作者の名字のあいうえお順です
最終更新日:2007.1.1
デイヴィッド・アーモンド
、ラルフ・イーザウ、ディヴィッド・エディングス、茅田砂胡、ガイ・ゲイブリエル・ケイ、ブランドン・サンダースン、ナンシー・スプリンガー、ロジャー・ゼラズニイ、ジョイ・チャント、ピーター・ディキンスン、J・R・R・トールキン、バリー・ヒューガート、レイモンド・E・フィースト、スーザン・プライス、R・A・マカヴォイ、アン・マキャフリー、マーセデス・ラッキー
、アーシュラ・K・ルグィン、マイケル・スコット・ローハン
肩胛骨は翼のなごり
、ネシャン・サーガ1(ヨナタンと伝説の杖)、ネシャン・サーガ2 第7代裁き司の謎、ベルガリアード物語、マロリオン物語、エレニア記、タムル記、デルフィニア戦記、フィオナヴァール・タペストリ(夏の樹)、エラントリス 鎖(とざ)された都の物語、アイルの書シリーズ、地獄に堕ちた者ディルヴィシュ・変幻の地のディルヴィシュ、赤い月と黒の山、アーサー王物語伝説 マーリンの夢、指輪物語、ビルボの別れの歌(指輪・おまけ)・ホビットの冒険・鳥姫伝・霊玉伝・リフトウォー・サーガ、サーペントウォー・サーガ、ゴースト・ドラム、黒龍とお茶を、ナズュレットの書シリーズ、だれも猫には気づかない、ヴァルデマール年代記シリーズ(女王の矢、女神の誓い、裁きの門、誓いのとき・運命の剣・宿命の囁き・失われた一族)
2007.2.12、ゲド戦記 シリーズ、ウインター・ワールド(続巻情報・第3巻のあらすじ追加開始)
ファンタジーというと、おとぎ話とか、現実逃避とか、うそっぱちとか、女子供専用とかマイナスっぽいイメージで捉えている人がいる。しかし、御伽噺でさえけっこう怖い背景や象徴が含まれている・・・という本がベストセラーになった。軽く読み流せるものも確かにあるが、ファンタジーを(というか小説などもそうだろうけど)甘く見てはいけない。
すぐれた物語は心の真実である。何か考え込ませたり、癒しの効果があったり、元気をくれたりする。今はぴんとこなくても、何年か先に効いてくることもある。 99.4.24
どうしてもある程度のねたばれが入ります。特に長編もの。
デイヴィッド・アーモンド(David Almond)
原題は Skellig (登場人物の名)。これでこの邦題はすごいと思う(出所は作中の主人公のせりふ関連だが)。あらかじめ言っておけば表紙は美化しすぎ。
少年の成長物語と言いきってしまうと、ちょっとはしょりすぎな感じだが、でもそうであることは確か。
優しい両親と楽しい学校生活、友人とまずまずの先生たち。主人公のマイケルは運動神経もよく、人気者である。今度妹が産まれる。しかし、引越しをする頃になってから、マイケルの人生に影がさす。予定より早く生まれた赤ん坊は何度も具合が悪くなり、ついには危険な手術が必要となる。死ぬかもしれない。両親は、不動産屋にだまされたのか、それともお金がないからなのか、痴呆のあげく死んだ老人の住んでいた、ぼろぼろの家に住むことを決めてしまう。老人の最期の惨めさと重なる朽ちた家、台所に置かれた便器…。不動産屋の空々しく響く「どうか心の目で見て下さい」。その家にはさらに廃屋のようになったガレージ…というよりは倒壊寸前の小屋だったが…があった。そこでマイケルは彼に出会う。
今まで人生の明るい面しか知らなかったマイケルは、妹の重病で死というものに向かい合うが、ガレージの中でマイケルは死ぬより悪いことがあるのを知る。それはごみや蜘蛛の巣、虫の死骸にがらくた、そしてリウマチによる絶えざる苦痛…。そんなものの中で生きているとも言えない生を保っている「彼」の姿だった。リウマチに蝕まれて動くこともままならず、心すさみ、近くに来た虫を食べて辛うじて生きている存在。彼の存在はまもなく崩れ去ろうとしている世界の中に放置されていたのだ。
彼の名はスケリグ。肉食で春巻きも好き。異常な骨格ではあるが、ふくろうが仲間扱いにしているところから、実態は猛禽類なのかもしれない。不可思議な存在。この言葉は何度も出てくるが、これはどんなものの中にも隠された一面なのではないだろうか。不可思議を知る驚きと喜び…。彼は順当で純真で何も知らなくてすんでいた子供らしい生活から少しはずれて、学校とは違う世界や腐臭を、隠された叡智を知ることになる。大人たちのあわただしさに紛れるようにして、マイケルのまっすぐで優しい心、友となった少女ミナのミステリアスな個性がスケリグを癒していく過程が大きな読みどころだ。癒しや奇蹟といった輝かしそうなイベントでも、やはり若干の腐臭や死のイメージ、汚らしさが伴っているのがいい。
天使も実は猛禽類なのかなとちょっと思ってしまった。そして、赤ちゃんはきっと強いお子になるに違いない。 2007.1.1
ラルフ・イーザウ (Ralf Isau)
著者については、ファンタジーの短篇をミヒャエル・エンデに認められて、出版にこぎつけてもらったというエピソードがある。下のネシャン・サーガは1995年発表だが、今も長編ファンタジーを書き続けているとのことだ。RPGゲームが大好きで、書いている本の世界の設定も膨大なものを作ってパソコンに入れてあるらしい。
原題は(ドイツ語)Die Traume des Jonathan Jabbok(Traumeの”a”はウムラウト)、「ジョナサン・ジェイボックの夢」というところだろうか。大人になると、この邦題はちょっと気恥ずかしいかもしれない。でも面白かったことは確か。宗教色がわりとあるので、ナルニア国物語の雰囲気とベルガリアードを2:1でブレンドしたという感じ?全3巻なのでこれからの進展が楽しみ。
こんな感じのすじ。
ネシャンという地に暮らす、ヨナタンという少年の冒険と、そのヨナタンを自分の分身としてなのか、夢に見る少年ジョナサン(ちなみにつづりは多分同じ)の生活が重奏して語られる。何となく並行しているというか、ヨナタンの冒険がジョナサンの世界にフィードバックされている。この二重性がちょっとおもしろい。
