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１．ある日の風景
いつもと変わらぬ風景、いつもと変わらぬ目覚め。新しい1週間の始まりであった。いつもと同じように時が流れ、週末ともなると私は再び戦場に赴くのであろう。ただ一つ違っていたのは朝起きると時計の針は既に7時をまわっていた事である・・・。
「あああああああ、やばい！また寝坊してもたぁぁぁ」
やかましくがなり立てる目覚し時計の音に、布団の中から手を伸ばして目覚ましを引っつかみ、時刻を見ると時計の針は通常家を出ている時間を指している。必死の形相でシャワーを浴びて身支度を整えるとアキ〜コ顧問と息子のテルアキ2等兵が温々とした布団の中で幸せそうに寝ているのを横目に見ながら大急ぎで会社へと向かった。
途中、事務所に連絡を入れようとして、携帯電話に手を伸ばすとコートのポケットの中には携帯電話が入っておらず兵舎に忘れてきた事に気付いたが、途中で公衆電話から連絡を入れれば良いと考えたので、わざわざ取りに戻る時間も勿体無かったのでそのまま満員の通勤電車に飛び乗ると、隣のオヤジの頭が少々ポマード臭い事に気が滅入ったが、殊更何事もなく1時間ほど後には事務所の席に座って仕事を始めていた。
何も変わらぬ風景・・・何も変わらぬ日常・・・そして何も変わらぬ仕事。嫌気がさしてくるほどの平和な月曜日の午後。昼飯にと購入した職場の売店の弁当が不味かったのも相変わらずである。その内、極悪チューンを施した電動ガンを片手に売店に乗り込んで弁当屋を粛正してやろうかと殺意にも似た感情が湧きあがってくるのを何とか押さえることが出来た。そしてこの日の仕事も順調に進み時計を見ると既に終業時刻に近付いているのに気がついた・・・。
「今週は仕事も一段落してるし、今日は5時半上がりにするか・・・。」
一応とは言えAXELも社会人である。仕事が暇な時期であれば早い時刻に帰宅し子供と幸せな一時を過ごすこともあるのだが、忙しい時期となると毎日子供の寝顔を見るだけの日も続くのは仕方のないことであろう・・・。
つまりは帰れる時に帰らないと、後々とんでもないババを引き当てる事に間違いはなさそうであったので、さっさと帰ってしまおうという魂胆である。就業ベルの5分ほど前からイソイソと帰宅の準備をして、
「えぇぇぇぇぇ、もう帰るの〜〜〜？何か公務員のオバハンみたいだな・・・」
という同僚の冗談混じりの罵声にも耳を貸さずにベルと同時にそそくさと「お先で〜〜〜す」などと言いながら職場を後にした。取り敢えず、駅までテクテクと歩いてプラットフォームに立っていると良いタイミングで電車がやってきたので、乗り込んで家路を急いだ。
自宅の最寄りの駅に到着したので、そこから自転車にのって7、8分の兵舎に向かってキコキコと自転車のペダルを踏む。駐輪所に自転車を止めてマンションの入り口をくぐって、エレベータに乗り自宅のある階で降りると兵舎の明かりは消えていた・・・。
「あれ？買い物に出かけたのかな・・・？？」
帰ってみると予想に反してもぬけの空となっていた兵舎に入ると一抹の不安を感じたのだが、夕飯の準備も出来ていないようであったので、仕方無く買い置きのカップ麺を棚から取り出してお湯を注いで食べることにした。
それから1時間が経ち、さらに2時間が経ったが一向に帰ってくる様子も無い。ただならぬ雰囲気を感じてアキ〜コ顧問の携帯電話に連絡してみるも、着信音がすぐ側から聞こえてきたので、携帯電話を携帯せずに外出していたことを知った。念のため、義母の携帯電話にも連絡を入れてみたのだが、留守番電話が応答するのみで連絡はつかなかった。
八方塞で手の打ち様も無くなりヤキモキしていると、兵舎の電話機がけたたましい音と共に着信を告げた。大急ぎで電話に出てみると義母からであった。
「テルアキ2等兵が嘔吐と発熱を起こして救急病院に運ばれた」
