１．極秘任務発令
　 某日、我々が根城にしているショップ「生き残り屋」に緊急入電が成された。

カメ兄サン、入院ス
至急コレヲ強襲セヨ

一報を受けた時、AXELは生き残り屋に据え付けの小型サーキットでビットチャーGの走行会に興じていたのであったが、思わず座っていたイスから転げ落ちそうになってしまった・・・。

あの丈夫なだけが取り柄のサバゲとスノーボードをこよなく愛するカメ兄さんが入院！？

しかも、骨折ですと！？

　ありえない事実に腰を抜かさんばかりに驚いたが、カメ兄さんも人の子・・・怪我くらいはするのかも知れないと考え、ふと隣に座っているロキ上等兵の横顔を何気なく覗き見てみると、たとえ悪魔であってもこれほどまでの凄惨な表情はするまいと思うほどの笑みを浮かべていることに気がついて、思わず失禁してしまいそうになった。

「えぇ！？カメ兄さんが入院！？どこや？そりゃ、見舞いに逝かんとあかんやろ！」

　微妙に楽しそうに話すロキ上等兵が空恐ろしかったが、確かに友人であるカメ兄さんが入院したということであれば、お見舞いに行くのが人の路であろう。たとえその路がチョモランマの頂へと続くが如き険しき路であったとしても・・・である。

　翌日はどんずるでサバゲの予定であったのだが、急遽予定を繰り上げて途中退場し、カメ兄さんのお見舞い部隊へと合流することが日本の国会での議会案の可決とは比べ物にならないほどの速さで即決されたことは言うまでもなかった。

　慌ただしげに、ロキ上等兵が

「ちょっと近所まで買い物に行ってくるわ」

とネルフの人をお供に出かけるのを見ながらも、Kネコ店長に「カメ兄さん、頭が悪くなって入院すか？」とか、「ついでに改造手術するんですか？」等と、どうでも良いような事柄を聞いていたのだが、どうにも腑に落ちない点があったのでソワソワと落ち着かない感じがしながらも、ロキ上等兵の帰還を待った。

　小1時間程経ってからであろうか・・・。ロキ上等兵が真っ赤に上気した顔で生き残り屋に戻ってきた。何故か・・・お供についたネルフの人が心なしかグッタリしていたが、気にする程の事でもないであろう。ふと、ロキ上等兵の手元に目をやると・・・、何やら怪しげな紙袋をさげているのに気がついた。

「ロキ上等兵、なんすか、それ？」
「げへへへへへ、良いモノだよぉぉぉん」
「またまた、怪しい代物じゃないでしょうねぇ・・・」
「そんな訳あるかいな・・・。ぶひゃひゃひゃひゃ」

　口では否定はしているがロキ上等兵の良いモノなど、怪しいモノに決まっている・・・。以前、Kネマキ軍曹が交通事故で入院したときなど、AXEL1等兵とつるんで入院のお見舞いの品にと「見舞い品の定番はエロだろう〜〜」という理由だけで夜中の11時を廻っていたにも関わらず開店している本屋を探し回り、野郎の定番「さぶ」を購入してKネマキ軍曹の精神を崩壊させた程の実績を持つ、すかぽんたんでも最強の攻撃力を有する強化人間なのである。

　ロキ上等兵自身、交通事故で数ヶ月入院する負傷を負っていながらも、収容先の病院で手術前に看護婦さんから「今までに大きな手術とかないですか？」と聞かれて、必死の形相で

「か・・・か・・・改造手術です・・・」

と言おうとして、言い終わる前に自分のギャグに自爆してしまい意識を失ったことのあるほどの豪傑である・・・。

　ちなみに・・・その後、お見舞いとして贈呈されたさぶは、病院の掃除のおばちゃんに発見され、1等個室に入院していたKネマキ軍曹は入院している間中、医師や看護婦の好奇の目に晒されるなど、針のムシロ状態であったのは言うまでもないことである。

