シロエは触れるだけで痛みすら伴う、まるで剥き出しの神経。
シロエだけが、いつまでもキースの世界で色鮮やかだ。
不思議なことに、はじめからあれほど自分に対し敵愾心と憎悪を剥き出しにしてきた相手に、嫌悪の念はなかった。
忌むべき感情は、むしろキースの中にある。
あのとき、飛び込んできた、傷ついた小鳥のようなシロエを手放すはずはなかった。
幼さの残る肢体。シロエの身体の熱。みぞおちのあたりに熱いものがこみ上げる。胸の内を暴風雨が吹き荒れていた。
(何があった──シロエ)
汚れた服を脱がせ、ベッドに横たえると、熱に浮かされたシロエの両腕が絡みついてきた。
払いのけようとしたが、シロエは狂おしくしがみついてくる。両目は固く閉じられていたが、ゾッとするほど艶を乗せた赤い唇が、呼吸を求めて激しく喘ぎを繰り返していた。
薄い肩。細い首。汗ではりついた、猫っ毛の前髪。もはや冷静な判断を下すことが出来ない。
(シロエ──シロエ!)
唇がぶつかると、シロエは小さく息を飲み、キースはそのままふさいだ。
やわらかい、小さな唇の感触に頭の中が白くなる。歯をこじあけ、舌を差し入れるとシロエは身体を強張らせた。構わず中を蹂躙する。舌を捉えて吸い、柔らかい粘膜をかき回す。息が苦しいのか、顔を背けようとするシロエの首の後ろに手を差し入れて固定し、なおも貪る。
シロエはぶるぶると震え、閉じた両目からは涙があふれ出した。
「……あっ……、はぁっ、はぁっ!」
唇が離れ、シロエは両手で顔を覆った。両目から、涙が滂沱と流れる。
幼年期の終わり。不意に、キースの頭にそんな言葉が思い浮かんだ。
今まで感じたことのない、強い欲望が下肢のあたりにわだかまっていた。痛みすら感じる。
顔を覆ったまますすり泣いているシロエの、濡れた唇を見下ろした。そこに滲んだ血の色。欲望に押し流される。
立てたシロエの白い膝をこじ開けると、シロエは抵抗したがキースの力には敵うはずもない。あっさりと、大きく開かされてしまう。
ジッパーを下げ、取り出したキースのものに、羞恥よりは驚愕に大きく目を見開いた。馴らしもせずに押し当てると、シロエの喉が大きく鳴った。
「力を抜け……、シロエ」
「キース……! キース・アニアン!」
悲鳴を上げる口を塞ぎ、もう片方の手で双丘を無理矢理広げる。そして熱い楔を力任せに突き入れた。声にならない悲鳴。伝わってくる、痛みと混乱。
(こんな──)
シロエはきつく目を閉じ、歯を食いしばって苦痛をやり過ごそうとしている。シロエの、握り締めた拳は白くなっていて、残酷な悦びと哀れみがないまぜとなり、キース自身も苦痛を堪えながら、ようやく全てを埋め込むと大きく息を吐き出した。
内部は焼けるように熱く、キースをきつく締め上げる。結合部が切れて血がぬるんでいる。
キースは強張った内部をゆすり上げた。痛みに萎えたシロエの性器は、本当に幼い。
浅く呼吸を繰り返すシロエの唇をもう一度吸う。舌先で粘膜の表皮をなぞることを繰り返す。やがてうっすら開いたシロエの唇に、自分のものを重ね合わせる。
荒々しく繋げた下肢とは裏腹に、優しくさえある口付けだった。羽根のようなタッチで幾度か触れたあと、舌を潜り込ませるとシロエは震えた。
クチュ、と、粘着質な水音が口腔と下肢の繋がった場所から同時に起っており、キースを煽った。
が、こんなものは、ただの暴力でしかない。逃げる舌を捕らえて吸い上げる、そこから甘い痺れが広がってゆく。シロエの唾液は甘かった。少し鉄臭い、血の味がした。
唇が離れると、シロエは両腕で顔を覆ってしまい、キースは構わずに自分の欲望を開放することに集中した。
傷ついた場所をえぐるように抜き差しする。キースにとっても、快楽よりは、苦痛のほうがずっと強かった。それなのに、おかしいくらいの興奮がある。シロエの細い両足を抱え上げ、繋がった場所を凝視する。顔を顰め、キースは動かし続けた。
眩暈を感じた。充足感より、喪失感と尽きることのない飢餓、そして苦い後悔と血の味が、口の中にいつまでも残る──
この、獣じみた情欲は、確かにキースが内包していたものだ。
「シロエ……」
──これでも、僕は、機械の申し子か?!
意識を手放したシロエの身体から、ゆっくりと自身を抜き出す。
体中が軋む。目に汗が沁みた。シロエの脚の間から、鮮血と、キースが放ったものが滴り落ちた。
シロエの身体を清めようとすると、意識はないのにシロエはゆるゆるともがいた。魘されている。
額に触れると熱が高い。服を着替えさせ、熱冷ましと痛み止めの薬を打つ。苦しげな表情がいくらか和らぐ。
ベッドの前に引き出した椅子に腰を下ろし、キースは自分の膝を抱えた……