今尚点滴を受けている最中とのことで、完了次第アキ〜コ顧問から連絡を入れさせるとのことである。普段と変わらぬ日常を過ごし、さらに普段と変わらぬ団欒の一時を期待して帰宅したAXELには衝撃的な話であった。
幸い入院は免れたとのことであったので、テレビを観ながら時間をつぶしていたのだが、内容は全く頭に入ってこなかった。と、アキ〜コ顧問から連絡があった。「取り敢えずは落ち着いたので、今から帰宅する」との事である。病院から兵舎まで20分少々の距離であったのでその間、テレビをボケ〜〜っと観ていたがやはり内容は入ってこなかった。容体が落ち着いたという事だったので、先ほどよりはずいぶん落ち着いてはいたのだったが・・・。
程なくすると兵舎の呼び鈴が鳴らされ、アキ〜コ顧問が帰ってきた事を告げた。急いで1階まで降りていきテルアキ2等兵の様子を見ると、グッタリとして全く動かなかったので、
「生きてるのか？？」
と不安に思ったが、ちょっと目を開けてAXELの方を見て、力なさげに「パパ〜〜」と言ったのを見ると少し安心したのと同時に悲しくなってしまった・・・。
今の所は点滴による薬が効いておりひとまず容体が安定しているとのことであったが、急変する可能性があるらしく、何かあれば救急で来院してくれとの医者の指示があったそうである。今年流行している風邪らしいのだが、風邪の菌が内臓に入ってしまったらしく、激しい嘔吐を繰り返した後、下痢も併発するとのことである。最悪なパターンとして、嘔吐と下痢を併発した場合、急性的な脱水症状を起こしてしまうらしく、棺桶に片足を突っ込んでパラパラと踊っている老人の場合や小さい子供の場合にはかなりの危険が伴うとの医者の判断である。アキ〜コ顧問の話を聞きながら思ったのだが・・・
「だったら入院させろよな・・・」
他にもっと重傷な子供が居たからという事である。幸いテルアキ2等兵は嘔吐もすぐに収まり、下痢は続くもののなんとか水分補給が出来る状態にあったので、毎日夜間診察や救急で点滴を受けることで回復に向かったのだが・・・。
とにかく、毎日病院に行っていると、様々な光景を目にする・・・。特にAXELもテルアキ2等兵と同じくらいの年くらいの子供がいると「大丈夫かな〜」などと考え、目が行ってしまうのだが・・・。
なんか、デスラー総統みたいな顔色の子供来てますが・・・（Ｔ−Ｔ
聞くとも無しにお医者さんの話をボ〜〜〜っと聞いていると、どうやらテルアキ2等兵と同じ病症であったのだが、あちらの子供は嘔吐と下痢と併発してしまったパターンであったよう（最悪のパターン・・・）で、動く気力も無くただボ〜〜っと上を向いているだけであった。一歩間違えるとテルアキ2等兵も同じようになってしまっていたかと思うと背筋が凍る思いであった・・・。
一向に回復に向かわないテルアキ2等兵の病状にかなりの焦りを覚えてしまった。嘔吐と発熱は収まったものの（一時は40度を超えた熱が出ておりました）、下痢が全くと言ってもいいほど回復を見せず10分おきに水のような便を垂れ流すので、半脱水状態を引き起こしていると思われた。虚ろな目にも生気というものが感じられず、ただ上を向いて布団に寝転がっているだけであった。
結局その週は毎日のように家と病院とをハムスターの如く行ったり来たりしていたのだが、ようやく回復の兆しが見え始めたのは週末になってからのことであった。一旦回復の方向に向かうと子供というものはすばらしい回復力を見せてくれる。前日まで脱水に近い状態で立ち上がる事はおろか、座る事さえ出来なかったテルアキ2等兵であったが、土曜日の午後にはまだ弱々しいものの、2本の足でその辺りをテクテクと歩きまわるほどに回復したようであった。
取り敢えず峠は越えたようである。まだ下痢は続いているものの、旺盛な食欲を見せるテルアキ2等兵は今日も元気（？）に部屋の中を走りまわりながらAXELが本レポートを打っているのを見つけると、キーボードに触らせろとばかりにこちらに向かって走り寄ってくるのが見えた・・・。というよりも、隣に立ってせがまれている・・・。
２．天気予報「雨そのうち血の雨」
