慌ててはいけない

 飢饉が国を襲ったので、ある人が妻と二人の息子を連れて、ユダのベツレヘムからモアブの地に移り住んだ。 

旧約聖書 『ルツ記』1章1節

 人生に襲いかかる暗い影

 家族は四人でベツレヘムに住んでいました。夫はエリメレク、妻はナオミ、二人の息子はマフロンとキルヨンと言います。四人は幸せに暮らしていました。しかし、国中を襲った大飢饉が、その幸せに暗い影を落とします。「このままでは大変だ」ということで、一家は隣国のモアブに移住することを決めたのでした。

 慌ててはいけない

 善は急げといいます。一家はすぐに食物の豊かなモアブに引っ越しました。しかし結論から言うと、これが間違いのもとでした。ユダヤ人にとって国は「神の約束の地」であり、その国を捨てて外国に行くということは、神の約束を捨てることに等しいことです。この一家は困難から逃げ出すことばかりを考えて、神様の約束を信じることを忘れてしまったのでした。

 実際、彼らはしばらく忍耐すれば、神様は再び豊かな実りを与えてくださり、そこで再び平和な暮らしができたはずでした。しかし、目の前の困難に慌てたのでしょう。彼らは選択をはやまり、取り返しのつかない経験をしてしまうのでした。人生には困難から逃げることよりも、神を信じ、困難に耐える事の方が堅実で、正しい道である場合があるのです。

 人生は長距離走

 中学の頃、私は長距離走の選手でした。長距離走ではマイペースを考えて走ることが大事です。たとえ自分より前を走る人がいても慌てず、上り坂や下り坂があっても力まず、じっと耐えて自分のペースを守るのです。いつペースアップをするかは計算づくでなければなりません。そのためにも、自分のペースを乱さないで走り続ける事が、力を最大限に発揮するレースにつながるのです。

 人生は、どちらかと言えばこの長距離走に似ています。物事に慌ててペースを乱すと、そこからすべてが狂ってしまいます。どんな時も力まず、耐えて自分のペースで淡々と走り続ける事が、最後の勝利につながるのです。

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