トランティニアン扮する
主人公と2人の女(トランティニアンの妻でレズビアンのエリカ・ブランクと、
彼らの愛人キャロル・ベイカー)の愛憎劇がやがて殺人事件に発展。
ウンベルト・レンツィの作ったスリラー映画の中では見どころが少なくて
イマイチの出来だとか。オバケ映画専門のスペイン女優ヘルガ・レーネが
バイセクシャルの金持ち夫人役でカメオ出演。
「女の秘め事 /ONE TOP OF THE
OTHER (未)」(69)
aka:Una
sull'Altra
...ゴア映画の巨匠ルチオ・フルチが、そのキャリアの転機とした犯罪スリラー。
簡単に書いてしまえばヒッチコックの「めまい」の焼き直し。病院を経営する
実業家青年(ジャン・ソレル)の妻(マリサ・メル)が、持病の喘息で死亡。
多額の保険金が青年に転がり込むが、その裏には兄と青年の妻の
悪辣な財産強奪計画があった。リズ・オルトラーニのジャズが全編に流れ、
サンフランシスコのロケ・シーンが効果を上げている。
共演はソレルのGF役にエルザ・マルティネリ、メルとソレルの兄を射殺する
メルの愛人役にリカルド・クッチョーラ(不幸な顔つきが絶品!)。
「クレイジー・キラー:悪魔の焼却炉
/THE HATCHET FOR A HONEYMOON (V)」(69)
...マリオ・バーヴァが60年代末に撮った未公開サイコ・スリラー。
日本では東映ビデオから<メディア・ビデオ経由の>日本版がリリースされている。
え?メディア?・・・じゃぁカット版?と杞憂することなかれ。本編は当時、
残酷描写に厳しかったスペインで撮影された為、事前にゴア場面は厳重に
チェックされていたのだそうだ。恐らく日本版もUncutなのでは?
ブライダル・モデル事務所を経営するハンサムな青年が実は重度の
サイコ・キラーであり、若い花嫁姿の女性を片っ端から肉切り包丁で惨殺してしまう。
傲慢な態度の妻をも殺した彼の精神状態はいよいよ悪化し、美しいモデルの一人を
更に毒牙にかけようとするが、これには罠が仕掛けられていた。
主役の青年はジョン・フォーサイス。彼を取り巻く美女達に、ダグマー・ラッセンダール、
ラウラ・ベッティ、フェミ・ベニュッシら。
「歓びの毒牙/THE
BIRD WITH THE CRYSTAL PLUMAGE」(69)
aka:L'Uccello
dalle piume di cristallo
...イタリアのジャーロ映画史において、M・バーヴァの「モデル連続殺人!」と
並んで、ひとつのエポックを作り上げた代表作。内容的にはやや地味めだが、
彼のジャーロの特徴である、殺人現場で目撃した光景に
全ての謎を解く鍵が隠されていた、という映画ならではの
トリック構成、そして異国(大抵はイタリア)を訪れた主人公が
殺人事件に巻き込まれるという設定(ロマン・ポランスキーの
映画にも同じ設定が用いられるが、単なるパクリというよりも
イタリアではこのテのジャンルを撮る場合、外人を主人公にした方が
観客に納得してもらいやすいという理由があるようす)も、
既にこの作品に登場している。
「ゴッドファーザー」のヴィットリオ・ストラーロの撮影、
御大エンニオ・モリコーネの囁き系のスコア音楽もさすが。
出演はアルジェントと仲の悪かった「ある戦慄」のT・ムサンテ、
ジャンル女優S・ケンドール、「未成年」のエヴァ・レンツィ。
マリオ・アドルフが猫をシチューにして食べる変な画家の役で登場。
この辺はチョイスは「4匹の蠅」の乞食=バッド・スペンサーに通じる
アルジェントお好みのコメディ・リリーフである。
本作の成功に関しては諸説あった(公開されるや大ヒット、
あるいは最初はダメだった、などなど)が、実際の初公開時には
客が集まらず、その後、ジワジワと口コミで客を集め、
最終的に大ヒットになったというのが真相のようだ。
その理由はハッキリと語られていないが、恐らくは本作の作風が
あまりに生真面目な本格推理物であったことと、
当時としては強烈な暴力描写のせいで、それまでに
メインストリームにいたスウィートな有閑マダムサスペンスを
期待した観客(と批評家)が面食らったのではないかと想像される。
「歓びの毒牙」への反応は(住人のタイプが違う)地域によって
様々だったらしく、ミラノやトリノでは不評のうちに1週間で
打ち切りになり、逆にローマやフィレンツェではスマッシュ・ヒットを記録。
首都から話題が広まった結果、イタリア全土で成功を収めた。
イタリアは南北に長い国なので、北部と南部の都市では
客層にも違いがあり(南部の人の方が比較的素朴?)、
多くのジャーロ映画はミラノやトリノ(サスペリア2や
スリープレスも舞台はトリノ。イタリアで最もオカルト関係の
信奉者の多い都市だとか)などの北側を舞台にしていたので、
必然的にそれらの都市ではヒットし、また当然ながら
逆のパターンもあったらしい。
「象牙色のアイドル/THE FINISHING
SCHOOL」(69)
aka:La
Residencia/House that Screamed
...「ザ・チャイルド」のナルシス・イバネズ・セラドールが監督した日本劇場公開作。
厳格な女校長(リリ・パルマー)が経営する女学校で、彼女の一人息子(ジョン・モルダー・
ブラウン)が女学生達を次々殺害、屋根裏で死体をバラバラに解体し、口うるさい母親の言う
<理想の女性>を作り上げる猟奇スリラー。女学生達は鞭打ちの体罰を与えられたり、
クローゼットに閉じこめられたりとサディスティックな扱いを受け、一人ずつ血みどろになって
殺されていく。まぁセラドールの演出は余り暴走しないので、基本的にはゴシック調の
ホラー映画なのかもしれない。共演はマリー・モード、キャンディーダ・ロサーダら。
転校生の役で「悪魔の墓場」のクリスティーナ・ガルボが出ている。
原作はエドガー・ウォラスだというが・・・本当かしら?
もっとジャーロ映画について知りたい!という方は・・・
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