<<涙のオー・マイキー編>>



1.極秘任務ヲ遂行セヨ
  それはある日の事であった。とは言いつつも、少し前の話になるのだが、ロキ上等兵にも彼女ができ、最近めっきり遊んでくれなくなったのであまりの暇さ加減に近所にある(といっても車で20分少々かかるのだが・・・)L.Aガンショップにブラブラ遊びに行ってみると、日本最大の大手武器メーカーである東京○イから発売されたばかりのG36Cが店頭に並んでいるのが目に入った。

 前々から、G36Cの写真を見るたびに「かっちょ悪いなぁ〜。こりゃ、発売されても買うこと無いだろうな〜。うわっ使い勝手悪そ〜〜」などと公言を憚らなかったのだが、実際、目の前にある実物を見てみて・・・

「格好ええやないかい〜〜〜〜〜」

とばかりにG36C批評を覆す様は、さながら当選前の立候補者が選挙に当選して政治家になった途端それまでの公約を綺麗さっぱり忘れ去ってしまうかの様態であったが、そんな自分を振り返って

ずいぶん汚れきった大人になったなぁ・・・

などと思ったのだが、よくよく考えてみるとKネマキ軍曹よりも遥かに純真なままである事に気がついてホッと胸をなでおろしたAXEL1等兵であった。

 とにかく目の前にG36Cがあり、財布の中身はというと・・・出張旅費をやりくりして出来た福沢型紙幣が2枚と少々・・・なんとかなりそうな感じである。が、これを使い果たすことは今月一杯1日200円で生活することなりそうな予感(というより確信)がしたので、うっかり購入してしまうことは即ち死を意味することになる。ショーケースに飾ってあるG36Cを手にとってあちこち弄くりまわしていると頭の天辺からモクモクと煙が出てきて髪の毛が薄くなりそうな気がしてきた所で、Kネマキ軍曹の名言が頭の中に木霊した・・・



































「買わずに後悔するくらいなら買って後悔するべし!」

 これこそ神からの啓示である。イソイソと財布から2名の諭吉っつぁんを引っ張り出して、レジカウンターでニヤニヤほくそ笑むOニシ店長に「あれ下さい」と言うと、「買うと思ってん」と既に準備していたかのようにカウンターの下からゴソゴソ引っ張り出す光景をみて、何だか「ヤラレタァァァ」な気分になってしまったが、当面はアキ〜コ顧問に軍備拡張がばれると経済制裁の憂き目にあうことは火を見るよりも明らかであったので、

「てんちょ〜、箱要らんから処分しといて〜」

とOニシ店長に進言するも、ひじょ〜〜〜〜に嫌そうな顔をしたので、事情を説明すると渋々であったが箱を処分することに同意してくれた・・・。

 ともあれ、サイは投げられた。万が一、ロキ上等兵がウチに彼女連れで遊びに来たときに何かの拍子でG36Cを目にして、うっかり

「新しい銃買ったんや〜〜」


などとアキ〜コ顧問の目の前で口を滑らそうものなら、特大の台風なみの勢いで血の雨が降ることは疑い様のない事実であるので、銃器の保管は核ミサイル発射ボタンよりも慎重に行わなければならなかった。

 新しく購入したG36Cを小脇に抱えて兵舎にもどると・・・幸いなことにアキ〜コ顧問とテルアキ2等兵は外出しており、とりあえず室内に設置してある武器庫にG36Cを収納すると何事もなかったかのように布団に包まって午睡を貪っていると、間もなくアキ〜コ顧問とテルアキ2等兵が兵舎に戻ってきた。取り敢えずのところはバレずに済んでいるようである。

 これから、適度にG36Cを部屋の片隅にでも放置しておいて、徐々に”前からこの銃もってたよ〜”とばかりに段階的に家族を馴らしていく長期的なデビュー計画を立てて、早速この日購入してきたばかりのG36Cを武器庫から引っ張り出してきて部屋の片隅にそっと置いたのだが、







































