
1972年 イタリア=スペイン合作映画 91分
(テクニ)カラー撮影 プリントはイーストマンカラー
原版シネマスコープ(日本版ビデオはTVサイズにトリミング)
SEFIチネマトグラフィカ s.r.l (ローマ)
プロダクション・バルキャザール S.A. (バルセロナ)
製作総指揮:フランシスコ・パルキャザール
製作コーディネーター:フォランシスコ・ロッシ
監督:マウリッツィオ・プラドュー
原案:アルパッド・デ・リーソ
マウリッツィオ・プラドュー
脚本:アルパッド・デ・リーソ
マウリッツィオ・プラドュー
アルフォンソ・バルカザール
ジョージ・マーティン
撮影:ジェイミー・ドュー・カーサス
編集:エンゾ・アラビッソ
美術:ジュアン・アルベルト
音楽:ロベルト・プレガディーオ
出演
ロベルト・ホフマン(アルベルト・モロシーニ)
スーザン・スコット[ニーヴェス・ナヴァッロ](キティ)
ジョージ・マーティン(メルギー警部)
アヌスカ・ボローヴァ(リディア・アリギ/妹シルヴィア)
セラフィーノ・プロフーモ
サイモン・アンドリュー(マルコ)
アンア・リベラーティ
ロジータ・トロース
クリスティーナ・タンボッラ
ネリーナ・モンタグナーニ
オルランド・バラーラ
ジョヴァンニ・プローネ
サルヴァトーレ・ボルゲーゼ(パレート)
ロドルフォ・ロッリ
カルロ・カリーリ
ルチアーノ・ロッシ
<物語>
前衛的な女性キャメラマンのキティは、高台にある
観光地のテレスコープ(有料望遠鏡)を覗いているうち、
偶然にも、ある屋敷の一室で殺人が行われているのを
目撃してしまう。黒いトレンチコートに帽子を被った犯人は
裸の女性をナイフでメッタ刺しにしていた。
肝心なところでコインが切れてしまい、肝心の犯人の顔は
分からなかったが、表の通りに出た犯人が
栗売りの屋台を蹴飛ばして逃げたこと、
そして殺人のあった屋敷の番地だけは確認できた。
遅れてやって来たキティの婚約者である
ハンサムな芸術家、アルベルトと共に、
キティは事情を説明しようと警察に向かうが、
2人を出迎えたメルギー警部は
彼女の話には半信半疑のままだった。
キティとアルベルトの友人である音楽家のマルコと、
その妻で腕利き女性記者のリディアらが登場するなか、
やはりキティの目撃したとおりの殺人事件が起きて
いたことが発覚。ドイツ人旅行者が偶然に撮ったという、
現場から逃げる殺人者の写真がリディアの新聞に
掲載された夜、現場にいた栗売り青年ロコが何者かに
襲われ、カミソリで喉笛を切り裂かれて惨殺されてしまう。
警察の調べで、ロコの殺人現場、キティの目撃した
殺人事件の被害者マルティネス嬢の殺人現場、
更にそれ以前に起きていたある女性の殺人現場に、
共通して杖をついた跡が残されている事が判明する。
更にアルベルトの個展に、犠牲者マルティネス嬢が
訪れていた事実から、警察はアルベルトに疑いを向ける。
不安を感じて部屋を出ようとするキティに、
アルベルトは絶対に自分が犯人ではないと断言するのだった。
そんなアルベルトの元に、マルタ・グエリと名乗る
老婆から電話がかかってくる。彼女は殺人現場となった
マルティネス家で家政婦をしていた老婆で、
自宅を訪れたアルベルトに、犯人を知っているので、
名前を教える代わりに大金出せ、と請求してくる。
アルベルトが新聞社から金を調達することを約束し、
老婆の屋敷を後にした直後、何者かが彼女の部屋に
侵入し、またしてもカミソリでノドを掻き切って
老婆を惨殺してしまう。
老婆との会話を密かに録音していたテープを
警察に提出したことで、アルベルトの容疑は一応晴れたが、
今度は、アルベルトやマルコが準備している舞台で
ストリップ風のバレエを披露することになっていた
アメリカ人ダンサー、マグダが自室で襲われ、
枕で窒息させられた後、カミソリで体をズタズタに
切り裂かれてしまった。
警察は殺人現場の写真に偶然写り込んでいた
若い女性が手にしているバッグを引き延ばし、事件の
重要な手がかりとしてリディアの新聞に掲載させた。
恐らく問題の女性は売春婦であろうという推測の元、
警察はアルベルトとキティに協力を依頼、キティは
売春婦の振りをして犯人が現れるのを待つが、
網に掛かったのは皮肉にも何と警察署長だった。
リディアの記事を見たバッグ製造業者の男が
新聞社を訪れ、あのバッグは試作品で一つしか作って
いない為、誰が買ったのかは容易に分かると告げる。
彼の情報から、バッグを買ったのはやはり売春婦で
スペイン人のイネス・フェレッティという女性である
事が分かる。怯える彼女は新聞社からの連絡を受け、
リディアの自宅にやって来るが、居間に飾られた
一枚の写真を見ると恐怖の叫び声を上げ逃げ出してしまう。
そこには、リディアとマルコ、リディアの双子の妹
シルヴィアと、彼女のBFが写っていた。
大雨が降りしきる中、車を停めたイネスは警察に
電話をかけ、犯人が分かったので自分を保護して
欲しいと懇願する。コインが切れてしまい、
車に戻った彼女に、車が停められていた隙に中に
乗り込んでいた犯人が襲いかかる。
杖で首を絞められたイネスは無惨にも喉笛を
深々とカミソリでえぐられて絶命した。
アルベルトは殺された老婆が残したテープの会話に
ある重要なキーワードが隠されているのに気づく。
彼女は<踊る>という言葉を使っていたのだ。
殺された犠牲者達は皆バレリーナではないか?
