勝率のランキング
「プロ野球記録ジャーナル」の藤田さんからたいへんおもしろいお題をいただきました。
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牧さん、今日は「プロ野球記録ジャーナル」に書き込みいただきありがとうございました
ご多忙中のところ大変恐縮ですが海外在住のためによく分からないので教えてください。昨シーズンのパ・リーグ勝率第1位のタイトルは.933をマークした篠原貴行(ダイエー)が受賞しました。篠原は規定投球回数未満ですが、パは1986年から13勝以上に規定したため、これは理解できます。しかし、宇佐美徹也氏が監修する「プロ野球全記録2000年版」およびベースボールマガジン社の「2000 ベースボール・レコード・ブック」のいずれもで篠原の記録をパ歴代2位にランクしていることです。
実は、1995年に平井正史(オリックス)が同タイトルを獲得した際、私はてっきり規定投球回数以上で13勝以上と理解していましたが、「ああ、規定投球回数に関係なく13勝以上なのか」と判断しておりました。このため、昨季の篠原のタイトル獲得には納得できますが、シーズン記録として同選手の成績が扱われることには納得できません。13勝以上とはあくまでもパのタイトル表彰上における内規であり、公式記録上はやはり規定投球回数以上を基準とするべきです。オフィシャル・ベースボール・ガイドを入手していないために確認できないのですが、パ・リーグ記録部の見解はどうなっているのでしょうか? また、これに対する牧さんのご意見も拝見できれば幸いです。
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これについての私の意見は、掲示板の方に書きこませてもらいますが、是非ともだしておきたいデータがあります。
下記の表は、実際に「勝率1位」として表彰された投手が「規定投球回と13勝以上」を両立していない年度です。
左側は「規定投球回以上の勝率1位」。右側は「13勝以上の勝率1位」です。青字で斜体が実際に表彰された投手。名前の横の「*」は規定投球回未満を表します。
規定 | 13 勝 | 以上|||||
54C | 杉下 | 茂32 勝 | 12 敗0.727 | 中尾 | 碩 志*15 勝 | 5 敗0.750 |
54P | 西村 | 貞 郎22 勝 | 5 敗0.815 | 沢藤 | 光郎*14 勝 | 2 敗0.875 |
64C | 石川 | 緑10 勝 | 3 敗0.769 | バッキー | 29 勝 | 9 敗0.763 |
65C | 山中 | 巽12 勝 | 2 敗0.857 | 中村 | 稔20 勝 | 4 敗0.833 |
67C | 堀内 | 恒夫12 勝 | 2 敗0.857 | 金田 | 正一16 勝 | 5 敗0.762 |
67P | 石井 | 茂雄9 勝 | 4 敗0.692 | 足立 | 光宏20 勝 | 10 敗0.667 |
71C | 坂井 | 勝二9 勝 | 4 敗0.692 | 高橋 | 一三14 勝 | 7 敗0.667 |
72P | 佐藤 | 道郎9 勝 | 3 敗0.750 | 足立 | 光宏16 勝 | 6 敗0.727 |
73P | 八木 | 壮六7 勝 | 1 敗0.875 | 米田 | 哲也15 勝 | 3 敗0.833 |
74P | 竹村 | 一義9 勝 | 3 敗0.750 | 金田 弘 | 留16 勝 | 7 敗0.696 |
77C | 新浦 | 寿夫11 勝 | 3 敗0.786 | 小林 | 繁18 勝 | 8 敗0.692 |
83C | 津田 | 恒美9 勝 | 3 敗0.750 | 遠藤 | 一彦18 勝 | 9 敗0.667 |
87C | 川端 | 順10 勝 | 2 敗0.833 | 小松 | 辰雄17 勝 | 6 敗0.739 |
91C | 北 学 | 別府11 勝 | 4 敗0.733 | 佐々岡 | 真司17 勝 | 9 敗0.654 |
95P | 小宮山 | 悟11 勝 | 4 敗0.733 | 平井 | 正史*15 勝 | 5 敗0.750 |
97C | 三浦大輔 | 12 勝 | 9 敗0.769 | 田畑 | 一也15 勝 | 5 敗0.750 |
99P | 松坂大輔 | 16 勝 | 5 敗0.762 | 篠原 | 貴行*14 勝 | 1 敗0.933 |
この表は、いくつかの問題を含んでいます。
まず、現在「13勝以上」の規定はパのみであること。
’63までは「規定投球回=試合数*1.4」とキツイ条件だったこと。
こうした点が、防御率や打率と違い、勝率のランキングを出す難しさです。ならば、どうすればよいか。この表のように規定が変わるたびに「当時の規定」と「現在の規定」によるランキングを発表するのが、最もよい方法のように思われます。
実際にアメリカでは、多く行われています。しかし、私の知る限り、日本でこうしたランキングの再調査が行われメディアに登場した例はありません。こうした作業こそが、記録をより深めていくものになります。