テルアキ2等兵がケッ躓いて、ド派手な音と共にぶっ倒れたG36Cは・・・鮮烈のデビューを飾ったのであった。

2.極秘任務遂行中
 兎に角、鮮烈なデビューで登場したG36Cであったが、なんとかアキ〜コ顧問の

「その銃、今までみたことないんやけど・・・」

と言う追撃を振り切って今では我が家の一員(邪魔者!?)として部屋の片隅にいつも放置されていたりするわけなのである。

 ギリギリフェチのAXELとしては、ノーマル状態で放置されているG36Cを見るたびにムラムラと頭をもたげてくるチューンアップ魂を何とか貧乏パワーで押さえつけて来たのであったが、そろそろ限界の極みに来てしまった。おもむろにG36Cとノーマルマガジンをガンケースに収めると、またしてもL.Aガンショップにまで足を運んで、パーツの物色を始めたのであった。

「ギア周りはノーマルで十分だし・・・やるとしたら給排気系だなぁ。スプリングと・・・シリンダと・・・ピストンヘッドと・・・シリンダヘッドかな?ああ、軸受けなんてのもあったなぁ。」

と、手近にいた店員をひっ捕まえて、「あ〜でもない、こ〜でもない」とパーツを選んで・・・最終的には

軸受け(システマ製)
シリンダー(システマ製)
1Jスプリング(KM企画製)
ピストンヘッド(PDI製)
シリンダヘッド(PDI製)
他ノーマル

を選択するに至った。

 以前、PDI製品で何度も痛い目に遭っている経験を持つAXELは、当初パーツ選びでかなり悩みぬいたのであったが、たまたまお店に来ていた常連のお客さんからPDIのピストンヘッドを使ってみたところ、良好な結果が得られたとの情報を得ることが出来たので清水の舞台から飛び降りるつもりになって購入に踏み切った。

 買い揃えたパーツを持ってすぐ近くにある生き残り屋へと足を運んで、Kネコ特務曹長にG36Cのチューンアップを依頼する。L.Aガンショップの技術担当者が言うには、

「シリンダヘッドは、システマのシリンダと合わせるには内径が細いので、機密テープをしっかり巻いて組み込んでください」

との事であったので、その旨Kネコ特務曹長に伝えて組み込みを行ってもらったのだが、ものの20分も経たないうちにチューンアップは完了した。いつもながら良い仕事をしてくれるKネコ特務曹長に感謝しつつも、満充電しておいた9.6VミニバッテリーをG36Cにセットして、試しに空撃ちしてみると、

ゴババババババババババババババババババババババッッッ・・・・

と、えもいわれぬ程の高速回転するパワーユニットに絶頂感を感じつつ、弾丸を装填して常設してあるターゲットに向けてフルオートでトリガーを引いてみると

ボフッボフッ・・・ブリョリョリョリョリョリョ・・・・

と、なんとも情けない音を周囲に撒き散らしながら、弾は全然出てこなかった・・・。

 どうやら極度の弾詰まりを起こしている様子である。たまに弾がでるので、初速を計ってみたのだが・・・

0.25g弾を使って80m/sですと!?


恐らくノーマルを下回るパワーであろうヘタレっぷりに思わず涙が出てきたが、ガックリと肩を落としつつもすぐさま銃を分解して原因を探ってもらうよう、Kネコ特務曹長に依頼を出した・・・。

 結果、1週間後にKネコ特務曹長より幾つかの問題点が指摘され、それを改修することでG36Cは本来あるべき姿に戻ったのであるが、若干の給弾不良という持病を抱える結果となってしまった。

3.ゲームの前に・・・
 いよいよ待ちに待った開戦当日である。この日は久方ぶりにKネコ特務曹長、みずん上等兵、ネルフの人が参戦することになっていたので、いつもより早めに起き出してシャワーを浴びて現地に向かう。前日早めに就寝したおかげで目覚めも快調、遅刻することもなく、むしろ集合予定時刻より大幅に早く現地入りすることが出来たのだが、開門までまだ間があるらしく入り口付近には軍装に身を固めた怪しげな集団がたむろしており、通行する一般車両から「一体、こいつらは休みの朝早くから、こんな所で何やっとんじゃ」とばかりに投げつけられる冷ややかな視線にいたたまれなくなってしまった。

 このご時世、サバゲというものは一般の人から見ても中々理解されにくい趣味であることは周知の通りであると思う。各方面のフィールドがどんどん閉鎖を余儀なくされている状況もあるので、参加者一人一人のモラルが問われているのではないだろうか。少数であれば目立ちにくいこともあるので仕方ないと思うが、チーム単位に軍装で公衆の面前でたむろしたり、一般車が通行しているにも関わらず堂々と車道の真中を闊歩する者も居たと記憶しているが、こういった事はモラル以前の問題ではないだろうか?少なくともサバゲ云々以前の問題である。