ゲームの前日、大阪近辺の天気は大荒れであった。この時期には珍しいほどの台風にも匹敵する降雨量と暴風である。あまりの暴風雨に兵舎のベランダに立て掛けてある簾がぶっ飛んで行きそうになるほどであった。
勿論、天気予報も
「日曜日は局地的に台風並の暴風雨になるでしょう」
という、天気予測の素人のAXELでも容易に判断できそうな程、糞の役にも立ちそうも無い情報を垂れ流すのみであった・・・。だれかこの事態を前にして、「明日は快晴となるでしょう」とバイオレンスな予報をぶっ立ててくれるファンキーな天気予報士が居れば（一生その人についていくぞ）などと下らない事を考えながら「明日のサバゲは無理だろうな〜〜」と隣に座っているアキ〜コ顧問に聞こえるように言ってみると・・・。
「そんなん当たり前やろ！明日晴れたら遊びに行くつもりやな！？」
と鬼より恐ろしい形相で恫喝されてしまった・・・。季節がら節分時期であったのなら鬼でも逃げ出しそうな阿修羅の形相であったことは言うまでもない。あまりの恐怖に失禁寸前となってしまったAXELであったが、口が裂けても「明日晴れたらサバゲいってもいい？」と聞けそうにもない雰囲気であったので、「天気悪いからいやだな〜」等とお茶を濁して話題を変えてみる事にした。
案の定、キラ−・ム−ズマス（旧名称JYUDAN殿）殿のページを見に行ってみると掲示板には「主催チームから中止の連絡が入りました」等といった情報が書き込みされているのを見て、「今日はおとなしくウルティマでもやっとこ〜〜」とばかりに深夜まで遊んでいたほどである。
翌朝、いつもより少し遅い目に目が覚め、何気なくタバコをふかしながらキラ−・ム−ズマス殿の掲示板を眺めていると・・・。
「チーム「G」ヨリ入電「本日 Ark戦決行ス。」」
との打電が入っている事に気がついてしまった・・・。慌てて窓を開いて空を見上げてみると素っ頓狂なほど晴れ上がった空が「今日はサバゲ日和だよ〜」とばかりにAXELの事を見下ろしていた・・・。
何もこんな日に晴れなくていいのにぃ・・・(-_-;)
サバゲの神様の仕打ちに涙しながらも、布団で眠っているアキ〜コ顧問の所へ行って淡い期待を抱きながら、
「今日は晴れてるよぉ〜ぉ〜〜ぉ〜〜〜」
と枕元に正座して囁いていると、眠い目をこすりながら大儀そうにこちらを見上げたアキ〜コ顧問は
「うっさい、ボケェ！そんなに行きたかったら行っといで！」
と、しぶしぶ（？）ながらも参戦の許可を出してくれた。ただし、帰ってきてから銃殺であろう事は間違いないのではあるが・・・。そんな先の事まで考える事の出来るAXELであろうはずもなく、嬉々として準備に取り掛かるとスタコラサッサと兵舎を後にした。
３．嗚呼懐かしの永楽ダム
兵舎を飛び出したAXELは途中コンビニへと立ち寄り、昼食と飲料水を購入してフィールドへと向かった。約2年ぶりに訪れる永楽ダムであったので、道に迷ったりしながらもフィールド脇にある駐車場に到着したのは、兵舎を後にしてから1時間半ほどしてからであった。
軍用車を駐車場に乗り入れると、妙に駐車している車の台数が少ない事に気がついた・・・。（もしかして今日は中止になったのか？？）とも思ったが、イソイソと荷物の準備を行ってフィールドへと行ってみると、20名足らずの兵士が談笑しているのが見えた。
「こんにちわ〜〜」
と爽やかに挨拶してみるも、入り口付近にいた兵士に「どなたですか？」とか「今日はサバゲがありますので・・・。」と追い返されそうになってしまった・・・。「今日はサバゲ・・・」って、
思いっきりそれらしい服装してフィールドに来てるやん（Ｔ−Ｔ
一体何を見ているのであろうか・・・。以前の永楽ダム戦でも何度か見かけたように思う顔であったのだが、まぁ2年間もご無沙汰していた事を考えると仕方の無い事だと思ってそのまま中に入る事にした。
