<<本日ハ聖戦ナリ(後編)編>>



1.本日ハ聖戦ナリ
 聖戦である。
 イスラム教で言う所のジハードという奴であろう。始まりはチームJYUDANの一マル軍曹の一言であった。

「X'masEve聖戦」

何という甘美な響きであろうか・・・。クリスマス等という毛唐の祭りに浮かれる日本という無宗教国家の小市民共に愛想を尽かして以来数十年、幾度となく恐怖のアルゴルモア大王が、数兆発という6mmの白い弾丸を吐き散らしながら上空5000メートルから落下傘降下してくる様を夢見たであろうことか。これこそある意味ホワイトクリスマスである。今夜いったいどれほどのコンドームが空しくも浪費されることであるのであろう・・・。密かに地球温暖化の要因の一つに摩擦熱というものが入っているのではないであろうか・・・。

 毎年この時期になると町に群居する大馬鹿モノ共を横目に見ながら、某鳥のカラ揚げ屋を襲撃し創設者の白髪爺の髪の毛と髭をマジックで真っ黒に塗りつぶしてやろうとか、某都市に建設される地元住民にとっては迷惑以外の何者でもない電灯に飾り付けられた街の通りの電源のコンセントをプッツリ抜いてみたら暴動が起きるであろうか等と正義に燃えるイスラム原理主義者の如きテロリズム的誘惑に刈られるうら若き兵士がこの近畿圏内にどれほどいることであろう。

今こそ立ち上がれ国民よ!















 

 

 

 

 

ジィィィィク ジオン!

「聖夜」を「性夜」に履き違えた全国数百万のバカップル共に正義の鉄槌を振るうべく、今日ここにすかぽんたんなるサバゲの破壊神が降臨したのである。

 早速、地獄の「死ね死ね団」を結成すべく構成員であるKネマキ組長に連絡を取ってみると

「あ゛〜〜う゛〜〜〜〜昨日ので風邪ぶり返したぁぁぁ」

と、兵士の風上にも置けない腑抜けた返答が帰ってきたので、「死んでしまえ!」と呪いの言葉を叩きつけ、ロキ上等兵にコンタクトを図ってみる・・・。

「現在電話に出ることが出来ません。ピーーーーと鳴りましたら・・・・・・」

何ということであろう・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは国防省の陰謀であろうか?

 取り敢えず、報復活動として留守番電話に

「もしもし、私リカちゃんよ。クリスマスイブおめでとう。グフフフフフフフ」

とだけメッセージを入れておくことにした。それにしてもいわゆる一つのピンチという奴である。聖戦という国家の一大事というのに、参戦可能な兵士はAXEL1等兵ただ一人となってしまった・・・。

 このままでは通称「クリスマスイブ幸せ一杯軍団」に圧倒的な敗北を喫してしまう事は必至である。ともすれば、素っ裸にひん剥かれた上に股間に天狗のお面を括り付けられアメリカ国民の前に放り出されたビソラ○ィソにドジョウすくいを踊らせるが如き捕虜の辱めを受けることにもなりかねない由々しき事態である。まさしく八方塞の状態でAXELは半べそをかきながらも、心のナイフを研ぎ澄ますかの様にメインアームのP-90のメンテナンスに没頭したのであった。

2.恐怖のクリスマス戦線
 翌朝目覚めると、集合時間にはまだ余裕のある時間であった。いつものようにシャワーを浴びて眠気を吹き飛ばすと軍用車のハンドルを握って一路戦場へと向かう。これまたいつもと同じようにおなじみのコンビニに立ち寄り食料を調達して、フィールドにたどり着いたのも集合時間の少し前の事であった。平常と変わらぬ風景の中に「聖戦」という狂気が見え隠れしてるためであろうか・・・。既に集合していたJYUDAN将校の顔からもいつもにも増して緊張感というものが窺い知れる。

「2連チャンっすか〜〜〜!?」

との声に振り向くとJYUDAN軍曹の一マル氏がにこやかに立っておられた。土日曜日の2連休にサバゲ3連チャンをこなすほどの廃人であるAXELにとっては別段変わったことではないのであるが、JYUDAN殿のような至極一般的な方々にとっては、我々などチンパンジーに薄汚い雑巾を手に持たせて核ミサイル発射ボタンの拭き掃除をさせるロシアの核開発技術者の如く頭の逝っちゃった人種に見えるのかもしれない等と考えながら、いそいそと準備をすませると弾速測定を行った・・・ら、大枚はたいてチューナップした銃の初速が80m/s少々(東京○イの0.2g弾使用)とノーマルよりもショボイ事が判明して、思わず脱糞しそうになるくらいのショックを受けた

