『讃美歌』 520番
「しずけき河のきしべを」

 この讃美歌の作詞者ホレーション・ゲーツ・スパフォード(1828-88)は、医者であり、大学教授であり、神学校の理事もしていました。頭が良く、人徳にも優れ、信仰も篤く、誰もがうらやむような人間でした。

 しかし、彼は深い悲しみを知る人でもありました。この讃美歌を作詞する2年半前のことです。彼は一人息子を亡くしました。そして、その半年後に火災によって財産を失います。さらにその2年後、彼はこの讃美歌を作るきっかけとなった大きな悲劇を経験します。

 彼は家族でヨーロッパ旅行をし、旅行の終わりには有名な伝道者ムーディ等と共にイングランドの伝道に参加する予定でした。しかし出発直前にホレーションに急用ができてしまいます。彼はやむなく奥さんと4人の娘だけを出発させたのです。ところが、ホレーションの家族が乗った船は衝突事故を起こし、大西洋のど真ん中で転覆、わずか12分で沈没してしまいました。奇跡に奥さんだけは助かりましたが、最愛の4人の娘たちをいっぺんに失ったのです。

 彼はすぐに他の船で悲劇のあった大西洋に乗り出しました。そして、荒れた海の中になくなった娘たちの面影を、そして神様の摂理を思いながら、この讃美歌を作ったのでした。

 しずけき河の岸辺を 過ぎゆくときも
 憂き悩みの荒波を わたりゆくおりにも
 心やすし、神によりてやすし

 この詩にあるのは悲しみや嘆きではありません。もちろん、彼はどんなにか悲しみ苦しんだことでしょうか。しかし、いかなる道、いかなる困難においても、神の救いを信じ通し、平安の道を歩ませてくださいという祈りがここにあるのです。

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