ジョナサン・ジェイボックは1920年代のスコットランドに住む(まもなく)14才の少年で、6年前の大病から足が麻痺して、車椅子を使っている。病状もすすんでいるらしい。しかし、聡明で(ジョークも好き)人を愛することを知っている。勘当した息子を許さないままいたうちに死なせてしまった後悔から、祖父はジョナサンを引き取るが、たちまち意気投合している。ジェイボック家は、由緒ある家柄の貴族で広大な領地を持っているらしい。病気になったその晩からヨナタンを夢見はじめた。ヨナタンはその時、嵐の海からかろうじて陸地に流れ着いた。こうして2人の新しい生活が始まるということだ。
ヨナタンはネシャン(涙の地という意味がある)の北方に、養父ナヴランとともに漁をしながら暮らしている。ジョナサンとは対称的に、頑健そうだ。ただ、2人とも、心優しく、愛情を受けて暮らしているし、年齢にそぐわない落着きや、変わったことでも受け入れられる度量を持っている。
物語の始まりはヨナタンがある日、穴にはまってあやうく怪物の餌食になるところから。たまたま穴の中で見つけた杖が、どうも不思議な力を持っているらしいことに気付き、怪物を退治する。その杖こそが、創造神イェーヴォーが神の代弁者「裁き司」に与えた杖:ハシェベト(ちょっとエジプトっぽい名前だ)だった。今の6代目裁き司が闇の神の使徒たちと戦った折に失われて久しいものだ。そして、ヨナタンの前に神の使者が現れる。6代目裁き司ゴエルがいる英知の庭まで杖を届ける使命を与えられるのだった。さっそく出発したヨナタンだが、行く手には数々の試練が立ちはだかる…。第1巻はこの冒険の途中まで。良き友にめぐりあって旅が始まる。ヨミはかなりぶつぶつ文句をたれているがいい奴らしい。ヨナタンの本音を代弁しているのかも。ベーミッシュはこのあと登場するのだろうか?あそこだけではもったいないような気がする。
神イェーヴォーはとことんヨナタンを試すつもりらしい。しかもハシェベトは裁き司とか、許された人間しかさわれないし、知覚を鋭敏にするといった日常的に使えるものもあるけれど、その力は悪用厳禁。ゴエルでさえ、ちょっと(じゃないけど)間違えただけで杖を没収されて蟄居閉門の身(少しいいすぎ)になってしまう。このへんがキリスト教っぽい気がする。ヨナタンは、自分の持てる力を出しきらないと次に進めない(ここでウルトラマンのスペシウム光線を思い出す)。そして与えられる援助の力はけた違いだったりする。やっぱり旧約聖書だなあ。
彼にあるのは養父の薫陶の成果:知力・洞察力・愛(つまり闇に対抗できる光の力ということらしい)、そして信仰の力だ。愛と信仰で強大な敵に立ち向かえるのか??ここの信仰のところがなじめれば、楽しく読めるはず。ジョナサンは聖書を読んだりして創造主のことをよく考えるみたいだし、ヨナタンも自分が杖の力を悪用したり、闇に加担するようなことをしていないか悩んでいる。いっしょに悩めて同じ結論が出せるかどうかだ。
ジョナサンとヨナタンはお互いに夢の世界の住人であるだけの関係ではなさそうなので、これも今後の展開が楽しみ。第2巻で一段落するらしい。
ちょこっと文句をいうとすれば、禁断の地での動きが、詳細な地図もないのでわかりにくかった。方向音痴は辛い。それから、最後の部分はねたばれになっていないのだろうか?うすうすと感じていたものの、できればもう少し後までわからないでいたかったのだが。
あとは、これは作者さんの罪では多分ないが、イェーヴォーというと、ゲド戦記に出てくる竜の名前を思い出してしまうのが困った。この神様の名前の由来は「あるがままに」という意味らしい。 2001.3.21
原題は”Das Geheimnis des siebten Richters” 多分上の邦題は直訳だろう。
ヨナタンとヨミは禁断の地を抜けて、第6代の裁き司ゴエルがいる英知の庭をめざす。といっても舟なんかないし、道は遠い。陸伝いに行くと、海賊の隠れ家に行き当たり、二人はつかまってしまう。そこで出会ったのは新たな友、ギンバールだった。ギンバールは海賊につかまった教養ある商人夫婦の息子で、海賊稼業を密かに嫌っていた。両親の助言を得て、ヨナタンとヨミの関係者から身代金をとりたてることにして、隠れ家を出るが、もう一人の海賊が、3人をゼトアにとらえさせる。
イェーヴォーの奇跡(モーゼ並みがあっさりと続く)のおかげで危地を脱出する3人。たどりついたセダン帝国の都セダノールでは助力者バルタン(…星人と続いてしまう。ネーミングの相性が悪いのだろうか?・汗)と対面する。英知の庭へ出発しようとした矢先、今度はハシェベトの力と象徴を利用したいともくろむ皇帝に軟禁されるヨナタンだった…。
一方ジョナサンの病状は悪化するばかりだ。
今回はヨナタンたちが新しい友人を得て、英知の庭に到着するところまで。そして第7代裁き司の正体が判明する。危機と援助と奇跡が次から次へと現われて、手に汗握りながら見知らぬ土地の旅ができるのが楽しい。新しい友ギンバールとフェリンは、ヨミが忠実で現実的なのとは対照的に、知恵と英知・判断力にすぐれている。杖の4つの頭から考えるともう一人誰か出てきそうな気がするが…。
エピソードが何となく聖書から来ているようなところもあったが、全き愛が最後になってどう描かれるかもう少し考えてみたい。罪を憎んで人を憎まず、ではなく、悪を憎むが悪人は改心できるから許すことができる…ということらしいが。自分にはまだしっくりこない。それは試行錯誤するヨナタンにも同じかもしれないが。まだまだ分厚い第3巻が待っているわけだけど、ヨナタンとジョナサンの関係は実際のところどうなるのだろうか?ヨナタンの意識がどうなったのかがよくわからなかった。これも3巻だろうか?闇の使徒であるゼトアもヨナタンに惹かれているようだが、彼もどうなるのかが気になる。
ジョナサンの祖父とサミュエルはもう登場してくれないのだろうか?仲良くなったばかりの家庭教師マーシャル先生は?(カロジムに引き抜いて欲しい)これだけの存在感と魅力がある人物をあっさり捨てるとしたら、ちょっと悲しいな。 2001.10.2(10.3少し修正)