　とにかく袋の中身が気になったので、ロキ上等兵のスキを見て中身を覗いてみて愕然とした・・・。









































優香の腰つき（ダッチワイフ）
注）パンスト付き

　これはいわゆる夜のお供と言う奴であろうか・・・。しかも、ご丁寧なことにペペローションとおぼしき怪しげな小瓶に入った液体まで同梱されている。永遠の恋人とも言うべき片腕を大破しているとはいえ、その見舞いの品が優香の腰つき（パンスト、ペペローション同梱）と言うのは如何なものであろうか・・・。

　あまりの暴挙に思わずAXELは股間に屹立したベレッタ（に相当する逸物）を握り締め、「そこへ直れ！」とばかりに粛正の往復ビンタをロキ上等兵に加えようとした時、おもむろにネルフの人がガサガサと梱包用の小箱から空気を抜かれてペシャンコにひしゃげた優香の腰つき（パンスト、ペペローション同梱）を取り出し、あまつさえ息をプープー吹き込んで膨らませる様を横目に見て、不覚にも股間のベレッタがデリンジャーへと変貌してしまうのを感じてしまった・・・。

　こうなってしまうと俄然皆の注目はネルフの人の手の中にある優香の腰つきである。しかも、ある程度膨らませたのを見て気付いたのであるが、この優香の腰つき、本来あるべき所に上半身がなかった。その代わり然るべき所に穴があいている・・・。何とも機能的な外観とは裏腹に材質がビニールであったので、たとえペペローションを吉牛の汁ダク特盛り牛丼よりもたっぷりと流し込んだとしても、本気でこれを使用すると恐らくは逸物が擦り切れて血の海と化してしまうであろう事は火を見るよりも明らかであった。これを本気で使用しようとする人種は恐らく、好奇心旺盛な中学生か高校生位のもであろう・・・。

　数分後・・・ネルフの人他数名の涙ぐましい努力の結果、優香ちゃんは遂にその全貌を明らかにしたのである。まず、前述したように上半身は無く下半身のみの機能的かつ先進的なデザイン、材質はビニールであろうか・・・。デリケートな局部を摩擦するには少々ハードな材質の様に思える。肝心の穴（？）は前後に一つずつ・・・というよりも貫通してしまっている。平たく言えば風船に穴が空いている所を想像して欲しい。それにニョキニョキと足状のモノが2本出っ張っている感じである。

　これを見ているとつくづく「こんなのに欲情出来る奴はサルにでも欲情しちゃうんだろうなぁ」と感心してしまうほどの安っぽさ大爆発であった・・・。いや、むしろ使用者がサルであるから、「このようなモノを使用するのでは？」とも考えられた。

　兎に角、パンストまでおまけで付いている様であったので、早速リカちゃん人形に服を着替えさせるが如き、変態的な表情でズルズルとパンストを被せてみると・・・。世にも奇妙な物体が出来上がってしまった・・・。なんとも、トホホ・・・な感じである。しかも、毎週の如く週末にもなると、ショップでまったりとたむろしている女気の全く無い面々であるからして・・・パンスト一つまともに穿かせることも出来ようはずもなく、少しでも華を添えようと言うダッチワイフの製作者の意図も空しいほどにパンストは、股下10センチメートルの所でだぶついている体たらくであった・・・。

　無類のパンストマニアであるAXEL1等兵はこれを善しとするはずも無く普段の几帳面さも手伝ってか、黙々とパンストを正しい位置へと引き上げる作業に取り掛かったのであったが、余りにもひたむきなその表情から、「パンスト職人」なる称号を頂いたことは言うまでもないことである。

　 一通り完成したところで、皆は手に取ってしげしげと眺めてみたり、おもむろに

「ジャイアントスイングぅぅぅ」

等と喚きながら狭い店内で優香ちゃん（下半身のみ、パンスト装着済み）をグルグルと振り回したり、壁に掛けてある銃の陳列用のフックにそっと陳列してみたり・・・思い思いの行動をひとしきり取ってみた。が・・・5分もしないうちに飽きてしまい、結局店内の陳列ケースに使用済みのエロ本の如くポイッと打ち捨てられてしまったので、仕方なくAXELはさながら売り物の様に陳列されている優香ちゃん（パンスト装着済み）を手に取ると、翌日の作戦実行時にパンストをはかせる手間を考えると作戦実行上、問題が発生する可能性を考慮して脱がさない状態で中の空気を抜き、皺くちゃに萎んだ優香の腰つき（パンスト装着済み）を梱包用の小箱に詰め込んでネルフの人に渡すとショップを後にした。

