Rare of Rares
レア物映画/ビデオ紹介
世の中にレア物映画は数々ありますが、みんなが欲しがるレア物
(例えば「血塗られた墓標」とか)以外にも、日本での知名度は低いものの
海外マニアの Want List
の常連タイトルになっている作品が色々とあります。
ここでは順次、そうした作品を取り上げます(但しあくまで不定期に)。
<第1回>
「ファラオのはらわた」
Shadow of Illussion
aka :Ombra di Illusione

1972年/イタリア映画/カラー/88分/日本未公開/
発売元:大映ビデオ/英語版/モノラル
製作:ニーノ・ミラノ
監督:マリオ・カイアーノ
原案・脚本:エンリコ・ロゼッティ
フランク・アグラマ
マリオ・カイアーノ
撮影:エンリコ・マンツァーレ
音楽:カルロ・サヴィーナ
編集:ティティアーナ・カッシーニ・モリーギ
特殊メイク:ジャネット・デ・ロッシ
出演:ウィリアム・バーガー(ケレブ/オシリス)
ダニエラ・ジョルダーノ(ゲイル・ブランド)
クリスタ・ネル(セクメット)
アントニオ・カンナフォーラ
ミレッラ・パンフィーリ
<物語>
アメリカのトップモデル、ゲイル(ジョルダーノ)は広告代理店からの
依頼で、エジプトのカイロにあるイシス化粧品を訪れる。
しかし空港に着いた時点からゲイルを尾行する奇妙な影があった。
それは狂信的な宗教グループの一団で、若い娘を誘拐しては
ファラオの生贄として祭壇に祭っていたのだ。
ホテルに着いても不審な事が相次ぐ。部屋に突然かかってきて
取ると切れてしまう謎の電話、窓の外からゲイルに不気味な視線を
送る若い女性、そして部屋にあった不吉な人形・・・。
ゲイルはホテルのプールサイドで出会ったケレブ(バーガー)と名乗る
魅力的な男性と出会い、エジプト案内を申し出られる。
本能のまま?仕事そっちのけでディスコで踊り狂うゲイルの元に
セットとセクメット(ネル)という怪しげな兄弟が言い寄り、
赤毛のゲイルがエジプトの女神イシスに生き写しだと告げる。
セクメットは先ほど窓の外からゲイルを見ていた不審な女だった。
異様な悪夢を見てうなされたゲイルは、翌朝ケレブと共に
イシス化粧品の住所を訪れるが、そこには会社らしい物は
存在していなかった。NYの代理店に電話をするも不通、
しかしこれも一時のバカンスと割り切ったゲイルは、ケレブの案内で
ピラミッドや遺跡巡りを楽しむ(この辺の展開が万事イージー。
一応エジプトロケをした、というセールス・ポイントをさり気なく?アピール)。
遺跡の中でゲイルはケレブの語る古代エジプトの伝説に
耳を傾ける。それは幽界の王、オシリスとその妻イシスの物語で、
二人の中を妬んだオシリスの弟セットと、その妹セクメットが
オシリスを殺害し、その肉体をバラバラにしてエジプト中にばらまき、
イシスに言い寄ったが、彼女は夫の亡骸を求めてエジプト中を彷徨い
その肉片を集めて回った。彼女を哀れんだ太陽神ラーは
オシリスを甦らせたが、イシスは消えてしまった。
それ以来オシリスは彼女の生き返りを探し続けているのだという。
更にイシスのしていた指輪はゲイルの物と瓜二つだった。
(まぁここまで説明されれば、イイ加減バカな観客でも、ヒロインが
女神イシスの甦り、ケレブの正体がオシリスで、ディスコの2人が
邪悪な兄妹だと気付くでしょう、という製作者の意図が見え見え。
オシリスの姿が写真に写っていないダメ押しもあり)
結局、ゲイルは兄妹によってホテルから誘拐され、満月の晩に
行われる秘密の儀式に引き出されてしまう。全裸にされた彼女は祭壇に
縛り付けられ、トランス状態に陥った巫女と異常興奮した参加者達によって
悪魔を甦らせる為の生贄に捧げられてしまいそうになる。
しかし、そこに現れたケレブは超人的な怪力を発揮して神殿を破壊、
逃げまどう邪教集団の中から無事ゲイルを助け出すのだった。
やっぱりケレブはオシリス王だったのか?飛行機の中で
仲むつまじく微笑み会う2人。ゲイルが取り出した写真を見ると、
そこにはケレブの姿がちゃんと写っている!
