弱さの中でA 嘘をつくダビデ

 悪魔が偽りを言うときは、その本性から言っている。自分が偽り者であり、その父だからである。

新約聖書 『ヨハネによる福音書』 8章44節

 嘘をつくダビデ

 ダビデは、祭司アヒメレクの家に行きました。そして、パンと武器を無心するのです。よく「苦しいときの神頼み」と言われますが、どこにも行き場を失った時に祭司の家に駆け込み、助けを求めるのはいかにもダビデらしいことかもしれません。

 しかし、よくないことに、この時、ダビデは「自分はサウル王の密命を受けて行動しているのだから、ぜひ協力して欲しい」と、真っ赤な嘘をついたのでした。

 嘘の結果

 嘘をつくのは、自分の身を守るためでしょう。しかし、嘘は本当に身を守ってくれるのでしょうか。この時、ダビデはパンと武器を得るために幾つも嘘を重ねます。一つ嘘をつけば、幾つも嘘をつかなくてはならなくなるのです。このような自分自身を偽る生活から窮地が開かれてくるとは、とても思えません。

 嘘は必ず露見します。ダビデの嘘も、その場にいたエドム人ドエグに聞かれていました。そして、後日、このドエグによってサウルの耳に入れられます。

 サウルはこれを聞くと、ダビデをかばった罪で祭司アヒメレクの一家を皆殺しにしてしまうのです。ダビデの嘘は悪意のある嘘ではありませんでした。しかし、その嘘が、なんと大きな不幸をもたしたことでしょうか! 嘘はたとえ悪意がなくても、このような恐ろしい不幸を生むことにもなるのです。イエス様が言われたように、嘘は悪魔の本性に属するものだからです。

 嘘は自分を救えない

 嘘が自分を救うことなどあり得ません。嘘は自分の身を滅ぼすのです。ダビデは嘘などつかず、正直に自分の弱さを見つめ、それを訴え、救いを求めれば良かったのではないでしょうか。
 救いの道は、自分を正直に見つめること、そして正直な姿勢で神様に向き合うことから開けてくるのです。神様は真実な方です。正直な者に恵み深いお方なのです。

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