新・殺しのテクニック
次はお前だ!

THE FIFTH CORD


(aka):
GIORNATA NERA PER L’ARIETE
EVIL FINGERS


フィルム−ダリオ/BRC・フィルム・プロ

1971年 イタリア映画 イーストマンカラー 
93分(100分説あり) 日本劇場公開1972年
日本盤DVDあり(発売元:キング)
     

製作:マノロ・ボロニーニ
監督・脚本:ルイジ・パッツォーニ
原作:D・M・ディバイン(「五番目のコード」)
脚本:マリオ・ディ・ナルド/マリオ・フェネルリ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
編集:エウジニオ・アラビッソ
衣装:フィオレンツォ・セネーゼ
音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:

フランコ・ネロ(新聞記者:アンドレア・ビルド)
パメラ・ティフィン(アンドレアの恋人:ルー)
シルヴィア・モンティ(ヘレン)
イラ・フュルステンバーグ(イザベル)
エドモンド・パルダム(エドュアルド・バルモン)
ヴォルフガング・プライス(警部)
レナート・ロマーノ(ビニ医師)
ロッセラ・ファルク(ソフィア・ビニ)
マウリッツィオ・ボヌグリア(ラボック教授)
グイド・アルベリティ(局長トラバーシ)
ルチアーノ(ルチオ)・バローリ(ウォルター)
アゴスティーナ・ヴェッリ(売春婦ジュリア)
アンドレア・スコッティ(トニー少年)
コラッド・ガッピア/イリオ・ファンティーニ


*海外の資料ではビニ医師役とラボック教授役が
入れ替わってクレジットされているものもある。

 

<物語>

ローマから少し離れた中都市、大晦日の晩。
とある小さなバーで、この街に住むブルジョア達の
秘密のパーティーが行われていた。

流れる音楽に身を委ねる何人かの男女はみな、地元の名士たちばかり。
大学教授をしているラポック(M・ボヌグリア)とバルモン(E・パルダム)、
病院の院長ビニ(R・ロマーノ)、美しい上流階級の女性である
イザベル(I・フュルステンバーグ)と、ヘレン(S・モンティ)、
レーサーのウォルター(L・バローリ)、そしてガゼッテ誌の記者
アンドレア(F・ネロ)の顔もあった。やがてパーティーがお開きになり、
泥酔した参加者達はそれぞれの帰路に着いたが、その中の一人
大学教授のラポックがトンネルで突然何者かに襲われてしまう。
幸い悲鳴を聞きつけたウォルターが現場に駆けつけた為に
犯人は逃走、しかしラポック教授は重傷を負ってしまった。
アンドレアはこの奇妙な事件に興味を持つが、これが恐るべき
連続殺人の幕開けに繋がろうとは、その時は誰も想像だにしなかった。

数日後、今度は本当の殺人事件が起きた。院長ビニの
年輩の妻で、体の不自由なソフィア(R・ファルク)が
自宅で一人で居るところを何者かに襲われ、絞殺された挙げ句に
階段から突き落とされ、惨い死体となって発見されたのだ。
彼女の死体の脇には親指の部分を切断された黒手袋が残されており、
この謎めいた遺留品は異常な殺人事件が今後も続く予兆を感じさせた。

 

警察はまず、秘密パーティーの出席者を疑い、捜査の手は
アンドレアにも伸びてきた。日頃から呑んだくれて素行の悪い彼は、
警察から一番に事件の最有力容疑者と見なされてしまった。
アンドレアは愕然としながらも、自らの身の潔白を証明する為に
必ずや事件の真犯人を自分の手で捕まえようと固く心に誓う。
こうして周囲から不審な目を浴びながら、アンドレアのたった一人の調査が始まる。

まず、浮かび上がったのはソフィアの死によって
莫大な遺産を手にした、ある人物の奇妙な行動だった。
その男、ビニ博士の犯行の確証が掴めないまま、
第2の殺人事件が起きてしまう。