フィールドの横にある死体置き場に到着すると懐かしい顔ぶれが数名見えた。旧石器時代から永楽ダムでゲームをしているという常連さんである。しばらく話し込んでいると、以前は永楽ダムといえばハイパワー銃の巣窟とも言えるフィールドであったのだが、近頃はめっきりパワーも控えめとなっているらしく、今回も1Jルールを適用しているとの事であった。
フィールドに控えるその他のメンバーについては「L.Aガンショップ」の常連の方々らしく、中には我が「すかぽんたん」ホームページをご存知の奇特な方がおられた・・・。その日のゲームに参加していた図体のデッカイ（ついでに態度もデカイ）太っちょが管理者のAXELであろうとは夢にも思わなかったに違いない。目の前で何か一発芸でも披露して頂ければホームページの晒し者になったであろう事には間違いなかったのであったが、その兵士はAXELの不穏な気配に萎縮してか、別段一発芸を披露してくれる事もなかった・・・。
モソモソとフィールド片隅で着替えを済ませて、愛銃のP-90の試射を行っているとゾロゾロと見慣れた顔ぶれが集まってきた。キラ−・ム−ズマス殿御一行の到着である。参加者は20名程度であったろうか・・・。取り敢えず主催のチームGのM氏と相談して、永楽常連組み＋LAガンショップ御一行様チーム（赤軍）対キラ−・ム−ズマス殿御一行様（黄軍）に別れてゲームを開始する事とした。AXELは永楽常連組みの赤軍に入る事になった・・・。
友軍にはフィールドに慣れ切った兵士が数多く存在するのに対し、敵軍はフィールド初めて＋サバゲも初めてッポイ人が多数いたのに、「ゲームになるのか？」という一抹の不安がAXELの頭をよぎったが、「余りに戦力格差が有るようならば途中でチーム編成を考え直します」というM氏の言葉に安心して取り敢えずは赤軍にてゲーム開始の合図を待つ事にした。
４．役立たずここに極まれり・・・
最初のゲームは下側からの開始である。モソモソとフィールド脇の下置き場から下側陣地のフラグ近辺まで移動すると既に味方兵士はやる気満々の表情で戦闘開始を今か今かと待ちわびていた。
「んじゃ、始めま〜〜〜す。スタート〜〜〜〜」
開始の合図と同時にAXELはフィールド右手に広がる丘陵地帯に向かって走り出す。完全に運動不足のAXELの両足は永楽フィールドの広大さにすぐに音を上げ始めるが、それでもなんとかストライキ寸前の両足に鞭打って山の斜面を駆け登ると、そこに広がる平野部のブッシュ群に身を潜めて地面がずぶ濡れになっているのも気にせず敵陣向かってズルズルと匍匐前進を始めた。
何しろ2年ぶりの永楽フィールドである。平野部に入ってズルズルと匍匐前進をしていて気付いたのだが、目の前に道がなくなっている・・・。有るのは茎にイバラにも似たトゲトゲの付いた下生えの雑草がのたくっている獣道よりも細い筋のみであった。こんな通路を通ろうものなら、敵兵士に「こっちから的が来てますよ〜〜。ほら、ガサガサ移動してる〜〜」とテレビのゴールデンタイムにコマーシャルを流している様なモノであったので、（どうしたものか・・・）と途方に暮れていると、背後から
「ここ、進むんですか？」
と声をかけられて全身の穴という穴が全開になるほど驚いた・・・。
どうやらボケ老人の如くフィールドを迷走中のAXELの背後に味方の兵士がバックアップとばかりにエッチラオッチラついてきてしまった様である。口が裂けても「迷子になりましたぁぁ、テヘッ」とは言えない状況となってしまったので、
「こっちのバックアップはいいから、今攻撃されている味方の兵士についてあげて」
ともっともらしい言葉をその兵士達にかけて、AXELはそのままトゲトゲが痛いのにも我慢しつつ前進を再開する事にした・・・。
