不思議なことばかり

これは主がなさったことで、わたしたちの目には不思議に見える。

『マタイによる福音書』21章42節

 名探偵

 「この世に不思議なことなんて何もないのだよ」

  よく読む推理小説に出てくる名探偵の決めゼリフです。名探偵は、こう言って奇怪な事件の謎を見事に解き明かしてしまいます。その瞬間、「これは呪いだ」「たたりだ」「妖怪だ」とおどろおどろしいものに見えていた世界が、常識的で理に適った世界の姿を取り戻すのです。

 人生の謎を解く名探偵はいない

 そんな摩訶不思議な事件に出くわすことなどなくても、私たちには多くの謎があります。ある高校生が「なぜ人を殺してはいけないのですか」と先生に質問をしたそうです。いったい、この質問にどれだけの人が納得のいく答えができるでしょうか。

 私も答えに窮するような問いを受けることがあります。「真面目に生きてきたのに、何故こんな苦しみがあるのですか」「こんなに辛いのに我慢して生き続けなくてはいけないのですか」学問としての答えを求められているのではありません。自分の人生に納得のいく説明や理由を求め、人生の不安や恐れ、そして空しさから救われたいのです。

 そんな時、「この世に不思議なことなんて何もないのだよ」と、名探偵さながらスラスラと人生の謎を解き明かせたらいいのにと、幾たび思ったことでしょうか。しかし、私に出来ることはいつも、「一緒に祈って神様に答えを求めましょう」ということだけなのです。

 不思議は神の栄光

 だからと言って、悲観しているわけではありません。神様は「不思議なことをなさるお方」(詩編40:6等)です。神様のご経綸が「わたしたちの目には不思議に見える」のは、不思議ではないのです。

 そもそも「不思議なことなどないずだ」と思うのが間違いの元なのではないでしょうか。神様がお造りになった世界は不思議に満ちています。天体の仕組みを知ったところで、この広大で緻密な宇宙が存在している不思議がなくなるわけではありません。青い空も、美しい花も、心地よい風も、すべてが不思議です。

 名探偵とは逆に、私はこう思います。「この世に不思議でないことは何もないだよ」私たちの目には不思議に見えるこの世界、この人生の中に、神様の御業を信じて仰ぎ見ることさえできれば、私たちは名探偵になる必要はありません。不思議は不思議のままで決して奇怪な謎ではなくなるのです。 

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