 この日の聖戦に参加する勇敢なる戦士はAXELを含めて20名であった。一マル軍曹殿がうっかり「チーム戦しましょう」と言い出した日には19対1というランボー並みの地獄絵図が展開されてしまうであろう事は火を見るよりも明らかであったので、グーパーでチーム分けを行うことにした。AXELが所属する軍団の名称はもちろん「死ね死ね団(仮称)」で決定である。

 第1戦目、我々「死ね死ね団」は下側の陣地からのスタートであった。開始直後から激しい銃撃戦が展開される。と同時にあちこちで「ヒット〜〜〜」という断末魔の叫び声が聞こえてきた。AXELは初戦ということで様子を見るために花道に向かって進むと既に敵兵士の姿が10メートルほど離れた地点に見え隠れしていたので、「もう少しこっちに来ないかな〜〜」などと呑気に眺めていたら、しこたま弾丸を撃ち込まれてしまった。幸いにして目の前の遮蔽物で死亡することはなかったのであったが、失禁するほどに驚いたため一旦フラグ近辺にまで後退し、攻め込んでくる兵士に逆襲を仕掛ける作戦に出ることにする。

 モソモソとフラグの後ろ3メートル程の所に陣取ってひたすら敵兵士がこちらにやってくるのを待ちつづける。前日の夜間に雨が降ったためか、下生えの草が水にぬれてキンタマの皮がキュッと縮み上がる思いをしたのあるが、異教徒である「クリスマス幸せ団」の凶弾に倒れるよりは幾分かマシであったので、体勢を少しずつ変えながらもじっと耐えていると、敵陣地から笛の音が聞こえてきた。どうやら勇敢なる我らがAkamogura氏(であったろうか・・・)が敵陣地を陥落せしめたようで、我が死ね死ね団陣営から大いに喝采を浴びておられた。

3.煉獄のクリスマス戦線
 続いて第2戦目、今度は上側の陣地からの開始である。先ほどの戦闘ではAXELは糞の役にも立たなかったので、今度こそ愛銃に異教徒の血を吸わせるべく開始と同時に敵陣地めがけて突撃を行った。・・・・・・・と見せかけて、隠れるのに都合のよさそうな場所を見つけたので、そこに寝転がって幸せ団の兵士がこちらにやってくるのを待ち構える作戦を採った。

 待つこと数分・・・・。フィールド中央の岩山の頂上から激しい銃撃音が聞こえ始め、味方兵士が虫けらの如く次々と虐殺される光景が目の前に広がる。ふと死体置き場に目をやると死ね死ね団構成員の死体が累々と山を築き、生き残っているのはもはやAXELを含めて半数にも満たない状態であった。一方敵軍には神の啓示が降りたのか、死亡者はほとんど発生していない。このままではフラグ陥落はおろか、全軍討死にの様相を呈してしまうことは必定である。瞬間的に頭にカッと血が上り、隠れている地点より飛び出して敵陣地に切り込もうかと考えたのであったが、寸での所で思いとどまり苦渋の涙を飲みながら敵軍に一矢報いる機会をじっと待つ・・・。

ブババババババババババババ・・・・

 突然、AXELの隠れている地点から数メートル離れた場所から山頂の敵兵士に向けて銃撃が加えられた。思わず(味方の援護か!?)と地獄に仏の気分を味わったAXELであったが、よくよく考えるとAXELのいる地点より前に出ている死ね死ね団員は居ないはずである。銃声のする方向に目を凝らすと敵兵士が数名花道の側溝沿いに進軍してくるのがかろうじて確認できた。

「しめしめ・・・このまま同士討ちしてくれ」

と都合の良い事を考えながら頭上に行き交う弾丸に誤射されないように、地面にはいつくばっていると、ドガッドガッと足音を響かせて山上にいた兵士が岩山を降りてきた。一瞬(見つかったのか!?)と焦ったのであったが、完全に味方撃ちモードに突入しているようである。敵兵士は丁度、AXELの前を何度も行ったり来たりしながら、ひたすら弾幕を張っていたのであったが、余りにも派手に動きすぎたお陰で辺りにいた他の敵兵士までこちらに引き付け始めた様であった。このまま同士討ちを続けてくれるのは有り難かったのではあるが、これ以上身の回りに敵勢力が固まってしまうとさすがに対処し切れなくなってしまうので、敵兵士が手を伸ばせば届きそうな位置に座り込んだ拍子に背中に向けてパシンと1発弾丸を撃ち込んでやるとビクッと飛び上がらんばかりに驚きながら死亡してくれた。

恐らくどこから撃たれたのかも分からなかったに違いない事であろう・・・。

 一人殺したからといっても、まだまだ敵兵士は身近な場所に数名潜んでいる。その証拠にどこに向けての発砲かは知らないが単発的に発砲音がすぐ側から上がるし、ヒソヒソと何事か話し合う声も聞こえてくる。加えてセミオートとは言え一度発砲したことで、相手にこちらの存在がばれている可能性が非常に高い。ジリジリと1メートルほど後退して、花道沿いの方面を警戒していると、道を挟んだ向こう側に幸せ団のafteryou氏(だったろうか・・・)がブッシュから顔をひょっこり覗かせながら周囲を警戒している様子が見えた。