２．ちょんまげソルジャー見参！せず・・・
　翌日はどんずるでゲームが行われる予定となっていた。幸いなことに朝起きると時計の針は出発1時間前を指していた。前夜に粗方の準備は出来ていたため、のんびりと風呂に浸かって出てくると、携帯通信機にロキ上等兵から連絡があった痕跡が残されていた・・・。

　普段は滅多にロキ上等兵からの連絡がないため、「何事か？」と思い折り返しの連絡を入れてみると、これまた珍しいことに既にロキ上等兵は自宅を出発しており、AXELの兵舎へと向かっているとのことであった・・・。

　尋常でない出来事にAXELは今日、これから起るであろう出来事にロキ上等兵が過分な期待を寄せていることであろうと想像したが、あまりに入れ込みすぎると作戦完遂上、支障が出るとも限らなかったため、上機嫌でやってきたロキ上等兵に

「ネタばれ無しね（笑」

とそれとなく注意を促すも、全く気にも留める様子もなかったので少々心配になったが、気にする程の事でもなかったのでそのまま一路フィールドへと急ぐことにした。

　程なくしてフィールドに到着したのだが、予想通りというのであろうか・・・Four Rosesの面々は既にゲームを開始していた。あっぱれな程の早起きっぷりである。恐らくAXELが件のチームに何かの拍子に移籍しようものなら、毎回ゲームに遅刻して罰として裸にひん剥かれてその辺の潅木に縛り付けられた挙げ句、大人のレギュレーション風味の極悪スナイパーライフルでナニがバスケットボール大に腫れ上がるほどまったりとしたBB弾の洗礼を受けることは明白であろうから、間違っても移籍することはないであろう・・・。

　今回はいつもの早起きチームFour Roses数名とすかぽんたんからロキ上等兵とAXEL1等兵の2名のみの小ゲームである。ここの所、大人数での戦闘が多かったため少々飽食気味であったAXELにとって小人数戦の緊張感が堪えられない程の快感であった。

　ただ一つ、不満に思ったのが・・・ちょんまげソルジャー氏の顔がフィールドに見えなかったことである。

「ちょんまげさん、今日は来てないんですか〜？」

と聞いてみると、チームの面々から

「ああ、昨日飲み過ぎて二日酔いになってるらしいで〜」

とか

「来たら銃殺刑だな〜」

とか

「マゲづら、まだ買ってないらしいわ・・・」

等という返事が返ってきた・・・。どうやら、前夜の暴飲が祟って二日酔いにかかってしまい、そのお陰でマゲづら準備し忘れて挙げ句の果てに銃殺刑に処される運命にあるとのことである。規律違反には死ぬほど厳しいすかぽんたんにあっても、これからちょんまげ氏の辿る運命を聞くと、先ほどから寒さの為に縮こまっていた股間の逸物が、さらにキュッと縮むような思いにとらわれたが、所詮我が身に降りかかる災厄でもなかったので、

「あ〜公開銃殺刑だったら、チンチン撃っちゃろ〜」

とか、呑気なことを考えていた。

　そうこうしている内にあまりの寒さに耐え兼ねてか、隣で座っているロキ上等兵が「ゲーム始めようよぉぉ」とばかりにソワソワしだしたので、イソイソと準備して開始の合図を待つことにした。

３．ちょんまげソルジャー氏大活躍！？
　スタートと同時に敵陣目指して一気に走り込む・・・。いつもの大人数戦だとブッシュに潜り込んでモソモソ移動するAXELを見つけて、敵兵士が深夜徘徊するヤンキーがコンビニの明かりを見つけて突進するが如き勢いで群がってくるのだが、今回のような小人数戦の場合は息を殺しての相手との気配の読み合いが勝負の鍵を握っているのである。