ディヴィッド・エディングス(David Eddings) (and Leigh Eddings)
剣と魔法版諸国漫遊記。そして常に女は強し。
この人のシリーズの楽しみは何と行っても登場人物たちの会話。口のうまいやり手に少年盗賊、徹底的に実用的な、一家に一人ほしいメンテナンス系の達人(常識的でありながら、すぐれたものの見方ができる、まさに一家の宝)、魔術師、妙に人間くさい神々に、ぶっきらぼうな野蛮人、聡明で気の強ーい美女と、お約束のキャラクターたちが、笑える会話をしてくれます。英語版の原書で読めば、あなたもいやみや、言い訳その他妙な英語の達人になれるかも。これが出た頃、続きがなかなかでないのが待ちきれなくて、とうとうタムル記まで原書を買ってしまったりあんでした。政治の陰謀や戦いの前準備の描写が意外に多いような気がします。続きが早く読みたい人は、とりあえずそこをパスしてもいいかも。(でも読んどいたほうがいいよ)
特に使えそうな表現は”Why me?”、”It's not my own fault.”ではないでしょうか。覚えがいのあるせりふがいっぱい?
おじさんといっていい人達が、若くてきれいな(そのうえにえらく気が強かったりするんだが)女性とハッピーエンドになるのは、作者の願望が多分に入っていそうだ。もちろんそのおじさん達は、きっちり尻に敷かれていますが、これも作者の願望か?直接行動に走りたがる強い男達がかわいい。だんだん絶対王権賛成、武力解決大好きになってきそうな自分が怖い(笑)。 99.4.13
原題は Belgariad
闇の子である片目の神トラクは、長い眠りから醒めかかっていた。全てを意のままに動かせる力を持った宝珠を再び手にしようと。それを阻止すべく、光の預言を守っているのは、アルダー神の弟子にして魔術師のベルガラスと娘のポルガラだった。2人は光の預言にかかれたイベントを起こし(つまり同時に闇の預言の妨害を排し)、必要なメンバーの家系を何代にもわたって見守ってきた。彼らに協力し、トラクの民の侵攻に備える各国の王。宝珠の行方は?そして光の子とは?
この物語の主人公はファルドー農園で働く、ごく普通の少年ガリオン。料理上手なおばのポルと暮らしている。彼は時々たずねてくる、ミスター・ウルフと呼んでいた語り部の老人、ポルおばさん、そして彼女を密かに愛する鍛冶屋のダーニク達と共に、わけがわからないまま、旅に出ることになる。このパーティーのメンバーは、実は預言に定められているのだった。ガリオンは旅の過程で成長し、多くの秘密も明らかになっていく。
ここの魔術師ベルガラスは、指輪物語のガンダルフよりずっと人間味がある(ガンダルフは人間に属さないかもしれないが)。登場時間が長いせいもある。いざとなれば、非情な魔術師としての顔を見せるが、愛する妻の死に目に会えず、何年ものんだくれたり、浮気?していたこともあったらしい(すけべな老年)。台所から食物や酒をくすねるのは朝飯前。整理整頓はあまり好きではなく、ちょっと怒りっぽい。娘への愛情表現はSHYといっていい。娘のポルガラも父親に対しては複雑な愛情を抱いている。母の死に目にあえず、のんだくれて、自分達姉妹(実は双子の妹もいた)を放置していた父を憎んでいたこともある。また、預言の成就とかちあったために、愛した夫とその町を救うことができなかったのをずっと根に持っている。二人の悪口の応酬は、お互いへの遠慮や気恥ずかしい思いの混じった、複雑な愛情の産物なのだ。
ポルガラは、はじめにおばさんとでてしまっていたために、いかめしい顔してて、日に焼けてて、ごつい手の女性のような気がしていたが、実は目の醒めるような美女だったんですね。途中でそのギャップにとまどってしまった。
おおやちきさんのイラストは、好きずきですが、私には少しイメージが違いました(ちょっと濃いかな)。英語版のDELREYの表紙も当たりはずれが激しいけど。99.4.13
原題は、The Malloreon です。
ベルガリアードの続編です。約7年後の話です。ガリオンの息子ゲランが何者かにさらわれてしまった。それを追って、再びパーティーが結成される。謎の女予言者シラディスの指示にしたがって、彼らの冒険が始まる。今回は新しい、意外なメンバーが加わる。光と闇の2つの預言の謎も解き明かされる。本当に、地図作ったら全部回るぞという勢いで、あちこち引きずりまわしてくれます。預言に定められたメンバーの名前がちょっと???な気がしたが、訳した方はその時全巻読んだうえで、あえてそうしたのだろうか?”The man who is no man”とか。伏線があって、あえていろいろな意味を持たせたい言葉は、これだから大変です。種がわかっちゃっても困るし。
猫好きな皇帝ザカースは、だんだんかわいらしくなってくる。彼が ”Why me?” といったのには笑ってしまった。ガリオンとの友情も心温まります。
ただ、1人命を落とすものがいるというところはちょっと・・・かわいそうでしたね。 99.4.13
実はこのシリーズ、外伝がでています。
”Belgarath the Sorcerer The Prequel to the
Belgariad”
(David and Leigh Eddings, Harper Collins Publishers)
”Polgara The Sorceress”(同上)
手持ちの版はこれですが、この出版社はアメリカではないようですので、本家?はDEL REYかもしれません。
ペーパーバックで入手できます。内容は、ガリオン夫婦(特に奥さんの方)が2人に迫って書かせた彼らの自叙伝です。後世のものに残すべき歴史だとか何とか言って。ベルガラス親子の預言を守る奮闘振りが書かれています。アルダー神がベルガラスたちを弟子にする時の話がなかなか面白く、私はアルダーさんを見なおしてしまいました。ベルガラスの自叙伝のラストは、こうくると思っていたら、やはり出ましたね、続編ポルガラ版が!