 彼の地をホームフィールドとして使って7年近くなる一人のサバゲ愛好者として、この日の状況を目の当たりにして敢えて苦言を呈することに至った次第であるが、皆の目にはどのように映ったのであろうか・・・。

 ともあれ、この日ゲームに参加していたゲーマー達はとても気持ちのいい連中であったし、少なくとも本文の筆者であるAXELにとっては楽しい休日の一時を共有するには申し分の無い面々であったことは言うまでもないことである。

4.ゲーム直前

 ゲートが開かれるや否や参加者達は続々と駐車場へと車を進めて、準備に取り掛かる。AXELも軍装に着替えて荷物をまとめると、みずん上等兵と一緒にフィールド脇にある死体置き場へと向かった。一つ付け加えるとするならば、KM2のprivate-taisyou氏が久方ぶりにゲームに顔を見せてくれていたことが嬉しかった。

 死体置き場でマガジンに弾丸を込めたり、ホップ調整などをしていると、そろそろゲーム開始と言う時間が迫ってきたので、初参加者をゾロゾロ引き連れてフィールド案内を行う。いつもの事であるが、何故だかKM2殿とゲームをすると敵方に配置され、その日一日親の仇の如く追いまわされるAXELであったが、そんなことは気にしてはならない。何故ならそこに敵が居るからである。



































最初のうちは「チョット嫌われてる!?」などと気にしていたことは口が裂けても言うことは無いだろうが、KM2の兵士に追い詰められて極太サイレンサーをぶち込まれた挙句に、ケツの穴が裂けたらチョットだけ漏らすかも知れない・・・。

 ごく簡単にフィールド説明とルール説明を行って、いよいよ待望のゲーム開始である。堺傭兵組合の面々とAXELは数名ずつのチームが幾つか集まった雑兵軍団である赤軍に配置された。対する敵軍はKM2と中心とした黄軍である。総勢60名+αがこの日、フィールドに終結していたようで、両軍ともに兵員数は30名程度である。たいして大きくもないフィールドであるため、若干の混雑は予想されたが実際ゲームを始めてみると、思ったほどでもなかった。



















3・・・・2・・・・1・・・・スタ〜〜〜〜トォォォォォォ!!!

5.オー・マイキー
 開始の合図と共に、赤軍の兵士達は敵陣地めがけて怒涛の勢いで走り出す。順路が狭いため、若干渋滞気味であったが・・・それでも、兵士の士気は高く、戦闘開始数秒後には早くも戦闘の火蓋は切られていた。

 そんな中、AXEL1等兵は何をしていたかと言うと・・・号令係に任命されてしまったためスタートに出遅れてしまい、他の出遅れゲーマーに混じってエッチラ、オッチラ石灰岩の岩山を登っていた。「何とかと煙は高いところが好き」という諺にちなんだ訳ではないが、AXELはフィールド内に高いところがあれば何故だか登ってしまう。ロキ上等兵もそうだ。兎に角、高いものがあれば登らずにはいられない性分なのかも知れない。

 一つ目の石灰岩の山を越えて、フィールド奥側にある岩山の頂上目指して必死の形相で走る。途中、足がもつれて崖下に転げ落ちそうになっても頂上目指して走る。目指す場所に到着するころには、すっかり汗まみれで息も絶え絶えの状態であった。

 が、敵兵士はそんなことで待ってはくれない。岩陰に身を寄せて呼吸を整えると足音を殺してスルスルと移動を開始する。敵陣地目指して数m進んだところで、前方にある岩の陰に緑色の塊がチラチラ見え隠れしているのが確認できたので、手ごろな遮蔽物を楯にして身を伏せた。

 どうやら敵兵士が数名隠れている様である。そのうちに岩陰に隠れていた敵兵士は辺りを気にしているのか、いないのか・・・大胆にも半身を岩陰から乗り出して周囲をキョロキョロと見回し始めた。

 これを逃す手は無い。AXELは蝿でも止まれそうな程のゆっくりとした動作で折り畳んでいたG36Cのストックを伸ばして慎重に銃床を右肩に押し当て、銃に取り付けたダットサイトを覗き込む・・・と、ダットサイトの電源は切れたままであった。