目の前に林立している雑草の茎を「ポキポキ」と一本ずつ手で折りながら、一歩一歩慎重に前進していると・・・完全に道がなくなってしまった・・・。その上後方の味方兵士と前方に配置されている敵兵士との間に壮絶な撃ち合いが始まってしまったらしく、AXELの頭上をジュール値に換算すると、恐ろしくてとても顔を上げる事が出来ないような数のBB弾がビュンビュン風切り音を立てながら通過していく。まさしくにっちもさっちも行かない状況に陥ってしまった訳である。必死で首をすぼめながら銃撃戦が一段落するのを待っていると、一際激しい銃声が辺りに響き渡り、先ほどまでの激しい銃撃戦がウソのように収まったので（？）と思い草むらから顔を出して辺りの様子を見てみると、どうやら平野部の外周沿いに侵攻していた味方兵士が必殺の銃撃を敵部隊に加えたようで、敵軍は壊滅したようである。
周囲の敵部隊は先ほどの兵士のお手柄で一掃されたようで、我々平野部に潜んでいた味方兵士はその快挙を諸手を挙げて褒め称えたが、どうやら反対側の稜線沿いでは未だ激しい戦闘が続いているようであったため、生き残りの兵士達は疲れた体に鞭打って応援に駆けつける事にした。
銃器を構えた5、6名の兵士の注意が人気のない敵フラグ地点に集中する・・・。やはり守備兵は一人も居ない様である。そのまま敵陣地陥落も可能かと思われたが、敵残存兵力もほとんど壊滅に近い状態であると言う作戦本部からの指示があったため、殲滅に向かう事になる。
何故か味方部隊の先頭にはスナイパーライフルを片手に提げたチームGのM氏が立っている。「そりゃ、おかしいだろ・・・。」と思いつつも少々出遅れてしまったAXELはその10mほど後方をテクテクとピクニックに出かけるような足取りで付いていったのだが、敵部隊と遭遇するまでもなく、このゲームも一発も発砲せずに終了してしまいAXELはモノの見事な昼行灯ぶりを披露してしまった・・・。
５．全滅戦隊永楽チーム
続いての上からスタートのゲームでも先ほどと同じような展開で、赤軍の圧倒的な勝利に終わり、「そろそろチーム変えしたほうがいいかなぁ・・・」と考えているうちに、第3ゲームが始まってしまった・・・。
今回も下側からの侵攻である。開始と同時に左手の急斜面に取りつき、スリングベルトの付いていないP-90片手にドッコイショと崖を登っていると、上の方から銃声が聞こえてきた。やはり下側からの攻めでこちらのルートは不利かと少々急斜面側の侵攻ルートを選択したことを後悔したが、頭上に敵軍がいるからには、今更後に引く事はできそうもなかった・・・。
所々に点在する岩陰を利用して身を隠しながら山頂を目指してみたが、途中、味方兵士の一団がトイレに詰まったチリ紙の如く侵攻ルート上に停まっていたため、足場が悪く滑り落ちそうになるのを、括約筋に気合いを込めて何とか踏みとどまると額に青筋が浮かんだが、目の前の兵士が突然死亡したので、思わず脱糞しそうになってしまった・・・。
どうやら敵兵士は真上に陣取っているようである。迂闊に岩陰から頭を出そうものならこの先1年分の弾丸をたらふくご馳走になってしまうであろう事は明白であったので、踏みしめるとジュクジュクと音を立てるほど湿った地面に腹ばいになってジワジワと敵の見える位置にまで移動すると、頂上に立っている申し訳程度の木の幹の横から茶髪の敵兵士がジッと不思議そうな顔をしてこちらを見ているのに気が付いた。慌てて銃を構え直して発砲しようとすると敵兵士も同じ事を考えたようで、アタフタと銃口をこちらに向けようとするのが見えた。間一髪で先に銃を構えたAXELの放った弾丸が敵の横っ面を張り倒したようで、顔の半分を消失した敵兵士の魂は死体置き場へと旅立っていった・・・。
なんとか一息ついたAXELは小休止とばかりにその場で荒くなった息を整えようとしたのだが、ふと上の方を見上げると先ほどの兵士が居た場所に別の敵兵士がドッカリ陣取って味方兵士に向かって銃口を向けようとしているのが見えた。
一息つく間もなく、再び射撃姿勢を取ったAXELは敵兵士に向かってトリガーを引き絞るとドットサイト越しに敵兵士がもんどりうって倒れるのを確認した。「これでゆっくり休める」等と考えて、岩の出っ張りに腰を落ち着けようとすると上方から激しい銃声が聞こえてきた。
「うああああああああ、ヒットぉぉぉぉぉぉぉ」