　息を殺してじっと誰もいないブッシュの中に潜り込んで辺りの気配を窺っていると、さながら大自然と一体化したような錯覚を覚える・・・。時折辺りを吹き抜ける風が、火照った体に心地よい涼やかさをもたらすのを感じると、ここが戦場であることを忘れてしまいそうだ。時折思い出したかのように沸き上がる無粋な意味不明の喚声と銃撃音が、AXELを現実世界へと強引に引き戻す・・・。

　ここは確かに戦場だ。そしてもう一つ確かなことに私は一兵卒であった。戦いの中にあって戦いを忘れたランバラルが戦いの中でその命を散らせたが如く、たとえ砂粒一つほどの油断であっても命取りになる。地面に這いつくばって、ジワジワと前進するAXELは改めて気を引き締め直すと、敵陣地を陥落すべく更に奥地へと匍匐前進で足を踏み入れた。

　不意に違和感を感じて前進するのを止めると、辺りを索敵する・・・。この辺りの感覚はあくまでも感覚であるので説明しようもなかったが、時折戦場でこのような感覚を覚えることがある。それが時には何者かの視線であったり、気配であったり・・・その時々によって何かは決まってはいないのだが、何かがおかしいと勘が訴えかけるのである。

　こういう時は素直にその感覚に従うことにしている。なぜなら、それが戦場で生き残る術の一つであるからだ。多くの場合は取り越し苦労であったりする訳なのだが、この感覚を無視して無理した場合には、何故か窮地に立たされる経験が多かった・・・。悪い予感ほど的中する法則でもあるのかと、首を傾げたくなる位である。しかも、それを無視した時に限って・・・。

　ともかく、注意深く辺りに点在するブッシュや物陰を一つ一つ観察していると、敵兵士がモソモソと蠢いているのが見えた。幸いにして、AXELと敵兵士の間を阻む様に存在するブッシュの向こう側は日の光が射し込んでいるため、敵兵士は日陰となっているこちら側の様子を見通すことが困難であるようだ。それでもこちらの方が気になるのか、しきりに頭を動かしてブッシュの向こう側（つまりこちら側）を見透かそうとしている・・・。

　敵兵士はこちらの侵攻ルート上にドッカリと腰を落ち着けて周囲を警戒しているため、やり過ごすことも出来そうにない。不本意なことではあったのだが、瞬時に敵兵士を射殺することに決め、手にしている愛銃P-90が身の回りに群生している雑草に当たって物音を立てない様にとゆっくりとした動作で伏せ撃ちの構えを取る。

　こうして違和感を感じて敵兵士を発見するまでの一連の動作を文章にすると、ずいぶんな時間が経過している様に思えるかもしれないが、現実で流れた時間は僅か数秒程度である。サバゲ未経験の読者がこれを読んだとして（可能性としては余り高くはないのだろうけれども・・・）、僅か数秒の内にこれほどの行動や思考が可能であるものなのか・・・正直な所、疑問に思われるのかも知れない。が、アドレナリンがフルに分泌された極限の緊張状態において、人の反応と言うものが如何に素早いモノなのか、実際のゲームに参加して頂くとお分かり頂けるかと思う。

　P-90に搭載されているドットサイトのスイッチを近接射撃用の位置に合わせると、サイト内部にボオッと少し大き目の赤い点が浮かび上がる。ドットサイト自体、主に近接戦闘時のサイティングを行いやすくするための装置であるので精密射撃には向いていないのだが、さすがに5、6m程度の距離では外しようもない。

　敵兵士がキョロキョロと辺りを見回すタイミングに合わせてセミオート位置までトリガーを引く・・・（P-90はセレクターをフルオート位置にしておけば、射撃時にトリガーの引き代を調節することでセミ、フルオートの切替が可能なのである）。

