サウルの死、そして慰め

 ギレアドのヤベシュの住民は、・・・夜通し歩き、サウルと息子たちの遺体をベト・シャンの城壁から取り下ろし、ヤベシュに持ち帰って火葬に付し、彼らの骨を拾ってヤベシュのぎょうりゅうの木の下に葬り、七日間、断食した。

旧約聖書 『サムエル記上』31章11-13節

 サウルの凄絶な最期

 サウルはペリシテ軍との戦いで凄絶哀絶なる死を遂げました。まるで武蔵坊弁慶のように全身に矢を浴びて、最期は敵の手にかかって死ぬよりはと自ら剣を取り、その上に倒れ伏して自決したのでした。

 同じ日、ヨナタンをはじめサウルの息子たちも戦死しました。ペリシテ軍は彼らの遺体を見つけると、サウルの首を切り落とし、武具を奪い、遺体を城壁につるしてさらしものにしたとあります。いったんは神様に選ばれつつも、最後には見捨てられてしまい、惨めな死を遂げたサウルに、深い恐れを抱かない者がありましょうか。

 サウルの葬り

 ところが、そのような私たちの思いを慰める話もあります。ギレアドのヤベシュの住民は、サウルの死を聞くと、夜通し歩き続け、城壁につるされていたサウルの遺体を取り下ろし、ヤベシュに持ち帰って心を込めて葬るのであります。

 ヤベシュの住民は、かつてアンモン人に包囲され、たいへんな侮辱と危機を経験しました。その時、サウルが彼らの泣き声を聞いてかけつけ、アンモン人をうち破り、彼らを救ってくれたのです。彼らはその恩を決して忘れなかったのです(サムエル記上11章)。

 神の慰め

 考えてみれば、サウルとて悪いことばかりをしてきたわけではありません。彼もまたイスラエルの王として勇気をもって戦い、民を守ってきたのでした。

 ヤベシュの人たちがサウルを丁寧に埋葬してくれたことは、主の慰めと受け取っても良いのではないでしょうか。イエス様は、「わたしの弟子に一杯の水を飲ませてくれた人を、わたしは決して忘れない」と仰いました。かつてサウルがわずかに神を喜ばせたことを、神様もまた決して忘れ給うことはなかったに違いないのです。ここに慰めがあります。

目次
聖書 新共同訳: (c)共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988

お問い合せはどうぞお気軽に
日本キリスト教団 荒川教会 牧師 国府田祐人 電話/FAX 03-3892-9401  Email:yuto@indigo.plala.or.jp