撃つべきか撃たざるべきか・・・それが問題だ

 どこかで聞いたような時代がかった台詞が一瞬頭の中をよぎった・・・。普段の仕事の時からは想像もつかないほどニコチンとアルコールで濁り切った頭脳をフル回転させて目の前の敵を殺すことにするのか、別のチャンスを待つのかを必死の形相で考えていると、頭から少なからず煙が出てきたので山火事になる前に取り敢えず放置しておくことにした。

 と、突然目の前の薮がゴソゴソ動いたかと思うと痩身の異教徒が姿を表し、(バスン)とAXELの隠れている所に弾丸を1発だけ撃ち込んできた。何故1発だけなのかは不明であるが、フルオートでぶっ放されると脳漿をぶちまけて昇天していたであろうことは確実なほど正確な射撃であったため思わず亀の頭の如く首をすぼめて身を縮めると、他人に見られたら「根元に縮れた毛の生えた亀の頭」と嘲笑われそうな程惨めな姿であったため、勇気を振り絞り出来るだけ音を立てない様に銃身を敵兵士に向けてセミオートで止めを刺そうとしたのだが、勢い余って数発分の先っちょ汁が出てしまった・・・。が、給弾不良のため弾が出たのは1発だけであった。

プスプスプス・・・

と空しくすかし屁のような空撃ちを続けるP-90を尻目に、偶然にも最初に発射された弾丸は敵兵士の体を捉えていたため、彼は「うわっ!ヒット〜〜」という断末魔の叫びを発しながら死体置き場に旅立っていった。有り難いことである。AXELはクリスマスイブであるにも関わらず休日返上で戦場を忙し気に走り回っているサバゲの神様のちょっとした贈り物に感謝しつつも、

「これは断じてクリスマスプレゼント等といった、腑抜けた献上品ではない!























 少し早いお年玉だ・・・そうだ!弾だけにお年弾である・・・


と必死に苦しい言い訳を自分に言い聞かせる事で、自我の崩壊を食い止めた。ここは死ね死ね団最期の砦である。既に大半の兵士が幸せ団の魔の手にかかってしまった以上、この砦の陥落は我が栄光の死ね死ね団の壊滅を意味する事であろう。今となっては槍は折れ矢は尽き我が手の中にあるのは弾詰まりを起こして、ティッシュペーパーの巣の中でホクホクしているドワーフハムスターよりも役に立たないP-90のみである。

嗚呼、サバゲの神々よ!

我が願いを聞き入れんことを・・・


我が手にロンギヌスを・・・



勝利の鐘を打ち鳴らす小槌を・・・




この命、果てようとも我勝利の鐘を打ち鳴らさん・・・

























鐘が鳴るなり法隆寺

いざとなれば予備弾倉の弾丸を手にとって異教徒に投げつけてでも玉砕する覚悟で全身の神経を研ぎ澄ましてじっと周囲を窺っていると

ピィィィィィィィィィィィィィィ

と言う終戦を告げる笛の音が自陣営から高らかに鳴り響くのが聞こえた。何ということか、既に敵の本隊は逆ルート周りでフラグ近辺を制圧しており、味方守備兵は全滅の憂き目に遭っていたようであった。ただ一人敵軍のど真ん中に身を置きながらも奮戦したAXELはさながら単身風車に戦いを挑んだドンキホーテであったに違いないことであろう・・・。

 その後、もう1戦参加したのであったが、フィールドを大回りする作戦を採ったのだが、敵兵士に遭遇することもなくゲームは終了してしまった。この日の成績は2ゲット0ダウン、ノーフラグアタックと割と小ぢんまりしたものであった。が、記録更新をしたことが一つだけあった・・・。






















「弾、2発しか撃ってねぇよ・・・(T−T」

2001年撃ち収めとしては少々物足りない半日のゲームであったが、怪我人もなく今年1年のサバゲを乗り切れたことをサバゲの神様に感謝しつつ兵舎に向かうAXELであった。























 この日は実家に里帰りしているアキ〜コ顧問が兵舎へと戻ってくる日である。部屋の掃除をほっぽり出してサバゲに行っている事実が発覚してしまうと本気モードの極悪銃から繰り出される北斗百烈0.43gピッカ弾神拳が、恐怖に打ち震えるAXELのケツの穴に炸裂することは定説であったため、決死の形相で兵舎に戻ると果たしてアキ〜コ顧問は既に兵舎へと戻ってきていた・・・。

ニコニコ笑いながら玄関先に立つ顧問のその手には・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 


うんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



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