ボヒュッ・・・

　サプレッサーにより消音化された篭もったような射撃音が辺りに響いたが、恐らくその音は数メートル離れた敵兵士の耳には、はっきりとは聞こえていない事であろう。セミオートでの射撃では、AXELと敵兵士の間を遮るブッシュを上手くすり抜けられるか少々心配ではあったのだが、幸いなことに銃口から発射された弾丸は潅木の隙間を縫って敵兵士の頭部に命中し、即座にその兵士の命を奪い去るのに十分な威力を持っていた・・・。

　死体置き場へと旅立つ敵兵士の魂を横目に、再び前進することを決断したAXELは木々の間を蛇が地面を這い寄るが如きゆっくりとした動作で進んでいった。始めは花道から少しだけ、奥まった所にあるルートを選択していたのであったが、途中嫌な予感がしたので進路を変更してフィールド中央部を侵攻することにする。

　大人数での作戦行動の場合に敵陣深く切り込むと、あちこちに敵の守備兵が点在しているためなかなか思ったような侵攻は出来ず、引っ切り無しに銃撃を繰り返すことで血路を開くことが前提となるのであるが、小人数戦の場合はそれとは全く逆になる。フィールドのどこかに潜んでいる敵守備兵の影におびえながら進まねばならない・・・。時には数歩進む毎に何かしらの決断に迫られる場合もあるほどである。こういった緊張感の中、兵士はおびただしい程の精神をすり減らしつつも、敵陣地陥落を目指して進まねばならない。当然の如く「心」の弱い者から順に些細なミスを犯し砲火の嵐に巻き込まれて命を落としていく。

　幸いにも敵兵士に出会うことなく、敵陣の最深部であるフラグ手前まで潜入することに成功したAXELであったが、さすがに無防備な状態をさらしてフラグアタックを敢行するほどの度胸は持ち合わせてはいなかった。しばらくの間、息を整えるために遮蔽物になりそうな木立を見つけてそこに寄り掛かるようにしてジッと周囲の様子を窺っていたのであったが、敵兵士の気配も感じられなかったので、フラグアタックを行うかどうか悩んでいた・・・。

　その時、後方から落ち葉を踏みしめる（ガサッガサッ・・・）という音が聞こえたので、手に持ったP-90のセレクターがフルオート位置に固定されていることを確認しつつ背後を振り替えると・・・。10mほど後方にロキ上等兵がゆっくりとこちらに向かってくるのが確認できた。

　更に、その斜め下方向をみると・・・ちょんまげソルジャー氏が川の水に足を浸しながらも懸命にこちらに向かってくるのも見える。地獄に仏とは、まさしくこの事であろう。AXELの足元に座り込んだちょんまげ氏に

「ここでバックアップするから、フラグアタック行ってくれ〜〜」

と声を掛けると、ちょんまげ氏は

「えぇぇぇぇ、オレ行くのおぉぉぉ」

と、不満タラタラであったが、否応無しに突撃の合図を出すと決死の覚悟でフラグに向かって全速力で走り出した。もちろんロキ上等兵とAXELはフラグアタックの邪魔にならぬように、フラグの奥のブッシュに向けて銃弾の雨を降らせる。

　果たして、決死のフラグアタックは予想通り敵兵士の猛反撃に遭遇することもなく、ちょんまげ氏によって、我が軍に勝利がもたらされたのであった。

４．カメ兄さんの憂鬱
　その後数ゲームほど行ったが、「カメ兄さん強襲大作戦」の開始時刻が近付いてきたため、キリの良い所でゲームを終了してKネコ店長やみずんの人との待ちあわせポイントへと急ぐこととなった。

　目的地へ向かう道中妙にハイテンションなロキ上等兵であったが、やはり入れ込みすぎているのであろうか。このままでは、攻撃目標を目にしただけで自爆してしまいそうである。軍用車のハンドルを握るロキ上等兵の横顔には狂気にも近い表情が浮かんでいた・・・。

　程なくして待ち合わせ場所に到着する。既に到着していたKネコ店長から他のメンバーが集合時刻に遅れていることを告げられて、しばらくその場でブラブラと歩き回りながら時間を潰すことにした。