断末魔の叫びが聞こえたかと思うと、喉を打ち抜かれたのか、崖の遥か上方でキラ−・ム−ズマスのprivate-taisyou殿が首筋を押さえて断末魔の痙攣を起こしているのが見えた。哀れにも死に切れないprivate-taisyou殿に止めを刺そうかと思ったが、兎にも角にも崖の上に配置された敵兵士はほぼ壊滅状態との事であったので、小休止を挟んで再び侵攻を開始する事にする。
モサモサと険しい崖を上り詰めると味方の兵士が数名到着を待っていてくれた。フィールド限界ぎりぎりに走っている小道沿いに進軍を開始しようとしたのだが、周囲には身を隠せそうなブッシュなどが全くと言ってもいいほどなかったので、先頭を進もうとしたAXELは決死の覚悟で続く後発兵士に「私が死んだら後はヨロシクね・・・」と告げると、ハンドガン1丁を持った兵士が「私の方が役に立たなさそうなので、先頭いくっす」と申し出てくれた。
ここぞとばかりに「んじゃ、よろしく〜〜」とあっさり先頭の座を明け渡したAXELは先ほどのハンドガンナーがイソイソと小道を進んでいこうとするのを見送ると、自身の進むべき道を探し始めた・・・。が、モノの数秒も経たないうちに激しい発砲音が聞こえて先頭のハンドガンナーが蜂の巣にされるのを見た瞬間、「ああ、やっぱし死んだのね・・・」と合掌したのは言うまでもない。
味方の兵士に状況を聞いてみると、敵守備兵はどうやら真正面に陣取っているようであった。AXELは申し訳程度に立ち並ぶ木の間を縫うようにして匍匐前進しつつ敵兵士が身を隠しているであろう地点をおおよそ見当を付けて狙撃可能な場所まで移動する事にした。
ジュクジュクジュクジュク・・・・
匍匐前進で一歩、また一歩と踏み出す毎に地面に吸い込まれた雨水がAXELの腹部を湿らせるのを感じつつも、なんとか目的地点にまで進み出て銃器を構えると、敵兵士は既に後退してしまった後であったらしく、そこはもぬけの殻であった。
仕方がないのでその場で座り込んでキョロキョロと敵陣地の方向を見ていると、15m程離れた所に敵兵士が1名こちらの方に銃口を向けているのがブッシュ越しに確認できた。幸いにもこの兵士はまだAXELには気付いておらず、AXELの側面にいる味方兵に注意が向いている様子であったため、ギリギリまで接近してセミオートで片付ける事に決めた。
ちょうど良い事にに敵兵士とAXELの間には1本の木が立っている。運悪く移動中に発見されれば弾除けにもならない程度の若木であったが、それでもなんとかその木の作り出す死角を上手く利用すれば敵兵士の7、8m位にまでま接近出来そうであったので、音を立てない様に慎重に匍匐で前進する。
ふと後ろを見ると味方の兵士が前方の敵守備兵に気付いていないのか、トカゲの如くクネクネと地面に出っ張った腹を擦り付けながら前進するAXELをまるで変質者を見るような目つきで見ながらついてくるのに気がついた・・・。
「真正面に敵がいるからそこから先進んだら危ないよ〜〜」
と味方兵士に警告すると慌てて身近にあるブッシュ（らしきもの？）に逃げ込んだのだが、これまたKネマキ軍曹の毛髪の如き申し訳程度にしか生えていないブッシュであったため、発見されれば即座に極太弾丸を撃ち込まれそうなほどにしか身が隠せない様子で、さも居心地悪そうにその兵士はモソモソと体をくねらせているのを横目に再び前進を開始した。
敵守備兵も不穏な気配を感じているのか、時折キョロキョロと辺りを見回しているのがこちらから見えたが、上手い具合にAXELとの間に生えている若木が死角を作り出してくれているのか、こちらには気付くそぶりは見えなかった。
なんとか狙撃可能な所にまでたどり着いたAXELは物音を立てない様にゆっくりとした動作で銃器を構えるとセミオートで一発狙撃する・・・・と、なんと弾丸は敵兵士の前に生えていた直径5cm程度の棒っ切れに当たって弾かれてしまった。思わぬ所からの銃撃に敵兵士がハッとした表情でこちらに銃口を向けようとする動作が見える。あまりの出来事にAXELの頭頂部から、極太ホースで水を撒き散らした様な大汗が流れ落ちたが、焦らずに再度トリガーを引くとまたしても先ほどと同じ棒っ切れに弾丸が弾かれてしまうのが目に見えた・・・。何という事であろうか、あまりの命中精度の良さに愛銃であるP-90を作り上げてくれた生き残り屋のKネコ店長に呪いの言葉を吐きながらも、セレクターをフルオートに切り替えると情け容赦なく渾身の一撃を加えると、全身に湯気が出るほどBB弾を食らった敵兵士はボロ雑巾のようになって、昇天していった・・・。
