禁欲について

魂に戦いを挑む肉の欲を避けなさい。

新約聖書『ペトロの手紙1』2章11節

 私は、お世辞にも禁欲的とは言えない人間です。そんな私も、実は、十代の頃には、禁欲を自分の聖さだと思い上がったり、肉欲をもっとも忌まわしい罪悪と思いこんだりしていたのです。しかし、それによって得たのは、苦悩の日々と、自己嫌悪と、悲しみ叫ぶ祈りのみでした。

 そのような日々を経て、十字架の救いに対する信仰へと導かれていきました。つまり、あるがままの私を愛し、赦し、受け入れて下さるイエス様の恵みへの信仰に、心の目が開かれたのです。そして、禁欲へのあこがれや、肉欲への嫌悪感から解放され、神さまの愛の限りなさ、十字架の恵みの確かさの中で安らぎ、喜び、楽しみ、感謝する者へと帰られていきました。

 今でも、それは基本的に変わりありません。しかし、最近、十代の頃とはまったく違った意味で、肉の欲に対する戦いの必要性を感じ始めています。それは、十代の頃に感じたような嫌悪感のゆえではなく、その存在感のゆえなのです。ある程度、霊的な喜びを知り、それを求めるようになると、どうしても肉の欲の存在感が気になってきます。それが邪魔でならないのです。これさえなければ、もっともっと豊かに満たされるはずなのに、それができないでいるもどかしさを感じるのです。

 これは禁欲とは違うかもしれません。禁欲というのは、肉の欲に戦いを挑むことです。しかし、わたしが肉の欲に戦いを挑むのではなく、肉の欲が私に戦いを挑んでくるのです。禁欲したいというよりも、逃れたいのです。「魂に戦いを挑む肉の欲を避けなさい」まさにこのみ言葉がぴったりと来る心境です。

 イエス様の力で、肉の欲を克服できるならば、是が非でも克服したい。そして、霊的な求めを、飢え渇きを、もっともっと豊かに満たしていただきたい。いや、きっとそれができるのだという希望をもって、破れても、破れても、立ち上がって祈って参りたいと思っています。
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