今度の犠牲者はアンドレアの上司にあたるトラバーシ新聞局長
(G・アルベルティ)。夜の公園で何者かの追跡を受けた彼は、
恐ろしさのあまり心臓発作を起こしてショック死していた。
益々自分への疑いが深まるのを感じながら、
アンドレアは執念深く容疑者の尾行を続ける。

 

ある日、ビニ博士とウォルターが町外れの古びた邸宅に
入っていくのを目撃したアンドレアは、邸内に侵入し、
薄暗い部屋の中でもつれ合う男女に淫楽な視線を
投げかける男達を目撃する。その中には
大晦日のパーティーの出席者、バルモンの姿もあった。

 

アンドレアが捜査を進めるうち、様々な証言で真犯人の姿は
2転3転し、彼は事件の複雑さを実感する。
そんな中、第3の殺人が起きた。今度は白昼堂々、
ホテルの一室でアンドレアの元恋人イザベルが浴槽の中で、
全裸の溺死体となって発見されたのだ。証拠は全く残されておらず、
凶器も見つからなかった。そして現場に残された
黒手袋・・・今度は指が2つしかなかった。

 

冷たい冬が終わろうとしていた頃、第4の魔手は
美しい売春婦ジュリア(A・ベッリ)を襲った。
戸外の森で仕事を終えた彼女の一瞬の隙をついて
犯人の手にしたナイフがその白い喉を引き裂く。

 

アンドレアは必死で事件の裏を探っていく。
一見、何の共通点もない連続殺人、その裏には
必ず何かが動機として存在しているはずだ。
彼は懸命に新聞記事をめくっていく。
1月23日・火曜日、2月13日・火曜日、3月・・・
彼はようやく事件に隠された鍵を見つけだした。
犯行は必ず火曜日に起こっている!!

呪われた火曜日、そして<牡羊座>にまつわる神秘的で、
戦慄すべき殺人事件の動機。
次の火曜日にはヘレンの幼い息子トニー
(A・スコッティ)が一人になる。戦慄がアンドレアの
背筋を貫く!トニーの悲鳴を聞きつけて
駆けつけたアンドレアの背後から犯人が飛びかかる。
激しい格闘のなか、犯人の手にした剃刀がアンドレアの
脇腹をえぐる。彼は血を流し激痛に耐えながらも
死闘の末に犯人を叩きのめした。

(以下、ネタバレですので、反転しておきます)

真っ赤な血に濡れた犯人の仮面を剥ぐと、
そこにはラボック教授の憎々しみに歪んだ顔があった。

あの大晦日の晩、殺人犯ラボックとはホモ関係にあった
最愛の人物バルモンが、ホテルで殺されたイザベルと恋に落ち、
ラボックの元から去っていったのだった。

愛する男を奪われたラボック教授の憎しみと嫉妬は
病的なまでに歪められ、憎い女を殺す計画の中で、
動機を隠す為に関係のない人々を次々に襲ったのだった。
事件は解決した。だが背中に流れる冷たい戦慄を感じながら
アンドレアを乗せた車は街の雑踏の中に消えていく。

 

<解説>

モスクワ映画祭でグランプリを受賞した話題作「警視の告白」で
新境地を開拓し、演技派として新たな魅力を発揮した
フランコ・ネロが、奇怪な連続殺人事件を調査する
やさぐれ新聞記者を演じた日本劇場公開作のジャッロ映画。

退廃の空気が漂う大晦日の秘密パーティーに始まり、
院長夫人の絞殺、新聞局長のショック死、
美女全裸浴槽殺人、売春婦のナイフ切殺と
異様な手口の連続殺人が引き起こされる。
謎は謎を呼び、殺人鬼は次々と犯行を重ねる。
被害者は全く見知らぬ同士。動機は何か、
嫉妬?愛憎のもつれ?ねたみ、それとも恨み・・・?
警察の非常警戒をくぐり抜けて犯行を重ねる
残忍な殺人鬼。そして意外にもその犯人は?!