リディアの調べで、殺されたマルティネス嬢が
オクロビッチ夫人のダンス・アカデミーに通っていた
事実が判明し、アルベルトとキティは夫人に会いに
アカデミーを訪れる。しかし夫人はマルティネスという
生徒はいかなったと言い張り、2人を追い返してしまう。
しかし校門で待っていた学園の秘書と名乗る若い女性が
突然2人の車に乗り込んできて、やはりマルティネス嬢が
この学園でバレエを学んでいたこと、校長は世間の
評判を恐れて嘘を付いている事を告白する。
リディアは自分の妹シルヴィアも同じアカデミーに
通っており、怪我をして杖を使っていたのを思い出し、
暗い疑惑に駆られる。しばらく考え込んでいた
リディアは何かを決心したように、警察の番号を回す。
昼間に会った秘書の案内で、夜中にアカデミーに忍び込んで
証拠を集めようという計画を立てたアルベルトと
キティは、秘書の女性から、実は自分が殺された
マルティネス譲とレズビアンの関係にあり、
彼女の復讐を果たしたいと思っているのだと聞かされる。
資料室にあった写真を複写していたキティは、
その中の1枚に信じられない人物が写っているのを
発見する。その時、部屋の電気が消え、杖を手にした
何者かがキティに襲いかかった。
暗闇の中を絶叫しながら逃げ回るキティは、庭先の
温室の中へ逃げ込む。しかし犯人は杖でガラスを割り、
温室へ侵入してきた。逃げ場を失ったキティは絶体絶命。
とうとう追いつめられた彼女にカミソリの刃が
振り下ろされようとしたとき、メルギー警部の拳銃が
火を噴いた。もんどり打って倒れる殺人犯。意外にも
その正体は音楽家のマルコだった!
駆けつけたアルベルト達を前に、リディアが真相を告白する。
彼女は夫マルコの楽譜を整理しているときに、異常な
筆跡に気づき、彼が自分の作った曲を極度に愛していて、
それを拒絶されることを恐れる余り、自分に近づいてきた
ダンサー達を手当たり次第に殺していた事を知ったのだった。
キティが発見した資料室の写真には、殺されたマグダと
一緒にピアノの前で微笑んでいるマルコの姿があった。
背の高い街路樹が並ぶ小径を歩きながら、リディアは
アルベルトに、当分マルコの曲は忘れられそうにないと
告げるのだった・・・。
<解説>
黒いトレンチコートに黒い帽子を被った殺人魔が、
カミソリを持ち歩いて犠牲者達のノドを切り裂いて回る、
典型的なジャーロもの。ロベルト・モンテーロの
「SO SWEET SO DEAD」(72)や、A・クリスピーノの
「炎のいけにえ」(74)等に並ぶ、日本でビデオが見られる
レアなジャーロ映画の1本である。
お話は美人キャメラマン(S・スコット)が高台に
設置してあるテレスコープで偶然にも殺人現場を
目撃してしまう印象的なシーンから始まるが、
映画のタイトルバックでも、若い男性2人が
軽快な会話を交わしながらテレスコープで
町中を覗いて回る様子が描かれている。
ここで、刑務所の建物と、若者のGFである若い女性が
他の男の車に乗り込んで消える光景が
登場するが、この2つは後の物語に多少の暗示を
与えていて面白い。特に後者の女性の場面では
屈んだ彼女のスカートから下着が丸見えに
なってしまう演出があり、映画全体に漂う雰囲気、
<他人の生活を覗き見る>という要素と、
<性的なニュアンス>を上手く醸し出している。
監督のプラデューや、警部役の俳優G・マーティンも
参加した脚本は、滑り出しはヒッチコックの
サスペンス映画のクラシック、「裏窓」を思わせ
なかなか快調なのだが、後半に向かうに従って
ハチャメチャな展開になってしまうのが残念。
特に犯人探しと犯行動機に至っては、マトモな
ミステリー映画ファンなら激怒モノの結末。
また殺されてしまうスペインの売春婦が