 自分の間抜けっぷりに戦闘中にも関わらず「クスッ」と笑みがこぼれたが、急いでダットサイトの電源をオンにして、幸いにもまだ見え隠れしている敵兵士に照準を合わせるとトリガーに指をかけて絞り込むように引き込む・・・なんとしたことか・・・セーフティが解除されていなかった。

 あまりの間抜けっぷりに、銃をその場に放り出し

「んがああああああああ、てめぇ死ねやゴルアァァァァァァァ」

と敵兵士に向かって一人ナンパオを敢行してしまいそうになったが、寸でのところで思いとどまりセレクターをフルオート位置に合わせてトリガーを引く。

パパパン・・・


と、小気味良い射撃音を周囲に響かせると同時に放たれた銃弾は、狙い違わず敵兵士の頭部から肩口にかけて着弾し、敵兵士の魂は死体置き場へと旅立っていった。

 第1ゲームから幸先の良いスタートである。恐らく先ほどの兵士の行動から見て、後続にまだ数名の敵兵士達が続いているものと予想したAXELは、潜伏場所を少しずらして敵兵士の気配を探ると、人数こそ不明であるが少数の敵兵士がまだその場に居るようであった。

 銃口を敵兵士が潜んでいると思われる岩陰に固定して、徐々に距離を詰めていくと1名の敵兵士が注意深く岩陰から頭を出して、こちらの様子を窺っているのが見えた。少々距離があったため命中させる可能性は低かったのだが、前日たっぷりと時間をかけてサイトインしたG36Cを信頼することに決めて、敵兵士の頭部に狙いを定めるとゆっくりと絞り込むようにトリガーを引いた。

パパパン・・・


またしても、小気味良い発射音を響かせて、数発の弾丸が敵兵士の頭部に吸い込まれるように発射されたが、敵兵士も発射音と同時に頭を引っ込めてしまったので、惜しくも弾丸は敵兵士の頭のあった空間を飛び去ったのみで、なんらかの打撃を加えるに至らなかった・・・。

 惜しくも的を外してしまったために、敵兵士にこちらの存在を教えてしまう結果となったのだが、幸いなことに・・・こちらの位置までは悟られていない様子である。敵兵士はしきりと岩陰から顔半分を出してこちらの様子を窺っている。

 チョロチョロと見え隠れする敵兵士の頭部にAXELはジリジリと焦らされつつも、慎重に照準を合わせて来るべきチャンスを待つ。しばらく睨み合いが続いたが、先に動いたのは敵兵士であった。位置を変えることでこちらを撹乱させるつもりなのであろうか、身を隠していた岩陰から大きく身を乗り出して、こちらから見て少し手前にある岩肌に向かって移動を試みようとしたのである。

 敵兵士の移動しようとしている所には、敵兵士が身を隠すだけの空間が十分にあり、且つ反撃するにも都合の良い場所であることを経験上知っていたAXELは、敵兵士がそこにたどり着く前に何としても仕留めようと雨アラレの如く弾幕を張って攻撃を仕掛けたのだが、不運にもG36Cから発射された弾丸は空を撃つのみで、敵兵士に命中している様子はなかった。そうする間にも敵兵士はまんまと目的の岩肌に取り付き、反撃に備えるべく体勢を整えているようであった。

 これ以上この場に留まり続けることは「死」を意味すると悟ったAXELは岩壁伝いに敵の死角を利用しながら距離を詰める。途中、遥か足下の林の間にで敵兵士がモゾモゾと移動しているのを見つけたので弾丸を撃ちこむと、頭上から山盛りの弾丸の洗礼を全身にまったりと受けてズタボロとなった敵兵士の魂は死体置き場へと旅立っていった。

 それからも、ジワジワと敵兵士に向かって接近を続けたのであったが、後少しのところまで進んだ所で笛の音が周囲に響き渡り、この戦闘の終わりを告げた。

 死体置き場に戻るとなにやら騒ぎが持ち上がっていたので、「何だ何だ?」と参加者に話を聞いてみると、なにやら敵軍の兵士の中に数名であるが行方不明者が出ていたようで、その捜索に当たっているとの事であった。