バラエティに富む殺人テクニック、
2転3転する推理、洗練された撮影テクニックを駆使した
美しい画面と、見どころが満載のジャッロ映画である。

この映画の主演俳優フランコ・ネロは、
一連のマカロニ・ウエスタンで人気を掴んだスター。
1941年、北イタリアのエミリア地方で生まれた彼は、
当初大学で経済学を専攻していたが、
演劇への情熱を捨てきれずローマへ向かう。
そこで数年間演劇学校に通った
ネロ
この映画の監督を担当した
ルイジ・パッツォーニ
知り合っている。1964年、
ネロが23歳の時に
偶然に「
天地創造」に出演して映画デビュー。
その後、数本のSFやスリラーに顔を出したあと
66年に折からのブームに便乗した大ヒット作
続・荒野の用心棒」に主演、一躍スターになった。
続いて「
殺しのテクニック」等のヒット作に出演、
67年にはハリウッドに招かれて「
キャメロット」で
大役を演じ切り、国際スターの仲間入りを果たす。

友人ルイジ・パッツォーニが監督した異色西部劇
裏切りの荒野」に主演し、批評家から絶賛された彼は、
それ以後も「
ネレトバの戦い」、「奇怪な恋の物語」、
豹/ジャガー」、「夜の刑事」、「処女とジプシー」と快進撃を続け、
モスクワ映画祭グランプリを受賞した「警視の告白」で
演技派としても評価され、実力と人気を兼ね備えた
イタリアを代表するスターになった。

「キャメロット」や「奇怪な恋の物語」で共演したヴァネッサ・
レッドグローヴ
と恋に落ち、一児カルロををもうけたが
結婚はせず、最終的には別れたようだ。
この映画の主演女優
パメラ・ティフィンとも
恋の噂が囁かれたが、やはり実らなかったらしい。
本人は非常に真面目なタイプの人のようで、
最近では「
ダイハード2」のテロリスト、
ヴェルサーチ・マーダー」のジャンニ・ヴェルサーチ役が
記憶に新しい。
L・バーヴァのお子さま向けTV映画
ネロは大変な子供好きで知られている)
ドラゴン・リング(未)」にも主演している。


ネロに絡む3人の美女は、まず「ステート・フェア」(62)等の
アメリカ映画で、美しいブロンドと容姿で売り出した
パメラ・ティフィン。1942年にオクラホマで生まれた彼女は、
幼い頃に両親の都合でイリノイ州へ移住。
オーク・タウンの高校を卒業する頃からティーンのモデルとして
活躍し始め、ハンター州立大学に入学するものの、モデルとして
超売れっ子になり、NYへ招かれて数多くのファッション雑誌の
表紙を飾った。映画界入りのきっかけは友人を訪ねてカリフォルニアに
行った際、大プロデューサー、
ハル・B・ウォリスに認められたこと。

 イタリアで売りだし始めた頃。

デビュー作は61年の「
肉体のすきま風」。以後「ワン・ツー・スリー」(61)、
翼のリズム」(63)、「若さでぶっ飛ばせ!」(64)、
踊れ!サーフィン」(64)、「マドリードで乾杯」(64)、
ビッグ・トレイル」」(65)、「動く標的」(66)等に出演。
その後イタリアに渡り、70年代初めまで様々な映画で活躍、
それなりの人気を博した。公表されていたプロポーションは、168cm
<髪>ブラウン、<目>グリーン。この映画ではネロのミステリアスな
若くて魅力的なブロンドの恋人に扮している。

また「火の森」で認められたゴージャス美女、シルヴィア・モンティ
ネロの元妻役で出演。彼女はルチオ・フルチの「
幻想殺人」でも
ヒロインの夫の浮気相手として登場、ミステリアスな魅力を振りまいていた。
最後の一人はネロの恋人役に扮した皇族出身の美人女優
イラ・フュルステンベルグマリオ・バーヴァの「ファイブ・バンボーレ(未)」、
マッチレス/殺人戦列」等に出演している。

 