ごめんよぉぉぉ、そんなつもりはなかったんだよぉぉぉ
と、この場を借りて謝ってみたり・・・。
この兵士が敵守備隊最後の一人であったようで、フラグ地点までスキップで進んでいくと、既に味方兵士が数名集結していた。結局このゲームも赤軍の勝利で幕を閉じたのであったが、ここまでの一方的な展開を考えると、この辺りでチーム変えをしたほうが良いのかな・・・。と本気で思うようになったので、死体置き場に到着した時に主催者に「次から私、黄軍に入りますね」と一人申告してみたのだが、それまでのAXELのダメッぷりを同じチームでつぶさに観察してきたチームGのM氏はどの道一人くらい移動しても体勢に大きな影響もないだろうといった具合ですんなり承諾されてしまった・・・。
「次のゲームからこっちのチームに合流するでゲスよ。うひゃひゃひゃひゃ」
とウンコに群がる銀バエのように揉手を擦りながらキラ−・ム−ズマスの一マル軍曹殿に挨拶に行くと
「今日のゲームはAXELさんの目から見たらどんなんなんでしょうねぇ・・・」
とか
「こないだのレポートでKネマキ軍曹とサバゲに何の関係が・・・」
とか、挙げ句の果てには
「ここで話してるだけで、ネタ繰りしてません？」
等と散々な言われようであったが、全くもってその通りなのだから、仕方のない事である。
どうやらAXELに近付いただけで、いじくられてホムペのネタにされると思っているらしい・・・。
これもその通りである・・・。一言も言い返せません。
ごめんなさい（Ｔ−Ｔ
６．逆襲の黄色軍
とにかく、黄色チームも弱い訳ではないのだろうという事で、ゲーム開始前に一通り、防御と攻撃の要になる地点を説明して、友軍を防御と攻撃の2チームに分割して拠点に振り分ける。かつて堺傭兵協同組合として活動していた時に、関西圏最強とも謳われた永楽常連チームを苦しめた鉄壁の布陣である。布陣を終えるとゲーム開始を待つ・・・。後は各個人が上手く機能してくれる事を願うのみであった。
ゲームスタートと同時に各兵士が持ち場に向かって移動する。AXELは右手に広がる平野部へと続く道を選択した。緩やかに続く坂道を登り切り、平野部の端にあるブッシュ群に到着すると既に敵先発部隊と味方攻撃チームとの間で激しい銃撃戦が展開されていた。AXELもこの銃撃戦に参加したのだが、膠着状態が長く続くのに耐えられなくなった所でキチピ〜〜一人ナンパオを敢行したところで敢え無く戦死してしまうも、これまでの展開と違って黄色軍が奮闘しているのに満足して死体置き場への黄泉路を旅立った。
この戦闘も最終的には赤軍の勝利であったのだが、黄色軍においても先ほどの戦闘で何がしかの手応えを感じ取って頂けたようで、死体置き場での雰囲気も明るいものとなっていたように思う・・・が、気のせいであろうか？
続いてのゲームは上側スタートである。ゾロゾロと少々遠目に設置されたスタート地点まで行くと、既に数名の兵士がそこに待機していた。今度は上側からの攻める時の要点を簡潔に説明して、開始の合図を待つ・・・。
「んじゃ、いきま〜〜〜す。３・・・２・・・１・・・スタ〜〜トォォォォ」
開始の合図と同時に必死の形相でフィールド右側に広がる丘陵地帯へと走り出す。フィールド限界すれすれに走っている小道沿いに敵フラグ地点の見下ろせる位置まで一気に侵攻してしまわないと戦局的にはかなり不利になってしまうのだ。スピード命とばかりに前を走っている味方兵士に檄を飛ばしながら急いでいると、何故か味方兵士達は目的地点に到達する前にどんどん脱落し始めてしまった・・・・。