 行方不明というと、数年前にシーモンキーのFLIPPER軍曹殿がゲーム途中に神隠しに遭遇し、気付けばブドウ畑でモシャモシャとブドウを食っていた等という事件が大昔にあったなぁ・・・などとぼんやり考えていると、どうやら今回行方不明に遭ったのは日本語がまったく分からないマイケル君という外人さんも含まれているとの事であった・・・。

 KM2メンバーが必死に「お〜〜〜い、どこ行ったぁぁぁぁ」と呼びかけるも、中々見つからないらしく、一時ゲームが中断されてしまったのだが、最終的に全員無事保護されたようで、大きな問題にならずホッと胸を撫で下ろしたのであった・・・。

 今となって言えることなのだが・・・探索中に心の中で




































「オー!マイキー」

と叫んでいたことは内緒である・・・。

6.疲れただけだ・・・
 続いての第2戦目は、下側のフラグからのスタートであった。

3・・・2・・・1・・・・・スタァァァァァトォォォォォ!

 開戦の声と共に、味方兵士達が一斉に敵陣地めがけて突撃を開始する。またしても号令係に任命されてしまったAXELは、最後尾からのスタートである。味方兵士がゾロゾロと山側の裏周りルートに向かって走っていくのを「ボケ〜〜〜〜〜」と眺めていたが、おもむろにその後に続いて侵攻することに決めた。

 既に戦闘の一端が開かれているのか、周囲に銃声が響き渡っている。あちこちで敵味方双方の兵士達が上げる断末魔の声が聞こえてきたが、今のところはAXELの周囲で死亡する兵士はみられない。恐らくは前線の味方兵士が敵軍の猛攻を食い止めてくれているからであろう。幸いなことに、これからAXELが進もうとしている侵攻ルート上にも敵兵士の姿は見えず、比較的安全に第1の目標地点である裏山の登り口まで到着することが出来た。

 下側の陣地から裏山周りのルートを侵攻する際の最初の難関が登り口である。丁度、登り口付近で身を隠すことの出来る森林が一旦途切れてしまうため、無防備な姿を晒さざるを得ない。かといって、ここで躊躇してしまうと敵軍に侵攻する時間を与えることになってしまうため、出来るだけ速やかに且つ物音を立てずに移動をする必要がある。

 AXELが到着した時には既に数名の味方兵士が登り口付近で待機していたが、どこから登れば良いのか分からなかった様子で、侵攻は停滞気味であった。モソモソと手近にいた味方兵士に近づくと

「ここ、どうやって登るんですか?」


と聞かれたので、お手本にとばかりにサッと岩棚の上に体を押し上げて、頂上目指して侵攻を始めた。

 索敵しつつもズルズルと岩棚を登り、そろそろ中腹に差し掛かる少し前に後ろを振り返ると、味方兵士が2、3名不安そうにこちらを気にしながら登頂ルートを登ってくるのが確認できたので、一旦侵攻を止めて味方兵士達が追いついてくるのを待つ。

 それまで敵兵士の姿が見えなかったことで油断したのが不味かった。突然、上方から激しい銃声と共に弾丸がAXELに向かって飛来してきた。最初の一連射は幸運にもAXELと敵兵士との間にあった遮蔽物に弾かれて被弾することはなかったのだが、続く掃射でAXELは左腕に撃ち抜かれ、敢え無く戦死してしまった・・・。

7.ひっそり突っ込め
 行方不明者騒動などで一時的にゲームの進行にが遅れてまったが、それほど大きな影響があった訳でもなく、昼飯の前に3ゲーム目をやっておこうという話になったので、スタート地点に集合し、開始の合図を待つことになった。

 今度は上側の陣地からのスタートである。例によって号令係りに任命されているAXELは最後尾からの出発となってしまうため、他の味方兵士の邪魔にならないように自軍のフラグにピッタリと寄り添うように立って、敵軍からの開始の合図をまっていた。

3・・・2・・・1・・・スタァァァァァトォォォォォォォォ


 開戦の合図と共に味方兵士が一斉に敵陣地向けて雪崩れ込む。AXELも一呼吸遅れて突撃する味方の後について敵地潜入を開始した。この時は珍しく山岳ルートを取らずに、花道沿いのルートを侵攻することに決めた。