驚く彼女にケレブは言う「カメラでは本当の謎を解き明かすことなど
出来ないのだ」と。画面は写真の中のスフィンクスを大写しにして終わる。
<解説>
タイトル数はかなりあるが、レア物は少ない<大映ビデオ>物にして
唯一ワールドワイドにレアな1本。筆者はこんな映画がリリース
されていたなんて全然知りませんでしたが、ビデオブーム全盛の頃、
「ロードショー」などの映画雑誌にちょっとした広告が掲載されたりも
していたようです。本当にカオスだったんですね、あの頃。
で、映画自体はどんな作品だったのかというと、見終わっても
何が何だか分からない、悠久のエジプトの謎のような内容でした。
もっともミステリアスな雰囲気を味わえるだけで十分な作品なのかも
しれませんが。
最大の見物になるのは、やはり主演のダニエラ・ジョルダーノ。
この「ファラオのはらわた」は、ユーロ・トラッシュ映画ファンの間では
カルトな人気を誇る彼女自身が認める、数少ないフェイバリットの1本である。
ヒロインに扮したダニエラ・ジョルダーノは日本では殆ど無名だが
主な出演作に奇妙なテイストが忘れがたい「戦慄!2Aの女(V)」や、
丹波哲郎のGF?に扮してチラリと登場する「五人の軍隊」がある。
M・バーヴァのセックス・コメディ「Four Times That Night」、
セルジョ・マルティーノの残虐ジャーロ「Excite Me !」、
ポール・ナッシーの初監督作「宗教裁判(未)」などにも出演しているが
残念ながらいずれも未公開のまま。この映画ではアイラインを
クッキリ引いた(エジプトの女神という役だから?)
クールな雰囲気がとても魅力的。不思議な女優さんだ。
「ファラオのはらわた」に関して、ジョルダーノが後のインタビューで
語ったところによると、彼女はこの映画の結末がどんな風に
終わったのか全然覚えていないのだという。
なぜならエジプト・ロケ半ばにして戦争が勃発、カイロ近くの
砂漠でロケ撮影していた時は照明を目印にした敵機に爆撃されない
ように、飛行機の飛来を無線で連絡する戦士が撮影隊の周りに常に
待機していた。一度、スタッフ・キャストが宿泊中のホテルの付近が
爆撃され、彼らが命からがら逃げ出したこともあった。
映画の中のジョルダーノがどこか眠そうな表情なのは
彼女が常に戦争のことを心配して夜も眠れない日々を送って
いたせいだという。
またジョルダーノが渡された脚本は彼女にとって外国語に当たる
英語で書かれた物で、当然劇中の演技も全て英語のセリフだった事も
映画の内容を良く覚えていない一因だという。
「ファラオのはらわた」ではジョルダーノにイタリアでも
腕利きのメイキャップ師が付き、撮影も確固たるテクニックを持った
キャメラマンだったので、結果的に彼女が非常に美しく撮られている
(少なくともそれまでになかった経験だとジョルダーノは
回述している)。また監督のカイアーノも彼女のやりたいように
演技をやらせてくれたようで、ジョルダーノはゴキゲンだったらしい。
しかし映画自体はイタリアでは興行的に惨敗を記録した。
(ビデオを久々に見直したジョルダーノは、作品の評価をマイナス方向に
変えたようだが・・・)
他の出演は「脱走特急」「野獣曉に死す」ではタフガイを演じた
ウィリアム・バーガー。ユーロトラッシュ映画のファンには
「大虐殺・なぶり(漢字変換できず)殺し」や、数々のジャーロ、