リディアの自宅の居間に飾られた写真
(トリミングされてしまっているので、画面に
ハッキリと写し出されるのはリディア姉妹の
姿だけだが)を見て、その中に犯人がいる!と
言ってしまう設定もミステリーとしてはどんなものか。
しかも走る車窓にリディア、シルヴィア、
マルコ、そしてシルヴィアのBFの顔が
写真に写っていたのを再確認させるように、
オーバーラップで写し出される演出センスも凄い。
更に犯人が足の悪い人間で、クライマックスでも
足を引きずって襲いかかってくるくせに、
実際はカムフラージュの為だけに、足の悪い振りを
していたという設定はかなりメチャクチャ。
またS・スコットが売春婦に変装して犯人を
おびき出す下り(手がかりとなるバッグを持って
街路に立ち、やってきた車に向かって100ドルという
法外な値段を提示し、それでも良いという男が
杖を持っていて、これは犯人か?!と思わせておいて
実は警察署長だったという安い<お笑い>場面)や、
クライマックスでバレエ学校に忍び込んだS・スコットが
やたらと「トイレに行きたい」と連発するシークエンスなど、
意味不明なシーンもやたらと挿入されている。
但しプラデューの演出は殺人シーンに関しては
なかなかのもので、72年の映画としては
かなり残虐な描写が続出する。特にカミソリが
喉元を切り裂くクローズ・アップが多用されていて、
思わず首に手が行ってしまうような衝撃的な
ショットを撮るのに成功している。
この映画は「SO SWEET SO DEAD」や
「猟奇変態地獄(アマゾンの腹裂き族)」(77)、
G・ジェンマの「ゴールデンボーイ:危機また危機」、
E・フェネシュの「DAY OF THE MANIAC」(72)等で
毎回ヌードを披露して惨殺されていた
スーザン・スコットが主演しており、当然
彼女が気前よく脱ぎまくる場面がふんだんに
用意されている。他にも共演のアヌスカ・
ボローヴァ(2役?)や、ダンサー役の美女達が
ストーリーと関係なくやたらと裸になる構成で、
主要なお話の合間は殆どヌード・シーンか
ソフト・コアの濡れ場ばかりという印象。
大人向けのジャーロ映画という事なのかも
知れないが、ちょっと奇妙な感じだ。
S・スコットの婚約者に扮するロベルト・ホフマンは
アルジェントが製作したTVシリーズ「サイコファイル」の
一話「人形」で、中盤までは殺人犯っぽい描かれ方を
している精神分析医の役を演じていた俳優。
この映画でもハンサムだが、どこか胡散臭い
ムードを持った青年の役で、やはり途中までは
容疑者として疑われる役回りに扮している。
他の出演作にはタイロン・パワーの不肖の娘、
ロミナ・パワーと共演した軽いタッチの青春映画、
「イタリア式恋愛テクニック」がある。
真犯人を演じるサイモン・アンドリューは
アマンド・デ・オッソーリオがジャングルに潜む
豹女の恐怖を血糊タップリに描いた
「ナイト・オブ・ソーサー 性霊・魔女伝説」(73)で
主人公の探検家を演じていた俳優だが、
この映画では割とラフに扱われているだけ。
ちょっと残念な配役だ。
本来この映画はシネスコで撮られているのだが、
日本版のビデオはTVサイズにトリミング済み。
殺人シーンで被害者が命尽きる直前に、
画面が主観キャメラに切り替わると
画面一杯にグラグラ揺れる光景が写し出されるので
見ている方は船酔いと同じ様な感覚で気持ち悪く
なってしまう。クライマックスの温室シーンでも
恐怖に怯えるS・スコットの顔がグルリと回転する
キャメラでとらえられているので、やはり同様の
気持ち悪さが炸裂。出来れば本来の画面比率で
見てみたいものだ。
Special Thanks to KOZY for video source.