ポルガラの自叙伝では、はじめに双子として生まれる頃のことから、妹とだんだん離れていく哀しみが印象的です。欲を言うと、本編とちょっと整合性のないところがあるのが、気になりましたが。 99.4.13
おまけ:エレニア記・タムル記の登場人物の主要成分表
スパーホーク=ベルガラス+シルク+マンドラレン
セフレーニア=ポルガラ+シラディス
アラス=バラク+サディ?
ベヴィエ=レルグ+マンドラレン?
カルテン=レルドリン+バラク
クリク=ダーニク+皮肉
ヴァニオン=ベルガラス+ポルガラ-魔力
サラビアン=ザカース皇帝で決まり!
カーラドー=ベルディン-魔力
ストラゲン=シルク+コンプレックス
タレン=シルク+ガリオン
エラナ=これは書かないほうがいいですね 99.5.9追加
この作品は、全然舞台が違います。雰囲気は中世ヨーロッパ?
原題は、The Elenium です。
キリスト教を思わせる教会と4つの騎士団、騎士たちに魔法を教える、先住民族のスティリクム人、欲望のままに行動するスティリクムの古き神々と、それを抑え込んだ新しい神々、トロルのような怪物などが登場し、権謀術数が入り乱れる。
主人公はりっぱな?おじさんといっていい年の騎士、スパーホーク(もう若くはないといっているが、いくつなんだろう)。しかも鼻がつぶれている(角川版の表紙は絶対スパーホークじゃないぞ)。しかし魔法の腕もなかなかで、武術の腕も技能も騎士たちの中ではおそらく最強である。わりと短気で、直接行動が好き。魔法の師匠(美人のスティリクム、セフレーニア)によく、野蛮人・・・とか、エレネ人ったら(原文は、”Elenes!”といたってシンプル)と嘆かれている。敵へのはったりや、ブラフのかけ方など、かなりいい性格をしている。ちなみに、彼の愛馬ファランも、かみつき癖があるなど、この主人にしてこの馬という、いい性格である。
困ったことにこのシリーズは出版社が分かれてしまった。エレニア記が出ると同時に、続編のタムル記がハヤカワ文庫からでてしまったのだ。こういうやり方はひどい。まず、訳語や文体の不統一が出やすいし、さし絵のイメージも違ってしまう。なにより、読者の鼻先に、今出ている本の結末がわかる続編をちらつかせるというのは・・・(りあんはもう原書で持ってたからまだいいけど)。タムル記の中盤で、一連の事件の黒幕がわかってしまうのに。次はどうなるという緊迫感と、早く続巻が出ないかとやきもきする楽しみがなくなってしまう。今はもう全部刊行されてしまったからいいけれど。当時タムル記を待ちきれずに読んでしまった人達が後悔の悲鳴をあげていたらしい。必ずエレニア記から読もう!
あらすじ
スパーホークの家系は、王家と特別に強い絆で結ばれていたのだが、父の代から現王アルドレアスとは不仲となり、彼は南の異教の地レンドールへ追放される。その間多くの刺客に襲われ、半死半生の目に遭う。これは何者かの陰謀か?10年後、王が死去したので、スパーホークが故国へ戻ってみると・・・。彼がかつて教育係として育て、その聡明さを愛した王女エラナ。彼女は18歳で女王として即位したが、まもなく原因不明の病に倒れたという。スティリクムの魔法の教師セフレーニアは、クリスタルの魔法を使って女王を封印した。玉座に座ったエラナは、クリスタルの中で守られている。ただし、この魔法にはセフレーニアと12人の騎士の命がかかっていて、ほぼ1ヶ月毎に1人の命が消えていくのだった。残されたものが魔法の重荷を、彼らの命の続く限りもちこたえるのだ。タイムリミットは長くてほぼ1年。
エラナが死ねば、王位につけるのは、淫奔な王女(アルドレアスの妹)アリッサの庶子リチアスのみ。アリッサと親しい、悪辣な司教アニアスは、リチアスを傀儡とし、エレニア国の財を我が物にしようとしている。現法王は衰弱し、死ぬのは時間の問題。次の法王選挙では、財力で法王の地位を買収し、最終的には、敵対する騎士団の強い軍事力も解体して、この世界に君臨するつもりなのだ。
ことはエレニア国にとどまらなくなってきたので、各国の騎士団の精鋭が共同で探索に当たることになった。エレニアのパンディオン騎士団からは団長ヴァニオン、カルテン、スパーホーク、従者クリク、そしてセフレーニア。あとの3騎士団からはティニアン、ベヴィエ、アラスたち、そして不思議な少女(幼女)フルートも加わる。12人の騎士は一人、また一人と命を落としていく。探索の過程で、エラナは解毒剤のない毒を盛られたことがわかる。それを治せるのは、はるか昔に姿を消した宝玉ベーリオンただ1つ。ベーリオンはトロルの魔法がかかったアイテムで、非常に強い魔力を持っているが、それが、みずから姿をあらわす時が近づいていると、アルドレアスの幽霊は語るのだった。恐ろしいことに、スティリクムの古い邪悪な神アザシュもベーリオンを狙っている。スパーホーク達は、ベーリオンを手に入れることができるのか。アザシュとの対決は・・・。 99.4.13
原題は、The Tamuli です。
スパーホークが(援軍が着く前に)町をぶっ壊すのは、恒例になりつつあるな、という事を言われてしまう。
エレニア国の女王エラナのところへ、はるか東方のタムル国から使者がやってきた。タムルでは、伝説の英雄がよみがえって農民達に反乱をそそのかしたり、吸血鬼のような怪物があらわれたり、とにかく国中がパニック状態となっている。国の相談役にしてスティリクムの高位の魔術師ザラスタがいうには、これを解決するには、エレニアのスパーホークの力を借りるしかない、と。