「疲れて走れなくなったのか？」と最初の内は思っていたのだが、その様子はなく突然に皆が小道脇のブッシュに隠れ始めたのを見て、これ以上進むと敵兵士が隠れているのかも・・・とも考えたのだが、こちらの侵攻速度を考えても敵兵士が崖を登り切ってこちらに向かって来ているとは到底思えなかったのでさらに奥まで突入したのだが、果たして敵兵士はまだ崖の中腹でぬかるんだ地面と格闘している真っ最中であった。
目標地点に到達したAXELは崖下で泥沼と化した急斜面と格闘している敵兵士に向かって愛銃のP-90のトリガーを引き絞りつつも、唯一AXELに付いてきてくれたprivate-taisyou氏に「側面の警戒に当たってくれ」と依頼して岩棚から身を乗り出して先制攻撃とばかりに敵陣地に攻撃を加え始めたのだが、不意に岩陰から出てきた敵兵士が戦友とも言うべきprivate-taisyou氏に向かって発砲するのを阻止する事が出来ず、むざむざ彼に犬死にさせてしまった。
private-taisyou氏の弔い合戦とばかりに敵兵士が慌てて隠れた岩陰に向かってありったけの弾丸をぶち込み身動き取れない状態にしておいて、ジワジワと移動しつつ敵兵士に銃撃を加えられる場所まで移動すると至近距離から
「弾食らえやぁぁぁ。ゴルアァァァァァァ」
とばかりに弾倉に残った弾丸を湯気が出るほどお見舞いしてやると敵兵士の魂は死体置き場へと旅立っていった。
残り少ない弾薬を気にしながらも登り来る敵軍を次々に打ち倒したのだが、銃撃を加えながら辺りを見回すと、スタート直後あれほどいた友軍兵士が誰一人ついてきていない事に気付いて愕然とした。
「おおおおおおおお〜〜ぃ。誰か来てくれ〜〜〜」
増援を呼ぶ声も空しく味方兵士は近くにいるはずにも関わらず黙殺されてしまう・・・。（もしかすると聞こえていないのかも知れぬ）と考え何度か「来てくれ〜〜〜」と大声を張り上げてみるも援軍が来る見込みも薄く半分諦めかけた所に、ひょっこりと味方の一人が現れてくれた。これ幸いにと敵兵士が隠れている場所を教えて挟撃する作戦に出ようとしたのだが、予備の弾倉に付け替えようとした時に重大な事に気付いた・・・。
弾倉忘れてきた・・・
手に持っているP-90の弾倉にはどう多く見積もっても10発ほどの弾丸が残されているだけで、このまま行くと1秒で弾切れになる事は火を見るよりも明らかであったため、先ほどの味方兵士にお願いしてBB弾を少し分け与えてもらう事にした。
「すみませ〜〜〜ん。弾くださ〜〜〜い」
緊迫した戦況の中でなんとも間の抜けたAXELの一声であったが、それでも味方兵士は呆れ顔を見せながらも「これ、どうぞ〜〜」と使いかけの弾倉を一つAXELに貸して下さった。イソイソとP-90の弾倉に頂戴した弾丸を移し替えて、いざ戦闘！とばかりに勢い良くその場で立ち上がると、足元に這い登っていた敵兵士の一撃で左半身にまったりと弾丸を受けて即死してしまった。
ただの穀潰し状態で戦死したAXELは味方兵士の「こいつ、何がしたかったんだ？」という視線に「ウヒッ」と反省ザルの物まねで応えるとスゴスゴと死体置き場に旅立ったのだが、その後そこから戦況を眺めていると、黄軍はかなりの奮闘を見せていたようで、後少しで敵フラグ陥落という所まで詰め寄っていた。
この様子だと一安心ということで、AXELはこのゲームを最後にアキ〜コ顧問とテルアキ2等兵の待つ兵舎へと帰還することにしたのだが、続くゲームも一般人迷彩に着替えながら高見の見物をしていたのだが、かなりの巻き返しを図っているようであったのに満足つつも家路を急ぐ事にした。
この日も大きな事故や怪我人もなく、無事に1日を終える事が出来た事にサバゲの神様に感謝しつつ軍用車のハンドルを握るAXELであったが、この時既に風邪の初期症状なるものが姿を現していよう等とは夢にも思わなかったのであった・・・。
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