　10分ほど後に、Kネコ店長の携帯通信機にみずん兄弟からの連絡が入った。集合地点の付近にまで到着したとのことである。イソイソと車に乗り込み、みずん兄弟と合流して作戦地域へと移動する・・・。

　作戦地域までは、車でほんの10分程度の距離である。車中、作戦行動の事を考えながらボケ〜〜〜とタバコを吹かしていると、1本を灰にした所で目的地である病院が視界に飛び込んできた。

　見た所、それほど大きくもなく簡素な造りの極一般的な病院の容貌を持つ建物である。事前に「割とデカイ病院だよ」と聞いていただけに、なんだか拍子抜けな印象を受けた程である。少し離れた場所にある駐車場に軍用車を停めて、徒歩で病院の入り口へと移動する。もちろん移動する僅かな間に作戦行動の最終打ち合せを行うのに余念はない。

　病院の入り口をくぐると、すぐ右手にエレベータがある。我々はそのエレベーターに乗り込むと、カメ兄さんの収容されている階へとワサワサ移動する。どうやら奥側に向かって拡張工事中らしく、見た目から想像できない程病院の中は広かった。ターゲットであるカメ兄さんの集団房を見つけるのに少々手間取ったが、それでもなんとか見つけ出すと、一斉に部屋へと踏み込む・・・。

　ベットにだらしなく眠りこけていたカメ兄さんであったが、我々の登場にベットからずり落ちんばかりに狂喜してくれた。5分ほどあれこれと話し込んだのだが、他の患者さんの手前あまり大騒ぎすることも出来なかったため、喫煙可能な場所へと移動する。

　ゾロゾロと廊下を歩いているとネルフの人が腹具合が悪いとのことで、手近にある便所へと誘導し、我々だけで目的の喫煙所まで移動する。早速、カメ兄さんに頼み込んで骨折の手術跡を見せてもらうと、何やらモビルスーツの部品っぽいカーボン材質の強化プレートで骨折箇所を固定していた。

　←こんなヤツ

　少しだけ格好良いと思い羨ましくなったが、たかだかギブスを装着したいだけで、骨折するほど酔狂ではなかったので、「へ〜〜」とか「ふ〜〜ん」とか適当に相づちを打ちつつもプレートを引っ張ってみると、カメ兄さんが白目を剥きながらピクピクと痙攣し出して半気絶状態になってしまったので辞めておいた。

　5分少々遅れて便所へと行ったネルフの人が戻ってきた。心なしか、表情が軽いのは気にする程の事でもないだろう。30分程であろうか・・・談笑したあと、怪我人であるカメ兄さんに、あまり無理をさせてはいかんということで、そろそろお暇する時刻が近付いてきた。

　先ほど通った道を逆戻りしてゾロゾロとカメ兄さんの病室へと戻る。途中ネルフの人が皆に向かって何か大きな事柄をやり遂げた時のような満足げな視線を投げかけていたが、気にしてはならない。

何故なら、ここは病院だからである。

　病室に入って先ほどまでカメ兄さんの寝転がっていたベッドに視線をやると、心なしか布団が膨らんでいる様にも思えるのだが気にしてはならない。ふと隣に立っているロキ上等兵の顔を覗き込むと、精神が半崩壊でもしてしまったのであろうかと思うほどのバカ面で必死に大爆笑をこらえていた。恐らくその時ロキ上等兵には、いつものお上品な背後霊に強引に取って代わってバカ殿が憑依状態にあったことであろう。今にも「アィ〜〜〜〜ン」と叫びながら院内を走り回りそうな勢いである。

　同席した一同の面々の顔にも恐らくは同じような表情が張り付いていたのだろうか・・・。カメ兄さんはそんな我々の顔を見渡すと

「やられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

と叫びながら上布団を引っぺがすと・・・。



































　既に「いつでもスタンバイオッケ〜よ」と言わんばかりに奥床しく鎮座する優香の腰つきがそこにあった。しかもその脇にはご丁寧なことに、ペペローション（付属品）も一緒に添えられるように置かれていた。