そこで、物見高いエラナは彼と各国の騎士たち(前回のメンバー、一部変更があるけれど)と共に、親善使節の名目でタムルを訪れる。そこで彼らが遭遇したものは、またしても、ベーリオンを狙う陰謀だった。
遠い昔、スティリクムと対立し、魔法の呪いをかけられ自国に封印された好戦的民族のシルゲイ。その神シルゴンが、ベーリオンの力で呪いを解除し、他民族を支配しようともくろんでいた。スパーホーク達に力を貸すのは、セフレーニアが仕えるスティリクムの(新しい方の神の一人)女神アフラエル(セ・ネドラのパワーアップ版ですね)。シルゴンともう1人の黒幕たちは、タムル国の高官連中を買収し騒乱を企てるが、エラナの策略で見事に阻止される。追い詰められた敵は人質を取り、スパーホーク達は、シルゴンの本拠、幻術で隠された都市シルガに向かうのだった。
ベーリオンの正体がわかります。案外話せる奴です。
タムルの皇帝サラビアンは誰かに似てます。そう、マロリオンのザカース皇帝です。皇帝なんですけど・・・。彼がエラナに調教されていく過程は見物です。
今回もおじさん&うら若き美女のカップルがあちこちで登場します。困ったもんだ。 99.4.13
茅田砂胡 (かやた すなこ)
| 1.放浪の戦士 | 2.黄金の戦女神 | 3.白亜宮の陰謀 |
| 4.空漠の玉座 | 5.異郷の煌姫 | 6.獅子の胎動 |
| 7.コーラルの嵐 | 8.風塵の群雄 | 9.動乱の序章 |
| 10.憂愁の妃将軍 | 11.妖雲の舞曲 | 12.ファロットの誘惑 |
| 13.闘神達の祝宴 | 14.紅の喪章 | 15.勝利への誘い |
| 16.伝説の終焉 |
| 17.遥かなる星(とき)の流れに(上) | 18.遥かなる星(とき)の流れに(下) |
98年の12月で完結しました。妙な王様ウォルと異世界から来た”少女”リィの愛(爆)の物語。愛といっても友愛の「愛」だが…。
異世界、魔法があたりまえの世界から時空のひずみで?落ちてきたリィ(13才)の超人的な力と洞察力、そして妙な感性が、これまた国で最強の戦士にして、王の大器を持ちながらどこか変?なウォルとからんで毎回、大笑いしてしまう。超人過ぎるのは、ここでのお約束と思えれば、楽しめます。ベストセラーにもなってるし、はまる確率は高いでしょう。
この王様ときたら、故郷で昼寝をしていたかったのに、いきなり引きずり出されて王様になったものだから、人間として当然の情を殺さなければならなかったり、不自由な生活を強いられる王様「商売」に全く魅力を感じていない。適任者がいるならさっさと譲り渡したいと本気で思っている。しかし、彼より適任がいない上に、次から次へと彼と彼の仲間たちしか解決できないような問題が起こるため、しかたなく王様商売をしている。彼の統治する国デルフィニアの繁栄を憎んで、隣接する大国タンガとパラストが、絶えず陰謀や戦をしかけてくるのだ。ウォルは男性には書きにくいキャラクターかもしれないなあ、と思ってしまう。こんな変な王様についてくるのは、もと山賊の幼馴染や、現役の山族達に、人間離れした少女のリィ、そして、優秀な文官や将軍達もウォルの器の大きさにほれ込んでしまう。
勢いに任せて進めや進めのストーリー展開。最後の方になると、今まで貼ってあった伏線(というよりあとで解明して欲しかった謎がたくさんある)が生かしきれていないようだし、ちょっと突貫工事かな?というところもありますが、外伝などで埋めていってくれるといいなと思っています。この作品が好きだからそう思うのです。99年の終わりころに外伝つきの画集(イラスト:沖 麻実也氏)が出るらしい。ストーリーをもし追加するなら、デルフィニア戦記の中にエピソードを付け加える・魔法惑星ボンジュイでのリィの過去・ウォルがかなりの年になって、子供が大きくなったころに金銀黒のねずみが遊びに来て、子供の危機を救う・・・なんてのがいいな、などと考えてしまった。沖麻実也氏の画集には絶版になっていた王女グリンダの話と、書き下ろしの中編「ポーラの休日」がおさめられているとのことである。
ウォルとリィは鋭さを見せる切れ者なのにどうも感覚がぶっとんでいる。この造形がおみごと。周囲も単なるおまぬけなのか、大物なのか時々判断に苦しんでいるのがおかしい。大笑いする場面に事欠かないので、立ち読みには不向き。家に帰ってゆっくり読みましょう。 99.5.9 2000.5.20画集について追加
ガイ・ゲイブリエル・ケイ(Guy Gavriel Kay)
全3巻。ハヤカワ書房で1巻目だけが邦訳されています。
先日書店に行って何気なくハヤカワ書房の文庫目録を見たら、これも含めていくつか落ちていました…。
ケルト神話がベースの物語。指輪物語などが好きな人なら、はまるのでは?作者はトールキンの原稿整理を手伝っていたそうだ。2巻目以降は英語の原書だが、1巻目の邦訳を頭に入れながら、辞書片手に引きながらでも読む価値はある(…と思う)。
ケルト神話は、知っていればもちろん楽しめるけど(固有名詞などおっというものがけっこうあります)、それよりアーサー王伝説の基礎知識をちょっとだけでもつけてから読むのがおすすめ。この本に流れる重い宿命の旋律の一つだ。ディアルマッド王子が”For the Blackboar!”と叫びながら馬を駆るシーンには泣けた( The Blackboar・・・黒猪亭・かつて王子とその従者達のいきつけで、よく乱闘騒ぎも起こした居酒屋)。登場人物ではこのディアルマッドとポール・シェーファーが複雑な性格をしていて好きだった。