 フラグ近辺から花道を横断し花道の左手にあるブッシュ地帯をズルズルと匍匐前進しながら敵陣深く入り込む。花道を横断する際に、味方兵士の援護射撃で、うっかり撃ち殺されそうになったのであったが、とにかくAXELは無事に潜入することは出来たし、前方にはまだ数名の味方兵士が先行しているためか、敵兵士からの攻撃はまだ無い。

 調子に乗ってズルズルと匍匐で前進していると、前方でチームMCのM氏が敵兵士と交戦しているのに遭遇した。

ブバババババババババ・・・・

 激しい銃声と共に、敵兵士の魂が昇天していったのを見て

(さすがだなぁ〜)

等と歓心していると、

「あ〜オレも死んだぁぁぁ」

との辞世の句を残してM氏も死体置き場に旅立ってしまったのを見て、少々ビビッてしまった。

 どうやらこの時、M氏が最前線に居たようで、周りを見渡してみると少しばかり後方に数名の味方兵士がいるのが確認できた。後方支援のはずであったAXELは、ついつい調子に乗っていつの間にやら最前線に迷い込んでしまったようで、

「え?ワシ先頭??なんで???」

と、少しばかり焦ったのであったが・・・どうせいつもの事なので、気にしないことにした。ズルズル・・・と前進していくと、突然辺りに激しい銃声が響き渡った。

 最初AXELは自分が狙われたのかと脱糞寸前にまで驚いたのであったが、敵兵士の攻撃はAXELではなく、後方にいる味方兵士に向けられたものであったことに気がついた。敵兵士の潜んでいる場所は銃声から大まかな見当はついていたので、そちらに向かってズルズルと近づいていく。途中、何度も敵兵士からの銃撃が味方兵士に向かって加えられていたが、今のところは死者は出ていない。

 何とか敵兵士の位置が確認できる地点(というか、2〜3m手前)まで到達することが出来たので、ゆっくりと体を起こして攻撃に出ようとした瞬間、

ボボボ・・・

という、短い射撃音と共に数発の弾丸がAXELの脇を通過していった。一瞬身を竦めて

「バレた!?」


と、肝を冷やしたが・・・どうやらAXELの位置がバレていた訳ではなく、他の兵士に向かって発砲した弾丸が、たまたま射線上にいたAXELのそばを通過していっただけのようであった。

 腕を伸ばして目の前のブッシュから銃口を突き出すと、トリガーをいつもより長めに引きっぱなしにして、相手が反撃に出れないように釘付けにする。そのままブッシュから飛び出して一息に距離を詰めると、少々薄めのブッシュ越しに湯気が出るほど弾丸を撃ちこむと敵兵士は恨めしそうにしながら死体置き場へと旅立っていった。

 少々撃ちこみすぎたので申し訳なく思ったのだが、

「悲しいけど、これって戦争なんだよね・・・。」

と、どこで聞いてきたのか良く分からない、意味不明の言葉で自分を納得させると次の敵を探す。このままフラグ方向に侵攻しても、恐らく敵守備隊が待ち構えていることは火を見るよりも明らかであったので、ここは一旦花道を少しだけ自陣方向にもどって、敵攻撃隊を背後より強襲する作戦に出ることにした。

 身を隠していたブッシュからソロソロと体を乗り出して周囲の安全を確認する。勿論、敵兵士からの銃撃があった際は、即座に身を隠せるよう細心の注意は怠らない。ジワジワと慎重にブッシュから半身を乗り出したところで、周囲に敵兵士は存在しないと判断して花道沿いに自陣方向に向かい歩を進める。

 数m進んだところで、敵兵士が無防備にもこちらにケツを向けて必死に前方を索敵している光景に遭遇して、手にもったG36Cの銃口をケツの穴にブッ刺してグリグリを抉ってやろうかと考え、ニヤリとほくそ笑んだが・・・そんなことをしたら、次からゲームに呼んでもらえなくなるばかりか、関西一円に

「すかぽんたんのAXELとかいう人はやばいでぇ。相手のケツの穴に銃口ぶち込んで喜んでたわ・・・」

と、アキ〜コ顧問の耳に入ったら血の雨の降りそうな噂が流れて、一般人からも後ろ指を刺されながら一生を過ごすことになりそうな気がしたので、なんとか思いとどまって敵兵士の主にケツ方向に