ホラー映画群に良く顔を出しているオジさん、という印象が強い。
彼の娘カティア・バーガーはチャイルド・ポルノの「小さな唇」で
痛々しい?ヌードを披露し、実弟カシミアと共演したジョー・ダマートの
「Rosso
Sangue(「猟奇!食人鬼の島 2」)」では、ジョージ・イーストマン扮する
食人殺人魔相手に血みどろのクライマックスを演じ切った強者女優。
その他に、ナスターシャ・キンスキーの存在感が強烈な
ジャン=ジャック・ヴェネックス監督の「溝の中の月」にも出演している。
脇役の中ではワイルドなルックスのクリスタ・ネルが圧倒的迫力。
「禁じられたデカメロン」「気狂いピエロ」に出ていた彼女は
やはり「So
Sweet So Dead」などのジャーロ映画に良く出ている人。
この映画では、彼女が中盤で見せるセクシーなダンスや、
ジョルダーノとのレズビアン・セックスシーン等にクリスタ・ネル特有の
濃い持ち味が発揮されており、ジョルダーノとの火花散るゴージャスな
女優対決も見物の一つになっている。
監督のマリオ・カイアーノは「荒野のドラゴン」や、
「荒野のプロ・ファイター」等のマカロニウェスタンで知られるベテラン。
正直、マカロニ西部劇の方は見たことがないが、60年代を
代表する傑作イタリアン・ホラーの1本「亡霊の復讐」を
バーバラ・スティール主演で撮り上げている実績がある。
この映画はスタイリッシュで手堅い演出ぶりだった「亡霊の復讐」に
比べると全体的にラフなムードが強く、ディスコでのダンスが延々と
描かれたりする。が、それでも(カイアーノお得意の)幻想/悪夢シーンが
効果的に挿入されたりと、バランスの崩れた面白い仕上がりになっている。
70年代調おサイケが炸裂するタッチは一見の価値アリだ。
カイアーノ自身も絡んだ原案・脚本のクレジットに
「ミイラ転生」の監督、フランク・アグラマの名前がある点にも注目。
やはりエジプト物はアグラマに任せろ、って感じ??
撮影にはアルベルト・デ・マルティーノの「悪魔が最後にやって来る!」を
担当したエンリコ・メンツァーレ、不気味な旋律と哀愁のエジプト民族音楽、
それにノリノリのサイケ・サウンドが入り交じる、ゴッタ煮系の
スコア音楽を「新・荒野の用心棒」や、マリオ・バーヴァの後期大傑作
「Lisa and the Devil(「新・エクソシスト」にあらず!)」で聴かせる
音楽を書いたカルロ・サヴィーナが担当しているのも嬉しい。
日本版ビデオの解説にはオール・エジプト・ロケと書かれており、
確かに町中のシーン等はそれっぽくて効果的だが、本編には
撮影場所:チネチッタ・スタジオとクレジットされている。
室内シーンがスタジオ撮影なのかもしれない。
さて、次回は30代のユーロトラッシュ・ファン達に「恐るべき衝動」という題名で、
もう少し若めのファンにはB級ゴア映画アンソロジー、「テラー・オン・テープ」に
収録されていた正体不明の映画「Errie Midnight Horror Show」として
消えないトラウマを残した、12チャンネルのお昼専門映画を取り上げる予定です。
この映画、徳間ビデオさんから「バージン・エクソシスト」という邦題でちゃんと
リリースされていたんですねぇ。現物はやはりビデオ屋でもあまり見かけませんが、
好きな人は絶対好きなはず!そういう内容の1本です。お楽しみに!!
「バージン・エクソシスト」から必殺ゲロ攻撃(嫌がらせ?)