好地由太郎(こうちよしたろう)は、1865年房総半島の金田で、貧しい家庭に生まれました。18才の時に日本橋のある商店に奉公に出されましたが、奉公先で悪いことを重ね、ついには女主人を殺害、金を奪い、証拠を消すために放火し、終身刑の判決を受け、北海道は空知の監獄に入れられます。しかも獄中でさえも、彼は脱走を繰り返し、その度に逮捕され、少しも反省の色もないために看守からひどく嫌われていました。
ところが、ある日のこと、見知らぬ牧師が刑務所を訪問し、彼に一冊の聖書が差し入れられました。これは好地由太郎の母親からの差し入れだったようです。しかし教育を受けていない彼には一言もその内容を知ることはできませんでした。もっともたとえ字が読めたとしても、その時の彼には聖書など読むような考えはなかったでありましょう。
またある日のことです。好地由太郎は不思議な夢をみました。天使のような輝いた顔の少年が現われて「この本を食べなさい。これは永遠の生命を与える神の道です。」と彼に告げたというのです。それはきっと母から差し入れのあった本(聖書)のことだと気づいた好地由太郎は、看守長から片仮名と平仮名を学び、聖書を一生懸命に読み始めました。
聖書を読むにつれ、彼は「自分がなんと人生に値しないような生き方をしてきた」と痛感するようになり、彼は変わっていきました。酒もたばこもやめ、人がいやがる便所掃除を率先してやるようになり、病気の囚人には心をこめて介護し、自分の魂を救った福音を他の囚人たちにも伝えました。イエス様の御言葉に触れ、彼は新しい人生を歩み始めたのです。
一転して模範囚となった好地由太郎は、明治天皇の特別な恩赦により釈放されました。また天皇の特別な計らいにより戸籍から犯罪歴が抹消されたともいいます。23年の監獄生活でした。監獄を出た好地由太郎は、牧師になり、多くの魂をキリストに導いたということです。
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