時は現代。トロントの大学生5人ポール、ケヴィン、ジェニファー、キム、デイヴはケルト学の講演会を見に行き、ローレンというケルト学者と知り合う。ローレンとその秘書マットは、実は、真世界フィオナヴァールの住人で魔法使いとその源(自分の身からパワーを供給する、強い絆を持ったパートナー)だった。二人は王エイルロンの在位50周年を記念する式典に5人の異世界人を連れていくことになっていたので、ちょうどそろった5人の学生達を招待する。軽い気持ちでついていこうとした彼らの前に不気味な刺客が現れる。フィオナヴァールについた彼らを待っていた運命は・・・
ポール:非常に繊細な心の持ち主だ。心変わりした恋人レイチェルを自動車事故で失ったが、あの時、ハンドルを切るのを無意識に遅らせて自分が手を下したのだと責めて、死を願っているふしがある。
ケヴィン:ポールの親友で、そんな彼を気遣っている。ケヴィンはそつのない、もてるタイプで、女性遍歴を重ねている(というのはいいすぎか?)が、深い愛情を感じた女性はいなかったようだ。
ジェニファー:彼女もまた、男性にもてる美女だが、彼女も真の愛を感じたことはなく、どこかクール。
キム:彼女は、そんなジェニファーのルームメイトで親友。昔から奇妙な夢を見る。医学部志望だ。
デイヴ:4人とはそれほど親しくはないが、ケヴィンから試験のノートを貸してやるといわれ、心動いてついてくる。彼は、兄弟ばかりを偏愛する家族と折り合いが悪い。人付き合いが下手なのだろう。バスケットボールチームの優秀な正選手だ。
こんな5人の過去が微妙に絡まり、フィオナヴァールのタペストリに織りこまれていく。
ローレンとマットは、過去や未来を夢見る「見者」の素質があるキムに用があった。あとの4人はいわばおまけ。ところが、5人ともフィオナヴァールの運命に大きく関わっていくとは誰が想像できただろう。
この物語の世界では、時間や歴史は1枚のタペストリの中に織り込まれていくものとされている。造物主というべき者は、織り手とよばれる。遠い昔、時の影響の外から現れた「解体者」ラコスがタペストリに入り込み、フィオナヴァールを破壊しようとした。その時はもとからいた神々が力を合わせ、ランガット山に封印したが、織り手がラコスは人の子の手によって滅ぼされるべしという預言をしたため、以後は神々は原則として手を出さないという取り決めをしたようだ。今また、その封印が破られようとしている。ラコスはこの世界の外からきたために、タペストリに縛られていない、係累も持たない存在のために殺すことができないのだ。
預言や裏切り、悲運の戦士、幼くして重大な決断を強いられる子どもたち(フィンという少年がかわいいのだ)、神々のささやかな介入・・・最も暗き径を行く者とは?巨人族やフィオナ騎士団もアレンジされて別の顔を見せている。個人的には2巻での海の戦いや、島でのなりゆきにショックが大きかった。
RPG的に経験をつんで…というような物語ではなかった。ケルト神話をベースとした、かなり重い物語だ。5人のひとりひとりが、そして、物語に登場する人々がそれぞれの運命を見つめる。力を尽くしても、戦局は圧倒的に不利であり、登場人物たちの多くが死に、あるいは相討ちとなり、惨い目に遭い、またはこの世界から帰らぬ人となる。絶望と希望が交互にやってくる展開にどっぷりとはまってしまった。 99.4.13
ブランドン・サンダースン(Brandon Sanderson)
2006年9月の日記より転載しました。一部修正。
原題は”Erantris”
かつて栄華を誇った神々のような人達と美しい都市、エラントリス。手の一振りで鉄を食べ物に変えたり、病を治したり、テレポートまでできてしまう。しかも不死に近いらしい。近辺の国々の人には、この人達に仲間入りできるチャンスがあった。ある日突然、無作為とも思われるように訪れる変身(「シャオド」)で、普通の人から、銀色に輝く肌と光のように白い髪のエラントリス人に変わってしまうのだ。ところが、10年前、突然そのすばらしい力は失われた。光り輝いていた都市は光を失い汚泥に覆われ、人々の輝く肌は灰色にかさつき、黒いしみにおおわれて、死体のようになってしまった。動くことはできるが、心臓はもはや鼓動していない。それでもシャオドになる人は後を絶たず、疫病のような扱いを受けて、彼らは見張りをつけて門を閉ざしたエラントリスに放り込まれるのだった…。
これを読み始めて、「おまえはもう死んでいる」(北斗の拳)を思い浮かべた人はものすごく多いのではないだろうか?あと、「手のひらを太陽に」の冒頭を僕らはみんな死んでいる〜に書き換えたくなったり。
物語の主人公の一人は、エラントリスに隣接するカエに首都があるアレロン王国の王子、ラオデン。英明で多くの人に慕われているが、父王とは折り合いが悪い。
しかし彼は、ある日突然シャオドになり、殆どの人に知られないままエラントリスに放り込まれる。そこでは食べ物もなく、人間性を失った者たちが暴徒と化して新参者を襲い、なけなしの食べ物(お供え物として持たされる)を奪い取る。死んでいるので食べなくてもいられるのだが、なぜかひどい空腹にさいなまれるのだ。しかも、死んでいるので回復はしない。つまり小さな怪我でも絶対に治らないままで、痛みはそのままで累積していく。汚泥と悪臭に覆われた街の中で理性を保っているものはほんのわずか。それでもラオデンは、希望を失わず、そこで暮らし、人々を守ろうとする。具体的には少しばかりの種を育てて食物にしようとしたり、汚れた場所をきれいにしたり、怪我をしないですむように靴を作らせたりと、正常な社会の営みに近いものを作り上げはじめる。何かに意欲を燃やすことができれば、この人達は空腹を忘れていられるのだ。それだけではなく、国際情勢にも危惧を抱いている彼は、何とか道を探ろうとしていた。常に前向きになろうとし、人々に希望を失わせない人なのだ。