　ついでにKネマキ軍曹が「本物よりもええで、ゲヒャヒャヒャヒャヒャ」と一押しのオナホールまで追加されている心遣いっぷりである。

「＊＠￥＃％＄＆？！”；＋＝＊−／！あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！？？」

と、言葉にならない悲鳴を発すると、カメ兄さんはその場に崩れ落ちるように脱力した。それほど迄に喜んで頂けるとは・・・・・・・

参加者一同感無量である。

←喜ぶカメ兄さん
←遂に全貌を明らかにする優香の姿！

　しかも、何をトチ狂ったのかカメ兄さんはおもむろに優香ちゃん（腰だけ）を肩に担いで

「ガンキャノン！」

等とのたまいながら、辺りを徘徊しだす始末である。色気の無い入院生活に華を添える一同の心遣いに、涙を浮かべながらも謝辞を述べるカメ兄さんであったが、その眼の奥には復讐の黒い炎が渦巻いているのをAXELは見逃さなかった。

　と、それまで大爆笑で息をすることもままならずにチアノーゼ現象を引き起こす一歩手前のどす黒い顔色をしていたロキ上等兵が、おもむろにベッドの上にうち捨てられていた優香ちゃん（腰だけ）を手に取ったかと思うと・・・廊下に設置してある血圧計にズボッと優香ちゃんの足を差し込むと

ウィィィィィィィィィィィィン

と卑猥な音を立てながらも血圧計は測定を始めたではないか・・・。

　あまりの暴挙に、既にカメ兄さんは瀕死の状態である。喉の奥を「ヒィ〜〜ヒィ〜〜」言わせながら一同はロキ上等兵の元に集まって、じっと血圧計の表示画面を食い入るように見つめていると・・・










































「最大血圧：59・・・・・・・・・・・・」　

ダッチワイフの血圧ってなんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！？？？？

っていうか、最小血圧が気になりますがぁぁぁぁぁぁぁ（Ｔ−Ｔ

　その場で崩れ落ちるように脱力した一同は次の瞬間血も凍るような出来事に遭遇した。









































「おい！誰か来たぞ！！！！！！！！！」

　ロキ上等兵の一言に一同の顔がデスラー総統の如く激しく青ざめた。一斉にロキ上等兵の言う方向に目をやると、確かに中年に差し掛かろうと言う年齢の看護婦（？もしかすると介護の女性かもしれない）が、コツコツと足音も高らかに我々の方に進んでくるのが見えた。

　恐らく、血圧計にブッスリ刺さってあられもない嬌態を晒しているダッチワイフなど発見されようものなら、卒倒モノの大惨事である。なんだったら、強制退院させられてもおかしくない筈である。よしんば最悪の結果を回避できたとしても、翌日からナースステーションでは廊下でダッチワイフの血圧測定をしていた「ミスター・ダッチ君」の愛称で親しまれるであろう事は免れようも無い事実である。お見舞い品としてこのようなモノを持参した我々も小一時間説教されそうな雰囲気であったので、その場を離れる事にした・・・。

　その時の一同の行動の素早さといったら、間違いなくベンジョンソンよりも紙一重に早く100ｍを走り切れるほどのモノだったに違いない。間違いなくゲーム中にこの動きが正確にトレース可能であったら、スタートして数秒で全ゲームの勝敗が決しても良いほどであろう。

　怪我人であるカメ兄さんとダッチワイフが刺さったまま「ブシュブシュ」と言っている血圧計を放置したまま一斉に病室に飛び込むと、そのまま作戦地域からの離脱を試みた我々であったが、背後から聞こえるカメ兄さんの

「ぐあああああああああ、待てゴルアァァァァァァァ」

という、骨折しているにも関わらず必死の形相でギュウギュウと締め付ける血圧計から優香ちゃんを抜き出そうとするカメ兄さんの怨嗟に満ち溢れた罵声がなんとも心地よかった日曜日の午後であった・・・。