それ以外にも豪華な出演陣が揃っており、「皇太子の初恋」で
有名になったイギリス俳優
エドモンド・パルダムが事件の鍵を握る
登場人物を演じる。
パルダムはイタリアに渡ってから数多くの
ゴミ映画に出演。一気にこのジャンルでも名前を売った。

U・レンツィの「激戦地」に出ていたドイツ俳優
ヴォルフガング・プライス、「ドリアングレイの秘密」の
レナート・ロマーノ、古くから活躍するベテラン女優
ロッセラ・ファルク、中堅俳優マウリッツィオ・ボヌグリア
火の森」や「血みどろの入江」、アクション物などにも
出ている
グイド・アルベルティ、若手からはルチアーノ・
バロリ
と、その後ベテラン女優にのし上がった
悪魔の微笑み」、「SEX発電」、「悪魔が最期にやって来る」等の
アゴスティーナ・ヴェッリ。子役にアンドレア・スコッティ等々。

 

制作はこの当時、新進プロデューサーだったマノロ・ボロニーニ
監督は
フランコ・ネロとは長年の友人で、カルメンを題材にした
異色西部劇として名高い「
裏切りの荒野」で
監督デビューを飾った
ルイジ・パッツォーニ
彼は既に青春映画の佳作「
わが青春のフロレンス」でも
脚本を手掛けた実績を持っている。


原作は日本でも翻訳が出ている
D・M・(デヴィッド・マクドナルド・)ディヴァイン
「五番目のコード」。この古典的推理小説を基に監督でもある
パッツォーニ、
バスタードのマリオ・ディ・ナルドマリオ・フェルネッリ
3人が共同で脚本を執筆。

撮影を担当した
ヴィットリオ・ストラーロと、音楽の
エンニオ・モリコーネは、ダリオ・アルジェントの「歓びの毒牙」を担当した
スタッフで、「
新・殺しのテクニック」も一人称カメラを用いるなど、
アルジェント風のタッチを狙ったらしい雰囲気が濃厚である。

 

イタリアを代表する作曲家として日本でも
根強いファンが多い
エンニオ・モリコーネは、
1928年ローマ生まれ。ローマの国立サンタ・
チェチーリア音楽院でトランペットの作曲法、
管弦楽法、指揮法の学位を取り、
現代音楽の
ゴッフレード・ベトラッシに師事。
最初は準音楽の作曲家を志し、TVやラジオ、
舞台などの仕事をこなす傍ら、室内楽や交響楽を
勉強していたが、放送の仕事でフォーク・ソング等を
取り上げるうち、クラシック以外の音楽にも
興味を抱き始め、次第にポピュラー音楽の
世界にも関わるようになっていった。

こうして60年に「歌え!太陽」を手掛けた
モリコーネは、その後11年間に80本以上の
作品に関わる性直的な仕事ぶりをみせている。

代表作といわれる「荒野の用心棒」(64)では
従来のイタリア風音楽にモダンなタッチを加え、
トランペットやエレキ・ギター、コーラスを駆使した
ユニークなサウンドを生みだし、その後の作品でも
常に前衛的なアプローチで画面を盛り上げていた。

主な作品は
カトリーヌ・スパークが主演した
太陽の下の18歳」「狂ったバカンス」(共に61)、
ゼロの時代」(64)、「夕陽のガンマン」(65)、
アルジェの戦い」「目をさまして殺せ
続・夕陽のガンマン」(全て66年)、
華やかな魔女たち」「エスカレーション
バーバレラ」(これも全て67年)、「テオレマ」(68)、
ウェスタン」「さらば恋の日」(共に69)、
シシリアン」「彼女と彼」「狼の挽歌」(全て70年)、
ケマダの戦い」「真昼の死闘」「わが青春の
フロレンス
」(71)等々がある。
最近も
アルジェントが監督した作品に音楽を
つけており、「
スタンダール・シンドローム」(96)に
続いて新作となる「オペラ座の怪人」(98)でも音楽を担当している。