パパパパパ・・・・


と一連射をお見舞いすると、敵兵士は「ビクッ」と跳ね上がって、

「味方やんけぇぇぇぇ」

とばかりに恨めし気な表情でAXELの方を振り返ったが断末魔の悲鳴はあげなかったため、その恨めしげな顔目掛けて追い討ちの一連射を加えた。

 更に、先ほどの兵士の左手にも敵兵士がAXELに背を向けて、必死に前方を索敵しているのが目に入ったので、再び無防備なケツに思いっきり弾丸のシャワーを降らせてやると、

「味方やんけぇぇぇぇ」


と、これまた恨めし気な表情でAXELの方を振り返ったので、さらに追い討ちの掃射を加えてAXELの腕に巻いた腕章を見せると、全身に湯気が出るほど弾丸を食らった敵兵士はようやく事態を理解したのか死体置き場へと旅立っていった。

 二人の兵士を背後から血祭りに上げたAXELはサバゲの神様に足を向けて眠れぬ程に感謝しつつも、ほんの少し移動して遮蔽物となる高さ30cmほどの土手に身を伏せ、未だ残存する敵勢力に自身の位置を悟られまいと試みた。

 果たして、幸いなことに敵兵士にはAXELの位置が判明しているどころか、存在することも悟ることが出来なかったと見えて、身を隠した土手のすぐ裏側からKM2の一○軍曹殿の

「たぶん、右側には敵はおらんと思う・・・」

等といった味方同士の内緒の話が聞こえてきたのでしばらく盗聴していたのだが、飽きてきたので体を起こして、一○軍曹殿を美味しく頂こうかと思ったら・・・突然、





































ニョキッ

と、AXELの目の前からサイレンサーが生えてきたので、目ん玉がこぼれ落ちそうになるほど驚いたのだが、よくよく考えてみるとAXELに気付いて銃口を突きつけているわけでも無かったので、目の前でフラフラ動いているサイレンサーをボケ〜〜〜〜と眺めていると、

「これ、掴んだらどうなるのかな・・・?」

等という考えが頭をよぎったため、出たり引っ込んだりするサイレンサーを何とか捕まえようとタイミングを計ってみるも、まごまごしているうちにサイレンサーが出てこなくなったので、思い切って「ガバッ」と体を起こして一○軍曹殿の頭部に銃口を突きつけて

「フリーズ」

と呟くと

「え!?こんなとこまで来てたんですか????」

と、サバゲ愛好者であれば一生に一度は言われてみたい嬉しい台詞を断末魔の叫びとしながら潔く死体置き場に旅立ってくれた。

 一○軍曹殿の後方に、もう一人の敵兵士が居ることを知っていたAXELは更に銃を構えようとする敵兵士に銃口を向けて

「そっちもフリーズ!」


と呟くも、敵兵士は銃を構えようとする動作を止めなかったので、AXELはトリガーにかけた指先にほんの少しだけ力を込め敵兵士向けて銃弾の雨を降らせようとしたその時!突如AXELは後方からまともに銃撃を浴びて昇天してしまった。

 敵の前線に位置していた敵兵士は既に葬り去った筈であったので、「!?」と思ったAXELは銃撃を加えてきた敵兵士の方を見てみると、なんとそれは先ほど倒したと思っていた一人目の敵兵士であった。

 至近距離からケツに湯気が出るかと思うほど撃ちこまれていたはずの銃弾は敵兵士を逸れていたのか、生き残っていたようで・・・確かにAXELが弾丸を撃ち込んだと思っていた時にも断末魔の叫びは上げなかったのだが、それをAXELは勝手に死亡したと思い込んでいたのがそもそもの間違いであったようであった。

 折角の美味しすぎるシチュエーションも自身のミスから台無しにしてしまったAXELは、涙を飲みながら死体置き場に戻ったのだが、丁度その時に携帯無線機に連絡が入っているのに気が付いた。急いで応答してみるとアキ〜コ顧問からの連絡で、

「テルアキ2等兵が高熱を発したので、メルトダウンを起こす前に保険証を持参して帰還せよ」

とのことであった。

 取り急ぎKM2の一○軍曹殿に事情を説明し、後ろ髪を引かれる思いで戦場を後にしたAXELであったが、行方不明騒動が持ち上がったものの無事発見され、他には大きな事故も無かったことをサバゲの神様に感謝しつつもフィールドを後にしたAXELであった。



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