この本にはあと2人主人公がいる。ラオデンと婚約し、結婚するために海の向こうの国テオドからやってきた王女サレーネ。女性にしては大変な大柄で、しかも頭が切れすぎて、お転婆というか過激な性格のため、婚期を逸してしまったというつわものだ。美人らしいが、辛辣な性格。また、フェンシングの腕もまずまずで、か弱いだけのヒロインではありえない。外交官をこなせる政治スキルの持ち主でもある。ここまでくるとたいていの男は太刀打ちできない。デレス教を推し進める狂信的な宗教国フィヨルデンが急速に勢力を伸ばし、周辺国を滅ぼしている世界情勢に危機を感じ、アレロンと同盟を結ぶべく、政略としての結婚を提案する。しかし政略と割り切ったものの、ラオデンとは文通などを通して気が合いそうだった。サプライズを狙い、結婚式より早めに王都カエに着いたサレーネを待っていたのは、ラオデンの「訃報」だった。いきなり未亡人である。しかし、片方が死んでも婚姻は有効という契約のために、彼女はカエにとどまり、否が応でも激動の情勢に巻き込まれ、さらにはそれを動かす要となっていく。彼女は好奇心と意志の人だ。どちらも強い。強すぎてラオデンがかすむ勢いである。
3人目の主人公はフィヨルデンから派遣された大主教ホラゼン。つまり敵方。策略と理性が赤い鎧と高い戦闘能力に包まれている男だ。まさに理想の(?)殴るプリースト。
教主から3ヶ月したらこの一帯を武力制圧(=殺戮)するからそれまでにデレス教に改宗させるようにという命令を受けて、カエに乗り込んできたのだ。彼の策略とそれに立ち向かおうとするサレーネ、一方でエラントリスの中で生き延びるために試行錯誤を続け、エラントリス崩壊の謎を解こうとするラオデン。三者三様の動きが絡まって怒涛の展開をしていく。
読み終わっての感想は、「え?ここで終わっちゃうの?」だった。ちゃんとしたところで終わるし、それなりに満足できる。冗長になってしまうよりはいいのかな。でも、解明されていない重要な謎がいっぱい残っているし、これからどうなるのか心配というのもある。何より心配なのは、あれをああしたからこうなったということを、敵に知られたら、破壊工作されるんじゃないのかということ。何とかあれとあれのつながりを抽象的なものにするとかして、破壊工作から守れないのかなとか。あとは、おじさまたちがたいそう魅力的なのが楽しい。悲観主義者のガラドン、料理好きのキインや老獪なロイアルに娘溺愛なサレーネの父親…。もちろんホラゼンもここに入れてしまおう。なかなか複雑な人なので、読んでいくうちに敵ながら気に入ってくる。
できるなら続編を書いて、更なる謎に答えたり、決着がどうなるかを見せて欲しい(が、収拾がつくのか?)。また、実像がわからないままの「レキー棒」(笑)もイラスト付きで登場し、活躍してくれると楽しいのだが。すごすぎる人達の都市、エラントリスの実像ももう少し知りたい。
もう1つ。大きく引っかかったのは、最後の方であの人が実際何をしたのかがよくわからないということ。最初はつなげたのかと思ったのだが、そうでもないらしい。なぜその位置でそれをするのか?読み方が足りないのか、作者があえて伏せているのか。うーん…。でもそれに続く場面はいい。
と、フラストレーションが若干たまってしまうところもあるが、登場人物たちの丁々発止?なやりとりや、失われた都市の描写などにはまってしまったので、おすすめといえる。表紙は海外版の方がいい感じ。 2007.1.1
ナンシー・スプリンガー(Nancy Springer)
こちらもケルトがベースです。ある程度予備知識はあってもよいでしょう(なくてもまあOK)。終わりの方ではケルト色とはまたちがってきます。中山星香さんのイラストがきれいでうれしい。井辻氏の訳も美しい。特におすすめは、2巻の「銀の陽」です。登場人物たちの、特に友情が胸を打ちます。重めのストーリーですが、その中にも、美しく、軽やかな天上の旋律がどこからか聞こえている、という風情です。はるかさいはての西にある、至福の地エルヴェストランド。この地への望郷、あこがれが流れているからかもしれませんね。いつか原書で読みたい。あっ、これも目録落ちしてる!(Amazon.comでもすでにないようでした(;_;))
誘拐された領主の娘エリドは、不思議な魔法を使う青年ベヴァンに助けられて、家に送られる。彼女はベヴァンを深く愛するようになり、もともとからの許婚者クインはおだやかでない。神々の血を引くベヴァンこそ真王だったが、彼を意のままにできないと悟ったエリドの父は陰謀をめぐらし始める。エリドの名の由来がまたいい。ベヴァンが非常にミステリアスに描かれている。
暴君イスコヴァル滅ぼされたラウェロックの領主の子、アランは、あてのない旅の途中、不思議な青年ハルに命を救われる。誰にも教わらずに古き言葉を操り、身体中に傷を刻まれたハルは、ベヴァンの血筋を引いていたが、イスコヴァルの息子でもあった…。同じ日に生まれ、どこか似ている二人は血の兄弟を誓い、協力して各地を回って味方を募り、民を圧政から救おうとする。預言書「太陽の書」、ハルの出生の秘密、友情と苦難など波乱万丈で胸を打つ物語です。シリーズの中でこれが一番気に入っている。
アランの子トレヴィンは、狼に襲われかけていた牛を助け、持ち主のメグと知り合う。今まで悪さをしたことがなかった狼が人を襲うようになり、アランたちは、何かがおかしいといぶかる。
トレヴィンは不思議な少年グウェルンにつきまとわれ、嫌気がさすが、自分を女神の子だというグウェルンは、彼のウィルドだった。それは内なる運命、すてていこうとする子供・・・。また、アランは友ハルを失い、心すさんでいく。
トレヴィンは、運命に導かれ、狼の船に惹かれてのりこみ、トカールに漂着する。素性を隠しとおし、口をきかずに通し、あわや奴隷として売り飛ばされそうになっていたところ、彼を買い取ったのはエムリストという学者だった。エムリストは邪悪な狼の魔法を使う者に対抗しようとして、恐怖におちいっても悲鳴をあげられない、口のきけない助手を探していた。トレヴィンはそこで、アイルを狙う邪悪な陰謀を知り、奪われた飾り止めを取り戻し、魔法使いの巻物を奪って逃げる。エルヴェストランドに流れ着き、再びアイルに戻り、父と共にトカールと戦うが、勝利の鍵の謎が解けない・・・。
グウェルンの不思議な存在と、エムリストとの交流が一番の読みどころかもしれない。ただ自分にとってはアランの傷心状態もかなり印象が強かった。
舞台は変わって、別の王国「谷」(ヴェイル)の物語が語られる。主人公は王子のフレイン。兄の狂気に悩まされている。しかも自分は王の実の息子ではなかったと知り、衝撃を受ける。愛した女性シャマラは兄を愛し、兄はシャマラに手ひどい侮辱を与える。いたたまれなくなったフレインは魔法の地を求めて旅に出る。
舞台が変わったことに戸惑ったが、4.5巻ではフレインの屈折した心、愛憎がこれまでになく深く描かれていると思う。
アイルに流れ着いたフレイン。彼は自分の心の持つ暗い影、抑圧された怒りや憎悪にまだ気がついていなかった。フレインは狼の子デイル・デイルの母親のメーヴを伴い、探索の旅に出ます。世界の源にある魔法の羊歯の花はアイルに再びよき魔法をもたらし、高らかな歌声が響く大団円という感じ。ちょっと難解かも。女神の諸相がなかなかわかりにくいので、理不尽さがどうしても先に立ってしまう。クーフーリンとメイヴの話もベースにあるのかな。 99.5.7
*2001年3月現在、紀伊国屋Bookwebで原書が一部入手可のようです。
ロジャー・ゼラズニイ (Roger Zelazny)
「最期の演説としては悪くない」(中略)
「古典的な要素が全部はいっていた――脅し、呪い、適度の空威張り、神への祈願――」
(『地獄に堕ちた者ディルヴィシュ』P339 ちなみにブラックの科白である)
原題はそれぞれ”Dilvish, The Damned” "The Changing Land"
ちなみに表紙は天野喜孝氏のイラストである。
冒頭ではいきなり何の説明もなく、こう始まる。
『地獄に堕ちた者』ディルヴィシュがポータロイを出たあと、それを止めようとする企てが、クァランで、次にはトゥガドで、更にメイスターで、マイカーで、ビルデシュで、と続けられた。
邦題からしてもなかなかおどろおどろしいが、実は中身はそうでもない。
主人公ディルヴィシュは一度は闇の魔術師ジェレラクによって、身体は石化、魂は地獄に堕とされた伝説の騎士である。200年以上たってからよみがえり、この世のものならぬ漆黒の鋼の「馬」にまたがって仇を捜し求める。その途中のエピソードがいろいろ…という形の短篇集だ。
主人公は妖精の血を引いているので抗魔法のパラメータも高く、能力値・容貌(男前)とも普通の人間よりすぐれていることは確か。マッチョというよりはスマートな感じか。普通の人より「お丈夫」なうえに、地獄で長い間いじめられてついた忍耐力や精神力なども見逃せない。彼の緑色の長靴は妖精からの贈り物で、足音をたてず足跡を残さず、どんな体勢からでも必ず足から着地できるという力を持っている。
これに加えて地獄に堕とされた時に覚えた悪魔に関する知識と若干の強い攻撃呪文(しかし、日常使えそうな実用度の高いものを覚えていない、というのがみそ)、共に旅をする漆黒の馬(のようなもの)ブラックの能力が非常に高いのも強み。
このブラックが、なかなか皮肉屋なのが笑える。魔法や知識においても優れているし、助言も的確で、むしろ主人公より能力が高い。しかし、ディルヴィシュがけっこう好奇心が強く、行く先々で思わず首を突っ込んだ結果、窮地に陥ることが多いので「呪うべし、霊長類の好奇心」などというせりふを吐いてくれる。主人公とのやりとりを楽しむのがこの作品の半分かもしれない。
冒頭だけでは、冥府魔道の拝一刀みたいに、復讐に血をたぎらせた非人間的で冷酷な男かと思ったが、読み進めていくうちになかなか人間味あふれるいい奴であると判明する。三国志ファンならば、この作品の冒頭で関羽の五関破りと壇渓を思い出すかもしれない。あちこちで好かれたり、尊敬されたりしているが人徳らしい。あまり英雄に見えないとまで言われているし。まあ、もとはいいところのぼんぼんとは言わなくとも、普通の騎士さんだったわけで、歌って踊れる(詩歌・ダンス)人だったのだ。旅の途中では、結構前に進むのに苦労するシーンも多い。ところどころにそういう「普通さ」が現われることで人間味を感じる。
変幻の…は続編で、ジェレラクの居所を探し当てたディルヴィシュが、この世のものならぬ力に支配され、変化の波がさかまく超時間城に乗り込む決着篇。結末は、何というか、エピック・ファンタジーではあまりとらない形かもしれない。すべてに落とし前をつけず、不思議なものは不思議なままで放っておかれるという感じだ。
ユーモアと復讐の味付けをした、騎士の冒険物語といえる。 2003.1.16